弁護士会の委員会で、最高裁司法修習委員会の第46回議事録を頂いた。
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2025/20240827_46gijiroku.pdf
新人弁護士の全体的なレベルダウンについて(もちろん私としても優秀な修習生の存在は否定しない。あくまで全体的なレベルダウンである。)、何人も新人弁護士を雇用してきた同期の弁護士からも聞いていたが、さすがにマズイだろうという内容が司法修習委員会の議事録に記載されていた。
議事録に記載されていたあまりにも「ひどい事例」は次のとおりである(議事録13頁参照)。
導入修習の、刑事裁判の起案(記述式テストと思ってもらえれば良いです)において、盗品等有償譲り受けの事案で、被告人が盗品であることを分からずに買い受けたのか、つまり、買い受けた物品が盗品であるという認識を争点とする事案を出題したとのことである。
対象物が盗品であると知って買い受けたのであれば、盗品等有償譲り受け罪の故意があると認定できるのは当然であるが、故意には確定的故意だけではなく、未必の故意というものがある。つまり、盗品等有償譲受け罪の場合、対象物が盗品であるかもしれないとの認識があれば、故意責任を問えるということは確定した判例であり、学説的にも反対説は、ほぼないところである。
また未必の故意など、大学2年生でも知っている基礎中の基礎の知識であり、法学部を出ていなくても、ちょっと法律に詳しい人なら、誰でも知っている知識でもある。
ところが、上記の起案において未必の故意に関して、修習生がきちんと事実認定ができたのかというと、この教官が担当していたクラスの司法修習生76名のうちわずか15名しか未必の故意について、分かっていなかったとのことである。
実に81%もの修習生が未必の故意について分かっていなかったということになる。
この教官が担当したクラスだけに司法試験の成績が悪かった修習生を集合させたなどという特殊事情はないだろうから、おそらく、この77期司法修習生の8割近くが未必の故意について正確な知識を有していないおそれがあるとみても、大きな誤りではないだろう。
全受験生の平均点より26点以上低い得点でも合格できてしまう司法試験(令和6年度)では、そのような基礎知識を有しない受験者を弾く機能も、もはや有していないと評価できよう。
更に恐ろしいのは、未必の故意について分かっていなかった77期修習生に関して、多くの教官が、76期(1年前)修習生と比べて実力はさほど変わらないと、この議事録で述べていることである。
要するに、このような基礎的な知識すらきちんと身についていない受験生が、司法試験に合格して修習生となり、司法修習を受けて、法曹実務家になりつつある状況が、ここ何年も継続している可能性が高いということなのだ。
このように極めて恐ろしい時代になっていることを、多くの国民の皆様はご存じないし、法科大学院推進派・司法試験合格者増員派は決して言わないだろうから、敢えてお伝えする次第である。

中之島公会堂付近(写真と記事は関係ありません)