中学生にも分かる新自由主義1

中学生にも分かる新自由主義1
 (菊池英博著「新自由主義の自滅」(文春新書)を教科書として)

N:おじさん、最近新聞で「新自由主義」って言葉を見たんだけど、どういうこと?
O:最近って(笑)。随分前からいわれていたと思うよ。それでも、新聞を読むのは良いことだ。さて、質問に答えていくと、新自由主義という考え方を創りだしたのは、1912年生まれのミルトン・フリードマンという経済学者だといわれているよ。

N:へ~。経済学者が言い出したのが「新自由主義」かぁ。言い出したフリードマンって学者なんだ。エライ人なの?
O:フリードマンの両親はハンガリー出身のユダヤ人なんだそうだ。両親はヨーロッパのユダヤ人迫害を逃れて米国に渡り、下積みの仕事などをして生計を立てていたようだよ。フリードマン自身も苦学して奨学金を受けて大学を卒業し、シカゴ大学で修士号、コロンビア大学で博士号を取り、シカゴ大学の教授になったんだ。

N:ふ~ん頑張ったんだね、フリードマンは。えらいじゃん。
O:ところが、フリードマン経済学とその思想は、実現していくと自然と、富が1%の富裕層に集中するよう仕組まれていたんだ。しかもその思想の信奉者は政治と結びついて、それを一生懸命に現実化しようとしてきたと評価する人もいる。

N:えっ!なにそれ。フリードマンは苦労してたんじゃないの。
O:苦労した人が、今も苦労している人を配慮するとは限らないのが人間の難しいところだね。フリードマンがそうかどうかは分からないけれどね。でも、1965年の国際通貨危機の際に、フリードマンがイギリス通貨のポンドを空売りして儲けようとしたが銀行に断られ、真っ赤になって激怒したと伝えられている。

N:空売りってなんだかよく分からないけれどなに?
O:空売りとは、難しくいえば、投資対象である現物を所有せずに、対象物を将来的に売る契約を結ぶ行為だね。分かりやすくしてみようか。例えば、今はチョコレートを手元に持っていないんだけれど、コンビニで100円で売っているAチョコレートを1週間後に友達に100円で売ってあげるという約束をしたとしよう。ところが約束の3日後にAチョコレートが80円に値下がりしたとしたら、どうなる?

N:そりゃあ、80円でコンビニで買って、約束通り100円で友達に売ったら20円儲かるよね。
O:簡単にいえば、それが空売りの儲ける仕組みさ。特に君が、友達と約束するときに、かなりの確率でAチョコレートの値段が下がると知っていたらどうだろう。

N:なるほど。それならいっぱいAチョコレートを100円で売る約束をしておけばそれだけ儲かるよね。友達には悪いけど。
O:なんだ、悪い奴だなぁ(笑)。まあ、実際には、そう読み通りには行かないこともあるんだけど、投資家はこうやって儲けていたりもするんだね。話を戻すと、フリードマンは、ポンドを空売りしようと銀行に行ったんだが銀行からは断られたんだ。

N:なんでなんで?
O:当時は、通貨の売買に空売りのような儲けるためだけの投機的な取引は禁止されていたのさ。フリードマンに空売りを申し込まれた、シカゴのコンティネンタル・イリノイ銀行は「我々はジェントルマンだから、そういうことはやらない。」と断ったそうだ。

N:へ~。銀行もなかなかやるね。かっこいいじゃん。
O:ところが、フリードマンは相当頭に来たらしく、シカゴ大学に戻ってランチの席で「資本主義の世界では、儲かるときに儲けるのがジェントルマンなのだ!」と演説をぶったらしい。

N:でも、儲かるけど禁止されていたことなんだよね。それができないからって怒るのは筋が違うような気がするんだけど。
O:その通りなんだね。しかし、フリードマンは激怒した。儲け損ねたからだ。ここから分かるように、社会での決まり事や道徳的なことを尊重しようとする考えはフリードマンにはなかったとも評価できる。儲かることが正義で、儲けることだけが全てだという発想がその背景にはあるかもしれない。このようなフリードマンが創始したのが新自由主義なんだ。

N:う~ん。確かに、最近は儲かりさえすればいい、ばれなきゃいい、というようなことがあるようにも思うよ。レストランのエビの表示が嘘だったり、自動車の燃費が嘘だったり・・・。
ん?ちょっと待てよ。おじさん、新自由主義ってもう日本の中に入り込んでるんじゃないの?。

O:そうだね、新自由主義についてちょっと勉強してみるかい?
N:うん。ちょっと興味出てきた。

(不定期ですが連載予定)

認定司法書士の裁判外和解に関する代理権の範囲

 最近でこそ減ったものの、一時は地下鉄の吊り広告やスポーツ新聞の広告欄に、借金問題(債務整理)を扱うという、司法書士や弁護士の広告が数多く出されていた。

 もちろん弁護士は、全ての法律問題に関して、全く制限なく、依頼者の方を代理できる。
 一方、研修を受けて認定を受けた認定司法書士は、簡裁民事訴訟手続の代理権を司法書士法で与えられるため、140万円の範囲で依頼者を代理、即ち依頼者の代わりに代理人として行動することが可能である。

 債務整理に関しては、弁護士は全ての案件を扱えるが、認定司法書士には上記の法律の制限があるので、争いがあった。すなわち、借金問題はほぼ定型的な処理が可能な類型であり、仕事としては効率がよいので、簡単に言えば、司法書士側はとしてはできるだけ扱える範囲を大きくしたい考えがあり、弁護士側としては法律の制限を厳格に守れとの考えがあった。

 弁護士側の言い分は、誤解を恐れずに単純化していえば、法律には140万円の範囲と書いてあるのだから、借金として1債権者から請求されている額が140万円を超えている場合、借金総額が140万円を越えている場合は、司法書士には代理権がないというもの。
 認定司法書士側の言い分は、誤解を恐れずに単純化していえば、140万円というのは経済的利益だから、仮に債権者から250万円の請求を受けていても債務整理して借金を120万円に減額できれば、経済的利益は250-120=130万円であり、140万円の範囲内といえるから、代理権はある、というもの。

 今回の最高裁第1小法廷平成28年6月27日判決は、
「債務整理を依頼された認定司法書士は、当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が法3条1項7号に規定する額を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することができないと解するのが相当である。」
 として司法書士側の言い分を退け、
「上告人(認定司法書士)は、本件各債権に係る裁判外の和解について代理することができないにもかかわらず、違法にこれを行って報酬を受領したものであるから、不法行為による損害賠償として上記報酬相当額の支払い義務を負うというべきである」
 と判示した。

 つまり、1件あたりで請求されている債権の価額が140万円を超える借金に関する債務整理は、認定司法書士の代理権がないので、認定司法書士が代理して整理することは違法行為であり、依頼者は債務整理に関して司法書士に支払った報酬を返してもらえるということだ。

 例えば、A・B・C3社から合計300万円の借金をしていた人が認定司法書士に債務整理を依頼した場合、
①A社から100万円、B社から100万円、C社から100万円を借りていたのであれば、各社からの借金は全て140万円以内だから、認定司法書士が債務整理を代理できるので、適法な債務整理となる。この場合は、適法な債務整理がなされているから司法書士報酬を返してもらえない。
②A社から150万円、B社から100万円、C社から50万円借りていたのであれば、B社とC社の債務整理は問題がないが、A社との債務整理は140万円の価額を超えているので認定司法書士に代理権がないため違法な債務整理となり、A社の債務整理に関して認定司法書士に支払った報酬は返してもらえる、ということになる。

 違法な債務整理を行った認定司法書士に対する報酬返還の裁判は、今回の最高裁判決が出てしまったので、一定の証拠さえあれば、ほぼ負けようがない裁判になる可能性が高い。

 認定司法書士への報酬返還を、新たなビジネスチャンス・仕事の掘り起こし、と考えて、大々的に広告をうち、集客を図る法律事務所が出てくる可能性もあるかもしれないね。

ゴルフのこと~1

 15年ほど前、S弁護士がイソ弁として勤務していた事務所では、ボス弁は3人ともゴルフをやっていた。

 そして、S弁護士もボスからもゴルフをやることを勧められた。大の大人が止まっているボールをぶっ叩いて、穴ぼこに入れて、何が面白いんだろうと思いつつ、父親に聞けば、誰かに習った方が良いとのこと。

 ふーんそうなのか、意外に素直なS弁護士は、インターネットで探して、近くのゴルフスクールに体験入学してみた。確か5000円で3回くらいのお試しレッスンだったと記憶している。

 最初は握り方を教わって、6番アイアンを振らされた。

 上手く当たらない。

 空振り、カスあたりの連続だ。

 止まっている球の方があたらんのか!

 「なんじゃあこりゃぁ~」と心の中で松田優作っぽく愚痴りながら、クラブを振り続ける。

 あまりに苦戦していることに気付いたのか、若い女性を熱心に教えていた、ゴルフのコーチが時折こちらを見て、S弁護士に向かって、「そうじゃなくて、こう振るの。」と身振りで示すが、そんなスイングができるなら、そもそもここに来ているわけがないじゃない。

 あかん、わからんわ。そんな身振りで示されたって、すぐに再現できる程の運動神経がある人なんてどこにいる。そんな運動神経あったら、こんなとこ来るかいな!

 心の中で文句を言いつつも、カスあたりは続く。

 極めて恥ずかしい。

 スクールには、中学生くらいの子供も、若い女性もいるが、間違いなく段違いに、ええ歳こいたS弁護士が下手っぴーなのだ。当たり前と言えば当たり前なのだが、当時はまだ見栄もあったのだろう。恥ずかしくって仕方がない。

 見かねたコーチがつかつかとやって来て、「トップはここ」、と力任せに身体をひねられた。S弁護士の、脇腹には激痛が。。。

 くそーこんなスクール、誰が来てやるか!と思いつつも既に払ってしまったレッスン料はちともったいない。

  そこで耐えて、3回目のスクール。

  別のコーチがS弁護士のスイングを見て、「そうじゃなくて、バチーンと打つの。バチーンと」と口頭指導。

 そのバチーンができるんやったら、苦労せんがな。

 それに、バチーンてなんやねん。

 大阪のおばちゃんの、「ゴキブリが、わーってやってきてなぁ」の「わーっ」と変わらんやないの。

 もうこれはあかん。

 スクール行っても無駄やわ。

 バチーンが分からんS弁護士に、なんぼ指導して頂いても豚に真珠どす。

 ということであえなく、S弁護士のゴルフスクールは、きっかり三日坊主で修了することになった。

 その後何度か、友人に誘われて無理矢理コースに出たこともあるが、ティーグラウンドで友人と別れ、綺麗に整備されたフェアウェイには近寄らず、急斜面やら林やらをゲリラ戦のように渡り歩き、あらぬ方向からグリーン付近に現れて、バンカーの往復びんたから5パットかギブアップという盛りだくさんの内容で、何~にも面白くなかった。

 自分が何打打ったのか分からなくなるので、打数カウンターを買ったものの、10カウントでは足りないことが分かり、15カウントできるものに買い換えたりもしたが、やっぱり面白くも何ともない。

 友人のM弁護士に打ちっ放しに連れて行かれたこともあるが、打席に入り、おもむろにドライバーを振ったら、ボールは物理法則を無視したかのように、ほぼ垂直に舞あがり、真上の屋根に直撃!

「どんな打ち方したら、そんな方向に飛ぶネン?」とあきれられた。

 極めつけは、左ヒジを打撲していたのに、人数が足りないからと無理矢理連れて行かれた北海道で、初日3ホール目くらいにバンカーで大ダフリをやって、更に左ヒジを痛めクラブが握れなくなり、途中リタイヤ。

 翌日は、性懲りもなくゴルフに出かける友人と別れ、美術館と円山動物園のシロクマを見物して時間をつぶす、という何のために北海道に行ったのか分からないことまでやってのけた。

 もうやめだ~。終了~~~~!

 とおもって、S弁護士はゴルフなんぞ記憶の片隅に追いやっていたのですよ。

 ところが・・・・。

(つづく)

本当に法科大学院はバラ色か?(5.26ブログの後記)

 H28.5.26のブログに掲載した、回答率を記載していない文科省のアンケートであるが、さる筋から当該アンケートに関する資料(契約書等)を入手したので、その情報から、本当に法科大学院はバラ色なのか、もう一度ざっと検討してみようと思う。

 当該アンケートは、文科省が株式会社ジュリスティックスと契約を締結して実態調査を行わせたものである。
 (株)ジュリスティックスは、「ジュリナビ」という、法科大学院修了生、在学生の就職支援を生業としている会社であり、もともと、法科大学院に好評価の結果が出ないと自らもおまんま食い上げになりかねない、法科大学院の利害関係者であると思われる。(業務計画書には次の通り記載されている。『株式会社ジュリスティックスは、平成19年度「専門職大学院等における高度職業人養成教育推進プログラム」に選定され、文部科学省より助成を受け、明治大学を主幹事校とする13法科大学院により2008年春から運用を開始した、法科大学院修了生と在学生を対象とする就職・キャリアプランニング支援のためのプロジェクト「ジュリナビ」の実務上の運営主体です。』)

 さて、それを措くとして、問題のアンケート対象であるが、調査対象については業務計画書の表1に明記されている。

 法科大学院修了生は概数38,769名、2008年度以降の「ジュリナビ」登録の全国法科大学院修了生は概数16,000名とされているが、重複を許すものとして調査をしている。その結果、合計約54,769名にアンケート調査を行ったと考えるのが自然である。
そして有効回答数が
①修了生の就業先業種では有効回答数 1274(約53,500名は不明)
②修了生の法科大学院教育に対する満足度では有効回答数 1512
                      (約53,250名は不明)
なのだから、回答率は2.32%~2.76%でしかない。また、どうやって有効回答か否かを判断したかも分からない。
 これでは大した分析も出来ないと思うのだが、豈図らんや、(株)ジュリスティックスは、法科大学院高評価の結論を導き出して見せている。

 更にどういう趣旨なのか分からないが、ジュリナビ登録の法科大学院修了生に限って、「メールのコメント反映すること」との付記がある。
 ヒアリング調査分析については、「ジュリナビ登録の修了生ならびにジュリナビ利用で修了生の採用実績のある企業所属の修了生にヒアリングを開始し、より具体的な就業状況、法科大学院で学んだことの中で実際に業務に役立っていること、法科大学院の魅力等について取りまとめる。」と明記されている。法科大学院の問題点について取りまとめる視点は一切ない。
 これって、実態調査というよりも結論先にありきの偏った調査を行うことを前提とした仕様ではないのか。ひかえめに見たとしても、この時点で出来レース感を払拭できない。

 次に、法科大学院修了生に対する法律事務所の満足度調査であるが、どうやら、新60期以降の弁護士が複数名所属する法律事務所を中心に調査を行ったようだ。(株)ジュリスティックスの算出した概数では6500事務所がその対象となっているらしい。そのうち、有効回答数は775である。
 非常に満足が148事務所、満足が279事務所、どちらでもないが259事務所、不満が57事務所、非常に不満が32事務所となっている。約5700の事務所がノーコメントだ。
 採用者の声欄の中規模・一般民事系法律事務所代表弁護士のコメントは、一見法科大学院卒業生に対する高評価とも取れるが、結局は民間企業で経験を積んできた人への評価をしているだけである。結論的に、法科大学院生ならでは、と無理矢理法科大学院と結びつけている感が否めない。

 公的機関や企業の満足度調査については、どれだけの数を調査したのか明確ではないが、
a 新60期以降の弁護士、法曹有資格者、修了生の所属する行政機関・企業約600、
b 上場企業を中心とする大手企業約3150,
c 経営法友会加盟企業・組織内弁護士協会弁護士所属企業約1180、
d ジュリナビ利用で修了生の採用実績のある行政機関・企業等約250
が対象のようである。
合計で約5180。これは重複しない数字だそうだ。

 ちなみに経営法友会は、法科大学院と組んでしょっちゅうセミナーをやっていたりする。かなり法科大学院よりの団体と見受けられる。

 それはさておくとしても、大手企業の3150社を除くと、法科大学院出身者を採用してその者、若しくは新たな法科大学院出身者が所属し続けている企業等がメインの調査対象のようだ。それなら満足度が高くて当然だ。満足したからこそ継続して所属させているのだろうし、再度採用したりもするだろうからだ。しかし、本来なら一度でも採用しているところ全てを調査対象とすべきはずだ。なぜなら、一度法科大学院出身者を採用して失敗し、二度と採用していないところもあるはずだし、そのような企業・公的機関も対象として取り込まないと法科大学院終了者に対する評価について、正確な判断はできないからだ。

 例えていえば、トヨタ車が好きな人を調査するのに、トヨタに車を買いに来る人だけを調査して、「トヨタ車の好感度は90%だ。だから全国民の90%はトヨタ車が好きなのだ。」、と結論づけることはできないだろう。

 さて、そのような偏った対象を調査した結果になるとは思うが、
④修了生に対する公的機関の満足度では有効回答数 32
⑤修了生に対する企業の満足度では有効回答数 110

 総務省によれば市町村の数は平成26年4月で1718、これに都道府県や特別区、中央官庁を加えれば、かなりの数になる。もっとも、その中で法科大学院出身者を採用している公的機関がどれだけあるのか全く分からない。仮に分かったとしても現在採用している公的機関が対象だから、先のトヨタ車の例から分かるように、偏ったデータになることは明白だ。
このデータで、ホントにきちんとした分析が出来るとは思えない。

 企業についてはかなりの低回答率である。上場企業を中心とする大手企業約3150,経営法友会加盟企業・組織内弁護士協会弁護士所属企業約1180、だから、少なくとも4330社はあるはずだ。
 法科大学院寄りと思われる経営法友会加盟企業・組織内弁護士協会弁護士所属企業約1180を調査対象に入れた上で、なお単純回答率2.54%である。
 つまり97%以上の企業は無関心というのが素直な分析になってもおかしくはない。

 なお、業務計画書には、企業等に対して採用実績と今後の採用希望も調査するようになっている。そして、その結果を一番知りたいのが法科大学院であり法科大学院志願者だと思うが、私の見る限り採用実績と今後の採用希望に関するアンケート結果はどこにも記載されていないぞ。
どうして結果が出てないんだろう?
表沙汰にできない調査結果でも出たのではないかと心配になってしまうね。

 法科大学院って、本当にバラ色なんですか?
 それならどうして、志願者が減っているんですか?

 誰か教えて下さい。