平成28年司法試験の採点実感等に関する意見~1

H28年の司法試験採点実感等に関する意見が公表されている。

 私に言わせれば、「実態不明のプロセスによる教育」とやらを法科大学院で受けさせられ、厳格な卒業認定を経て卒業している受験生が大多数を占めているはずの司法試験で、法科大学院の効果とやらが発揮されているのか興味津々だ。

ところがどっこい(私からすれば予想どおりだが)、法科大学院のプロセスによる教育の効果とやらは全然発揮されておらず、むしろ問題だらけの採点実感に関する意見になっているようだ。もちろん一部、法科大学院の効果ではないかとの指摘も皆無ではないようだが、それよりも看過できない大きな問題点が遥かに多く指摘されている。

この採点実感を読んで、法科大学院がまだ、「法科大学院によるプロセスによる教育がよいのだ!」と言い張れるとしたら、それはもはや、現実から目を背けて、頭の中がお花畑になってしまっている状態としか思えない。

それでは、採点者達の(控えめな)採点実感を見ていこう。

ところどころ「→」で坂野の意見も入れているが、まずは採点者側の意見を読んでみて頂きたい。

(公法系第1問)
★設問1は「性犯罪者継続監視法が違憲であることを訴えるため」の主張を問うているのであるから,専ら法令違憲のみを検討すればよく,適用違憲や処分違憲に言及する必要はないのに,これに言及する答案が少なからずあり,中には,法令違憲と適用違憲との違いが的確に理解できていないのではないかと疑われる答案も見られた。

→設問をどう読んでも、架空の法律が違憲かどうかを判断する問題だから、法令違憲しか書きようがないはず。旧試験で、適用違憲など書こうものなら即アウトであってもおかしくないレベルだ。

★例えば,居住移転の自由を憲法第21条第1項とするものや幸福追求権を憲法第14条とする答案があった。

→試験場で舞い上がっていても、司法試験六法で条文は与えられているし、六法なんか見なくても勉強をきちんとしていれば当然頭に入っていて、書き間違えようがない条文のはずだ。こんな条文を間違うレベルで司法試験を受けているとは、恐れ入った。もはやそこまでレベルが落ちているのか。

★付添人を「原告」,検察官を「被告」と取り違えている答案が少なくなかった。

(公法系第2問)
★例年繰り返し指摘し,また強く改善を求め続けているところであるが,相変わらず判読困難な答案が多数あった。極端に小さい字,極端な癖字,雑に書き殴った字で書かれた答案が少なくなく,中には「適法」か「違法」か判読できないもの,「…である」か「…でない」か判読できないものすらあった。第三者が読むものである以上,読み手を意識した答案作成を心掛けることは当然であり,丁寧に判読できるような文字を書いていただきたい。

★誤字,脱字,平仮名を多用しすぎる答案も散見された。

★問題文及び会議録には,どのような視点で書くべきかが具体的に掲げられているにもかかわらず,問題文等の指示に従わない答案が相当数あった。

→問題文の指示に従わず自分が書きたい(書ける・覚えている)論点を書いていることが推測される。問題文の指示に従わずにまともな答案になるはずがない。しかも、相当数ということは、かなり怖い状況だ。逆に言えば、相当数の答案が問に答える力がないということでもある。

★例年指摘しているが,条文の引用が不正確な答案が多く見られた。

★冗長で文意が分かりにくいものなど,法律論の組立てという以前に,一般的な文章構成能力自体に疑問を抱かざるを得ない答案が少なからず見られた。

→最近特に強く指摘されるようになってきた点であるように思われる。法律の文章という前に日本語の文章能力がないということだ。一体法科大学院は何を教えているのだ。日本語の文章能力すら覚束ない学生を(しかも少なからず)卒業させて、何が厳格な卒業認定なのだろうか?

★結論を提示するだけで,理由付けがほとんどない答案,問題文中の事実関係や関係法令の規定を引き写したにとどまり,法的な考察がされていない答案が少なからず見られた。論理の展開とその根拠を丁寧に示さなければ説得力のある答案にはならない。

→結論しかない答案、理由付けがない答案、問題文を引き写して何ら法的考察がない答案など、法学部の試験でも落第必至だ。しかも少なからずそのような答案があったということは、法科大学院の教育能力に問題があると考えるのが普通じゃないのか。

★法律解釈による規範の定立と問題文等からの丁寧な事実の拾い出しによる当てはめを行うという基本ができていない答案が少なからず見られた。

→法律的文章の基本ができていない答案が、これも少なからずあるという指摘だ。

★問題文等から離れて一般論(裁量に関する一般論等)について相当の分量の論述をしている答案が少なからず見られた。問題文等と有機的に関連した記載でなければ無益な記載であり,問題文等に即した応用能力がないことを露呈することになるので,注意しておきたい。

→おそらく自分の知っていることを書いて、なんとか点数をもらおうとしたのだろうと推測するが、逆に言えば問題を解決しようとするのではなく、逃げているだけに過ぎない。答案は最初の一文字から最後の句点まで、書く必然性があって書かれていなくてはならないし、論理でつながっていなくてはならない。それもできない答案が少なからずあるのだ。

★例年より設問数が多かったことや時間配分が適切でなかったこと(設問1に必要以上に時間を掛けたと思われる答案が散見された。)などにより,時間不足となり設問4についての論述が十分でない答案が多かった。

★本年も,論点単位で覚えてきた論証をはき出すだけで具体的な事案に即した論述が十分でない答案,条文等を羅列するのみで論理的思考過程を示すことなく結論を導く答案などが散見されたところであり,上記のような論理的な思考過程の訓練の積み重ねを,法律実務家となるための能力養成として法科大学院に期待したい。

→予備校の教育を論点主義だと批判して、それではダメだからプロセスによる教育が必要と法科大学院推進者は言っていたようだけれど、プロセスによる教育の結果がこれですか。結局効果は上がっていないようだね。

★設問1及び設問3は,最高裁判所の重要判例を理解していれば,容易に解答できる問題であった。しかし,設問1については,一般論として判断基準を挙げることはできても,判断基準の意味を正確に理解した上で当てはめができているものは少数であり,設問3については,会議録中で検討すべきことを明示していたにもかかわらず,最高裁平成21年判決の正しい理解に基づいて論述した答案は思いのほか少なかった。

★昨年と同様,法律的な文章という以前に,日本語の論述能力が劣っている答案が相当数見られた。

→相当多くの受験生が、日本語での論述能力に欠けていると言うことだ。日本語の論述能力も身に付けさせることができないで、何がプロセスによる教育だ。高い学費と多くの時間を受験生に投入させ、国民の皆様には多くの税金を投入させて、結局効果は上がっていないじゃないか。法科大学院は廃止しても問題ないんじゃないの。

(続く)

司法試験~予備試験制限の動きに反対する。

 昨年12月8日のブログで、予備試験を制限する動きが出るかもしれないと予測したが、早速そのような動きが年末の忙しい時期にひっそりと開始されたようだ。

(引用開始)
司法予備試験、見直し議論 「近道」対策で、法務省など
https://this.kiji.is/187106651979843062

 法務、文部科学両省や最高裁などが近く協議会を開き、法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格を得られる予備試験制度の見直しを議論することが29日、関係者への取材で分かった。経済的理由などで法科大学院に進学できない人を救済するための制度が、法曹への「近道」に使われる傾向が強まったため。議論が受験資格の制限といった具体策にまで至るかは不透明だ。
 多面的な能力を持つ法曹を養成しようと、法科大学院修了者を対象にした現行の司法試験は06年にスタート、予備試験は11年に始まった。
(共同通信47NEWS 2016.12.30)

(引用ここまで)

以下、坂野の意見

 以前から述べているように、法曹としての実力が身についているのであれば、どこで学んでこようと一向に構わないと私は思っている。
 予備試験を法曹への近道に使って何が悪いのだ。
 予備試験経由の法曹が、法曹としての資質に欠けているという実証的データでもあるのだろうか。
 もし本当に予備試験経由者が法曹としての資質に欠けているというのであれば、法務省や最高裁が予備試験経由者を検察官や裁判官に任命するとは思えない。
 また、日本を代表する大手法律事務所などは、競って予備試験経由者を採用しようとしており、その傾向はずっと続いている。この事実は、予備試験経由者が法曹としての資質に欠けることなどなく、むしろ大手法律事務所は、こぞって法科大学院経由者よりも資質において優れていると評価しているからだろう。

 受験生にとっても、高い学費と最低2年間の拘束を余儀なくされる法科大学院の教育は、費用対効果として、魅力がないのだ。魅力があれば法科大学院志願者が激減するはずがないではないか。

 ちなみに、司法制度改革審議会意見書では法科大学院の理念を次のように表現していた。

•「法の支配」の直接の担い手であり、「国民の社会生活上の医師」としての役割を期待される法曹に共通して必要とされる専門的資質・能力の習得と、かけがえのない人生を生きる人々の喜びや悲しみに対して深く共感しうる豊かな人間性の涵養、向上を図る。
→専門的資質・能力は独学でも身に付けられる。豊かな人間性は教わって身につくものとは思えないし、司法試験問題を漏洩するような一部教育陣が豊かな人間性を口にするだけでもおぞましい。
•専門的な法知識を確実に習得させるとともに、それを批判的に検討し、また発展させていく創造的な思考力、あるいは事実に即して具体的な法的問題を解決していくため必要な法的分析能力や法的議論の能力等を育成する。
→知識・思考力は独学でも身に付けられるし 法的分析能力も同じである。法的議論の能力についても結局きちんとした知識と法的分析能力が基礎となるし、口頭の議論については司法修習期間でも十分身に付けられる。
•先端的な法領域について基本的な理解を得させ、また、社会に生起する様々な問題に対して広い関心を持たせ、人間や社会の在り方に関する思索や実際的な見聞、体験を基礎として、法曹としての責任感や倫理観が涵養されるよう努めるとともに、実際に社会への貢献を行うための機会を提供しうるものとする。
→司法試験受験科目以外を熱心に勉強する法科大学院生がどれだけいるか疑問だし、仮に基本的な理解ができたとしてもそれだけでは実務では使えない。結局、自分で勉強するしかないのだ。責任感や倫理観も、教わってどれだけ身につくものか疑問である。

 このようにみてみると、法科大学院の理念をみても、本当に法科大学院が必要なのか疑問だらけである。
 このようないい加減な理念を旗印に、どうして法科大学院制度設立に走ったのか、どうしてマスコミも法科大学院制度万歳となって何ら疑問を呈しなかったのか、について疑問に思えて仕方がない。

 今後の展開としては、おそらく、予備試験が法曹へのバイパスとなることは当初の理念に反しているという形式的理由で、文科省・法科大学院側は予備試験を制限しようとするのだろう。しかし、前にも述べたが、司法試験受験回数を制限する理由として、法科大学院教育の効果は5年でなくなるから、とされていたはずだ。

 わずか5年でなくなり、実務界からも評価されていない法科大学院教育の効果を、あくまで理念は正しいのだから、と言い張って、受験生に多大な費用と時間を負担させつつ、今後も行い続ける必要があるのか。
 社会人経験者など多様な法曹を送り出す目的を謳いながら、夜間の法科大学院がどれだけあるのか。
 多くの法科大学院が撤退した現在、地方の法曹志願者に対応する体制は整備されているのか。

 仮に予備試験が法曹へのバイパスになっていても、その制度のおかげで多くの人材が法曹を目指し、その制度を経由した法曹が資質として問題がないのなら、何も馬鹿高い税金を投入して法科大学院を維持する必要など無い。

 根本的なところをまず考え直す必要があるはずだ。

 そのためには、まず、予備試験経由者法曹を採用している、最高裁・法務省・大手事務所にヒアリングを行い、予備試験経由者が法曹としての資質に欠けているのかを確認することから始めるべきだ。
 それもせずに、文科省中心に予備試験制限を考えるなど、文科省と法科大学院の利益だけを優先し、国民を無視した制度検討になること必定だ。

 予備試験を制限するべきではない。

今年の二回試験不合格について

 司法試験合格後に、合格者は司法修習を受けることになる。そして、その修習の最後に受ける修了試験のことを、一般に二回試験と呼んでいる。

 今年の二回試験の不合格者は、54名だったそうだが、そのうち40名以上が民事弁護の科目で落第点をとってしまったとのことだ。

 裁判科目、刑事弁護科目での落第点ならまだ理解は出来るが、民事弁護科目で落第点をとるとはちょっと想定しにくい事態であり、どうやったらそんなに民事弁護で落ちるのか、不思議に思っていた。

 ところが、先程ある方から、ほぼ確かな情報ということで聞いたのだが、民事弁護科目の落第者の多くは、民法94条2項の類推適用が書けなかったらしい。

 仮にそのお話しが事実だとするととんでもないことだ。

 一般の方には分かりにくいとは思うが、民法94条2項の類推適用は、超弩級のメジャー論点であり、法律家を志すものであれば理解していないはずがない、ほぼ常識と言ってもいいくらいの論点である。

 94条2項の類推適用が可能(必要)な場面でそれに気づけないとは、どのくらいとんでもない理解不足かについて、分かりやすく医師に例えていえば次のような感じだろうか。

母:「先生、うちの子が熱を出しているのですが大丈夫でしょうか?」

医師:「どれどれ、ははあ、これは風邪ですね。薬を出しておきましょう。」

(翌日)

母:「先生、子供の熱が下がらないのですが。」

医師:「それはいけませんね。手術しましょう。」

母:「え、手術ですか!?ただの風邪だって聞いていたのに。大丈夫なんでしょうね。。。」

医師:「もちろん全力を尽くしますよ。」

(手術後)

母:「先生、手術は成功したのでしょうか。うちの子は大丈夫なのでしょうか。」

医師:「残念ですが、手術では直せませんでした。残念ですが、これが、現代医学の限界です。。。」

母:「そんな、ただの風邪だって言ってたのに。。。」

医師:「いや、病名は風邪ですよ。風邪を手術で治すことはやはり出来ませんでしたね。ははは。。」

 例えていうなれば、上記の例に匹敵するほど信じがたい理解不足なのである。

 これでは、どんなに合格させたくても、実務家として世に出すわけにはいかないだろう。

 しかし、問題は二回試験にとどまらない。

 二回試験は、法科大学院を卒業し、司法試験に合格し、司法修習を経たものが受験しているのだ。逆に言えば、94条2項類推適用がきちんと書けないレベルでも法科大学院を卒業し、司法試験に合格してしまえるということだ。

 医師に例えれば、風邪を手術で直してみようと思うレベルの人間を医師国家試験に合格させるほどの恐ろしさなのである。

 確かに問題を見ていないので、断言しきれない部分はある。

 また、二回試験は、長時間に及ぶ苛酷な試験であり、受験生が心身ともに疲れ切っていた可能性はある。

 しかしそのような場面でも、民法94条2項類推適用は、最低限抑えておかなければならない超基本論点であり、書けなくてはならない。

 もし本当に、民事弁護の落第理由が情報どおりなら、上位合格者はともかく、司法試験の合格最低レベルは、危機的状況まで落ちていると言わざるを得ないだろう。

 既に恐ろしいところまで事態は進行してしまっているのかもしれない。

企業における法科大学院修了生・社内弁護士の活用状況~経営法友会の報告書

 正直言って何をやっているのか分からない「法曹養成制度改革連絡協議会」に対して、経営法友会から企業における法科大学院修了生・社内弁護士の活用状況についての報告が提出されている。

 経営法友会が、平成27年に6193社に対してアンケート調査を行い、960社からの回答を得た上で、分析を加えたものらしいが、アンケート結果にはなかなか興味深いものもある。面白いものをいくつかご紹介しようと思う。

1 法科大学院修了生の採用後の処遇
  同年代の大卒者と同等     23.0%
 同年代の大学院終了者と同等  50.2%
  何らかの優遇措置をとる     1.8%
  専門職として処遇する      0.5%
  その他             3.7%

→つまり、法科大学院を修了しても企業に専門職として扱ってもらえる可能性は、わずか0.5%(200人に1人)である。
 アンケート結果から見れば、法科大学院の修了生が他の大学院修了者と同等の処遇(学歴どおりの処遇)をうける可能性は約50%、法科大学院を修了していながら、大卒者と同等の扱い(学歴以下の扱い)を受ける可能性が23%となっている。
法科大学院といえども専門職大学院であるから、修了生には少なくとも大学院終了者程度の扱いがあって当然であると思われるところ、アンケートからは学歴以下の扱いをしている企業が1/4もある。これは、企業側が法科大学院卒業生に対して、学歴相応の価値を見出せていない実態を明らかにしているといってもよいのではないだろうか。

2 社内弁護士の活用
専門的見地からのメモランダムや契約書の作成   44.6%
弁護士資格を持たない法務部員を変わらない    42.1%
社内法務教育の講師               40.8%
コンプライアンス関係の指導・援助        31.8%
社外弁護士からの意見書・鑑定書・アドバイス等
に関するチェック機能              31.8%

→メモや契約書の作成が最も多く、その次に多いのが他の法務部員と変わらないという回答である。もちろん、弁護士としての専門性を生かした使い方をされている企業も多いはずだが、アンケート結果から明らかなように、せっかく社内弁護士を採用しても、メモ・契約書の作成、が最も多い仕事で、その他は他の法務部員と変わらないというのであれば、社内弁護士の意義について、企業はそう高い価値をおいていない可能性があるようにも読める。

3 社内弁護士に対する今後の採用意欲
(社内弁護士が在籍する企業の回答)
是非採用したい    25.8%
できれば採用したい  27.8%
応募があれば検討する 36.1%
採用するつもりはない  3.9%
無回答         6.4%

→上記の回答から、経営法友会は、「約9割の企業が社内弁護士の採用に意欲を見せている。」と結論づけているが、極めて強引に企業の採用意欲を認定したとの感を禁じ得ない(率直にいえば、「データを曲解して嘘の分析結果を報告するな!」というべきか。)。
 しかも上記のアンケートは、既に社内弁護士を採用し、現在も在籍させ続けている企業の回答であることに注意すべきである。簡単に例えていえば、トヨタ車に乗ってトヨタディーラーに来た人に、トヨタ車をまた買いますか、と質問しているようなものである。当然、トヨタ車を買いたいという回答が多数を占めて然るべきと思われる質問だが、回答結果はそうではない。
 このような企業であっても、社内弁護士を是非採用したいという企業は1/4にすぎないのだ。
 現在社内弁護士を在籍させている企業であっても、次の社内弁護士採用に関しては、「応募があれば検討する」、「採用するつもりはない」という回答に見られるように、採用に消極的な企業が40%にも達していることは、極めて示唆に富む回答である。

 アンケート結果からは、「企業としては社内弁護士に(日弁連や法科大学院教授が主張するほど強い)魅力を感じてはいない」と結論づけるのが素直な分析というべきではなかろうか。

 さらに疑問に思われるのは、社内弁護士に対する今後の採用意欲に関するアンケート結果は掲載されているが、法科大学院修了者に対する企業の今後の採用意欲に関するアンケート結果が掲載されていないことだ。
 このレポートの結論は、「企業には法務人材への旺盛なニーズが存在している。」となっている。法科大学院修了者も法務人材であり、法務人材に対する旺盛なニーズがあると結論づけるなら当然、法科大学院修了者に対する企業のニーズも根拠資料としなければならないはずだが、それがなぜか欠落している。
 なお、この調査は、設問数81(枝問を含めると約300問)ものアンケート調査であり、しかも社内弁護士・法科大学院修了者の双方について回答を求めたアンケートであると思われるうえ、法科大学院修了生の処遇にも質問していながら、今後の採用意欲についての質問をしていないとは考えにくい。法科大学院修了者に対する企業のニーズに関して、何か不都合なアンケート結果が出たのではないかとの疑念が生じてしまう。

「法曹養成制度改革連絡協議会」の委員の方には、分析に正確性を欠く可能性が高い当該レポートの結論だけを鵜呑みにされるのではなく、正確なデータを求めて頂いて、現実をきっちり把握して頂きたいと切に願うものである。

本当に法科大学院はバラ色か?(5.26ブログの後記)

 H28.5.26のブログに掲載した、回答率を記載していない文科省のアンケートであるが、さる筋から当該アンケートに関する資料(契約書等)を入手したので、その情報から、本当に法科大学院はバラ色なのか、もう一度ざっと検討してみようと思う。

 当該アンケートは、文科省が株式会社ジュリスティックスと契約を締結して実態調査を行わせたものである。
 (株)ジュリスティックスは、「ジュリナビ」という、法科大学院修了生、在学生の就職支援を生業としている会社であり、もともと、法科大学院に好評価の結果が出ないと自らもおまんま食い上げになりかねない、法科大学院の利害関係者であると思われる。(業務計画書には次の通り記載されている。『株式会社ジュリスティックスは、平成19年度「専門職大学院等における高度職業人養成教育推進プログラム」に選定され、文部科学省より助成を受け、明治大学を主幹事校とする13法科大学院により2008年春から運用を開始した、法科大学院修了生と在学生を対象とする就職・キャリアプランニング支援のためのプロジェクト「ジュリナビ」の実務上の運営主体です。』)

 さて、それを措くとして、問題のアンケート対象であるが、調査対象については業務計画書の表1に明記されている。

 法科大学院修了生は概数38,769名、2008年度以降の「ジュリナビ」登録の全国法科大学院修了生は概数16,000名とされているが、重複を許すものとして調査をしている。その結果、合計約54,769名にアンケート調査を行ったと考えるのが自然である。
そして有効回答数が
①修了生の就業先業種では有効回答数 1274(約53,500名は不明)
②修了生の法科大学院教育に対する満足度では有効回答数 1512
                      (約53,250名は不明)
なのだから、回答率は2.32%~2.76%でしかない。また、どうやって有効回答か否かを判断したかも分からない。
 これでは大した分析も出来ないと思うのだが、豈図らんや、(株)ジュリスティックスは、法科大学院高評価の結論を導き出して見せている。

 更にどういう趣旨なのか分からないが、ジュリナビ登録の法科大学院修了生に限って、「メールのコメント反映すること」との付記がある。
 ヒアリング調査分析については、「ジュリナビ登録の修了生ならびにジュリナビ利用で修了生の採用実績のある企業所属の修了生にヒアリングを開始し、より具体的な就業状況、法科大学院で学んだことの中で実際に業務に役立っていること、法科大学院の魅力等について取りまとめる。」と明記されている。法科大学院の問題点について取りまとめる視点は一切ない。
 これって、実態調査というよりも結論先にありきの偏った調査を行うことを前提とした仕様ではないのか。ひかえめに見たとしても、この時点で出来レース感を払拭できない。

 次に、法科大学院修了生に対する法律事務所の満足度調査であるが、どうやら、新60期以降の弁護士が複数名所属する法律事務所を中心に調査を行ったようだ。(株)ジュリスティックスの算出した概数では6500事務所がその対象となっているらしい。そのうち、有効回答数は775である。
 非常に満足が148事務所、満足が279事務所、どちらでもないが259事務所、不満が57事務所、非常に不満が32事務所となっている。約5700の事務所がノーコメントだ。
 採用者の声欄の中規模・一般民事系法律事務所代表弁護士のコメントは、一見法科大学院卒業生に対する高評価とも取れるが、結局は民間企業で経験を積んできた人への評価をしているだけである。結論的に、法科大学院生ならでは、と無理矢理法科大学院と結びつけている感が否めない。

 公的機関や企業の満足度調査については、どれだけの数を調査したのか明確ではないが、
a 新60期以降の弁護士、法曹有資格者、修了生の所属する行政機関・企業約600、
b 上場企業を中心とする大手企業約3150,
c 経営法友会加盟企業・組織内弁護士協会弁護士所属企業約1180、
d ジュリナビ利用で修了生の採用実績のある行政機関・企業等約250
が対象のようである。
合計で約5180。これは重複しない数字だそうだ。

 ちなみに経営法友会は、法科大学院と組んでしょっちゅうセミナーをやっていたりする。かなり法科大学院よりの団体と見受けられる。

 それはさておくとしても、大手企業の3150社を除くと、法科大学院出身者を採用してその者、若しくは新たな法科大学院出身者が所属し続けている企業等がメインの調査対象のようだ。それなら満足度が高くて当然だ。満足したからこそ継続して所属させているのだろうし、再度採用したりもするだろうからだ。しかし、本来なら一度でも採用しているところ全てを調査対象とすべきはずだ。なぜなら、一度法科大学院出身者を採用して失敗し、二度と採用していないところもあるはずだし、そのような企業・公的機関も対象として取り込まないと法科大学院終了者に対する評価について、正確な判断はできないからだ。

 例えていえば、トヨタ車が好きな人を調査するのに、トヨタに車を買いに来る人だけを調査して、「トヨタ車の好感度は90%だ。だから全国民の90%はトヨタ車が好きなのだ。」、と結論づけることはできないだろう。

 さて、そのような偏った対象を調査した結果になるとは思うが、
④修了生に対する公的機関の満足度では有効回答数 32
⑤修了生に対する企業の満足度では有効回答数 110

 総務省によれば市町村の数は平成26年4月で1718、これに都道府県や特別区、中央官庁を加えれば、かなりの数になる。もっとも、その中で法科大学院出身者を採用している公的機関がどれだけあるのか全く分からない。仮に分かったとしても現在採用している公的機関が対象だから、先のトヨタ車の例から分かるように、偏ったデータになることは明白だ。
このデータで、ホントにきちんとした分析が出来るとは思えない。

 企業についてはかなりの低回答率である。上場企業を中心とする大手企業約3150,経営法友会加盟企業・組織内弁護士協会弁護士所属企業約1180、だから、少なくとも4330社はあるはずだ。
 法科大学院寄りと思われる経営法友会加盟企業・組織内弁護士協会弁護士所属企業約1180を調査対象に入れた上で、なお単純回答率2.54%である。
 つまり97%以上の企業は無関心というのが素直な分析になってもおかしくはない。

 なお、業務計画書には、企業等に対して採用実績と今後の採用希望も調査するようになっている。そして、その結果を一番知りたいのが法科大学院であり法科大学院志願者だと思うが、私の見る限り採用実績と今後の採用希望に関するアンケート結果はどこにも記載されていないぞ。
どうして結果が出てないんだろう?
表沙汰にできない調査結果でも出たのではないかと心配になってしまうね。

 法科大学院って、本当にバラ色なんですか?
 それならどうして、志願者が減っているんですか?

 誰か教えて下さい。

法科大学院はバラ色だ!?

 今年の5月11日に行われた中教審法科大学院特別委員会に次のような資料が配付されたようだ。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/05/20/1370787_13.pdf

 題して、「法科大学院とあなたが拓く新しい法律家の未来」という多色刷り豪華パンフレットだ。

 文科省あたりがアンケート調査をしたらしく、そのデータを引用しながら、「多様化する法務博士のキャリア」など、バラ色の未来が描かれている。

 確か、私の事務所にもアンケート調査が来ていたようにも思うが、質問をざっと見たところ、答えようのない質問も多く、また回答を誘導するような選択肢が多かったため、「こんなアンケート、アンケートにもなっとらん、アホらしい!」と思って速攻ゴミ箱に投棄したような記憶がある。

 驚くべきことに、それは真面目なアンケートだったらしく、そのアンケート結果がおそらく引用されているようだ。

 しかも、そのアンケート結果の引用も実に恣意的だ。
 なにより、アンケートの信頼性を推測するために最も大事な回答率が全く記載されていない。回答率を隠し、どういう基準で有効回答数をカウントしたかも不明確というあきれた状況であり、これでは、アンケートを信じろという方がまず無理だ。

ちなみに
①修了生の就業先業種では有効回答数 1274
②修了生の法科大学院教育に対する満足度では有効回答数 1512
③修了生に対する法律事務所の満足度では有効回答数 775
④修了生に対する公的機関の満足度では有効回答数 32
⑤修了生に対する企業の満足度では有効回答数 110
⑥法曹資格を有しない修了生の就業先業種では有効回答数 373
となっている。

 ①に関しては、法科大学院を卒業して就職ができなかった人の存在を無視しているようなので、就職出来た人だけを対象にアンケートをしても卒業生の活躍の場が拡大したとは言えないのではないか。卒業生には卒業しても就職出来なかった人も当然含まれるはずだからである。

 ②に関しては、どちらでもないという回答は少なくとも法科大学院教育に満足はしていないことになるから、それを含めれば、法科大学院教育に満足していない修了生の割合は約45%になる。ところがこのデータに添付されているコメントは「修了生は法科大学院を積極的に評価」となっており、ちょっと偏った評価だと言わざるを得ない。

 ③に関しても、どちらでもないという評価は、少なくとも修了生に対して法律事務所は満足はしていないということだから、それを含めれば、法科大学院修了生に対して満足していない法律事務所の割合は45%にのぼる。また、法律事務所が修了生に期待する能力・資質というデータも載っているが、あくまで期待している能力に過ぎず、それを修了生が備えていると回答したデータではない。期待しても期待はずれということも十分あり得る。しかし、コメントは「紛争解決への基礎的な能力に対する期待が高い」と、修了生が法科大学院教育によって、さもその能力を備えることができているかのような表現に読める。

 特に④・⑤などは、基礎データがあまりにも少なすぎてこのアンケート結果から何かを推論すること自体暴挙といっても良いくらいだ。
それに公的機関ってなんだろう?
 株式会社は中小企業庁によれば100万社以上、東証上場企業に限っても3500社以上あったはずだ。仮に上場企業だけにアンケートを行ったとしても、回答率3%程度だ。残りの97%は無関心なのかもしれないぞ。その点はどう考えているのだろう。

 ⑥についても、就業できなかった人は回答を避ける傾向にあることは明らかだ。それに、法科大学院卒業生のうち法曹資格を取得できなかった人数の方が多いと思われるところ、有効回答数が①の約4分の1にすぎないことも気に掛かる。

 それに「採用者の声」などの記載もあるが、これもバラ色のものばかり。批判的な意見は一切ない。どうして「個人の感想です。就職を保証するものではありません。」と事実を明記しないのだろう。深夜のダイエット食品のTV通販でも、それくらいは明記しているもんだがな。

 とにかく、法科大学院は良いところだ、卒業すれば(司法試験に合格しなくても)上手く行くという、事実を相当歪曲した内容を刷り込もうとする、プロパガンダのためのパンフレットだ。
 こんなお粗末なパンフレットで志願者が増えると考えること自体、大学生や法曹志願者を馬鹿にしているとしか思えない。それに、このパンフレットを鵜呑みにするような「おつむ」では法科大学院経由で法曹界に来ても役に立たないだろう。

 問題は、これの多色刷り豪華パンフレットを作成したのが
文部科学省 高等教育局 専門教育課 専門職大学院室
だということだ。

 つまるところ、税金の投入である。
 これまでさんざん法科大学院には税金が投入されてきているのだが、更に税金を投じようというのだろうか。法科大学院の教授さんは懐が痛むわけではないし、志願者が増えれば自分達は安泰だから、それで良いのか。

 
 本当に法曹という仕事に魅力があるのなら、そして、法科大学院が本当に価値のある教育をしているのなら放っておいても法曹志願者・法科大学院入学希望者は増える。

 子供でも分かることを無視して、税金をもっと使おうとする学者・官僚達のおつむの中身は一体、どうなっているのだろうか。

 春爛漫でタンポポでも咲き乱れているお花畑としか思えないなぁ。

(後記:パンフレットの話しではなく共通到達度試験に関する深い分析は、小林正啓先生のブログをご参照のこと。http://hanamizukilaw.cocolog-nifty.com/blog/)

 ちなみに今年の法科大学院入学者は僅か1857名。

 奇しくも昨年の司法試験合格者1850名とほぼ同じである。

やはりまずいと思うな、法科大学院制度

 5月11日に中教審法科大学院特別委員会が公表した、法科大学院志願者・入学者数の推移(H16年度~H28年度)のデータがある。

 法科大学院志願者数(のべ人数)は、
 平成16年度72800名だったのが
 平成28年度 8274名になっている。
 志願者約89%減少。ほぼ9割の減少である。
 ついに、のべ人数でも1万人を切った。

 これは併願している受験生を複人数とカウントする、のべ人数によるデータだから、実際の志願者はもっと少ないことになる。仮に1人が2校受験していたら、志願者数の実数は4137名になるし、1人が3校受験していたら、志願者数の実数は2758名になる。これだけ志願者が減少すれば、法科大学院入試で競争原理が働かなくなるから、優秀な人材を法科大学院入試で選抜することはもはやできていないと言うべきだ。法科大学院だって魔法使いではない。優秀な人材が集まらなければ優秀な人材を輩出することは無理である。幾ら大リーグの監督を連れてきて指導させても草野球のチームでは、優秀な人材を揃えた高校野球のチームに敵うわけがないのである。
 
 一方、司法試験予備試験の出願者は平成28年度12767人。こちらは併願できないので実数と見て良いだろう。

 上記の比較からも分かるように、いくら、法科大学院が自らの教育が素晴らしいと自画自賛しても、司法試験を目指す人からは相手にされていない状況と言えよう。

 実際にも、大手法律事務所では、予備試験合格者に対して(司法試験に合格していない前から)特別な就職説明会を実施しているところもある。もし法科大学院関係者が言うように、法科大学院の教育が素晴らしくかつ実務家に必須のものであるならば、大手法律事務所が法科大学院卒業生を優先して採用するはずだが、現実にはそうなっていない。
 つまり、実務界から見ても、法科大学院の教育は法科大学院関係者が言うほど、実務に役立っていないことが看て取れる。
 また、以前、法科大学院を卒業しても3回の受験制限があったが、その受験制限の理由として、法科大学院側は法科大学院教育の効果が3年程度で消滅するからと説明していたはずだ。わずか3年で消滅するような教育効果しか与えられないのに、高い費用と長い時間をかけて法曹志願者を拘束する必要があるのだろうか。

 そもそも、法科大学院の教授と言っても実務家教員を除いて司法試験に合格している教授はほとんどいないだろうし、実務の経験を持つ学者教員は極めて少ないはずだ。そのような学者教員の方が、理論はともかく実務家を育てることが果たして可能なのだろうか。
 たとえて言うなら、幾ら長年自動車のエンジンの研究をしていて幾ら高度なエンジンに関する理論を構築していても、実際に免許を取得して運転をしていなければ、自動車の運転の仕方は教えられないのと同じなのだ。

 法科大学院は、司法試験合格者数を高止まりさせ合格率を上げるべきだと述べ、法科大学院べったりの日弁連は弁護士の仕事のやりがいをアピールすれば志願者は増えると述べるなど、未だに寝惚けたことを言っているが、そんなことで志願者が回復するはずがない。
 日経新聞も、先日の社説で法曹のやりがいや意義を発信せよなどと、無責任に言っているようだ。

 では聞くが、日経新聞や法科大学院がヘッドハンティングをする際に、「2~3年間高額な費用を払って必死に勉強して頂き、合格率2~3割の試験に合格すれば、1年間研修して頂いた後にさらに修了試験に合格することを条件に職に就けます。この研修期間の生活費は自腹です。職に就けない場合は独立して下さい。ちなみに健康保険は国保です。年金は国民年金です。定年はありませんし自由ですが、収入の保証はありませんし、仕事の安定もありません。潜在的ニーズはあるだろうと学者は言っていますが、同業者が急激に増えすぎて、1人あたりの仕事量と平均所得は減少しています。ただ、仕事にやりがいや意義はあります。」といって、誰が引っかかってくれるのだろうか。

 法曹志願者はバカではない。

 はっきり言えば、法曹志願者を増やすためには、法曹資格の価値を上げるしかない。その資格を取得するに多大な時間と費用と労力をかけても、見合うだけのものにしなければ、志願者は増えない。旧司法試験時代は合格率1%台の年もあったほど難関であったが、志願者は増加していたことからも明らかだ。
 
 優秀な人材が法曹界に入ってくるのであれば予備試験だって構わないと思うが、法科大学院側は、予備試験合格者を制限施せよなどと提言している。このような提言をする法科大学院側に国民のために優秀な法曹を排出するという目的は、もはや見えない。
 法科大学院制度維持が主眼になってしまっているとしか思えない。

 これじゃあ、ダメだよね。

法テラスに怒り

(平成28年4月15日に記載したブログは誤解があったようなので削除しました。これはそのブログ記事とは別の記事となります。)

 ○○がらみの離婚事件(特定防止のため伏せ字)で、昨年●月から夫婦関係調整(離婚)・婚費請求の調停を法テラスを使って受任した。 ○○がらみだけあって、相当難航する調停であり、調停も毎回長かった。調停間に本人とも何度も打ち合わせ、さらに相手方代理人と何度も調整を行い、6度目の調停期日で、5時間以上すったもんだしたあげく、10ヶ月以上かかって、ようやく調停が成立した。

 法テラスに事件終結の報告を事件終了後数日内に提出したところ、報酬決定は相手方からの金銭給付が行われてから考えるとの返事。通常の事件では事件が終了しているのだから、終結時点で支払うのが当然であり(大阪弁護士会法律相談センターの定型契約書でもそうなっている)、支払わないのなら法テラスが遅延損害金を支払うのが筋だとは思うが、そこは百歩譲って法テラスだから仕方ないかと我慢してやった。

 そして、本日報酬決定通知が来た。
 その決定内容が問題だ。

 20万円振り込まれたようだから
 弁護士報酬を2万1600円と決定する。
 受領した20万円から差し引いて17万8400円を依頼者に返せ。
(その後、依頼者に振り込まれる予定の100万円の10%も報酬として認めるが、振り込まれたら依頼者からもらえ。そのもらい方については弁護士が依頼者と勝手に協議しろ。)
以上

  久しぶりに怒った。

 終結報告書には、20万円は弁護士ではなく依頼者に振り込まれるものと明記してあるし、その旨の調停調書もつけてある(やむを得ず依頼者に振り込まれることになっている)。そもそも、依頼者に17万8400円を返せといわれても、私は20万円受け取っていない。これだけでもバカにしやがってと思うところだが、より大きな問題はそれ以外にある。
 法テラスは、金銭給付以外に、調停自体をまとめたこと、動産の財産分与を受けたこと等について全く考慮していないのだ。

 参考までに大阪弁護士会法律相談センターの離婚調停についての報酬基準は
①着手金50万円以下
②報酬金50万円以下
③財産的給付を受けた場合には、300万円以下の場合は8%の着手金・16%の報酬金の範囲内で適正な報酬を受領することができる。更に複雑な事案の場合は適正な額まで増額も可能。
となっている。
 つまり離婚調停はまとめるのが難しいからこそ、調停をまとめた際の報酬金が認められているのだ。
 上記②③で計算した場合、動産の財産分与を除いても報酬だけで78万8000円の範囲内で請求できたはずだ(事案が複雑な場合は更に請求可能だが、それは措く)。

 加えて言えば、本件の場合、法テラスの決めた着手金は調停を2件合わせて20万2000円だ。
 これだけでも、法律相談センター基準着手金の4割しか支給されていない。
 そもそも法テラス制度は、弁護士費用の立て替えをして法的サービスを受けやすくする制度であり、弁護士報酬の引き下げをする制度ではないはずだ。

 もし、法テラスが調停自体をまとめたことを報酬に評価しないのなら、今後の法テラス経由の調停案件が来たら着手だけして着手金を受領し、1回目の期日において、「私の判断からすれば調停成立の見込みが無い。調停成立は無理、不可能だ。」と述べて10分で不調にして終わる方がよほどいい。苦労に苦労を重ねて真面目に調停をまとめても全く評価されないのなら、6回も家裁に通って調停期日だけで20時間以上も費やして、真面目に調停をまとめなくても、法テラスが弁護士に文句をいう資格はないだろう。だって法テラス自体が調停をまとめることに評価するだけの意味を見出していないんだから。意味ないことを弁護士がしたって無駄なだけだろ。

 マスコミにも文句は言わせない。これまでマスコミは弁護士に自由競争しろと何度も言ってきた。自由競争しろとは、要するに儲けた者勝ちの社会で競えということだ。その儲けた者勝ちの社会の中では、儲かるように(損失を出さないように)工夫することは違法な行為でない限り、基本的には正義と見なされる。そして違法・不当な処理をする弁護士がいても、それは自由競争の中で淘汰されるはずだからとして、その過程の犠牲者は顧みないのが自由競争だ。だから、上記のような調停の扱いを(私はしないが)仮に実行した弁護士Aがいたとしても、マスコミはその弁護士Aを非難するよりは「お気の毒ですが、自由競争の範囲内ですね、そういう弁護士はいずれ自由競争で淘汰されますよ。」と冷たく述べて突き放すほうが姿勢として一貫するはずだ。それに、新聞を読みたい経済的困窮者のために「新聞法テラス」という公的制度ができたとして、一部160円で販売している新聞を、経済的困窮者で新聞を読みたい者に新聞法テラス価格の64円(定価の4割)で販売しろ、と言われて新聞社が納得するのだろうか。
 おそらく民業圧迫だと大反対するはずだ。

 弁護士だって個人事業者だ。依頼者の方から頂く正当な着手金・報酬金で生計を立てているのだ。国選弁護も法テラスも弁護士が金のなる木と暇な時間を持っているという前提で設計されているとしか思えない。
 
 当然上記の決定には不服を申し立てることにしている。
 正当な報酬も支払ってもらえずに何が社会生活の医師だ。

 ふざけるな法テラス。

司法試験委員が法科大学院に求めるもの~まとめ~

 司法試験委員が採点に関する雑感で、法科大学院や受験生に望むことを、分かりやすく示してきたつもりだが、いずれの科目でも、共通して言われていることがあるように思う。

①正確な基礎知識の欠如~特に条文の知識、重要な論点でさえ理解不十分

②判例の勉強不足~判例の結論だけを覚えているような答案が多い。基礎的重要判例でも理解が不足している。

③論理的説得的文章力の不足

④論点主義的な答案の多さ

 ざっとこんな感じだが、このような意見が採点に携わった司法試験委員から、異口同音に、しかも毎年のように出てくるのは、かなりまずい事態だと思う。①~③は法律家として必須の基本的知識・能力であるし、④は旧司法試験で弊害だと指摘されていた点である。

 つまり、法科大学院は実務家養成のための制度であり、基本的にはその卒業生しか受験できない司法試験において、答案を見れば、多くの受験生において実務家として必須の基本的知識・能力が身に付いていないのだ。また、論点主義的答案がいまだ相当数存在しているということは、法科大学院が売りにしているプロセスによる教育が効果を上げられていないことの証拠だろう。

 また、採点に関する意見等で、毎年のように同様の指摘があることから、実務家教育として問題がある法科大学院教育が改善されていないこと、若しくは改善されているのかもしれないが、仮にそうであったとしても成果をあげられていないことが明らかになっている。

 文科省、中教審や、利害関係人の大学教授らは、その事実に背を向け、未だに法科大学院教育が素晴らしいと主張しているようだが、むしろその主張を維持すること自体が法科大学院擁護の教授達が現実を見ることができないことを示している。だって、採点者から見て全然良くなっていないんだから、当たり前だろう。

 現実を正しく見ることができない者に指導を受けた学生が、現実を正しく見ることができるようになるとは到底思えない。それに人格や豊かな人間性なんて、教わって身につくことじゃない。一般社会での経験が乏しいせいか、むしろ常識が欠如している大学教授だってたくさんいたりする。そういえば、試験問題を女子学生に漏洩した教授もいたな。そんなの常識以前の問題だろ。

 また、この現状を知ってか知らずか、法科大学院を法曹教育の中心だと言い続ける日弁連執行部も思考停止状態なんだろう。日弁連執行部は、以前の総会決議で法科大学院を中核とする決議をしたからと言い訳するようだが、臨機応変に事態に対応できなくて何が執行部だ。例えば、タイタニック号が予定航路を定めた後、急に寒波が襲ってきてその北よりの航路は氷山が流れてきて危ないと現場の航海士が言っているのに、1度決めたことだからといって律儀に北よりの航路を突進する船長のようなもんだ。アホだろ。

 設立当初から、その教育能力に疑問が呈され、10年以上かけても改善できない法科大学院に、国民の皆様はいつまで税金を投入しなければならないのだろう。

司法試験委員が法科大学院に求めるもの~国際私法~

今回は国際関係法(私法)を取り上げる。

(以下、採点実感に関する意見から引用)

5 今後の法科大学院教育に求めるもの
昨年と同様に,本年の「国際関係法(私法系)」においても,規定の趣旨を正確に把握した上で,必要があればこれを一般的な解釈論として表現し,事案へ的確に当てはめる能力の有無が問われている。
このことにつき,特に次の3点を指摘したい。第1に,明文の規定を的確に理解することが求められる(離婚の際の親権者との関連で述べたように,通則法第32条につき理解の精度が不足している答案が目についた。)。第2に,法規範が明文上完全な形では表現されていない場合,解釈による補充が求められる(通則法第27条について連結時点を意識していないと見られる答案が多数あった。)。第3に,法規範の抽象性が高い場合,解答を得るためには筋道立った推論が求められる(公序則の発動要件や鏡像理論との関連において,結論に至るまでの推論の過程を整然と示すことができない答案が多数あった。)。
これらの点を日頃から意識して学ぶことが必要のように思われる。

(引用ここまで)

【超訳】~試験委員の言いたいことを推測しての私の意訳

5 今後の法科大学院教育はこうやってもらわんと

 今年の「国際関係法(私法系)」の試験問題について言うたら、受験生に求めとるのは去年と全然変わってへんで。要するに、規定の趣旨を正確に(大体ではないで、正確にやで)掴んでもろたうえで、その趣旨を一般的な解釈論として表現してもらい、事案にきっちり当てはめる能力、~まあ、法律家に絶対必要な基本的な能力やね~これを身に付けとるかを問うてんねん。

 せやけど全然出来てへんから、特に3つの点について敢えて言わせてもらうで。第1に明文の規定を的確に理解してほしいねん。条文の理解なんざ法律家のスタート地点やろ。法律に書いとる条文の意味が理解できてへんかったら、そもそも法律家とはいえんやろがな。答案見とったら通則法32条の理解が足りへんもんが仰山あったで。

 第2に法規範は全ての現実を想定して作られとるわけやないし、人の考えたものやから、当然完全な形やない場合もある。そんなときは、条文が完全やないんやから、解釈でそのギャップを埋めなあかん。無理からその条文に事実を合わせこむなんざ、飛行機に身体を合わせろっちゅうような戦前の思想やで。きっちり条文を解釈して多くの人が納得するような形にしてから適用してやらなあかん。通則法27条のところの答案では不十分なやつが多かったな。

 第3に法規範は多くの状況に対応せなあかんから、抽象的な場合もようあるねん。法規範の抽象性が高いときは、結論よりも結論までにたどり着くまでの道のりがキモやで。何よりも筋道だった論理的で合理的な推論の過程をきちんと示すことが出来るかどうかや。それができへんのやったら、結論だけ書いとるのとかわらんで。公序則や鏡像理論の関連で、きちんと推論の過程を示せへん答案が続出やったわな。よう注意してもらわんと。

 基本的やし、当たり前のことやけど、少なくともこんな点を日頃から意識して学ぶことが不可欠やと思うな。ホンマしっかり頼むで。

各科目の超訳はこれで終了。