「神様のパズル」 機本伸司著

 宇宙は無から生まれた。

 それが正しいとするなら、人間にも宇宙が作れるのではないか。だって、無なんて、どこにでもあるんじゃないのだろうか。

 突拍子もない聴講生の言葉から、落ちこぼれの理学部学生の僕と、人工授精で誕生した天才美少女科学者とがディベートでチームを組むことに。

 天才美少女は、できる、というのだが・・・・・。

 第3回小松左京賞を一瞬で確定させたと噂されるこの本は、映画化もされているそうです。

 内容は、さすがに宇宙開闢の秘密に迫ろうというものでもあるため、相当難解な理論が出てくるのは仕方ありません。しかし、詳しい理論内容については、分からなくても大丈夫。その点はとても上手く、流してあり、理科系の知識がない人でも十分分かる内容になっています。

 あまり内容に深入りした説明をしてしまうと、まだ読まれていない方の興を削ぐかもしれませんので、踏み込みませんが、私の第一印象だけ申しあげますと、「やられた!こんなSFもあったんだ」というものでした。

 私が小さい頃に、疑問に思っていた「オルバースのパラドックス」にも触れられており、私と同じ疑問を抱いていた先人がいたことに、言いようのない感慨も覚えました。

 思っていたよりも軽く読めますので、お正月休みにちょっと、読書方面に気分が向いた方にお勧めします。

ハルキ文庫 680円(税別)

 ※当職の今年のブログは、少し早めですが、本日で終了します。来年は、もう少し読みやすく、また面白いブログを目指します(?)ので、当職と当ブログをよろしくお願い致します。皆様、良きお年をお迎え下さい。

ホンダ、F1復帰の噂

 自動車専門誌によると、ホンダがF1に復帰する可能性があるそうだ。

 かつて、ホンダは、高回転VTECエンジンや、CR-X、TYPE-Rシリーズ、NSXなどスポーツ路線のイメージで売っていた。現在のカーラインアップは、スポーツ路線なのは、シビックタイプR、同ユーロ、CR-Zくらいで、NSX・S2000、アコードユーロRもすでにない。

 私も、かつては、軽戦闘機のように爽快に峠道を走り抜ける、ホンダのR系セダンに乗っていたが、今は、ホンダ車ではない。

 F1復帰の可能性とともに、3~4年後にNSX復活の動きもあると聞く。

 NSXが復活すれば、是非乗ってみたい。期待して待ちたいものだ

 ・・・・・・・・年末ジャンボが当たることが前提になってしまうのだけれど。

弁護士会の運営

 本日、大阪弁護士会の常議員会に出ていたのですが、討議事項として、弁護士会職員さんの機構改革を行う件について、議題が出されました。

 理由は、弁護士会職員さんの残業が相当時間になってきている方もいるそうなので、機構を見直して、効率よくするとのことでした。

 確かに、法曹人口問題PTを担当されていたN川さんのように、きわめて能力の高い職員さんもおられますし、機構見直しで効率よくなるならそれでいいのですが、それにかかる費用が問題です。ざっとみて1000万円です。

 若手弁護士の負担を考え会費の軽減をしている状況で、この負担を会員にお願いするのは、相当強固な理由がいるでしょうし、残業が多いのは委員会がたくさんありすぎることも理由の一つであるように思います。

 委員会についても、同じような業務をいくつかの委員会で行っているような例も散見されるのですから、一度事業仕分けでもして、本当に必要な委員会かどうか明確に判断する必要があるように思います。これはあくまで私の印象ですが、これまで、弁護士会は必要だからという理由さえあれば、費用対効果など全く考えずに、どんどん委員会などを設立してきてしまったのではないでしょうか。

 確かに弁護士が余裕ある生活が十二分にできていた時代であれば、弁護士会費を値上げすれば弁護士会の経費は捻出できました。しかし、弁護士数が3万人を超えた今の時点で一括登録時点において弁護士志望者の10%以上が職に就けていません。若手の苦境もよく報道されるようになっています。

 今すぐ、司法試験合格者を1000人にしても、約5万人にまで弁護士は増加します。そのとき、果たして、月額5~7万円という、べらぼうに高額な弁護士会費を十分支払うことのできる弁護士さんがどれだけいるのでしょうか。

 弁護士会職員の機構を改革することも必要ですが、その前に弁護士会の機構をシンプルにスリムに改革することの方が先のような気もします。どんな企業でも先を見据えて、今を変えていきます。

 どなたか強力なリーダーシップをとって、弁護士会の機構改革をしてくださらないでしょうか。このままでは、基本的人権を擁護するという理想のために、身銭を切って焼け太ってしまった弁護士会の機構を弁護士自身が支えきれなくなる日が早晩やってくるのではないでしょうか。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

弁護士就職状況

 これまで弁護士は、2回試験に合格し司法修習を終了すると、事前に申請していた日弁連と各弁護士会へ一括登録され、弁護士となるのが普通だった。

 逆に、一括登録時点で登録していないと、ひょっとして2回試験に合格しなかったのかなどと邪推される可能性があったりしたものだ。つまり、これまでは、弁護士になるには一括登録するのが常識的な扱いだったと考えても良いと思う。

 ところが、今年新63期司法修習生の一括登録時点において、弁護士登録した人数は1,571名のようだ。ちなみに2回試験受験者数2,039名、合格者数1,949名となっている。

 もちろん、2回試験合格者から裁判官・検察官になる人もいるが、新62期の実績では、裁判官99名、検察官67名の採用に止まっているから、昨年並みに裁判官・検察官が任命されると仮定して、1949-99(裁判官)-67(検察官)-1571(弁護士)=212名が、一括登録時点で弁護士にも裁判官にも検察官にもなれていない可能性がある。

 ただ、12月の中旬以降に登録してもすぐに年末年始になるから、事務所の方針で1月登録をするよう指示されている人も相当数いるかもしれない。そうであったとしても、この数は異常だと私には思える。

 なお、共同通信が報道したところによれば、次の通りである。

(記事引用開始)

企業内弁護士に9割が消極的 日弁連調査
 会社の中で弁護士としての専門知識や経験を生かす「企業内弁護士」の採用について、企業の9割以上が消極的なことが17日までに、日弁連の調査で分かった。

 企業コンプライアンス(法令順守)を支えるなどとして採用拡大をもくろむ日弁連に対し、企業側が高額な報酬や使い勝手の悪さを理由に背中を向けた形。

 調査は昨年11月、上場企業を中心に5215社に実施。1196社から回答があり、このほど発行した弁護士白書で紹介している。

 うち、企業内弁護士を採用しているのは47社で、「募集中か採用予定」の25社を合わせても1割以下にとどまった。

(引用ここまで)

 弁護士過剰の現状では、雇用しようと思えば雇用できる状況が整いつつあるはずだ。確か、司法制度改革の頃、弁護士の数を増やせと言っていたマスコミ・経済界の一部の方は、経済界でも弁護士が不足しており欲しくてたまらないと仰っていたように思うのだが、 その方々は、一体どこへお隠れになられたのであろうか??

 隠れてばかりいないで、お言葉通り、弁護士を山ほど雇用してあげて欲しいものだ。もちろん、マスコミに対しても同意見だ。報道関係者が言行不一致だと信頼なくしちゃいますよ。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

映画 「Space Battleship YAMATO」(スペース・バトルシップ・ヤマト)

 「無限に広がる大宇宙」の台詞で始まり、

 「ヤマトよ、地球は君たちの帰りだけを待っているのだ。地球滅亡の日まであと○○○日」の台詞で終わるのが、TV版宇宙戦艦ヤマトだった。火星での雪、木星浮遊大陸、冥王星反射衛星砲、バラン星の戦い、七色星団でのドメル将軍との戦いなど、様々な印象に残る激闘を突破して、二重惑星ガミラスとイスカンダルに到達。ガミラスの捨て身の攻撃を、沖田艦長の海底火山脈を波動砲で打ち抜くという奇策で勝ち抜き、廃墟と化したガミラス星で、「我々は戦うべきではなかったのではないか、許し合うべきだったのではないか」と苦悩するヤマト乗組員たち。

 そのTV版をリアルタイムで見て、さらに、映画版「さらば宇宙戦艦ヤマト~愛の戦士たち」で滂沱の涙を流した経験を持つ私としては、実写でヤマトをやるなんて、ドエライことになっているだろうと思いつつも、見逃すだけの勇気も持てなかったというのが正直なところだ。

 今回の実写版では、沖田艦長を山崎努が演じている。ちょっと迫力不足で、白い髭がわざとらしい。しかも、ヤマトが地球を発進したら、あっという間に病気が悪化、キムタク演じる古代進に、さっさとしかも強引に艦長代理を渡してしまうし、見ているこっちが「いい加減にしろ~いボス」と文句を言いたくなってしまう。

 何よりヤマト自体が地球防衛軍という軍隊に所属する宇宙戦艦であるはずなのに、乗組員たちの緊張感はほとんどゼロ。酒なんか飲んでるんだから、これでほんとに地球を救うつもりなのか、不思議に思えてしょうがない。

 本来生活班長であった森雪は黒木メイサ。第一艦橋でレーダーを担当していたはずだが、実写ではなんと戦闘機乗りになっている。違和感山盛りだけど、まあこれはこれでありかも。ただ、森雪を救うためにヤマトを危機に陥れる古代の行動は、営巣にぶち込まれるくらいで済まされる行動じゃないと思うぞ。

 船医の佐渡酒造先生役は、高島礼子。猫のみーくんと酒瓶を抱いているところはそっくりだが、ちょっと怪しい雰囲気が欠けている。

 一方、キャスティングとして、まあ許せるのは、古代進役のキムタク、徳川機関長役の西田敏行、真田工場長(技術班長・技師長)役の柳葉敏郎というところか。

 さて、ストーリーの方だが、「愛の戦士たち」で初登場だった空間騎兵隊の斉藤がいたことから、うすうす予想はついていたが、TV版をメインに「愛の戦士たち」の感動場面を無理矢理押し込めて、ごっちゃごちゃにして、駄目にしたようなもの。

 唯一ヤマトのCGは、格好良かったが、エンディングの「ヤマトより愛を込めて」(沢田研二)とともに、日本中を感動の渦に巻き込んだ「さらば宇宙戦艦ヤマト~愛の戦士たち」には、到底かなわない。

 まあ、どんな映画になっていたとしても「ヤマト」の最期を看取るつもりだったので、 そう思えば腹も立たなかったが、全くヤマトを知らない世代の人では、感涙にむせぶ方もいたようなので、知らぬが仏で見に行くのもありかもしれない。

大阪弁護士会~法曹人口問題・意見交換会

  先日、大阪弁護士会の法曹人口問題意見交換会が、行われました。

 前日弁連会長の宮﨑先生、次期大阪弁護士会会長と目されているN先生など、約40名程度の先生方が集まり、日弁連法曹人口政策会議の議論の状況報告当がなされたあと、フリートーキング形式で、意見交換が行われました。

 いわゆる弁護士人口激増路線の方もいらっしゃいましたが、私が最も問題だと思ったのは、若手弁護士の参加が少なかったことです。もはや、弁護士会や日弁連の施策は勝手にやってください、どうせ私達に良いことなんてないのでしょうし、という若手が多くなってきているのではないかと感じられます。

 しかし、弁護士会のエライさん達にはその事実は余り見えていないように思えました。

 なお、私も発言させて頂いたのですが、私のところには、仙台で行われた市民シンポジウム「弁護士は多いの?少ないの?市民の井戸端会議~市民の求める弁護士像と弁護士人口~」の情報が入っていたので、そこでの仙台青年会議所副理事長(仙台の中小企業の意見を代表される方と考えて良いかと思います)の方のご発言を、概ね以下のとおり紹介させて頂きました。

・中小企業にとって弁護士増員は魅力のある政策ではない。中小企業の社長にとって弁護士など知り合う機会はいくらでもある。何かあったときに頼めれば十分である。それよりも弁護士が増えたことで訴えられる危険が増える方が心配だ。

・TVCMなどでマーケットを探している弁護士を見ると違和感を感じる。過剰な権利主張がまかり通る世の中にして、社会が良くなるのだろうか。バランスが大事である。

・お金がなくて相談できないとか、弁護士費用が高いというイメージだけで縁遠くなっているという問題は、人数の問題ではなく制度の問題として切り開くべきことではないか。

・市民はバッジをつけていれば一人前の弁護士だと思う。わらをもつかむ思いで相談するのに全然ノウハウがないということでは困る。数を増やすのであれば制度をきちんとしてからにして欲しい。

・市民に弁護士の質は分からない。「格付け」のような見える指標を出してもらって選べるようにするか、実務に出す前にきちんと教育するか、どちらかにしてもらいたい。

・困っている人が相談しやすい社会は良いと思うが、弁護士がマーケットを探してアピールしてまわるのではなく、受け身の姿勢でいて欲しい。

 わたしから見れば、この方の御意見は、現実を踏まえた、率直な意見だと思います。

 一方、日本では中小企業が数では圧倒的大多数を占めていますが、大新聞の論説委員は、上記と異なり、とにかく弁護士を増員することが国民の意見であると言い張ります。果たして本当にそうなのでしょうか。

 意見交換会で、藤井先生がご指摘されていましたが、弁護士増員に関して大新聞が世論調査して、その結果を公表したことは、おそらく一度もないそうです(世論調査くらいしているかもしれませんが、少なくともその結果を公表したものはないというお話でした)。

 唯一、ヤフーのネット調査の結果が出たことがあったそうですが、弁護士増員に賛成約1万人に対して、弁護士増員反対の意見は約2万人いたとのご記憶だそうです。

 大新聞の社説による世論の誤導、弁護士増員がなければ立ちゆかない法科大学院、その法科大学院から広告料をもらって潤う大新聞、その影で制度に振り回され減少していく法曹志願者、司法の人材枯渇、なんだか壮大な詐欺的な何かが行われているような気がしてなりませんね。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

合格の瞬間

 本日、知り合いの方が、税理士試験に合格された。実力がありながら、これまで、運に恵まれなかったのだ。しかし、今日だけは美味しいお酒が飲めるだろう。おそらく肩の荷が下りたような気がされているのではないだろうか。

 私も、司法試験は、論文試験で何度もつまずき、苦節10年だったので、その方の気持ちがよく分かるつもりだ。当時の司法試験は、論文試験に合格すれば口述試験は95%合格するといわれていたため、まさに論文試験が天王山だった。しかも、丙案という極めて不公平な若手優遇措置がとられていた頃の話だ。

 丙案導入前から、あと一歩(論文試験評価A~当時は1000番以内)のところで合格を逃してきていた私は、合格発表が張り出される京都地検の掲示板へ、その年は、発表時刻より少しだけ時間をずらして、発表を見に行った。

 表向きの理由は混雑の回避だが、正直いえば、勉強仲間が合格しているかもしれないところで、また自分が不合格であることを確認してしまうかもしれないという恐怖もあったからだ。この辛さは体験してみないと分からないし、何度も体験すればするだけ、どんどん辛くなる。

 その年、私は、発表時刻より20分ほど遅らせて、発表を見に行ったはずだ。発表直後の熱気が少し冷めた頃だが、多くの受験生が未だ掲示板に群がっているなか、受験生の肩越しに、掲示板を見た。

 探すまでもなく、私の番号と、名前が目に入った。

 このように、あれだけ苦労した論文試験だったが、合格発表の瞬間だけは実にあっけなかった。そして、その意味を把握するのに少し時間がかかった。

 次第に何かが、身体の中でわき起こってきて、私は小さくガッツポーズをした。他人に気付かれないようにしたつもりだ。

 これまで、論文試験の発表で嬉しさの余りはしゃぐ合格者を嫌というほど見てきたし、その合格者を横目に、来年の受験が可能か考えながら重い足取りで下宿に向かうことを何度も繰り返してきたから、その当時の自分を考えると、嬉しくはあったが大騒ぎする気持ちにまでは、なれなかったのだ。同時に、次に控えた口述試験をどうしようという不安も頭をもたげてきた記憶がある。

 早く下宿に帰って、口述試験向けて勉強しなくてはと、一旦家路についたが、「まさか、見間違いではないだろうか」という気がしてきて、もう一度自分の名前と番号を確認した。帰宅途中に最初に目に入った公衆電話で両親に報告したことは覚えているが、どの道をどう走って下宿まで帰ったのかについては良く思い出せない。

 その晩、不安になって、もう一度だけ合格しているか、わざわざ夜中に確認に赴き、冷たい風が吹く中、寒々しい蛍光灯に照らされつつ、自分の名前が少し曇ったガラスを通して掲示板の中に消えずに残っていることを確認して、ようやく少し安心した気持ちになったものだ。

 その後口述試験の合格発表は、東京の法務省まで見に行ったが、とにかく、ホッとしたという気持ちしかなかった。司法試験に合格した喜びというよりも、もうあの過酷な司法試験を受験しなくても良いのだという安堵の気持ちの方が強かった。

 現在の新司法試験制度は、法科大学院卒業後5年間に3回しか受験できない(いわゆる三振制)。じっくりと実力を身につけるタイプの人には向かない試験になっている。また、合格するには、相当程度の運も必要だ。3回とも運が向かない人もいるかもしれない。

 私は、法科大学院はもとより、特に三振制は、極めて不合理な制度だと思っている。

 それはともかく、Yさん、本当におめでとうございます。 

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

再告知~大阪弁護士会法曹人口問題意見交換会

日弁連で、法曹人口問題政策会議が開催されていることは既にお話ししたとおりです。その会議の実態をお伝えし、大阪弁護士会の皆様の御意見を伺おうとする意見交換会が下記の通り開催されます。

 案内のチラシをご覧になった方もおられるでしょうが、棚置きチラシのため、ご覧になっておられない方も多くいらっしゃるのではないかと思います。

 日 時  平成22年12月13日(月)  18:00~20:00頃まで

 場 所  大阪弁護士会館12階1203号室

 ちなみに、大阪弁護士会では、新63期修習生の一括登録の受付期限を何度も伸ばしたにもかかわらず、就職先が見つかった修習生の数は、昨年比20%減のようです。このような状況がさらに悪化する危険性もある現状で、一体日弁連の政策会議は何をしているのか、どういう方向を取ろうとしているのか、情報を得るだけでも貴重な会合だと思われます。

 忘年会シーズンであり、ご多忙の折とは存じますが、日弁連での議論がどうなっているのか知りたい方、この問題に関して、日弁連に是非意見を伝えて欲しいとお思いの方など、沢山の方のご参加をお願い致します。

裁判所の機構

 2010年度版、裁判所データブック(財団法人判例研究会刊、税込950円)に目を通してみた。

 裁判所データブックというだけあって、最初に裁判所の組織が明示される。

 例えば、p1で裁判所の種類と数を明示し、p2からの、「下級裁判所及び検察審査会の名称」のコーナーでは、各高裁所在地の地裁・地裁支部・家裁出張所・簡裁などが記載されている。

 不思議に思うのは、その記載されている順番だ。

 東京高裁→大阪高裁→名古屋高裁→広島高裁→福岡高裁→仙台高裁→札幌高裁→高松高裁の順だ。

 地裁や支部の数の多さでの順番ではなさそうだし、アイウエオ順でもない。もちろん北から順番という訳でもない。

 おそらく、エライ順なのだ。

 給与においても、東京高裁長官とその他の高裁長官には月給で10万7000円の差がついている。仮に、高裁長官8人で会議をするなら、最初に会議室に入るのは東京高裁長官でその次は大阪、その次は名古屋、となるのかもしれない。

 かつて、私はある年輩の裁判官と電車で隣り合わせた際に、日弁連の官僚制体質を批判されたが、組織体である以上、裁判所だってそんなところはあるよねぇ。

滅び行く町?

 先週末、久しぶりに実家に帰省した。

 ほぼ1世紀生き抜いた、祖母にどうしても会っておきたく思ったこと、受験を目前にしている甥・姪を励ますことも帰省の理由だった。行事を除いて、ここ1年余り帰省していなかったこともあり、先祖の墓参りもかねての里帰りだった。

 祖母に好物のプリンを届けに実家から原付で、祖母の家まで出かけ、お墓参りをしたあと、小春日和に誘われて、そのまま太地町内を原付で見て回った。懐かしい店、古くからある建物、野球をやった公園、入り浸っていた自転車屋さん、所々の建物は駐車場になり歯抜けのようになってはいるが、何時もと同じ太地町の面影があった。

 だが、私が子供の頃を過ごした太地町とは、何かが、違う。

 いつもと同じ、公園。いつもと同じ路地。

 やはり何かが違う。

 土曜日であるにもかかわらず、子供の姿がどこにも見あたらないのだ。

 私が子供の頃、土曜日は半日しか休みではなかったが、子供の姿は町に溢れていた。ショーウインドウでプラモデルを品定めする男の子、駄菓子屋のくじ引きをするかどうかで悩んでいる女の子、お寺の境内で缶蹴りをする子供達、港で釣りをする子供。お母さんに連れられて買い物に行く途中の女の子。どこかの家からは野球版で盛り上がり歓声を上げる男の子の声も聞こえてきたし、公園でははしゃぎ回る子供達がいたはずだ。

 私の記憶では、町のいたるところに子供がいたように思う。

 それが、土曜の午後2時頃なのに、全く子供が見当たらないのだ。確かに、少子高齢化だし、私が子供の頃よりも子供の遊びが多様化し、室内でゲームなどをして過ごす子供も増えたのだろうが、余りにも子供の影が薄すぎる。町を歩いているのは、脚が弱って、手押し車を押しつつ歩くお年寄りが幾人かいるくらいだった。

 結局町の主要な通りを、原付で見て回ったが、家の玄関で所在なげにしている男の子1人と、小学校の校庭で遊んでいる数人の子供達以外に、ついに子供を見つけることが出来なかった。

 あれだけいた子供はどこへ行ったのだろう。

 福永武彦は自著の小説「廃市」の冒頭に、「さながら水に浮かんだ灰色の棺である」という北原白秋の言葉を引用していた。

 冬の中休みのように暖かい小春日和の青い空と、青い海に挟まれ、妙に明るい日差しに包まれた太地町を、かつて見た元気な子供達の姿を探してさまよいながら、私は、白秋の言葉をもじっていうなら、「さながら、波に打ち寄せられた明るい蒼色の棺である」という思いを、故郷太地町に関して否定できないでいた。