司法試験委員が法科大学院に求めるもの~まとめ~

 司法試験委員が採点に関する雑感で、法科大学院や受験生に望むことを、分かりやすく示してきたつもりだが、いずれの科目でも、共通して言われていることがあるように思う。

①正確な基礎知識の欠如~特に条文の知識、重要な論点でさえ理解不十分

②判例の勉強不足~判例の結論だけを覚えているような答案が多い。基礎的重要判例でも理解が不足している。

③論理的説得的文章力の不足

④論点主義的な答案の多さ

 ざっとこんな感じだが、このような意見が採点に携わった司法試験委員から、異口同音に、しかも毎年のように出てくるのは、かなりまずい事態だと思う。①~③は法律家として必須の基本的知識・能力であるし、④は旧司法試験で弊害だと指摘されていた点である。

 つまり、法科大学院は実務家養成のための制度であり、基本的にはその卒業生しか受験できない司法試験において、答案を見れば、多くの受験生において実務家として必須の基本的知識・能力が身に付いていないのだ。また、論点主義的答案がいまだ相当数存在しているということは、法科大学院が売りにしているプロセスによる教育が効果を上げられていないことの証拠だろう。

 また、採点に関する意見等で、毎年のように同様の指摘があることから、実務家教育として問題がある法科大学院教育が改善されていないこと、若しくは改善されているのかもしれないが、仮にそうであったとしても成果をあげられていないことが明らかになっている。

 文科省、中教審や、利害関係人の大学教授らは、その事実に背を向け、未だに法科大学院教育が素晴らしいと主張しているようだが、むしろその主張を維持すること自体が法科大学院擁護の教授達が現実を見ることができないことを示している。だって、採点者から見て全然良くなっていないんだから、当たり前だろう。

 現実を正しく見ることができない者に指導を受けた学生が、現実を正しく見ることができるようになるとは到底思えない。それに人格や豊かな人間性なんて、教わって身につくことじゃない。一般社会での経験が乏しいせいか、むしろ常識が欠如している大学教授だってたくさんいたりする。そういえば、試験問題を女子学生に漏洩した教授もいたな。そんなの常識以前の問題だろ。

 また、この現状を知ってか知らずか、法科大学院を法曹教育の中心だと言い続ける日弁連執行部も思考停止状態なんだろう。日弁連執行部は、以前の総会決議で法科大学院を中核とする決議をしたからと言い訳するようだが、臨機応変に事態に対応できなくて何が執行部だ。例えば、タイタニック号が予定航路を定めた後、急に寒波が襲ってきてその北よりの航路は氷山が流れてきて危ないと現場の航海士が言っているのに、1度決めたことだからといって律儀に北よりの航路を突進する船長のようなもんだ。アホだろ。

 設立当初から、その教育能力に疑問が呈され、10年以上かけても改善できない法科大学院に、国民の皆様はいつまで税金を投入しなければならないのだろう。

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