先日の常議員会から、新規登録弁護士研修について増加する未履修者に対して、どのような対策を取るかべきかが討議されている。
大阪弁護士会の新規登録弁護士研修は、下記の通り会則で新規登録弁護士に対し、1年以内に履修する義務が課されている研修である。
(研修履修義務)
第十一条 弁護士である会員は、継続して研修を履修しなければならない。
2 本会に入会した弁護士である会員で、入会前に通算一年以上の弁護士経験を有しない者は、前項に定める研修のほか、新規登録弁護士研修を履修しなければならない。
(中略)
5 弁護士である会員と同一の法律事務所で執務する弁護士である会員及び弁護士である会員を雇用し、又は社員とする弁護士法人である会員は、第一項及び第二項の規定による研修を履修するよう指導し、協力しなければならない。
このように、新規登録弁護士研修の履修は、大阪弁護士会の会則で定められた新規登録弁護士が果たすべき義務である。
そして、下記の通り、会則違反については、懲戒事由にもなりうるものである。
(懲戒委員会)
第七十七条 懲戒委員会は、会員が、法又は連合会若しくは本会の会則、会規若しくは規則に違反し、本会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行のあった場合において、本会の請求により、会員の懲戒に関し、必要な審査をする。
さらにいえば、大阪弁護士会に入会する際に、入会申込者はもれなく誓約書を提出するが、その誓約書には
「私は、弁護士法、日本弁護士連合会及び大阪弁護士会の会則その他諸規定を遵守し、弁護士の社会的使命を自覚して誠実に職務を遂行することを誓約いたします。」
と不動文字で明記され、署名押印する書式になっている。
つまり、新規登録弁護士研修は、大阪弁護士会の会則で定められた義務であり、大阪弁護士会に入会する者は、その義務を私は必ず果たしますと誓約書を提出して、自ら誓約した上で、大阪弁護士会に入会しているのである。
以前の常議員会で、近時は新規登録弁護士研修に未履修者が多くなっていると聞かされており、多くても2~3割くらいの未履修率かなぁ・・・と呑気なことを考えていた私であったが、配布された未履修者数一覧の資料を見ると、驚愕の数字が並んでいた。
最近5年の新規登録弁護士の未履修者割合は、
69期 48.9%
70期 56.1%
71期 73.7%
72期 78.8%
73期 92.8%
繰り返すが、これは未履修者の割合である。
会則を守っていない新人弁護士の割合である。
73期に関しては、一斉登録から遅れて登録した人もいるだろうから、もう少し減る可能性もあるが、多くの者は登録後1年以上経過しているから、本来新規登録弁護士研修を終えていなくてはならないはずなのだ。
この数字は、もはや、多くの新人弁護士が、会則で定められ、かつ、自ら守ると誓約した義務すら果たさなくても平気だ、と考えていると評価されても仕方がないだろう。
裏を返せば、大阪弁護士会は、多くの未履修新規登録弁護士達に完全になめられきっていると言っても過言ではないのかもしれない。
新規登録弁護士研修といえども、講師は一流の実務家だ。受講する価値は十分にある研修であると思う。
それに、自ら誓約した義務を果たさない(しかも会則違反の)行動は、場合によれば、「秩序または信用を害する行動」、「品位を害する行動」であると評価されるリスクもある。
弁護士会に懲戒の端緒を与えるような行動は、今後の弁護士活動に際しても非常に危険だ。合わせ技一本で懲戒される可能性もゼロとはいえないのだ。
なにより、会則を守ると誓約のうえで入会申込をして、大阪弁護士会に入ったのではなかったのか。
新規登録弁護士研修未履修の方は、大阪弁護士会が、今は黙っているからといって、舐めてはいけない。