風雲急を告げる、日弁連定期総会(5.25 高松)

 5月25日に高松市で行われる、日弁連定期総会が、荒れるかもしれない。

 司法修習時代に貸与制となり、無給で司法修習を送らざるを得なかった、いわゆる谷間世代(新65期~70期)に対して、最高裁は今年1月から最初に貸与を受けた新65期に対して返還請求手続きを開始した。

 これに対して、弁護士802人が発議して、日弁連総会で最高裁に対して返還請求を撤回するよう、日弁連として宣言することを求める議案(第7号議案)を出したのだ。7号議案を提出した団体から、(おそらく全会員向けに)4月17日付けで賛成を求める委任状勧誘のファクシミリが届いている。

 もちろん、会員に向かって、給費制復活、谷間世代救済を旗印に掲げてきた日弁連なら、本来賛成してもおかしくはないはずだ。
 しかし、日弁連執行部は、決して7号議案に賛成しないだろう。

 かつて私は、2月22日のブログで、谷間世代に対する救済として会費減額は筋違いであると主張して次の通り記載した。

(引用開始)
 結局、谷間世代救済のポーズをとって弁護士会費を減額させることにより、給費制復活・谷間世代救済を目指して頑張っている委員会・本部が行っている国に対する活動に対し、結果的に水を差す(沈静化させる)こと、が隠れた本当の目的なのだということが一番得心がいくように思う。

 少ない司法予算の制約もあってだと思うが、修習生に対する給付金制度導入と引き替えに、日弁連は谷間世代の救済を切り捨てることに合意した。そして、自ら一度は切り捨てに合意した以上、谷間世代の救済を、再度(本気で)国に求めるような「ちゃぶ台返し」は、さすがの日弁連執行部としても、おそらくはできなかったのだろう。

 かといって、日弁連執行部としては、日弁連会員の一万人(20%以上)ほどを占める谷間世代に対して、正直に、「将来の修習生のために、苦渋の選択で君たちの救済を切り捨てました」とも言えなかったのではないか。

 だからこそ、小原会長の常議員会での説明にも「法曹三者の信頼を維持するため」という、一見不可思議な理由が出てきたのだろうと推測する。

 しかし、もしそうだとすれば、給費制復活、谷間世代救済について日弁連は形式的には支援するように見せかけながら、一方で単位会を使ってその実質的な弱体化を積極的に進めることになるのだから、真剣に給費制復活・谷間世代救済に向けて活動されてきた方々に対して、極めて欺瞞的な行為だと言えないだろうか。
(引用終わり)

 日弁連執行部の、7号議案に対する態度で、日弁連執行部の意図が、かなりはっきりと見えることになるだろう。
 総会で、日弁連執行部が、「将来の修習給付金の獲得のために谷間世代を切り捨てた。でも谷間世代救済を求める君たちに話す勇気がなかった。日弁連として対外的に一度は君たちの救済について切り捨てに同意した以上、君たちを救済しろと対外的に本気では言えないのだ。本当に申し訳ない。」、等と謝罪・土下座でもすればともかく、そうでなければ、「法律でそう決まっている以上、仕方がない」等、執行部は苦しい言い訳を強いられる可能性があるように思う。

 仮に「法律でそう決まっている以上、仕方がない」という理屈がとおるのであれば、死刑廃止論だって、「法律に死刑の規定がある以上、仕方がない」といわれれば、それで執行部は「はい、そうですね」といわないと、一貫しない。
 

 と書いていたら、早速日弁連から、定期総会に関する委任状勧誘のFAXが本日届いた。

 私の記憶では、通常なら、日弁連総会の議案と提案理由を記載した小冊子と一緒に委任状が閉じられて配布されていたように思うのだが、今回の執行部からは、議案や提案理由が記載された小冊子も届かないうちから、委任状勧誘だ。しかも、FAXの宛名は会員各位になっているから、全会員に対して会費を使って行っているものだ。

 7号議案提案団体に対する、明らかな対抗意識がすけて見えるといえば、執行部は反論するかもしれない。

 それでも、会員に議案の内容を周知させていないうちから、執行部宛の委任状を勧誘するのは、「議案内容は知らなくても良いからともかく執行部に委任してくれ」、「悪いようにはしないから盲目的に執行部を信頼してくれ」、ということであり、なりふり構わずに、会員発議の7号議案をつぶそうという意図があるように、私には、見えてしまう。

 こんな執行部の自己防衛・ごり押しを会費を使って行われたら、やってられないと思う会員も多いはずだ。

 悪いようにしないとは、ホントは悪いようにするときにこそ、使う言葉だ。

 弁護士の皆さんは、よくよく考えて委任状を提出して頂くようお願いします。

京大グライダー部 OBトーク

 先日、春学期の講義のために大学に赴いた。
 春学期は、いつも新人を勧誘しようという各クラブやサークルがいて、活気がある。

 さすがに、私に勧誘のビラをくれる学生はもういないが、私にもビラをもらって期待と不安でドキドキしながら、説明会にいった時代があった事を、思い出す。

 私が大学時代に所属していた、京大グライダー部は、一時新入部員が激減して存続すら危ぶまれる事態にあったところを、私の1年後輩のM君が、呼びかけて様々なOBの支援を行うように段取りを組んでくれた。

 その一環として、OBトークがある。
 要するに、食事目当ての新入生が多くやってくる説明会~飲み会に、クラブのOBを呼んで話しをさせ、クラブに興味を持ってもらうという催しだ。

 事務所は大阪であるものの、京都に在住している私は、大学に近いところに住んでいる、というそれだけの理由で何度もOBトークに参加する(させられる)ことになった。

 今年は、日程が合わずに、失礼したが、小惑星探査機「はやぶさ」に関与していた大学教授、現在大手航空会社の最前線で活躍するパイロット、等の後輩と、現在の仕事の話しや、大学時代の思い出をお話しする(もちろん勧誘が主目的であるが)ことは、そこそこ楽しかったし、新入生にも好評だったと聞いたこともある。

 OBトークで私は、手がけた訴訟や法曹界裏話などを主にお話しするのだが、実は、新入生に最も伝えたいことは、「今を大事にして欲しい」ということだ。

 過ぎてみれば分かるが、本当に時の流れは早い。
 そして、人間なんて先のことは、分かっているようで、実は全く分からないのだ。
 同級生を何人か、病や事故で失うとその思いは、特に強くなる。

 「いつか~しよう」と思っていても、いつかなんか来ないことの方が多いのだ。
 思っているだけでは何も体験できない。
 ましてや、死んでしまえば、それこそ何も出来ない。

 生きているうちに、今しかできないことを一生懸命にやることは、本当に大事だし、人生を充実したものにするには、それに尽きるようにも思う。

 もちろんそれは、私自身の悔悟に満ちた自戒でもあるのだが、どういうわけか、若いうちにそのことに気づける人、さらに進んで実戦できる人はごく希だ。

 旅客機ならともかく、グライダーの体験搭乗なんて、普通の生活を送っていれば、まずそのチャンスは巡ってこない。
 

 今しかできないことを、体験してみることは、本当に大切だ、と力説して、「少し無理してでも、グライダーの体験搭乗に参加すべきだ」、と新入生にお話しすることが、私のOBトークでの役目だったりするのであるが、実はその裏の奥底の方で、若い人に私よりも後悔の少ない人生を送ってもらいたいという気持ちが流れていたりするのである。