※法的三段論法を踏まえる
よく法的三段論法といわれるが、論者によって多少のニュアンスの違いはあるように見える。
しかし、大枠は変わらないと思う。
大前提・・・・法律の解釈
小前提・・・・事実認定
結論
という、判決でよくみられる理屈の形である。
ここで大事なことは、大前提と小前提、小前提と結論を混在させないことである。
法解釈の場面では、法解釈に徹し、問題に記載された事情を混入させないように気を配る。
小前提段階では、事実を評価して認定し、大前提として解釈した内容に当てはまるのかそうでないのかを判断する場面であることをしっかりと自覚し、ここで再度の法解釈など行わないように気を付ける。
結論は、きちんと問いに答える形で終われているのかについて確認しながら記載することが必要だ。
おそらく、法科大学院で判例を習った際に、法的三段論法についてきちんと踏まえている裁判例を教えてもらっているだろうから、その復習をしてみるのも効果的だろう。
「事実は評価して使え」のところでも述べたが、昨今、採点実感で、問題文の事実だけを抜き書きして、その事実からいきなり結論を主張する答案例が少なからず見られると指摘されている。そのような答案は、法律の解釈も事実の認定もなされておらず、法的三段論法を全く踏まえていない答案であるというほかはないだろう。「少なからず」とは多いという意味だから、上記の点だけでもきちんとできれば、これも群を抜くための武器になりうる。
※法解釈は立法論ではない
司法試験では、全く勉強していない条文を解釈しなければならない場合もある。その場合は、なるべく文言に沿った文理解釈を中心に据えて、大怪我をしないように注意しながら慎重に解釈すべきである。
慎重に解釈した結果、不都合が出るのであれば、何らかの形での対応が可能であることを指摘するなどして、自分は結果の不都合に配慮しているということを、少なくともアピールしておくべきである。
ある程度思い切った解釈がどうしても必要となった場合でも、法解釈は立法論とは異なることに注意すべきである。
どれだけ必要性があっても、条文の文言上、解釈上、射程距離が及ばないのであれば、その条文を適用することは困難となる。
解釈の必要性はわかりやすいため、つい踏み込みすぎてしまいがちだが、そこまでの解釈を条文が許容しているのかという点にも十分配慮する必要があることは忘れてはならない。
※条文の引用は慎重に・答案の文字は丁寧に
このように重要な条文である以上、引用の際に条文番号や文言の引用ミスは許されない(れっきとした減点対象)と考えたほうがいい。せっかく司法試験六法が配布されているのだから、焦らず正確に記載すべきである。
基本的な条文であればあるだけ、きちんと引用しなければならない。基本的な条文の引用を誤ると、試験委員のご機嫌を大きく損ねる結果になることは覚悟したほうが良い。
もちろん準用条文を勝手に省略するなどもってのほかである(試験委員が何度も指摘している)。面倒でも準用条文を省略することなくしっかり記載すること。
答案の文字を丁寧に書くことも大事だ。大量の答案を集中して読み込まなければならない採点委員(しかも老眼が入っている委員も多いだろう)のことを考えるなら、読みやすい文字の与える印象は大きい。下手でもいい。やや大きめで読みやすい文字で書くことだ。急いで乱雑に書いても、丁寧に書いてもそんなに時間は変わらない。
なお、基本的な用語について漢字を誤ったり、基本的用語をひらがなで書くことも、良い印象を与えることはないので十分気を付けることだ。
そこでの、ほんの少しの違いが、答案全てで積もれば、最後には大きな差となって跳ね返ってくることになる。
以前のブログに書いたことがあるが、私は、0.03点差で論文試験を落とされたことがある(成績開示をしたので間違いない)。
しかも当時は悪名高い丙案(若手受験者優遇制度)があったため、同じ年の受験でありながら、私よりも成績の悪かった受験生が200人以上も合格したのである。
仮に私が、その年に、きちんと条文の記載を再確認して条文引用の記載の誤りなどを訂正していたとすれば、また、文字を読みやすくし誤字などを訂正していれば、私はその年に合格し、その後さらに2回の司法試験を受けずに済んだかもしれないのだ。
幸い私は、その翌々年に合格できたからまだよかったが、経済的な問題から受験ができなくなっていたら、私の人生は大きく変わっていたはずだ。
そのようなことがあなたの身にも起きるかもしれないのだ。
そう考えれば、ちょっとした条文確認の手間、答案を読みやすい文字で丁寧に書くことなど、注意しないほうがおかしいだろう。
(続く)