今回は刑事系第1問を取り上げます。
(引用開始)
刑事系第1問
4 今後の法科大学院教育に求めるもの
刑法の学習においては,総論の理論体系,例えば,実行行為,結果,因果関係,故意等の体系上の位置付けや相互の関係を十分に理解した上,これらを意識しつつ,各論に関する知識を修得することが必要であり,答案を書く際には,常に,論じようとしている問題点が体系上どこに位置付けられるのかを意識しつつ,検討の順序にも十分に注意して論理的に論述することが必要である。
また,繰り返し指摘しているところであるが,判例学習の際には,単に結論のみを覚えるのではなく,当該判例の具体的事案の内容や結論に至る理論構成等を意識することが必要であり,当該判例が挙げた規範や考慮要素が刑法の体系上どこに位置付けられ,他のどのような事案や場面に当てはまるのかなどについてイメージを持つことが必要と思われる。
このような観点から,法科大学院教育においては,引き続き判例の検討等を通して刑法の基本的知識や理解を修得させるとともに,これに基づき,具体的な事案について妥当な解決を導き出す能力を涵養するよう一層努めていただきたい。
(引用ここまで)
【超訳】~司法試験委員が言いたいであろうことを推察しての私の意訳
今後の法科大学院教育はこうやってもらわなあかん。
刑法の勉強において言うたら、総論の理論の体系、例えていうなら、実行行為、結果、因果関係、故意などについて体系的な位置づけや、相互の関係を先ず理解させなあかん。その上で、総論の理論体系を意識しながら、各論の知識を習得するよう勉強させるのが必要や。ほんで答案を書く際には、今論じとる問題が、総論の体系上、どの部分の話をしとるのかを常に意識しながら、検討せなあかん。その検討の順番にも注意せんと、分かってないと思われるで。
(問題にもよるかもしらんけど)例えば、いきなり因果関係の話を冒頭で始めたりしたら、こいつ、ほんまに解っとんのか?って思うわな。
実行行為があって、結果があって、それがつながってるか?っちゅうのが因果関係の問題やから、実行行為も結果も指摘せんといきなり因果関係の話したら、キミ何ゆうてんの?って、採点者が思うてもおかしないやろ。
そもそも実行行為が全くないんなら、それで罪責の検討は終わりや。これしたら犯罪でっせ、っちゅう刑法典の規定に該当する行為をそもそもしてないんやから、実行行為がない以上、犯罪に問えるわけないわな。実行行為があっても結果がなければ、刑法典(特別法も含む)に予備・未遂等の規定がないんなら、それでも罪責の検討は終わりが普通や。罪刑法定主義から、刑法典に定めのない罪なんて問えへんのやから当たり前やろ。
要するにそこんとこができてへんねん。体系的に知識が理解されてへんちゅうことや。一番大事なとこやで。
言い換えたら、論点は覚えとるかもしれんけど、それが刑法体系のどこに位置しとるのかわかっとらん状態や。要するに、お勉強が論点主義になっとるんとちゃうか。予備校教育の問題点として、あんたらが、大きな声で「論点主義や、論点主義や」って批判してきたやろ。まさにそれとおんなじ状態に、なっとるんと違うんかな。
それから、何回も言うてきたけど、できてへんからしつこく言わしてもらうで。判例の勉強は、単に結論だけ覚えるのはあかんのや。その判例の具体的事案の内容とか、どうやってその結論になっとるのか、ちゅうことの理論構成を意識してそっちをメインに勉強せなあかん。その上で、その判例が挙げた規範やら考慮要素やらが、刑法の体系上どの位置での話か、ほんで、他のどんな事案・場面にあてはまることができるんか、ちゅうことについてイメージできなあかんねん。
できてへんから言うてんねん。答案見とったら、「判例の結論しか覚えてへんな、こいつ」、ちゅう答案ばっかりやで。予備校教育の問題点としてあんたらが、大きな声で「暗記重視に陥っとる、暗記重視になっとる」言うて批判してたわな。今の、受験生の答案見とったら、判例の結論だけ暗記しとるとしか思われへんのが多いねん。よう考えて教えたらなあかんやろ。
そんなこんなで、法科大学院教育は、判例の検討なんかを通じて刑法の基礎的知識や理解を習得させる必要があるで。それができた上で、具体的な事案について妥当な解決に持って行ける能力を養うよう、より一層の努力が必要や。できてへんから言うてんねんで。受験生の答案から見たら、全体的に、基礎的知識も基礎的な理解も、具体的な事案について妥当な解決を導き出す能力も、全て不足しとるんで言うてんねん。心して、やってあげてや。
(続く)