新司法試験に合格し、1年間の司法修習生活を送った最後に待ち受けているのが、司法修習生考試、通称2回試験だ。
私の時代は、ほぼ全員が就職が内定した状態で、2回試験の心配だけしていれば良かった。幸い、検察教官の「どうせ高く飛べはしないんだから、低空飛行でも良いから、とにかく地面から浮いていろ!」という激励の言葉が良かったのか、私のクラスは全員が2回試験に合格できた。
しかし今は、2回試験合格の心配に加えて、多くの修習生が、弁護士激増のあおりを受けて就職の心配を抱えているはずだ。
聞くところによると、今年の2回試験の合格発表は12月14日、弁護士会への一括登録日は12月15日だが、一括登録日に登録請求をしている人数は、最新の情報では、1400人に満たないといわれているそうだ。
新64期の修習生が2023名、2回試験再チャレンジ組が24名ほどいるはずだ。仮に2回試験に95%が合格するとして、約1945名が法曹資格を得る計算だ。
そのうち、裁判所・検察庁への採用が各々100名程度とすると、弁護士登録を希望する司法修習生の数は、1745名ほどとなる。
仮に1400名が一括登録希望しているとしても、約350名が一括登録時に登録できない計算になる。
弁護士志望が1745名としてそのうち350名が一括登録できない状況だから、弁護士志望者のうち20%は計算上、一括登録時点で就職がないことになる。
就職超氷河期といわれている昨今だが、大卒の内定率は昨年4月時点では、91%だ。
弁護士資格を得てから就職するより、普通の大学生の法が遥かに就職率は高いのだ。しかも弁護士資格を得るためには、法科大学院に高い授業を払い、司法修習生活も借金生活に変更された。これでは優秀な人材が法曹界を目指すはずがないだろう。
公認会計士試験は、資格の魅力が失われかねない等の理由で大幅に合格者を減少させ、一時は3000人以上もあった合格者を1500人程度まで減少させた。正しい判断だろうと思う。公認会計士の数がアメリカに比べて遥かに少ないにもかかわらず、私の知る限りマスコミは全く非難しなかった。
国民の皆様が、いざというときに、依頼する弁護士が優秀でなくても仕方がないというならやむを得ない。しかし、本当にそうなのだろうか。一生に一度の裁判で、裁判官がボンクラでも良いという人はいないだろう。いざというときに依頼する医者が藪医者でも良いという人も、まずいないはずだ。
優秀な人材を、法曹界に招き入れるという点において、現在の制度はリスクが高すぎるし、合格者数(以前の4倍)はあまりにも多すぎる。合格者が多いということは同時に、質の問題も発生する。
乱暴な言い方になるが、現在定員3000名の東大の合格者を4倍の1万2000人にしたときに、今まで通りの東大合格者の質を維持できるのかと聞かれれば、誰だって無理だというに決まっている。
しかし、法科大学院維持派の大学教授達、マスコミだけは、無理ではないと言い張る。
一体、いつになったら、こんな簡単なことに気付いて、目が覚めてくれるのだろうか。
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