進みつつある司法占領?~金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその1

 平成22年度大阪弁護士会第1回常議員会において、前年度日弁連理事会で議論されていた混合法人問題について、日弁連理事として参加されていた、金子会長からの報告がなされた。

 非常にショッキングな内容でもあり、常議員会終了後の帰りのエレベーターの中で、「今日はホラー映画を見せられたようだ」という感想を述べておられるベテランの先生もおられた。
 以下、金子会長作成の混合法人に関する報告レジュメの内容を、私の意見も交えてご紹介していこうと思う(最後に金子会長のレジュメを公開させて頂くつもりです)。

 まず混合法人とは、法人として、本・支店を通じて日本国中の日本法の事件、弁護士・弁護士法人の取り扱う事件を受任できるものとして設計されているようだ。つまり、上記のような設計で混合法人が認められたとすれば、英米系の大手ローファームの進出により一気に日本国内の法律問題が混合法人にさらわれる可能性があるばかりか、その結果、日本の多くの法律事務所が、英米系ローファームの傘下に入らざるを得なくなる可能性がある、と受け取って良いと思う。
 したがって、混合法人は国内問題であるし、当然支店を設けることができることから、日弁連だけでなく各弁護士会で真剣に考える必要のある問題だということができそうだ。

 金子会長の報告レジュメは、次に世界の巨大ローファームを概観する。

 2007年の資料によると、弁護士数から見た世界の100大ローファームは弁護士数3335名のベーカー&マッケンジー・インターナショナルを筆頭に、100位のSJ・バーウィン・ロンドン(540名)まで、84%がアメリカ・イギリスのローファームである。その他は、オーストラリア6%、カナダ5%、スペイン・フランス各2%、オランダ1%の比率であるが、圧倒的に英米のローファームが多いことが分かる。

 巨大ローファームの法律事務については、国際共同経営(インターナショナル・パートナーシップ、IP)が一般的になっているとのことである。

 IPとは、弁護士が国境を越えて外国弁護士との法律事務所の共同経営を行うことである。事務所の経営は、重要事項に関し、結局パートナーの多数決で決定されるため弁護士数の多い国の弁護士が事実上そのローファームの重要事項の決定権を握ることになる。つまり、500人の外国ローファームと50人の日本法律事務所がIPを組む場合は、仮におのおの半数がパートナーになるとすると、250:25で重要事項に関して外国ローファームの意向が通ることになり、まさに外国の法律事務所による日本の法律事務所支配が行われることになる。(このことに、ずいぶん前から警鐘を鳴らしていた小説として「司法占領」鈴木仁志(弁護士)著がある。)

(続く)

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