F1最終戦に思う。

 フォーミュラー・ワン、通称F1は、自動車レースの最高峰だ。

 私はこれまで、中嶋悟選手がロータスホンダで参戦した日本GPを始め、これまで5回ほど鈴鹿サーキットに足を運んで観戦したことがある。最近は、地上波でもBSでも無料の放送がなくなってしまい、日本での人気が凋落しつつあるとも言われているが、やはり最高峰の自動車レースであることは誰も異議を述べないだろう。私は、F1は好きだが、無料のテレビ放送がないことから、最近はインターネットで結果を確認するくらいにしていた。

 今年、最終戦まで、チャンピオンを争っていたのは、ルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグだ。ともにメルセデスAMGという現時点での最強チームのチームメイトだ。
 獲得ポイント状況は、ロズベルグがリードしており、ハミルトンは最終戦で優勝し、なおかつ、ロズベルグが4位以下になれば、逆転で年間チャンピオンが転がり込む、という状態だった。

 予選1位でポールポジションからスタートしたハミルトンは、順調にトップをキープして走行するも、ロズベルグも2位を守って譲らない。

 報道によればレース後半で、問題が起きたそうだ。

 ハミルトンはチームのペースアップ指示を無視してペースを上げない。つまり、ロズベルグの後方にいたマシンがロズベルグのすぐ後ろまで迫ってこれるように仕向けたのだ。

 ハミルトンとすれば、メルセデスチームのコンストラクターズ優勝は決定しているのだし、遅く走ってはいけないというルールはないのだから、自分がチャンピオンになれるあらゆる可能性を追求するという意味において、正当な理由があるということになろう。
 一方、ロズベルグとすれば、もっと早く走れるのに、わざとロズベルグを抜かせない程度に遅く走って、後続のマシンに追いつかせてプレッシャーをかけるやり方は、正々堂々のチャンピオン争いと言い難い、と考えても不思議ではないだろう。

 私は、ハミルトンのやり方はあまり好きではない。

 表向きの理由としては、そもそもF1は早さを競うレースなのだし、仮にメルセデスのコンストラクターズ優勝が決まっていたとしても、もしハミルトンの行為の結果、ロズベルグが順位を落とした場合、チームが獲得できたはずのポイントが減少することになるからだ。

 心情的に納得がしにくいという面もある。報道等から推察するに(真実は違うのかもしれないが)、ハミルトンの今回の作戦は、勝ちさえすればどんな手段を使っても構わない、という勝利至上主義に近い行いのように、私には見えてしまうからだ。

 勝つための努力として、自らを高める方向の努力・作戦は素晴らしいと思う。しかし、他人を陥れる方向の努力・作戦は、仮に結果として自らの勝利を得たとしても、正当なものとは言えないし、何より本人がすっきりしないように思うのだ。

 どのような方向の努力であれ努力に差はないと言って良いのか。
 それとも、私が、甘いのだろうか。

依頼者保護給付金制度の議論の現状

 反対している弁護士も多いと言われている、依頼者保護給付金制度であるが、日弁連は微修正を加えて批判をかわしつつ導入に向けて邁進している。

 先日の大阪弁護士会常議員会で明らかにされた、依頼者保護給付金制度の修正点は以下のとおり。

1.依頼者保護給付金→依頼者見舞金に変更。
2.依頼者または依頼者に準ずる者を自然人に限定。
3.対象行為を横領行為に限定。
4.除斥期間に、一定の場合に支給出来るとする例外を設けた。
5.加害弁護士1人につき2000万円上限、被害者1人につき500万円が上限。その範囲内で会長が裁量的に給付額を決定できることを明確化。
6.給付総額は予算で決定するとしていたが、キャップを規定内に明記した。
 ・毎年理事者会で決定する。
 ・附則として1億件を上限とした。
7.附則に5年で見直し条項を明記。
8.見舞金対象行為を平成29年4月1日以降の行為とした。
9.施行を平成29年10月1日とした。

 ここで問題なのは、キャップを設けたという点だ。一見キャップを設けたとなれば、無制限の支出は食い止められるかのように思えるだろう。

 しかし実際には違う。

 キャップの意味についての執行部側の説明は次の通り。

 規程案の条項の中の表現は「一の年度における支給額の合計は、毎年度、理事会で定める金額を上限とすること」となっており、附則の方の表現は「(上記の条項の)理事会で定める額は、1億円を超えない額を目安とする」とのこと。

 この説明からすれば、あくまでも1億円は「目安」にすぎない。

 あくまで1億円は目安に過ぎないから、昨年度の実績などから今年度は2億円限度に設定する、ということも規程上、十分に可能である。

 仮に1億円と定めたとしても、ある年度で既に1億円を支出したあと、さらに見舞金事案が出た場合には、実際には、申請者の不満を招かないように、この年度は1億円を超えてもやむをえないと判断して、予備費からの支出は可能な規程となっているようだ。

 ある常議員の先生が「キャップということの意味だが、1億円を超えたら、その年度では絶対にもう払わないのか」という趣旨の質問をしたところ、執行部側の回答は、「そうとは限らない」というものであった。

 これでは、キャップ制を名乗りながら、通常の意味で言われているキャップ制とは到底相容れない制度を用意していると言っても過言ではない。これをキャップ制だと公言して、支出の上限を画したかのように説明するのならば、それは誤導も甚だしいと言わなければならないだろう。行儀悪く言わせてもらえば、各地の反対の声に対して日弁連執行部は、この程度の説明でお茶を濁せば大丈夫だと考えているわけで、逆に言えば、それだけ会員は現執行部になめられているということだ。

 つまり、不祥事が多発すれば、会長の裁量で見舞金を数億円を超えてガンガン支出するって事態もあり得ると見た方がよいだろう。

 しかも、一度導入した場合、不祥事が多発して弁護士会の会計が保たない状況に陥ったとしても、撤退しますとは到底いえまい。世間からその程度のものなのかという痛烈な批判が予測されるからである。

 先日も対案を述べたが(当職の10月6日のブログを参照)、導入すべきという執行部役員で、まずポケットマネーを出して基金として始め、数年経過後に本当に執行部の主張するような効果が出ているかを検証した上で、意味があれば、初めて本格的な制度として導入すべきだ。
 意味があると明確に分かれば、反対する人もそういないだろう。執行部がまず率先して自腹を切って行動すれば、反対意見が多いと言われる若手の納得も得られやすいだろう。

 そんなに意味がある制度なら、反対する人を巻き込もうとしないで、やりたい人で、お金を出し合って、まずやってみればいいじゃない。素晴らしいことなんでしょ?

ゴルフのこと~番外編3

(続き)

 昼食時も、話題はゴルフだ。まあ考えて見れば当たり前で、ゴルフ好きがやってきて初対面で話すのはゴルフの話題くらいしかないだろう。しかし、S弁護士は表面上はゴルフ談義に興じながらも、ハーフ45の出来に、躍る心を抑えきれず、秘かに自分に暗示を掛けていた。

「よろこぶな、俺。まだハーフが残っている。ベストスコアの可能性はあるが、欲を出さずに、プレーに集中するんだ。」

 以前、ハーフ41という好スコアを出しながら、後半64と崩れたこともあった。食事のあとは何かが変わってしまうことも多いのだ。しかも経験上、悪い方向に変わってしまうことの方が多い。

「落ち着け俺。今までのペースを維持するんだ。これまで何度も落とし穴に落ちてきたじゃないか。」

普段はだらだらすることも多いS弁護士だが、今回は、柄にもなく、珍しく、昼食後にも練習場でアイアンとパターの感触を確かめたりもした。

1番(370Y・par4:ボギー)

右ドッグレッグのかなりの打ち下ろしコース。ショートカットを狙うと右の山のOBゾーンが危険。

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1打目 他のお三方のナイスショットに引っ張られるように、ど真ん中にナイスショット、傾斜もあって残り110Yくらいまで転がる。

2打目 池にびびって、右のサブグリーンにオン

3打目 ウエッジでオン

2パット

ボギーは私にとって上出来だが、還暦さんは8m程のパットを沈めてバーディ!前半同点だった還暦さんに2打の差をつけられた。まあ、そもそもの腕が違うのでしょうがない。

「凄いですね!糸を引いたように入りましたね!」とS弁護士が感想を述べると、2打差に突き放して余裕が出たのか、還暦さんも「実は糸引いてました(笑)」とおどけてくれる。S弁護士も調子に乗って「ちょっと、ボール、改めさせてもらいます(笑)」と返したりする。

2番(350Y・par4:バーディ)

グリーンが見えない左ドッグレッグのホール。左に曲がったあたりからはそこそこの傾斜で左下方向へ下っていくため、2打目は打ちにくいことが多い。

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1打目 ドライバーが、スコンと変な音を立てた。やや右に出てさらにスライスしていく。それを見て本間さんが「こすったな。まあ大丈夫やけど。」とぽつり。かなり右に出たと思ったが、ナイスキックだったらしくフェアウェイ真ん中にボールが止まっている。

2打目 9アイアンでピン手前にオン

長いバーディパットが入っちゃった。S弁護士、思わずガッツポーズ。「おいおい、今日は、えらいことになるんちゃうか~」と大御所さん。

3番(118Y・par3:ボギー)

打ち下ろしのショート。左はすぐOB。グリーン脇の大きな樹には注意が必要。

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1打目 先程のバーディで、何と最初に打つことに。クラブ選択で迷っていたら、大御所さんが「あんなあ、S、迷ったら攻めやで」。この一言で、攻めのクラブに変更。変更したら変更したで、大御所さんが「まあ、攻めすぎてもあかんけどな~。」 お~い、一体どっちやねん!

 オナーってのは名誉って意味だよな~。確かにこのお三方相手にオナーって凄いかも。と自分を誉めていたら、油断したのかティーショットは大きく左へ飛んでいく。まずいそっちはもろにOBゾーンだ!!「ありゃ、巻いたな」「はよ落ちろ」「耐えろ」とお三方が順番に一言ずつ応援してくれるが、物理法則には影響しない。しかし大きな樹にかすって勢いが削がれ、グリーン左のカート道付近にボールは落下してその場に止まる。あやうくOBになりかけた。

2打目 58度でオン

気合いの2パット、ボギーで切り抜ける。

4番(392Y・par4:ボギー)

大原で最も難しいホール。ティーショットが左だとすぐOB、右の山の斜面は安全そうに見えるが苔のような地衣類で覆われている部分があり、埋もれてしまう場合もあって、出てこないことも多い。飛びすぎるとクリークにはまる。

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1打目 ドライバーが今日一の当たり!特ティ付近までのナイスショット。ここまで来れば2オンが狙える。しかし、ここはハンディキャップ1のホール、以前何度も二桁を叩いて沈んだところだ。アイアンできざむ安全策もあり得るが・・・と弱気になりかけたときに、思い出したのが大御所さんの「S、迷ったら攻めや」のお言葉。よし、行ったる!狙うは2オン。

2打目 風がフォロー気味であったので7Wを選択。まずまずのショットも届かず。大御所さんから「方向は悪ないが、当たりが薄かったな」との指摘有り。

3打目 7Iで転がしてオン

2パット

最難関ホールだからボギーでも価値はある。

5番(154Y・par3:パー)

グリーン手前に池と川があるショート。グリーンは奥に乗せると、止まらない場合アリ。

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1打目 UT7でピンへ真っ直ぐ。我ながら今日のゴルフは凄いかも。しかしオンしたのは、最も避けなければならないピンの奥。本間さんが、「ここは乗っても奥やったらアウトと同じやで、でも頑張りや」とどっちかよく分からない励ましをくれる。

2打目 「S、ここもバントや、絶対にバントやで。入れに行こうなんて思うな!」という大御所さんのアドバイスに従い、1パット目は距離だけ合わせにいく。届かないかと思うほど僅かに触っただけだが、するするとボールは進んでいき、カップを少し通り過ぎて止まる。

なんとか2パットで切り抜ける。

6番(267Y・par4:パー)

短めのミドルホール。フェアウェイが高くなっているため、グリーンは見えないがワンオン狙いの人もいる。

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1打目 「おいおい、Sさん今何打や、結構ええ感じにきとるんとちがう?」と還暦さんが指摘する。「あ~、スコアに触れないで下さい。気にしたら欲が出てダメになりますから~!」とS弁護士の悲鳴。ティーショットはドライバーがスライスしつつも落ちたところは、ど真ん中。

2打目 アイアンで、グリーン端にオン

2パット

7番(502Y・par5:ボギー)

少し打ち下ろしたあと延々と打ち上げていかなければならないホール。

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「上がり3ホールやから、Sさん、こりゃ~ええスコアでるンと違う?」本間さんにも云われてしまった。「ダメったらダメです。スコアにふれないでくださ~い。気にしたら崩れます!」と口止めして、ティーショットへ。

1打目 ドライバーが真っ直ぐ左に出て、左の山へ。左の山はOBだ。「あ~やっちまった。だからスコアに触れて欲しくなかったんだよぅ。」とS弁護士は心の中で恨み節全開!

 ところが、ついているときはどうやってもついていることがある。山中に消えゆくはずの白球は、カコ~ンと暢気な音を発して木に当り、ラフまで落ちてくるではないか。しかも落ちたところが修理地で、ニアレストポイントからドロップするとウッドが振れるライで止まる。

2打目 FW5で良い当たりするも、右ラフへ。しかしラフは深くない。十分ウッドが振れる。

3打目 FW7で良い当たりするも今度はグリーン近くの左ラフへ。

4打目 ウエッジでのせる。広いフェアウェイを一度も踏むことなく、グリーンまで来てしまった。

2パット

8番(350Y・par4:ボギー)

打ち下ろしのミドルホール。左側は広いが窪地になっており、魔女の谷と呼ぶ人もいるとのこと。

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1打目 ドライバーがやや右に出るも、右ラフでとまる。

2打目 左足下がりの場合は右に出やすいということを忘れていて、真っ直ぐ狙ったため、アイアンが右に出て高い木に当たる。OBかと思い、暫定球まで打ったが、ラフで止まっていてセーフ。

3打目 ここが勝負!で入念に素振りをして、58度で我ながらナイスオン。

2パット。

9番(454Y・par5:ボギー)

クラブハウスの方向へ、ずっと打ち上げていくロングホール。左は1番ホールでOB。右はやや広いが、遠回りになる。

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ここで前の組が進むのを待っていると、大御所さんが、

「今ちょうど、Sと同点や。お前なんかに絶対に負けられん。どんな手を使ってでも勝つ!(笑)」と勝利宣言。

「どんなド汚い手を使ってでもですか!?(笑)」

「そうや(笑)!」

「分かりました。でもド汚い手が不法行為に該当したら、裁判沙汰にさせて頂きますからね!(笑)」

「うわっはっはっはっ」

というやり取りがあって、その後、ゴルフの競技では、ルールスレスレの汚い手を使う人が如何に多いかという話をお三方から聞く。ゴルフは面白いスポーツなのに、なんだかゴルフを冒涜するような人達がいるんだな、残念だ。

さて1打目 ドライバーがややスライス気味ながら、方向は真っ直ぐ。正面やや右のラフまで。「お~、こりゃ~ひょっとするで」と本間さん。

2打目 FWトップ気味にあたり、100Yくらいしか飛ばないがフェアウェイ。大御所さんは2打目がOBゾーン付近に飛んでいき、微妙な情勢。

3打目 他人を気にしたのがまずかった。FWでグリーンを狙うも左にそれて、右グリーンなのに左グリーンのガードバンカーにつかまる。今日初めてのバンカーだ。もとよりバンカーは大の苦手。主観では、脱出できないか、ホームランか、を併せれば90%を占めている印象だ。ここまで来てついに後門の狼に捕まったか?

「う~、試練や。試練やぁ~!」思わずうめき声が出る。

4打目 バンカーショットをミスって、ここで大叩きしたら、最悪だ。南無三!うまくでてくれ!58度で打ち、バンカーから出たものの、エッジ近くまで。良かった、大怪我は免れた。。。

5打目 パターで寄せるが、エッジ付近の芝の抵抗と傾斜もあって4mほど残す。寄り切らない。「うん?大怪我せんように、わざと狙わずに打ったの?」と還暦さん。「いや~そんな余裕ないです。一所懸命やって、こうなっちゃってるんです。」

しかし、登りだったので、弱気に負けないように気合で打ったら、入っちゃった。S弁護士、思わず万歳。

「お~、やりおったな、ボギーなら86やで。」と大御所さん。

その後、お三方から「もう、ゴルフやめられへんな」、「あと3年はベストスコアは更新できへんな」、「今日の帰りは事故だけには気をつけるンやな」とさんざんひやかされたが、初の90切りで素直に嬉しかった。

お三方、楽しい時間を有り難うございました。

ちなみに、大御所さんとの勝負は、大御所さんの第2打がセーフで、大御所さんは9番ホールパー。1打差でS弁護士は及ばなかった。

(番外編終了)

ゴルフのこと~番外編2

(続き)

13番(280Y・par4:パー)

右ドッグレッグ。距離は短いが、フェアウエイがカマボコ型に盛り上がっていて、ティーからグリーンは見えず、狙い所が難しい。

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前がつまっていて待ち時間もあったことから、70歳台の方(以下「大御所さん」と呼ぶ。)、60歳台の方(以下「還暦さん」と呼ぶ。)、58歳本間ゴルフのクラブセットをお持ちの方(以下「本間さん」と呼ぶ。)と、いろいろなお話しをする。

「ゴルフやり始めて2年位ちゅうのは分かったけど、ベストスコアはなんぼや」と大御所さんに聞かれ「96です。」とS弁護士は正直に答えておく。見栄を張ったところで実力が上がるわけではないし、そもそも一緒にプレーすればすぐ実力はばれてしまうからだ。大御所さん、かっかっと笑って、「まだまだやな~」と一言。こういう豪快な感じのオッチャン、嫌いじゃないぞ。

還暦さんは、見た目お若く到底60歳には見えない方。本間さんはクラブをきちんとフィッティングされるなどゴルフに真剣な方。大御所さんは結構豪快さん。お三方とも、競技などに参加されているらしい。最初は怖そうな感じに思ったが話してみると、なかなか面白いし、やっぱりゴルフがお好きなんだなぁというのがよく分かる。

閑話休題

グリーンが見えなくて、狙い所が分かりにくいですね~とS弁護士が話しかけると、大御所さんと本間さんが、「フェアウエイからちょこっとだけ見えている木の先があるやろ。そこが狙い目や。」とピンポイントで教えてくれる。そもそも狙った場所に打てるなら苦労はしないが、せっかく教わったのだからそっちを狙うつもりでティーンググラウンドにあがる。

1打目 ドライバーがやや左に出るもスライスがかかってど真ん中

2打目 ウエッジでグリーンエッジまで

3打目 パターで寄せて

1パット

「パーか、意外にやるな」とは大御所さんの一言。

14番(327Y・par4:トリプルボギー)

ひたすら打ち上げていくホール。距離感が難しい。どちらのグリーンでもガードバンカーのアゴが高く、入れたら結構厳しい。

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1打目 ドライバーがど真ん中

2打目 FW7でグリーンオンを狙うも、右に出てグリーン近くのラフへ。暫定球を打とうとしたが大御所さんと本間さんから「あそこならセーフ」とのお言葉を聞いて一安心。しかし、喜んで行ってみると、ボールとグリーンの間に立派な木が。。。

3打目 木が邪魔になって狙えない。誰がこんなところに木を植えたんだ~!と見当違いの文句を言いながら、7番アイアンでグリーンの右端を狙って転がすもグリーンに届かず。エッジまで10Y位残す。

4打目 58度で打つも、飛びすぎて、乗ったところはピンのだいぶ奥。

「ここは奥につけたらあかんのや・・・」と大御所さん、「そりゃ~難しいところやで」は本間さん。「ちょっと、難しいかもしれんね」は、還暦さん。お三方の意見、「難しい」で、そろい踏みかい!

「どうせなら、打つ前に言ってくれ~!」とは、S弁護士の心の叫び。

お三方の予想どおり、やはりの3パット

「う~、そろそろ馬の脚が見えてきたか」とは、S弁護士の独り言。

15番(Bグリーン・145Y・par3:ボギー)

打ち上げのショートホール。傾斜がきつすぎて、途中の池は、ほぼ視界に入らない。またグリーン奥に載せるととても難しいが、グリーン手前だと傾斜がきつく、ボールが転がり落ちてしまう。

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1打目 UT7で真っ直ぐ飛ぶも僅かにグリーンに届かず、きつい傾斜で5m程転げ落ちてくる。

2打目 58度で打つも、ピンの奥へ。

「S、ここはバントやで、入れに行ったらあかん。絶対バントや。それからな、グリーンは、難しい思たらあかん、難しいんやなくておもろいと思うもんや。」という大御所さんのアドバイス。そっか、「難グリーンは、面白いのか。」何かストンと落ちた気がした。大御所さんのアドバイスに従い、1パット目は慎重~に触るだけ、で距離だけを合わせる。

勝負の2パット目は、外れかけたものの、カップの淵をくるっとまわって入ってくれた!

「ラッキー!今日はついてる!」

16番(298Y・par4:パー)

距離の短い右ドッグレッグ。ワンオンを狙いすぎると右の山に打ち込むおそれあり。

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ティーンググラウンドで、前の組が進むのを待っていると、還暦さんが「Sさんには負けへんで~」と素振りをぶんぶん。ゴルフカートには、打数を記録するタブレットが付いていて、それで現在、誰が何打なのかがすぐ分かる仕組みになっている。

還暦さんは出だし2ホール目にOBがあって、何という僥倖か、S弁護士の方が一打だけスコアが良い状態でここまできてしまっているのだった。確かに、ヒヨコがオオカミの前をピヨピヨしてたら、目障りだろうけど、ヒヨコなんで許してくれてもいいじゃない。

「そんなん、すぐ崩れますよ~。還暦さんに勝てるわけないやないですか~」と正直に心情を述べつつも、S弁護士の内心はこうだ。「エライことになってきたなぁ~。上手い人に本気出されたら、どないなるんやろ。」

1打目 その心理的動揺が出たのか、ドライバーはスコンと妙な音を立てた。ボールは右に出て、スライスしていく。「うわ~、やっちゃった~。」思わずS弁護士は言葉を漏らす。しかし、神はまだS弁護士を見捨ててはいなかった。右方向に大きくそれたボールは、山の斜面で、ぽーんと左に大キック(大きく跳ねること)!まさにナイスキックで、斜面からラフまで出てきたのだ。

2打目 この幸運を生かさねば!と気負ったせいか、アイアンで打った第2打は、グリーン左に外れる。

3打目 ウエッジでグリーンに乗せるが、寄せきれない。3~4mは残っている。

 しかし、幸運は続く。大御所さんの第2打が、ほぼ同じ場所で、僅かにカップより遠い位置に落ちてきたのだ。グリーン上のラインは大御所さんのパットが教えてくれる。見ていると、僅かにフックだが思ったほど切れないことが分かった。

「S、ラインを見せたったんやで、わかったやろ」 「うわっかりました!」

緩むなよ~と暗示を掛けつつ、3~4mのパットをほぼ大御所さんのラインどおりに打って、カップイン。

「パーか、しぶとい」と還暦さんの声が聞こえたような気がした。

17番(468Y・par5:ボギー)

ずーっと打ち上げのロングホール。左右ともOBが迫っている。

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1打目 ドライバーがやや左からフェードしてほぼ真ん中へ。我ながら、こんなにドライバーが真ん中へ飛ぶ日は少ない。前回のゴルフではどうやっても真ん中にだけは飛んでくれなかった。それから練習場に行ったわけでもないのに、この調子。全くゴルフは分からない。

2打目 FW5が会心の当たり。ピキーンと金属音を鳴らして、中古で購入した8年落ちのツアーステージViqFW宮里藍ちゃんモデルが仕事をした。「おぉ!ナイスやんか!」と大御所さんからも一言あって、気分は上々、小さくガッツポーズ。

3打目 もしこれでグリーンに乗ったら、次はバーディパットになるかも!と色気を出してUTでグリーンを狙うも、アドレナリンが出過ぎたか、グリーンオーバー。グリーン奥の斜面までいってしまう。

4打目 グリーンが極度の受けグリーンなので、ちょっと大きく打つと、あっという間にグリーンから転げ落ちる危うい状態。ピンチ!グリーン奥の斜面から58度で打つも、びびっていたのかエッジまでしか届かない。

5打目 エッジからパターで距離を合わせる。これも大御所さんが先に打って、距離感を見せてくれていたのが大いに参考になった。我ながらナイスタッチで距離感はばっちりあっていた。但しカップの真横から微妙な距離が残る。

微妙だったが、「パターを真っ直ぐ引いて真っ直ぐ押し出す」と3回唱えて自己暗示を掛けて、1パットで沈める。

18番(380Y・par4:ダブルボギー)

右ドッグレッグだが、ドライバーだと正面を突き抜ける危険がある。左は白杭でOBだが、右は途中まで黄色杭でローカルルールがある。

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1打目 大御所さんがやや左真っ直ぐに出てOB。左は怖い・・・という気持ちが消えないうちに打ったせいか、ドライバーから放たれた打球は大きく右に曲がり、黄色杭のある山中に消え去った。「ありがとう、キラクレノ白色2番、これまでいいスコアを出してくれて・・・」などとボールに対する感傷を述べる余裕などS弁護士にはなく、次をどうするか考えなくてはならない。

大御所さんは、特設ティを使わず打ち直しを選択。

「Sはどうするんや」と大御所さんに聞かれる。

 これは多分、一緒に打ち直そうぜ、ということなんだろうけど、今日の調子だとベストスコアもあり得る。ここでの打ち直しは明らかに危険だ。

 実は大原パブリックのローカル・ルールとして、1打目が黄色杭を超えた場合は特設ティから3打目として打てるという超お得なルールが存在する。S弁護士もそんなお得ルールがあるとはこの間まで知らず、そのとき同伴した方から教わったのだ。

せっかくの大御所様からのお誘いかもしれないが、背に腹は代えられない。

「いいえ、黄色杭なので前から3打目で打ちます!」というと、大御所さんが

「お前、それは進行早めるためのもんやぞ。そんな卑怯なルール、使うたらあかんやろ。」と笑いながら圧力を掛けてくる。

卑怯かもしれないがルールはルールだ。そもそもプレ4だって進行を早めるためのローカルルールなんだし。非難されるいわれはない!

理は吾にあり!

「これは、大原で認められているルールなんですから、それで行きます!」と強気に突っ張った。他の二人も笑いながらこのやり取りを見ている。なかなか良い感じのパーティじゃないですか。なぜか一緒にゴルフをやると仲良くなれることが多いような気がする。

 ちなみに、お三方によると、どうやらこのお得ルールは、公式の試合では認められていないらしい。でも今日は公式試合ではないもんね。

3打目 特ティからアイアンで打つも、大御所さん曰くの卑怯なルールを利用した報いか、グリーン左に外す。

4打目 58度でふわりと揚げてグリーンオン

難しいラインを読み切って入ったかと思ったが、カップにけられて2パット。

ここで前半修了。

数えてみると、45打。単純に後半も同じペースでまわれば、取らぬ狸の皮算用だが、90だ。これはひょっとするかもしれんが、ゴルフは上がってみなければ分からない。

「おお、今日はベストスコア更新と違うか」とお三方に冷やかされながら、昼食休憩へと移った。

(続く)

ゴルフのこと~番外編1

 ゴルフのこと~7の続きを書くべきなのですが、昨日、ベストスコアが出ましたので、嬉しさのあまり備忘録を兼ねて、そのご報告をさせて頂きます。

なお、ゴルフコースのコース図は、京都大原パブリックコースのHPより引用致しました。

(本編開始)

もともと、S弁護士は安定した球筋ではないため、右や左に打球がぶれる。もちろん素人に毛が生えたくらいのゴルフ歴(本格的に練習を始めて2年未満)しかないので仕方がないのだが、そのせいもあって、フェアウェイの狭いゴルフコースは苦手である。

おもむろにドライバーを構えて、(自分にとっては)完璧な素振りを披露しても、いざ打つとなると、スパーンとかピキーンとか、快音を発して飛ぶ打球はそう多くはない。ペコッとか、ポカッとか妙な音を残した、S弁護士の打球は、無理矢理捕まえられていた野生動物が暴れたあげくにその拘束をふりほどき全力で逃げ去るように、右の山の中や左の谷底のOBゾーンへと、一目散に消えていき、そのまま野に帰ってしまうことも多いのだ。

OBは1打罰での打ち直しか、前進して特別ティから4打目の打ち直しである。一日にOBを3発も撃とうものなら、S弁護士の腕では100切りはほぼ絶望である。

だから、S弁護士は狭い山岳コースは苦手である。

 ちなみに大原パブリックコースは、スコアカードによれば、距離こそレギュラーティから5921Yしかないが、京都大原三千院のさらに奥の静かな山中に作られた、れっきとした山岳コースである。しかも、良く通っている人に言わせれば、「平らなところがどこにもない。だから面白い。」と評価されるほどアップダウンに富んだトリッキーなコースである。

 一度前半のスコアを嘆きつつお昼を食べながら、「さすがに最初のショットを打つティーインググラウンドくらいは平らなんじゃないですか」、と反論してみたこともあるが、ベテランのゴルファー曰く、「あほやな。よう見てみい。水はけのために絶対に傾けとんねん。」と、ばっさり斬られた。

 昼食後に、後ろに下がってよ~く見てみると、ティーインググラウンドも確かに傾いている。

 このようなことから、実はS弁護士は、大原パブリックを大の苦手にしていた。しかし自宅から最短20分で行ける地の利は捨てがたく、この1年11ヶ月で2ヶ月に一度くらいのペースでラウンドしていた。

 もちろん、スコアは、いつもはかばかしくなかったが、そんな大の苦手コースでベストスコアが出てしまうというのも、ゴルフの不思議なところである。

11月13日 大原パブリックゴルフコース(INスタート)

1人予約で、参加してみたところ、全員私よりも年輩の方々。60歳前後の方がお二人、70歳台の方がお一人だったが、スタート前に同伴者に話しかけて聞いたところ、全員ゴルフ場の競技に参加したりしている強者らしい。おいおい、聞いてないよ。プロフィールにはみんなアベレージ90台って書いてなかった?エンジョイゴルファーって書いていたよね?

しかも、70歳台の方に対して、いつもお名前拝見してますと60前の方が話しかけているようだ。

これではオオカミの群れの中に放り込まれたヒヨコ状態ではないか。

これはえらいところに紛れ込んでしまったもんだ。

緊張!しながらのラウンド開始。

幸いにも、ティーショットの順番はくじ引きで3番目を引き当てた。もちろん、スタートホールのティーショットは最初に打ちたくはない。かといって最後だと、前の3人がナイスショットをしたときのプレッシャーが半端じゃない。だから、S弁護士にとって3番目はベストのスタート順だと言ってもいい。

10番(Bグリーン・321Y・par4:ボギー)

左ドッグレッグ打ち下ろして打ち上げていくホール。ドライバーだと正面を突き抜ける危険もある。

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1打目 ドライバーで、正面やや左のラフ~なんとかOBにならずにすんだし、距離もそこそこ出たので、S弁護士としてはまあまあのティーショット。

2打目 アイアンでBグリーン左サイドまで~なんとか距離はほぼ正しく打てた。方向性がずれたがそこまで求めるのは贅沢ってもんだ。

3打目 パターでグリーンオン~S弁護士の見たDVDでは、「初心者は徹底して転がせ、パターが使えるならパターで行け」、との教えがあった。教えに忠実にパターでグリーンに載せる。

2パットでなんとか上がる。

11番(Bグリーン537Y・par5:パー)

豪快な打ち下ろし。まるでスキー場のような傾斜で結構転がってくれる。左右OB。

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1打目 ドライバー~やや左に出て、一瞬やばい!と思ったものの、幸いなことにスライスがかかって、落下地点はど真ん中。行ってみると特ティ近くまで転がっていた。

2打目 FW5~スキーのゲレンデの途中でボールが止まったような状態で、かなりの左足下がり。できるだけ斜面に平行に振ろうとだけ考えて振ったら、ピキーンと会心の当たり。打ち出し方向が低く、あまり距離は出なかったがフェアウェイに。

3打目 UT7~比較的平らなフェアウェイから、U7に賭ける。シュトンという変な打音でひやっとしたが、なんとかバンカーを避けてグリーン 手前ラフに落ちてくれる。カス当たりしたから助かったのか?

4打目 ウエッジ~ラフでパターが使えず、58度ウエッジで、グリーンオン。狙った方向とずれたが、ラッキーにもグリーンの傾斜で寄ってくれた。

少し長めのパットが入ってくれて、1パット

12番ホール(Bグリーン・154Y・par3:ボギー)

谷越えのショートホール。ハンディキャップ18で最も易しいホールとされているが、これまで何度谷を越えられずにボールをなくしたことか。

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1打目 UT7~UT9と迷ったものの、谷に落ちたら怖いのでUT7を選択。比較的真っ直ぐ飛んでくれたが、グリーン左ラフにはずす。OBにならないだけ良かった。

2打目 ラフでパターが使えず、ウエッジで転がす。一応オンはするがピンには寄らない。そうそう都合良く、上手く行ってくれるはずがない。

2パットでボギー。

 素人ゴルファーはまずボギーオンとボギーを狙えと、以前読んだゴルフ指導書にも書いてあったし、その本から見てもボギーはS弁護士にとってはパーの価値がある。

 オオカミの群れの中で必死になって、藻掻いていたのだが、なぜだか出だし3ホールは上々の滑り出しとなった。

(続く)

企業における法科大学院修了生・社内弁護士の活用状況~経営法友会の報告書

 正直言って何をやっているのか分からない「法曹養成制度改革連絡協議会」に対して、経営法友会から企業における法科大学院修了生・社内弁護士の活用状況についての報告が提出されている。

 経営法友会が、平成27年に6193社に対してアンケート調査を行い、960社からの回答を得た上で、分析を加えたものらしいが、アンケート結果にはなかなか興味深いものもある。面白いものをいくつかご紹介しようと思う。

1 法科大学院修了生の採用後の処遇
  同年代の大卒者と同等     23.0%
 同年代の大学院終了者と同等  50.2%
  何らかの優遇措置をとる     1.8%
  専門職として処遇する      0.5%
  その他             3.7%

→つまり、法科大学院を修了しても企業に専門職として扱ってもらえる可能性は、わずか0.5%(200人に1人)である。
 アンケート結果から見れば、法科大学院の修了生が他の大学院修了者と同等の処遇(学歴どおりの処遇)をうける可能性は約50%、法科大学院を修了していながら、大卒者と同等の扱い(学歴以下の扱い)を受ける可能性が23%となっている。
法科大学院といえども専門職大学院であるから、修了生には少なくとも大学院終了者程度の扱いがあって当然であると思われるところ、アンケートからは学歴以下の扱いをしている企業が1/4もある。これは、企業側が法科大学院卒業生に対して、学歴相応の価値を見出せていない実態を明らかにしているといってもよいのではないだろうか。

2 社内弁護士の活用
専門的見地からのメモランダムや契約書の作成   44.6%
弁護士資格を持たない法務部員を変わらない    42.1%
社内法務教育の講師               40.8%
コンプライアンス関係の指導・援助        31.8%
社外弁護士からの意見書・鑑定書・アドバイス等
に関するチェック機能              31.8%

→メモや契約書の作成が最も多く、その次に多いのが他の法務部員と変わらないという回答である。もちろん、弁護士としての専門性を生かした使い方をされている企業も多いはずだが、アンケート結果から明らかなように、せっかく社内弁護士を採用しても、メモ・契約書の作成、が最も多い仕事で、その他は他の法務部員と変わらないというのであれば、社内弁護士の意義について、企業はそう高い価値をおいていない可能性があるようにも読める。

3 社内弁護士に対する今後の採用意欲
(社内弁護士が在籍する企業の回答)
是非採用したい    25.8%
できれば採用したい  27.8%
応募があれば検討する 36.1%
採用するつもりはない  3.9%
無回答         6.4%

→上記の回答から、経営法友会は、「約9割の企業が社内弁護士の採用に意欲を見せている。」と結論づけているが、極めて強引に企業の採用意欲を認定したとの感を禁じ得ない(率直にいえば、「データを曲解して嘘の分析結果を報告するな!」というべきか。)。
 しかも上記のアンケートは、既に社内弁護士を採用し、現在も在籍させ続けている企業の回答であることに注意すべきである。簡単に例えていえば、トヨタ車に乗ってトヨタディーラーに来た人に、トヨタ車をまた買いますか、と質問しているようなものである。当然、トヨタ車を買いたいという回答が多数を占めて然るべきと思われる質問だが、回答結果はそうではない。
 このような企業であっても、社内弁護士を是非採用したいという企業は1/4にすぎないのだ。
 現在社内弁護士を在籍させている企業であっても、次の社内弁護士採用に関しては、「応募があれば検討する」、「採用するつもりはない」という回答に見られるように、採用に消極的な企業が40%にも達していることは、極めて示唆に富む回答である。

 アンケート結果からは、「企業としては社内弁護士に(日弁連や法科大学院教授が主張するほど強い)魅力を感じてはいない」と結論づけるのが素直な分析というべきではなかろうか。

 さらに疑問に思われるのは、社内弁護士に対する今後の採用意欲に関するアンケート結果は掲載されているが、法科大学院修了者に対する企業の今後の採用意欲に関するアンケート結果が掲載されていないことだ。
 このレポートの結論は、「企業には法務人材への旺盛なニーズが存在している。」となっている。法科大学院修了者も法務人材であり、法務人材に対する旺盛なニーズがあると結論づけるなら当然、法科大学院修了者に対する企業のニーズも根拠資料としなければならないはずだが、それがなぜか欠落している。
 なお、この調査は、設問数81(枝問を含めると約300問)ものアンケート調査であり、しかも社内弁護士・法科大学院修了者の双方について回答を求めたアンケートであると思われるうえ、法科大学院修了生の処遇にも質問していながら、今後の採用意欲についての質問をしていないとは考えにくい。法科大学院修了者に対する企業のニーズに関して、何か不都合なアンケート結果が出たのではないかとの疑念が生じてしまう。

「法曹養成制度改革連絡協議会」の委員の方には、分析に正確性を欠く可能性が高い当該レポートの結論だけを鵜呑みにされるのではなく、正確なデータを求めて頂いて、現実をきっちり把握して頂きたいと切に願うものである。