参院選が近くなり、消費税に関する各党の姿勢もだいぶ明らかになってきた。この点に関して雑駁な感想を述べておきたい。
自由民主党は、消費税減税・廃止に反対とのことであり、石破総理も社会保障維持のために消費税は必要と主張しているようであるし、消費税を守り抜くと森山幹事長も発言している。
消費税に関して、自民党HPには次のような記載がある。
【わが党は暮らしと安心を支える社会保障の重要な安定財源として、消費税率引き下げや廃止を行うことは適当ではないと考えます。具体的には年金・医療・介護・子育てなどの財源に充てられており、国民の暮らしと安心を支えています。国民が広く享受する社会保障の財源として、あらゆる世代が公平に負担を分かち合う消費税を活用することで、社会保障制度を次世代へと引き継いでいきます。】
(自民党HP 意見書キーワード参照)
https://www.jimin.jp/news/information/209367.html
消費税は税収が変動しにくいこともあり、自民党が言うように、社会保障の「安定財源」として位置づけることは、可能かもしれない。昨今の物価高騰により、消費税収もかなり増えているようだ(国民の皆様には、物価高騰と、高騰した物価に比例した消費税増税のダブルパンチとなっているが・・・そこのあたりを自民党がどう考えているのかは、はっきりしない。)。
しかし、自民党や石破総理などの消費税に関する発言は、あまりにも消費税と社会保障が直結しているかのような印象を与えやすい発言であり、「消費税を上げないと社会保障が維持できない」とか、「消費税を減税・廃止すれば社会保障が当然削減されてしまう」、という誤解を国民の皆様に与えかねない表現に思えるときがある。
例えば、仮に消費税が特別会計として独立しており、消費税が唯一の社会保障制度の財源であり、ほかの財源から補填もできないというのであれば、消費税の減税は社会保障費の削減に直結する危険性があるだろう。
この点、消費税法1条2項には、「消費税の収入については、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。」と記載されている。
この記載から素直に考えれば、消費税の収入は全額社会保障費にまわすべきであることは分かる。ただし、上記の記載は、自民党政権下ではなく、消費税増税を閣議決定した当時の民主党・野田政権が加筆した部分だったと記憶している。
しかし法律には、社会保障支出に関して、消費税収以外の税収を使用してはならないとは記載されていないはずである。
つまり、社会保障費に消費税収以外の税収を使える(現に使っている)のだから、消費税の減税があっても社会保障の削減には直結しない。
さらに、実際の消費税収入を見てみると、特別会計として独立しておらず、一般会計の歳入として扱われている。
つまり、所得税・法人税・消費税・その他の収入・公債金は一般会計の歳入として扱われ、社会保障費も一般会計の歳出として扱われ支出されている。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm
少しわかりやすく言えば、所得税・法人税・消費税・その他の収入・公債金は、国のひとつの財布に入り、そのひとつの財布の中から、社会保障費・防衛費・公共事業費等々が支出されているのである。
消費税の税収だけを特別の財布にとっておいて、その特別の財布から全額社会保障費に用いるという扱いにはなっていないのである。
したがって、消費税減税・廃止を行ったとしても、他(所得税・法人税・その他)から税収が得られるのであれば社会保障を維持することは十分可能だということになるし、歳出内容を改めて社会保障を優先的に維持することも可能ということになる。
それにも関わらず、消費税減税反対・現状維持を主張する自民・公明両党は、弱者にも優しくと口では語りつつも、結局は、現状の税制(財政)を維持したいという主張に他ならないように思える。
現状の財政の中では、ごく一部の富裕層と大多数の貧困層が存在し、貧富の格差が拡大しているのだから、現状維持をすれば、この格差の拡大は止まることはないだろう。
しかしこのような格差の拡大は、多くの人にとって生活の困窮を意味するものではないか。生活の困窮は不満を呼び、不満の蓄積は暴力に発展する危険性もある。
政治家は、国政を分かりやすく国民に説明する義務があると、私は考えている。
したがって、自民党・石破総理などの消費税=社会保障費といわんばかりの発言は、
「消費税を上げないと社会保障が維持できない」
とか、
「消費税を減税・廃止すれば社会保障が当然削減されてしまう」
といった誤解を国民に与えるものであり、
妥当ではないと考えている。

盛夏