朗報!(諏訪敦先生のドキュメンタリー番組、再放送決定)

 少なくとも、美術ファンの方にとっては朗報と言っていいと思う。

 今年の4月にNHK ETVで放映された「ETV特集:忘れられた人々の肖像~画家・諏訪敦”満州難民”を描く」の再放送が決定したとのことだ。

詳細は下記のアドレスをご参照のこと。
http://www4.nhk.or.jp/etv21c/x/2016-09-17/31/66093/2259526/

 諏訪先生のファンである私は、当然4月の放映を見ているが、番組から受けた重さのあまり、その番組の感想は、なかなか上手く表現できずにいる。

 もちろんTV番組の宿命として、制作者側の考えも入っていて、諏訪先生をそのまま伝えてくれるものではないだろう。しかし、自らの生命を作品に刻み込むかのような芸術家の苦闘と、諏訪先生の思いの片鱗は見出すことができ、きっと、何かを与えてくれるように思う。

 美術ファンの方にも、そうでない方にも、非常に多くの示唆を与えてくれる番組であるはずだ。

 放映日は、9月17日 23:00~24:00
 必見である。

ゴルフのこと~6

 初めての1人予約で、初心者は初心者用のクラブを使うべきだと、同伴者3人から指摘を受けたS弁護士は、まず、自分の使用クラブの正体を探ってみた。
 最近は便利なもので、インターネットで中古クラブの製造年などが分かるサイトがある。インターネットのサイトによると、S弁護士の使用していた、親父譲りのクラブは1997年製の上級者用アイアン、ドライバーも1998年製であることが判明した。

 なんと、ほぼ20年前に作られたクラブを、しかも上級者用のクラブを使用していたのだ。毎年、更に易しく、更に飛ばせるゴルフクラブが開発され続け、日進月歩の進化を遂げている中で、まさに20世紀の遺物を振り回していたことになる。
 知らぬが仏とは良く言ったもので、まさかずぶの素人が、20年前の上級者用クラブを振り回していたとは、お釈迦様でもご存じあるまい。いくら、弘法筆を選ばずと言ったところで、みんながプリウスに乗っている時代に、弘法様がオート三輪で対抗しようったって所詮無理な話である。しかもS弁護士は弘法様と違ってただの凡人である。
 かすかな記憶をたどってみると、親父殿も、「ものは良いけど、俺には合わん」と言っていたような・・・。我流ではあるがゴルフ歴はそこそこあるはずの親父殿が使えん難しいクラブを、何も知らないヒヨコ状態のS弁護士に与えたって、上手く行くはずないやんか。巷では、獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすと言われているが、結構見ている動物番組では、そんな様子、一度も見たことないぞ。もっと子供は大切に育てられているモンだ。

 調べてみると、初心者用クラブはスイートスポットが広く、事実上、真の会心の当たりが出ることはないが、芯を外して打ってもそこそこ前に飛んでくれることが分かった。一方、上級者用クラブは、スイートスポットは狭いが芯に当たればまさに会心の当たりとなる反面、芯を外せばカスあたりになり大して飛んでくれないらしい。広く浅くの初心者用、狭く深いのが上級者用ってことだ。

 これで、S弁護士にも、自分の打球の飛距離が、どのクラブを使っても変わらなかった謎が解けた。要するに、下手くそなS弁護士は、上級者用クラブの狭いスイートスポットに、ただの一度もボールを当てることができず、これまで数ヶ月の間、延々とカス当たりを繰り返してきたということなのだ。

 おそらく、これまで1000回近くのスイングで一度も会心の当たりが出なかったという恥ずかしい実績はともかく、積年の謎は、じっちゃんの名を懸けるまでもなく、全て解けた。
 しかし、謎は解けても、問題は残る。
 狭いスイートスポットに当てる技術がすぐに身につくはずがないし、1人予約でも誤解を受けるおそれがある。
 初心者用クラブを探さなくてはならない。

 かといって、ゴルフ専門店に出向いてアイアンセットを買うだけの勇気は、S弁護士にはない。

 もちろん仕事では、依頼者のために断固とした態度をとるS弁護士である。しかし、プライベートのS弁護士にとってのゴルフ専門店は、女性の店員さんが、「これが流行ってるんですよ~」とか、「これがお似合いと思いますよ~。わっ、ス・テ・キで~す。」等と、心にもないことを言いながら、おじさんの心をくすぐり倒して、大して必要でもない、様々な道具をあっさり買わせてしまう魔女の巣窟である。

 この魔女ときたら、相当したたかで、「このウエッジのバンスはどれくらいですか?」「このクラブのバランスはD1ですか?」等という、S弁護士も当然分からないマニアック?な質問に対しても、「でもこのクラブ、とっても流行っていて格好いいんです~。」「どのお客さんも、良く飛ぶって仰ってます。」「きっと、お似合いですよ~。」と答えになっていない答えを笑顔で切り返し、ひるまない。

 しかも、間違いなく店側の戦略だろうが、基本的に接客対応の店員さんは若くて可愛らしく、中高年のおじさん達が断りにくい状況が設定されている。

 服を買う際に、散々試着を繰り返し、服をしわくちゃにして生地を確認し、棚の上からも店員さんに服を取り出させて着てみたあげく、「気に入った服じゃないわ」と、ひとこと言って平然と店を後にできる女性の態度を見習いたいが、そこまでの勇気もない。

 仕事ならともかく、かつて、高校生の頃、マクドナルドで、「ご一緒にポテトもいかがですか」と言われ、断るのに苦労した経験をもつS弁護士には鬼門と言っても過言ではない。

 君子危うきに近寄らずは古今の名言。
 ここはじっくり、インターネットで購入だ。

(続く)

ゴルフのこと~5

 S弁護士が1人予約で予約を入れたのは、某パブリックゴルフコース。

 せめてパブリックなら、何かの間違いで、ド下手なゴルファーが1人くらい紛れ込んでいても、おかしくないのではないか、という淡い期待で申し込んだものだった。

 緊張して迎えた当日、S弁護士が自分のキャディバッグが載せられたカートに近づくと、いかにも上手そうな方々3名が既に待機中。
 「すみません。本当に下手なんです。ご迷惑おかけしますが、ごめんなさい。」どうせ謝るなら早いうちに、とばかりに先制パンチで謝っておく。

 ところが、そのうち一番上手そうな方が、カートに積まれたS弁護士のゴルフクラブをちらっと一瞥して、「いやいや、ご謙遜を。相当上手な方じゃないんですか?」と、牽制球が飛んで来た。

 「え~!なんでや。ホンマに初心者やのに~!」S弁護士は心の中で叫ぶが、どうやら、上手そうな方が、S弁護士のクラブを見て判断した見立ては違うらしい。

 よくよく考えてみると、S弁護士は自分でクラブを買ったことはなかった。父親からもらったゴルフクラブを使っている。記憶を遡ってみると、父親も○○叔父から譲ってもらったといっていた。そういえば、○○叔父は大学のゴルフ部だったと聞いたような気がする。

 ゴルフ部出身の叔父が使っていたクラブから推測されたら、完全に現実と違う事実が認定されちまう。
「誤解だ!完全な誤解なんだ~!俺は本当に下手なんだ~。これ以上、ハードルを上げないでくれ~!!」

 S弁護士が引きつりながらも、促されて打順を決めるくじを引くと、これがあろう事か1番くじ!
 ゴルフは、前のホールで成績の良かった順にショットを打っていく決まりだ。ただ、最初のホールだけは、くじ引きで決めるのである。最も緊張するスタートホールのティーショット(1打目)だけは、おそらく誰であろうと、最初に打つのは避けたいところだろう、と思う。

 初めての1人予約で、誰もが避けたいスタートホールでの1番くじをひいちまう。
ある意味引きが強いとも言えるが、現実には、神から更なる試練を与えられたも同然である。

 「おちつけ、おちつけ、失敗しても命とられる訳じゃない。」
 と、心の中でぶつぶつ呟きつつ、S弁護士はティーグラウンドに上がる。
 ボールをティーに載っけてドライバーを構えてみたものの、いつもよりボールが遠く小さく見える。

 とても当たるようには思えない。
 いま打ってはダメなんじゃないか、心の中で悪魔だか背後霊だか分からんが声が聞こえるような気がする。
 できればこのまま、打たずに帰りたい。
 それが許されなくても、初心者なんやから、第1打だけは、手で投げさせてもらってもええんとちがうか。弱者に優しい、それが紳士やろ。紳士のスポーツやろ。
 弱気の虫がざわめく。

 なんでこんなに緊張するんや。
 刑事事件なんかでも法廷で検察官に向かって、異議出したり、「それは検察官おかしいでしょ!」等とやり合っているときは大して緊張もしていないのに、遊びで小さなボールを打つだけなのに、緊張しきっている自分がいる。

 しかし、スロープレーは、最大のマナー違反の一つだ。
 かの白州次郎も、プレーファーストが大事だと言っていたはずだ。
 これ以上、同伴者に迷惑はかけられない。

 行くしかない。

 ええいままよ。振っちまえ!

 「ピキーーン」
 予想に反して、ジャストミートしたドライバーから快音を残して放たれた白球は、僅かにフェードしながら見事フェアウェイやや右をバウンドしていく。
 やった、フェアウェイを捉えた!
 

 少なくとも、S弁護士の期待はそのような僥倖だった。
 しかし、僥倖とは、「思いがけない幸運」を意味する。

 「思いがけない幸運」は、滅多に訪れないから思いがけないものなのである。そう易々と、僥倖が訪れてくれるだろうか。
 人生、そこまで甘くはなかった。

 同伴者の注目を集める中、ティーグラウンドに響き渡ったのは、
 「ぶぅ~~~ん」
 と鈍い風切り音だけ。
 打球音なし。
 つまりは、ドライバーは空を切った。
 要するに空振りである。
 

「ま、、、、、まあ、さ、最初やからね~。」と同伴者の誰かが、へんてこりんなスイングを見て、引きつりながらフォローしてくれたようにも思うが、頭が真っ白になったS弁護士は、その後のラウンドのことを、実のところ良く覚えていないのである。

 一点だけ、お昼休憩のときに、初心者は初心者用のクラブを使うことが大事だと、同伴者全員からご指導いただいたことは、S弁護士も覚えていた。おそらく相当ご迷惑をおかけしていたのだろう。今思いだしても、申し訳ない気持ちで一杯になる。

 ただ、少なくともこのときの同伴者の方は優しい方ばかりで、1人予約は怖くないことは分かった。

 また、初心者は初心者用のクラブを使うべきであると分かったことも収穫だった。

(続く)

日弁連にひとこと言いたい。

 今年の3月11日、日弁連の臨時総会で、執行部案が大差で決議された。もちろん、総会決議があったのだから、執行部はその実現をする義務を負うことになった。

 ところが、先日、常議員会の日弁連報告で、日弁連は、司法試験合格者1500人に向けての活動を何ら行っていないことが報告された。

 3月11日の臨時総会における、執行部の議案説明における司法試験合格者1500人に関する部分を、議事録から引用すると次の通り。

伊藤茂昭副会長:(前略)・・・昨年の司法試験合格者数は1850人であり、1500人は未だ実現されていません。このような現状において日弁連が緊急に取り組まなければならないのは、人口提言にあるとおり、まず1500人の実現です。(中略)執行部としては、推進会議決定のとりまとめがなされ、法曹養成制度改革の実現を目指す新たな段階を迎えた今、年間の司法試験合格者数につきましては、まず緊急の課題として「1500人の速やかな実現を図る」というメッセージを明確に打ち出し、日弁連と全国の会員、弁護士会が一丸となって取り組むことを提案する次第であります。(後略)

 日弁連は、司法試験合格者1500人に向けて、緊急に取り組まなければならないんでしたよね。
 日弁連は、緊急の課題として、司法試験合格者1500人の速やかな実現を図るとのメッセージを明確に打ち出して、日弁連、会員、各弁護士会が一丸となって取り組むことを約束した議案だったんですよね。
 そしてその議案が総会で可決された以上、執行部はその決議に拘束されているはずなんですよね?

 で、司法試験合格者1500人に向けて取り組んでいないという日弁連執行部の現状は、説明できるんですか?
 総会決議を無視しちゃっているんじゃないですか?

 やると言った以上は、ちゃんとやって下さいよ。まさか、どうせ忘れちまうからいいだろうと、会員をなめきって提出した議案じゃないんでしょ。

 「弁護士たる者」、な~んて執行部におられるような立派な方々は、良く言いたがるように思うよね。ならば言わせてもらうけど、弁護士たる者、嘘ついたり、騙したりしちゃあ~、いかんでしょ。やると言ったならやって下さいよ。

 7月29日付けの日弁連FAXニュースでは、法曹養成制度改革実現本部とやらの報告も書いてあるけど、法曹志願者の確保を最重要課題とするとしか書いてないよね。

 司法試験合格者1500人の実現は、そっちのけで、法科大学院と組んで弁護士の仕事のやり甲斐を説明すれば、法曹志願者が増えるとの目論見で、いろいろパンフレットなど作っているようだけど、意味があるの?
 優秀な人材を法曹界に集めたいなら、仕事のやり甲斐だけでは集まらないよ。当たり前でしょ。ヘッドハンティングで、やりがいだけをエサにしても、ごく一部の特殊な方を除いて、優秀な人材を多数確保できるわけないじゃない。やり方次第で儲かるなんて理屈は、どこの世界も一緒で、弁護士資格だけの特典では全くないからね。むしろ、怪しいフランチャイズの勧誘に使われそうな理屈じゃないの。
 やりがいと転職に見合うだけのリターンを保証しないと、普通ヘッドハンティングに応募なんてないでしょ。「仕事のやり甲斐はあるけど、リターンは不透明です。あなたのやり方次第では儲かりますよ。」ってな世界に、金と時間をかけて(即ち法科大学院を経由して)まで飛び込もうって奇特な奴はほぼいないと思うよ。そんなこともわからんのかね?

 弁護士資格は、法的需要が増えてないのに弁護士激増をどんどん進めた結果、既に月刊プレジデントではブラック資格(苦労して取得しても見返りがない)と、ばっさりやられているんだけどな。

 日弁連の法曹養成制度改革実現本部とやらに参加している弁護士さんが、大阪弁護士会の部会報告で言っていたらしいけど、日弁連の実現本部は、このまま何もしなくてもこれだけ法曹志願者が減少しているので、いずれ司法試験合格者は1500人になる、と見込んでいるらしい。
 その一方で、法曹志願者を増やすために、弁護士の仕事のやり甲斐をどんどん広告していくんだそうな。

 一見なんだか矛盾しているように感じるな。

 洪水対策に向けて一丸となって取り組みます!っていうから、現在氾濫している川の洪水対策をお願いしたのに、「現在雨が止んできたので、何もしなくても、そのうち洪水は収まりますよ~。」、と言って何もやってくれない。その一方で、水不足になったら大変だからと、決壊した堤防を直すこともせずに他から洪水を起こす元凶の水をどんどん氾濫している川に導こうとしているんだから、洪水を止めようとしているのか、更に氾濫地域を増やそうとしているのかよく分からんね。

 当たり前のようにやってはいるけど、法曹志願者の増加対策まで、日弁連の責任でやるべきものなのかも疑問がないわけじゃない。法科大学院の利害関係人とかが自分でやりたくて、自腹切ってやるならいいけどさ。もし日弁連の責任と言われるのなら、個人的には、相当違和感がある。

 そもそも本当に、法科大学院の教育に価値があるのなら、法科大学院志願者・入学者が壊滅的に減少するはずがないでしょ。

 いみじくも、成仏理論を唱えた学者が、「世の中の人々のお役に立つ仕事をしている限り、世の中の人々の方が自分達を飢えさせることをしない」、って言っていたじゃない。それは嘘だったんでしょうかね?それとも法科大学院が世の中の人々のお役に立つ仕事じゃなかったことの裏返しなんでしょうかね?

 弁護士会費を、弁護士の仕事の魅力紹介なんて、無駄なことに使わんでもらいたい。

 もっと、弁護士会員は、日弁連に対して、怒ってもいいように思うけどなぁ。