金子大阪弁護士会会長の「混合法人について」レジュメ

 混合法人について連載してきましたが、金子会長のレジュメを見てみたいという声もあるようなので、連載途中ですが、金子会長のレジュメを公開させて頂きます。

 なお、このレジュメは、常議員会資料ですが、公開については、金子会長の許可を得ております。

 以下のリンクから、ダウンロードして下さい。

ファイルをダウンロード

進みつつある司法占領?金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその7

3 国際化した弁護士会(フランスの状況)

 フランスには、コンセイユ・ジュリディック(事務弁護士)と、アボカ(法廷弁護士)の制度があり、かつては誰でもコンセイユ・ジュリディックを名乗って、訴訟代理以外の法律事務を行うことは可能だった。
 しかし、欧州市場統一後に、リーガル・サービスの分野にも国際化の波が押し寄せ、英米のローファーム、国際会計事務所を中心とする国際的な事務所がフランス国内の訴訟代理以外の法律事務の相当部分を取り扱うに至った。

 そして、1990年頃には、僅か数百人の外国弁護士等の収入が、数万人のフランス弁護士の収入合計を上回るといわれる状況にまでなっていた。
 

フランス人は、このような状況を嫌い、1990年に法律により、コンセイユ・ジュリディックとアボカを統合して新アボカとして法律事務を独占させると同時に、1992年からはEC加盟国以外の外国弁護士は、その国が相互主義の要件を満たし、かつフランス語でフランス方に関する試験に合格して、新アボカにならなければ、フランス国内で法律事務を行うことを不可能とした。

 したがって、フランスにはわが国の外国法事務弁護士のような制度は存在しない。
 しかし、さすがに既に参入していた外国弁護士・外国公認会計士を排除することはできず活動が認められたため、現在でのフランス国内の(人数で)トップ10の事務所のうち、8つは外国ローファーム又はビッグ・フォー(4大国際会計事務所)系列の法律事務所となっている。

 ここで、私(坂野)が思うのは、やはり英米系巨大ローファームは、儲けるために進出してくるのだということである。仕事内容によっても異なるため大雑把な単純計算になるが、外国弁護士数百人でフランス弁護士数万人と同じ売上だったということは、巨大ローファームは、弁護士一人あたり100倍のコストを要求していたということだ。

 確かに、英米系巨大ローファームは大企業などを中心に展開する可能性が高く、巨大ローファームがどれだけ稼ごうと一般の国民の方々には関係ない、と思われるかもしれない。
 

しかし、仮に巨大ローファームの売上が大企業中心であったとしても、大企業も営利企業である以上、そのリーガルコストに自腹を切ってくれるわけがない。結局製品やサービスに転嫁して、そのコストを上回る収益を上げざるを得ないのだ。つまり巨大ローファームが高額なリーガルコストを要求することは、巡り巡って国民の生活に影響してくるのである。

 フランスの方法は、国際化の流れに逆行しているとの批判もあるかもしれないが、それで特に不都合が生じているとの話は、少なくとも私は聞いたことはない。

 次に金子会長の分析は、わが国の外国法事務弁護士の現状、混合法人の制度設計、日弁連・各弁護士会のなすべきこと、についてなされるが、それについてのご紹介は少し時間を頂いてから行おうと考えている。
(続く)

進みつつある司法占領?金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその6

2 国際化した弁護士会(ドイツの状況)

 ドイツは、かつては日本と同じような弁護士制度を有していたが、欧州域内の市場統合、東西ドイツいの併合、東欧の自由化等の環境激変により、英米のローファームに対抗してこれらの新しい市場に進出する必要から国際化するために、弁護士への規制を緩和した。

 その結果、ドイツ国内の法律事務所の国際化は大きく進展したものの、ドイツ国内の大事務所の殆どが英米系ローファームの傘下に組み込まれることになった。
 

 日弁連宮﨑前会長は、国際競争力を高めるために弁護士の急増も止むなしと受け取れる発言を、大阪弁護士会春秋会の会報でされていたようだが、私には、相当前からドイツでは、タクシードライバーをしなければ食っていけない弁護士も急増していると、報道されていた記憶がある。経済的に疲弊しきった弁護士達が溢れたドイツに、英米系ローファームが参入するのだから、英米系ローファームがドイツの法律事務所を傘下に組み入れることは極めて容易だったはずだ。

 英米系ローファームの参入により、ドイツの企業・一般国民のリーガルコストがどれほど上昇したか、どれだけ英米系ローファームがドイツ国民の人権に役立つ活動をしているか、聞いてみたいところだが、私の知る限りそのような資料・調査はないようだ。

 しかし、IP(インターナショナル・パートナーシップ)の下で、儲けるために進出してきた英米系ローファームに組み込まれたドイツ人弁護士が、ローファームの儲けを中心に措かないでどれだけ、ドイツ企業のため、ドイツ人の人権擁護のために働けるのか、また仮にドイツ人のための人権擁護活動が、現在可能であっても、将来的に英米系ローファームがその人権活動を容認してくれる保証はあるのか、私の疑問は尽きない。

(続く)

※この連載は、大阪弁護士会会長金子先生のレジュメをもとに、私個人の意見を含めて記載しております。金子先生のレジュメは、この連載終了後に掲載する予定です。

進みつつある司法占領?金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその5

 金子会長は、国際化した弁護士会につき、イギリス・ドイツ・フランスを分析対象に挙げている。

① イギリスの場合~弁護士自治の崩壊

 弁護士数も多く、世界に多くのローファームを進出させているイギリスにおいて、2007年の法律サービス法によりついに、ソリシター(事務弁護士)の弁護士自治が廃止された。
イギリスでは、伝統的業務を扱う「ハイ・ストリート・ソリシター」(日本でいうところの町弁護士)と、企業法務を中心に扱いグローバルに展開する「シティ・ファーム・ソリシター」(企業弁護士)との間に、先鋭的な2極化現象が生じたのだそうだ。

1991~1992年時点では、全事務所の1%にあたる大事務所だけで全ソリシターの売上の41%を稼ぎ、全事務所の80%を占める中小事務所は売上の僅か25%に止まっていたそうだ。
企業弁護士の関心は、規制緩和や国際競争力の維持・増進に集中し、弁護士会(ロー・ソサエティ)の介入を嫌うため、弁護士会に無関心であり脱退したり、加入しない者も増加していたらしい。
この町弁と企業弁護士の対立は先鋭化し、ついに2007年にソリシターの弁護士自治は失われた。 

ここで、今般の日本の司法改革は、誰のための司法改革であったのかということを、私(坂野)は思い起こさずにはいられない。
たしか、国民・市民の社会生活上のための司法改革であり、だからこそ、「弁護士は社会生活上の医師である」とのスローガンが唱えられていたのではなかったか。だとすれば、国民の間に入っていくべき町弁について、町弁がきちんと活躍できるよう、国民の皆さんが町弁に依頼しやすくなるように制度を構築する必要があったはずだ。しかし現実は、町弁に依頼しやすくなる制度は殆ど準備されず、弁護士数の激増だけが実現しているのだ。

 また、イギリスのように弁護士が弁護士自治を失えば、国家や国家権力に比肩する力を持つ大企業と、個人が、対等に戦う土俵自体の存在が危機に瀕することは、おそらく間違いないだろう。極論すれば、国家相手に訴訟を提起する弁護士の資格を全て剥奪してしまうことも、弁護士自治を奪えば可能となるのだ。

 まだ、そのような極端な弊害が出ているとの分析まではなされていないが、そういう可能性があり得る制度に変更されたということは、司法の瓦解につながるのではないかという危惧を覚える。

いたずらに、欧米をまねて欧米並みに弁護士を増加させることは、本当に国民・市民のためになるのか、それとも企業の活動のみ自由にする傾向に拍車をかけることになるのか、日本の司法改革の推進者自体が明確に自覚しているのかどうか、私には分からない。

ただ、欧米の弁護士制度について、その制度で本当に良かったという、欧米の国々での国民の声はあまり聞かれないように思う。むしろ、法律家は悪しき隣人だという、弁護士などに対する批判的な論調が主であるように感じられることは、おそらく間違いではないように思う。(企業ですら、欧米ローファームの要求する高額なリーガルコストに辟易しているのが本音ではないだろうか。)

金子会長の分析は、次にドイツ・フランスについても及ぶ。(続く) 

※この連載には、金子会長のレジュメを紹介しつつ、私、坂野の個人的意見も含まれています。金子会長のレジュメに関しては、連載最終回にご紹介しますので、あしからずご了承下さい。

KOKIA~「ありがとう」

 ふとしたことから、この曲を知った。

 ピアノソロで始まるイントロから、暖かさに満ちた穏やかな曲が続いていく。暖かさでは不十分か。癒しというほど高慢でもない。敢えて言うなら、こちらの気持ちを穏やかにするその曲に込められた想いは、暖かさというよりもむしろ「許し」に近いかも知れない。

 その曲に、透き通ったKOKIAのボーカルが柔らかく重なり、溶け込んでいく。

 どういうわけか、この曲に合いそうな光景として、私には二通りの光景が浮かんだ。

 一つは、人里離れた山の中にひっそりと、しかし堂々と時代の流れに耐えてきた桜の巨木。その誰も知らない木の下で、少し冷たい花冷えの風に吹かれつつ、巨木に背中を預け、桜吹雪が月明かりに映え、果てしなく降り続くのを、じっと眺めている光景。

 もう一つは、何もない、何もかも失われてしまった荒野に一人佇む者を、別の世界から静かに見つめている光景。

 全く違う光景なのに、私の中では、このいずれもが、この曲に相応しいような気がした。

 人がこの世を去るときに、残される者、旅立つ者、そのいずれにとっても最も心残りになるかもしれないことは、大切な相手に、大事に思う人に、感謝の気持ちを伝える機会を持ち得なかった場合ではないのだろうか。

 もしも時間が戻せるものならば、一言でいい、感謝の気持ちを伝えたかった。

 「ありがとう」・・・・と。

 そういう想いを持つ人、かつてそういう想いを抱いたことのある人には、是非聞いて頂きたい名曲である。

進みつつある司法占領?金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその4

 では、他の国と日本ではどのような考え方の違いがあるのだろうか。

 諸外国に対し大手ローファームを進出させているイギリスを例にとって事情を見てみると、次のような特徴が挙げられるそうだ。
① 法律事務所のパートナー(共同経営者)には、非弁護士(例えば経営の専門家)もなれる。
② 法律事務所を弁護士でない者が所有できる。
③ 法律事務所を株式会社の形態で運営でき、もちろん上場もできる。
④ MDP(異業種間共同経営)も認められる。

 以上のように、法律事務所が利益を追求するには適した特徴が認められている。特に、株式会社形態という利益追求の最高度を極める結社の形態で、法律事務所を運営できるのであれば、その法律事務所の目的はただ一つ、利益の追求になり、それ以外の目的は考慮されないだろう。
 つまり、弁護士業を完全に金儲けの手段として使うための制度が整っているということだ。
 

 最近では、イギリスソリシター(事務弁護士)規制当局は、2008年12月に、依頼者の同意がなくても同じ事務所内で、情報遮断措置をとれば、同一案件の相手方を代理することができるし、守秘義務違反にもならないという提案をしているそうだ。

 つまり、AさんとBさんが土地の境界で争っているときに、P法律事務所のX弁護士がAさんを代理し、同じくP法律事務所に属するY弁護士がBさんの代理をしても(情報遮断措置がとれれば)良いではないか、という提案である。
 しかし、情報遮断措置が脆弱なら、一方の弁護士が相手の弁護士のパソコンに侵入し保持している証拠を盗み見て、自らに有利に訴訟を行うことが可能になる。もっとひどい事態を想定すれば、X弁護士とY弁護士がつるんで、お金持ちのAさんを勝たせて、Aさんから多額の報酬をもらって、事務所全体でがっぽり儲ける訴訟を行うことすら可能になってしまう。

 このような、イギリスの弁護士の倫理が、紛争解決の最後の手段である司法において相応しくないことはいうまでもないだろう。当事者が一個人であれ、大企業であれ、法律の名の下に平等に扱われるべき場所が司法だからだ。

 日本の弁護士は、弁護士法1条により「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を目的と定められている。弁護士会も強制加入団体であり、弁護士倫理、行動規範については司法を担う一翼としての矜持をもった制度設計がなされている。このように、日本の弁護士・弁護士会とイギリスの弁護士・弁護士会とでは、その生まれ育った土壌からして違ってきているように私は思う。

 金子会長の分析は、次に国際化の未来について行われる。(続く)

進みつつある司法占領?金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその3

 すでに、大手外国法律事務所は、日本にも外国法事務弁護士の派遣を開始しており、2007年度のデータでも、規模から見た世界の100大法律事務所のうち、日本に事務所を置くもの13、日本の弁護士と外国法共同事業を行っている事務所は22存在する。

 また、同じく2007年度データによると、年収別でみた世界の100大法律事務所のうち、日本に事務所を置くもの10、日本の弁護士と外国法共同事業を行っている事務所は20存在している。
 その殆どが英米系のローファームであるが、日本における業務解禁に向けての下準備は着々と進行中というところだと思われる。

 その場合、当該法律事務所の経営はIP(インターナショナル・パートナーシップ)によって行われるが、外国法律事務所によって支配される可能性が高いことは既に述べたとおりである。外国にいる外国弁護士がいかに弁護士としてあるまじき行為をとるとしても、日弁連が懲戒することはできないので、結局、外国ローファームの主張が野放し状態で日本国内にあふれかえる可能性が出てくるだろう。
 弁護士の倫理は国によって異なるため、IPにより経営される場合、日本の弁護士倫理を日本の法律事務所が貫徹できない場合が十分に考えられるのだ。

 また、イギリス及びアメリカの多くの州では弁護士会への加入すら義務でないところもあって、英米の弁護士を英米の弁護士会が監督してくれる制度が整っているわけではないようだ。特に弁護士を悪しき隣人呼ばわりすることすらある、英米での弁護士倫理が、日本において、果たしてどれだけ倫理としての意味を持つのか私には分からない。

 現在の日本においては、弁護士は弁護士法3条・72条により法律事務の独占が許されており、かつ弁護士法27条により弁護士以外の者との提携は禁止されている。したがって、IPは現状の弁護士法に違反した違法なものである(日弁連見解)。

 以上のとおり、IPを前提とする外国の弁護士制度とIPを認めない日本の弁護士制度とはそもそも、基盤が違っているのである。

 次に金子会長の分析は、イギリスを例にとって、弁護士に対する考え方の違いについて分析を進めて行かれる。

(続く)

進みつつある司法占領?~金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその2

 IPによる、外国巨大ローファームによる日本の法律事務所支配について、特にどうだって良いという意見の方もおられるだろう。しかし、外国の巨大ローファームは、慈善事業で日本に進出してくるわけではない。あくまでビジネスのため、儲けるためだ。

  「専門家が、正義を失いかつて弁護士と医者、会計士は自らを公的責任を伴う民間プロフェッショナルとみなしていた。自分の事務所のためだけでなく、社会全体にとって善か否かを考えながら責任感を持って行動していた。弁護士は、時間を浪費する訴訟ややみくもな買収を考え直すよう依頼人に助言することさえあった。今や弁護士だけではなく、あらゆる専門家が変わってしまった。」とニューズウイーク紙(日本版)で嘆かれているように、現在のアメリカの弁護士は、時間を浪費する訴訟や、闇雲な買収であっても、儲けのためなら依頼者に勧める現状すらあると思われる。

 したがって、如何に日本のパートナーが、闇雲な買収は企業の力を逆に削いでしまうと考え、見直すよう企業に進言しようとしても、正義を失い儲け主義に染まってしまった可能性のある英米系弁護士からノーといわれれば、従わざるを得ないのだ。

 金子会長の分析によると、2007年度売上1位のクリフォード・チャンスは、弁護士数2654名で、売上高およそ22億1000万ドル、当時のドル円レートである1ドル=91円換算で、2002億9100万円である。つまり、クリフォード・チャンスというローファーム一つに、2000億円ものリーガルコストの支払がなされているのだ。

 これに対し、平成21年度の日本司法支援センターの資料を見ると、民事法律扶助事業経費として支出予定の予算額は(全国民に対してのものだと思われるが)わずか139億8400万円である。弁護士数2654名のクリフォード・チャンスの売上の約15.75分の1の予算しかつけられていない。

ちなみに、クリフォード・チャンスは総売上1位のローファームであり、弁護士一人あたりの売上1位は、総売上48位のキャドワルダー、ウイッカーシャム&タフトNYで、一人あたりの売上額(年収)約1000万ドル(9億1000万円)だ。

 いかに、英米系ローファームが高額なリーガルコストを要求しているかは、これだけでも一目瞭然だ。

 裏を返せば、現在の日本の法律事務所が如何にリーズナブルな値段で、リーガルサービスを国民に提供しているかがお分かり頂けるだろう。海外に進出した企業の方なら、どれだけ日本の法律事務所が安価なリーガルサービスを提供しているか、十分ご存じのはずだ。

 自由競争を推し進めた、英米のローファームの高額収益に鑑みれば分かるが、自由競争を進展させすぎた結果、リーガルコストは、トータルでは、むしろ増大するのだ。

 社会正義など考えることもなく、弁護士業を儲けの手段としてのみ捉え、法外に(しかし、彼らにしては当然の)高額なフィーを取る英米系ローファームの進出が果たして良いことなのか、私には分からない。

 次に、海外ローファームの日本への進出について金子会長の分析は続く。

進みつつある司法占領?~金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその1

 平成22年度大阪弁護士会第1回常議員会において、前年度日弁連理事会で議論されていた混合法人問題について、日弁連理事として参加されていた、金子会長からの報告がなされた。

 非常にショッキングな内容でもあり、常議員会終了後の帰りのエレベーターの中で、「今日はホラー映画を見せられたようだ」という感想を述べておられるベテランの先生もおられた。
 以下、金子会長作成の混合法人に関する報告レジュメの内容を、私の意見も交えてご紹介していこうと思う(最後に金子会長のレジュメを公開させて頂くつもりです)。

 まず混合法人とは、法人として、本・支店を通じて日本国中の日本法の事件、弁護士・弁護士法人の取り扱う事件を受任できるものとして設計されているようだ。つまり、上記のような設計で混合法人が認められたとすれば、英米系の大手ローファームの進出により一気に日本国内の法律問題が混合法人にさらわれる可能性があるばかりか、その結果、日本の多くの法律事務所が、英米系ローファームの傘下に入らざるを得なくなる可能性がある、と受け取って良いと思う。
 したがって、混合法人は国内問題であるし、当然支店を設けることができることから、日弁連だけでなく各弁護士会で真剣に考える必要のある問題だということができそうだ。

 金子会長の報告レジュメは、次に世界の巨大ローファームを概観する。

 2007年の資料によると、弁護士数から見た世界の100大ローファームは弁護士数3335名のベーカー&マッケンジー・インターナショナルを筆頭に、100位のSJ・バーウィン・ロンドン(540名)まで、84%がアメリカ・イギリスのローファームである。その他は、オーストラリア6%、カナダ5%、スペイン・フランス各2%、オランダ1%の比率であるが、圧倒的に英米のローファームが多いことが分かる。

 巨大ローファームの法律事務については、国際共同経営(インターナショナル・パートナーシップ、IP)が一般的になっているとのことである。

 IPとは、弁護士が国境を越えて外国弁護士との法律事務所の共同経営を行うことである。事務所の経営は、重要事項に関し、結局パートナーの多数決で決定されるため弁護士数の多い国の弁護士が事実上そのローファームの重要事項の決定権を握ることになる。つまり、500人の外国ローファームと50人の日本法律事務所がIPを組む場合は、仮におのおの半数がパートナーになるとすると、250:25で重要事項に関して外国ローファームの意向が通ることになり、まさに外国の法律事務所による日本の法律事務所支配が行われることになる。(このことに、ずいぶん前から警鐘を鳴らしていた小説として「司法占領」鈴木仁志(弁護士)著がある。)

(続く)

明日から新年度常議員会

 明日から、大阪弁護士会新年度の常議員会が始まります。今年度は、金子会長をトップとする執行部のもと、明日の第1回常議員会を皮切りに、年間24回の会議が予定されています。

 おそらく、第1回は、常議員会議長・副議長の選出があります。

 昨年の常議員会で私の見たところ、会派の談合で既に議長・副議長候補者が決まっており、その候補者について「○○さんが適任だと思います」という役目の人も決まっているようです。そして、その提案があった瞬間「(一斉にほぼ全常議員から)異議な~し!」と声が出て、誰も異議を差し挟むことなく、推薦する役目の人が推した人が議長・副議長に決まる、出来レースになっているようです。

 かといって、立候補者が乱立して議長がいつまでたっても決まらないのも困るので、現実的には有り難い裏制度になっているのかも知れません。

 おそらく会派選出の常議員の方々は、会派の縛りがあると思われますが、幸い私は(たった一人の)無所属の常議員です。

 常議員会の正・副議長の判断による非公開案件(そもそもプライバシーに関する人事案件を除き非公開案件があることが正しいのかという疑問もありますが)を除いて、会員の皆様に伝えるべきと思われる情報があれば、何らかの形でお伝えできないかと考えています。