今からでも間に合う(かもしれない)司法試験サプリ(6)~司法試験で問われているもの2の4

※法的三段論法を踏まえる

 よく法的三段論法といわれるが、論者によって多少のニュアンスの違いはあるように見える。
 しかし、大枠は変わらないと思う。
 大前提・・・・法律の解釈
 小前提・・・・事実認定
 結論
 という、判決でよくみられる理屈の形である。

 ここで大事なことは、大前提と小前提、小前提と結論を混在させないことである。

 法解釈の場面では、法解釈に徹し、問題に記載された事情を混入させないように気を配る。

 小前提段階では、事実を評価して認定し、大前提として解釈した内容に当てはまるのかそうでないのかを判断する場面であることをしっかりと自覚し、ここで再度の法解釈など行わないように気を付ける。

 結論は、きちんと問いに答える形で終われているのかについて確認しながら記載することが必要だ。

 おそらく、法科大学院で判例を習った際に、法的三段論法についてきちんと踏まえている裁判例を教えてもらっているだろうから、その復習をしてみるのも効果的だろう。
 「事実は評価して使え」のところでも述べたが、昨今、採点実感で、問題文の事実だけを抜き書きして、その事実からいきなり結論を主張する答案例が少なからず見られると指摘されている。そのような答案は、法律の解釈も事実の認定もなされておらず、法的三段論法を全く踏まえていない答案であるというほかはないだろう。「少なからず」とは多いという意味だから、上記の点だけでもきちんとできれば、これも群を抜くための武器になりうる。

※法解釈は立法論ではない

 司法試験では、全く勉強していない条文を解釈しなければならない場合もある。その場合は、なるべく文言に沿った文理解釈を中心に据えて、大怪我をしないように注意しながら慎重に解釈すべきである。
 慎重に解釈した結果、不都合が出るのであれば、何らかの形での対応が可能であることを指摘するなどして、自分は結果の不都合に配慮しているということを、少なくともアピールしておくべきである。

 ある程度思い切った解釈がどうしても必要となった場合でも、法解釈は立法論とは異なることに注意すべきである。
 どれだけ必要性があっても、条文の文言上、解釈上、射程距離が及ばないのであれば、その条文を適用することは困難となる。
 解釈の必要性はわかりやすいため、つい踏み込みすぎてしまいがちだが、そこまでの解釈を条文が許容しているのかという点にも十分配慮する必要があることは忘れてはならない。

※条文の引用は慎重に・答案の文字は丁寧に

 このように重要な条文である以上、引用の際に条文番号や文言の引用ミスは許されない(れっきとした減点対象)と考えたほうがいい。せっかく司法試験六法が配布されているのだから、焦らず正確に記載すべきである。

 基本的な条文であればあるだけ、きちんと引用しなければならない。基本的な条文の引用を誤ると、試験委員のご機嫌を大きく損ねる結果になることは覚悟したほうが良い。
 もちろん準用条文を勝手に省略するなどもってのほかである(試験委員が何度も指摘している)。面倒でも準用条文を省略することなくしっかり記載すること。

 答案の文字を丁寧に書くことも大事だ。大量の答案を集中して読み込まなければならない採点委員(しかも老眼が入っている委員も多いだろう)のことを考えるなら、読みやすい文字の与える印象は大きい。下手でもいい。やや大きめで読みやすい文字で書くことだ。急いで乱雑に書いても、丁寧に書いてもそんなに時間は変わらない。

 なお、基本的な用語について漢字を誤ったり、基本的用語をひらがなで書くことも、良い印象を与えることはないので十分気を付けることだ。
 そこでの、ほんの少しの違いが、答案全てで積もれば、最後には大きな差となって跳ね返ってくることになる。

 以前のブログに書いたことがあるが、私は、0.03点差で論文試験を落とされたことがある(成績開示をしたので間違いない)。
 しかも当時は悪名高い丙案(若手受験者優遇制度)があったため、同じ年の受験でありながら、私よりも成績の悪かった受験生が200人以上も合格したのである。

 仮に私が、その年に、きちんと条文の記載を再確認して条文引用の記載の誤りなどを訂正していたとすれば、また、文字を読みやすくし誤字などを訂正していれば、私はその年に合格し、その後さらに2回の司法試験を受けずに済んだかもしれないのだ。
 幸い私は、その翌々年に合格できたからまだよかったが、経済的な問題から受験ができなくなっていたら、私の人生は大きく変わっていたはずだ。

 そのようなことがあなたの身にも起きるかもしれないのだ。

 そう考えれば、ちょっとした条文確認の手間、答案を読みやすい文字で丁寧に書くことなど、注意しないほうがおかしいだろう。

(続く)

ゴルフの1人予約における、一人目女性無料制度

 ゴルフは通常、3~4人が、一緒にプレーすることが多い。

 ところがゴルフをしたくても仲間や友人が3人集まらないこともある。そのような場合であっても、ゴルフをしたい人のために、一人でもゴルフをしたい人をネットで集めてゴルフをさせるよう取りはからっているのが、一人予約制度である。

 実際にS弁護士が利用してみると、なかなか良い制度であって、最初の恥ずかしさを乗り越えれば、初心者だってなんとかやっていける。みんなゴルフ好きなので話題にも事欠かないし、ゴルフを楽しみに来ている人ばかりということもあり、身勝手な方には、ほとんど会ったことがない。

 ゴルフ場にとっても、ゴルファーにとっても、メリットのある制度であって、考えたやつはえらいなぁと思う。

 現在では、バリューゴルフ・楽天・GDOなど、いくつかのサイトが一人予約制度を取り入れている。大体予約方法は似たようなかんじで、ゴルフをしたい日時とゴルフ場の地域を選択して検索すれば、一人予約を提供しているゴルフ場が表示され、その中から選択して申し込むという方式である。

 ところが、一つ気にくわないことがある。

 ゴルフ場によっては、一人目の予約者が女性である場合は、その女性のプレー料金を無料に設定しているところがあるのだ。

 そのようなゴルフ場の受付欄には、一人目のところには女性がダーッと予約を既に入れており、後に続く男性参加者を待ち受けている状況になっていることが殆どだ。

 重ねていうが、これが、S弁護士には気にくわない。

①まず、予約者を集めたいのなら男女問わず一人目を半額にする、プレー料金を下げる等の方法もあるはずで、特に一人目女性のプレー料金を無料にする理由はないように思われる。仮に一般的傾向として女性の収入が少ない場合が多いから、それに対する配慮だというのであれば、収入が少ない男性にだって割引すべきだから筋が通らない。そんなこんなで、差別的取扱に感じられて理不尽だとS弁護士は思っている。ついでにいうなら、男女差別撤廃を叫ぶのなら、女性が不当に有利に扱われている場合も、その有利な扱いを撤廃すべきと主張するのが筋だと思うが、そのような主張はあまり男女差別撤廃論者から聞いた記憶がないような気がする。仮に、有利なところは黙ったままで、不利なところだけを是正しろというのであるなら、ちょっと狡いのではないかと思ったりもする。

②そして、女性のプレー料金を無料にしたところで女性にゴルフ場を利用させてプレーさせるわけでから、施設の利用に関する負担が当然生じるわけで、それをゴルフ場が全て負担するとは思えないから、おそらく当該女性分の負担は、一緒にプレーする男性に負担させられるような仕組みになっている気がする。仮にそうだとすれば、なんで他人の楽しみの対価を自分が負担しなきゃならんのかが理解できない。

③なにより、「女性が入っているから男性も釣られて予約するだろう、どうせあなたは女性とゴルフしたいんでしょ?」というゴルフ場側の策略にみすみす引っかかったようで嫌だし、他人からスケベ心混じりでゴルフに来たと見られるようならば、心外だ。

④これは勝手な思い込みであまりいいたくないのだが、やはりスポーツにおいては、女性に負けたら恥ずかしいものだ、という変な思い込みが、S弁護士の心の中のどこかにあるようなのだ。もちろん、ゴルフは体力だけの勝負ではなくハンディやレディースティなど女性が男性と対等に戦える配慮もなされているし、始めてまだ2年のヒヨコが何をほざいているんだという面もあるのだが、それであっても女性に負かされると何故だか悔しい。

 このような理由、特に③、(少しは④?)の理由から、S弁護士は一人目女性無料のゴルフ場での一人予約は可能な限り避けるようにしている。

 しかし、一人予約の方とのラウンド中の昼食休憩時に、時折このような話題になるのであるが、中には、一人目予約の女性が20歳台、30歳代なら許せる、と仰る御仁もおられたりする。

 だとすれば、ゴルフ場の策略としては一人目女性無料の制度は、あながち間違っていないのかもしれず、S弁護士としては、女性とのことになると男性はやっぱり馬鹿なところがあったりするんだなぁということを再認識しつつ、そこが残念でもあり、またおかしかったり

安易な相続放棄は・・・危険かも?

弁護士をしていると、もちろん相続放棄の相談もある。

 マイナスの財産しかない被相続人が亡くなったので、相続放棄をして欲しいと相続人から頼まれることも多いが、実は、「相続放棄した方が良いと他の相続人から言われているのでそうしたい」、という相談もときどきある。

 よくよく確認してみると、相続財産の全体は教えてもらっていないのだが、先代の不動産の登記名義がまだ変更されていないから面倒だとか、相続するなら葬儀費用を負担しろと言われるなど、面倒なことに巻き込まれるかもしれないことばかりが、頭に浮かび、もういいや、となっている場合もある。

 そんなときに、相続人全員が放棄するのかと聞いてみると、実はそうではなく、誰か1人が相続することになっている場合だったこともある。

 冷静に考えれば、誰か1人が相続したいという以上、何らかのメリットが相続にあるとしか考えられない。

 そこで、きちんと相続財産を確認してから、決断した方が良いですよとアドバイスするのだが、なかなか正しく理解して頂ける人が多くはないのである。

 以前、相続人のうち1人が「俺が相続して面倒なことは全てやってやる」と言っているので、放棄したいと相談に来られた方がいたが、よくよく調べてみると、多少不動産が売りにくいものの、相続すれば600万円ほどの遺産が手に入る案件だった。

 あのまま放棄していれば、この相談者は600万円をもらい損ねることになったはずだ。

 安易に相続をすれば、借金を負わされる可能性があるという危険があるが、その反面、安易に相続放棄をすれば、本来もらえるべき遺産をもらえなくなる危険もあるのだ。

 特に誰か1人が面倒なことは全てやってやるから他の相続人は放棄しろという場合は注意が必要だ。

 後になって、悔いを残さないようにきちんと弁護士に入ってもらって、調査し、納得したうえで、放棄すべきなのだ。

 兄弟の言うことを安易に信じて放棄してしまい、後悔している相談者の方は何人も見てきた。相続放棄の申述は詐欺・強迫・錯誤等があれば争えるには争えるが、立証の問題もあって、通常、ひっくり返すことは極めて難しい。

 安易に相続放棄する危険についても、相続人はよく知っておくべきだと思うのだ。