今年も1年間、まことに有り難うございました。

本年の当事務所の業務は本日(12月28日)で終了致します。

2022年も、新型コロナウイルスの流行はおさまらず、超円安など、様々な出来事がありましたが、当事務所では弁護士・事務員を含め、なんとか無事に年末を向かえることができました。

 これもひとえに、当事務所を支え、応援して下さった皆様のおかげであり、弁護士・事務員一同、皆様に深く感謝しております。

 新年は、1月4日までお休みを頂き、1月5日より通常業務を開始致します。

 

 今年1年間の皆様から頂いた御厚情に感謝致しますとともに、皆様が良き新年をお迎え下さることを祈念させて頂き、年末のご挨拶とさせて頂きます。

 

今年も1年間、当事務所を御支援賜り、まことに有り難うございました。

重ねて御礼申し上げます。

(ヴェローナの郊外の民宿で)

法科大学院制度に一言

 

 法科大学院側が金科玉条の如く振り回す、司法制度委改革審議会意見書(2001年6月12日提言)の、法曹養成制度改革の箇所には、以下のように記載されている。

①「司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備することが不可欠である。」

②「21世紀の法曹には、経済学や理数系、医学系など他の分野を学んだ者を幅広く受け入れていくことが必要である。社会人等としての経験を積んだ者を含め、多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れるため、法科大学院には学部段階での専門分野を問わず広く受け入れ、また、社会人等にも広く門戸を開放する必要がある。そのため、法学部以外の学部の出身者や社会人等を一定割合以上入学させるなどの措置を講じるべきである。その割合は、入学志願者の動向等を見定めつつ、多様性の拡大を図る方向で随時見直されることが望ましい。」


 まあ要するに、①で法曹養成には法科大学院によるプロセスによる教育を実施することが不可欠だ、②で法曹の多様性を確保できるよう人材確保を図る、ということを目標にしているってわけだ。


 さて、法科大学院制度は2004年4月に設置されたが、その後20年近く経過している。
 当初68校(最終的には74校)開校された法科大学院だが、現在35校しか学生を募集していないから半分は潰れてしまったということだ。それだけでも近年希に見る大失敗事例であることは明白である。
 また、実際に司法試験受験者も激減するなか、法科大学院維持のために司法試験合格者を減らすことができないこともあって、今や司法試験も受験者平均点よりも50点以上下回っても合格できる試験になってしまった。
 このように、私から見れば、法曹の人気凋落と法曹の全体的レベルダウンに、力一杯貢献しているのが、われらが法科大学院制度である。


 この点、先日の公明新聞の記事のように、法科大学院出身の法曹は優秀であると根拠なく主張する者もいる。
 しかし司法試験合格率が、実受験者比で、予備試験組(約97.5%)に比べて法科大学院組は圧倒的に低い(約37.7%)こと、大手法律事務所が競って予備試験合格者を囲い込もうとしていること等からみても、法科大学院出身の法曹の全体的レベルが優秀だとは到底いえないことは明白である。

 ちょっと脱線したが、話を戻すと、文科省内の法科大学院等特別委員会(第108回配付資料)で、法科大学院のさらなる充実に向けての議論まとめ案が、出されている(資料3)。ちなみに、この特別委員会には弁護士の菊間千乃さんも参加されているが、「周囲の社会人法曹志願者には予備試験を勧めている」と述べた当初の勢いは何所へやら、今は法科大学院礼賛の意見がほとんどになってしまっているのが残念だ。

 さて、上記資料3は、今後の法科大学院の目標と言い換えても良いだろう。そこに大きく書かれているのは、
 ①多様なバックグラウンドを有する人材の確保
 ②プロセス改革の着実な実施、法科大学院教育の改善・充実
 なのである。

 ちょっと振り返ってみれば、この二つは、司法制度改革審議会意見書が目指した法曹養成制度の目標と変わらない。
 だとすれば、司法制度改革審議会が法科大学院制度を創設して実現しようとした目標を、法科大学院は設立後20年近くかけても、ほとんど実現出来ていないことを自白しているということになりはしないか。

 以前もブログに書いた気がするが、法科大学院等特別委員会は、受験生の予測可能性を奪うような制度をいじる提言ばかりやるのではなく、まずは、自分達が根拠なく素晴らしいと絶賛している法科大学院での、教育効果がきちんと上がっているかどうかを検証すべきだ。
 方法は簡単だ。
 法科大学院出身者の司法試験答案を読めば一目瞭然のはずだ。答案には受験番号だけで氏名の記載もないだろうし、守秘義務を課せば、なんら問題は無いだろう。
 なぜ、やらないのだ。


 売れないうなぎ屋の業務を改善をしようとする際に、まずその店で出されているうなぎの味を確認するのが最優先事項だろう。
 客層だとか、立地条件とか、調理器具とか、衛生状態の問題とか、売れまくっている競合店への非難(予備試験制度への批判)等は、自らが提供するうなぎの味が調ってから検討すべき問題であるはずだ。
 法科大学院はもう18年間も売れないうなぎ屋であることを、上記資料3で自ら明らかにしているのだから、自分の店のうなぎは美味いのだ!(法科大学院教育、プロセスによる教育は素晴らしい、法科大学院出身法曹は優秀である等)と根拠なく過信・断言することはやめ、まずは、一番大事な、うなぎの味をチェックすることからはじめるべきだ。


 司法試験採点実感では,受験生のレベルダウンが示唆され、あれだけ法科大学院が問題視していた論点ブロックカード暗記答案の続出も指摘されているのに、一流の学者たちが、そんな簡単なこともやらずに、制度面だけを議論し、予備試験を敵視しているのは、どうにも解せない。さらに、もし文科省から委員としての費用が支出されているのであれば、私に言わせれば、税金の無駄使いとしか評価できない。