いつもお世話になっている市バス等ですが、バスから事故(例えば追突)を受けた際の賠償については、あまりご存じないと思います。
そんなのバス会社の保険から全額賠償してもらうのが当たり前じゃないの、とお考えのあなた、必ずしもそうではないのです。
もちろん、市バスも公道を走る自動車ですから、自賠責保険に加入していなければなりません。
ただし、自賠責は、対人に限定されており、補償額も3000万円(死亡時)、120万円(傷害時)、75~4000万円(後遺障害時)が限度であって、それ以上の損害があっても、これ以上のお金は自賠責保険からは支払ってもらえません。
また、物損については、自賠責は全く関係がないので、追突されて車が壊れても、車の修理代については自賠責保険からは1円も支払ってくれません。
自動車事故の損害は、自賠責が支払ってくれる範囲でおさまらない場合も多いので、そこをカバーするものとして任意保険があることは皆様もご存じのとおりです。
ところが、任意保険は、保険でカバーする範囲が広ければ広いほど、保険料も高くなります。例えば、対人補償5000万円の保険よりも、対人補償無制限の保険の方が保険料は高くなります。
では、バス会社も、任意保険に加入しているのでしょうか。
実は、平成17年4月28日に出された、国土交通省告示第503号により、地方公共団体が経営する場合を除き、旅客自動車運送事業者は、対人8000万円以上(一般貸切旅客自動車運送事業者は無制限)、対物200万円以上の補償がある任意保険に加入することとされています。
ただ、任意保険の補償金額を、対物も無制限とすると任意保険の掛金が馬鹿高くなってしまうので、バス会社も経営上の観点から、補償金額を高額に設定しない場合が多いと思われます。
以上から、例えば1000万円の高級車に乗っていてバスに追突され、車が壊れた場合、バス会社の任意保険でカバーされるのは、おそらく、200~300万円までの場合が多く、その金額を超える分については、バス会社に対し直接支払うよう交渉しなくてはならない可能性が高いということです。
追突されたのはこっちなのに、いざ請求をしてみたところ、バス会社から、経営が苦しくて払えないと言われる可能性もゼロではありません。
その場合には、訴訟を起こして判決を得て、強制執行をしないと自動車の修理代も得られません。訴訟の費用や時間も馬鹿になりませんし、強制執行をしてもバス会社に本当に財産がなければお金は取れません。実質、泣き寝入りに近い形になるおそれもあるのです。
以上から、高級車に乗っておられる方には、バスを見たら、物損200万円くらいの任意保険しかかかっていない大型車だ、とお考えになって、あまり近寄らないことをお勧めします。
おそらくバイキングの船をモチーフとした作品(レイキャビク~アイスランド)
※写真は記事とは関係がありません。