日弁連にひとこと言いたい。

 今年の3月11日、日弁連の臨時総会で、執行部案が大差で決議された。もちろん、総会決議があったのだから、執行部はその実現をする義務を負うことになった。

 ところが、先日、常議員会の日弁連報告で、日弁連は、司法試験合格者1500人に向けての活動を何ら行っていないことが報告された。

 3月11日の臨時総会における、執行部の議案説明における司法試験合格者1500人に関する部分を、議事録から引用すると次の通り。

伊藤茂昭副会長:(前略)・・・昨年の司法試験合格者数は1850人であり、1500人は未だ実現されていません。このような現状において日弁連が緊急に取り組まなければならないのは、人口提言にあるとおり、まず1500人の実現です。(中略)執行部としては、推進会議決定のとりまとめがなされ、法曹養成制度改革の実現を目指す新たな段階を迎えた今、年間の司法試験合格者数につきましては、まず緊急の課題として「1500人の速やかな実現を図る」というメッセージを明確に打ち出し、日弁連と全国の会員、弁護士会が一丸となって取り組むことを提案する次第であります。(後略)

 日弁連は、司法試験合格者1500人に向けて、緊急に取り組まなければならないんでしたよね。
 日弁連は、緊急の課題として、司法試験合格者1500人の速やかな実現を図るとのメッセージを明確に打ち出して、日弁連、会員、各弁護士会が一丸となって取り組むことを約束した議案だったんですよね。
 そしてその議案が総会で可決された以上、執行部はその決議に拘束されているはずなんですよね?

 で、司法試験合格者1500人に向けて取り組んでいないという日弁連執行部の現状は、説明できるんですか?
 総会決議を無視しちゃっているんじゃないですか?

 やると言った以上は、ちゃんとやって下さいよ。まさか、どうせ忘れちまうからいいだろうと、会員をなめきって提出した議案じゃないんでしょ。

 「弁護士たる者」、な~んて執行部におられるような立派な方々は、良く言いたがるように思うよね。ならば言わせてもらうけど、弁護士たる者、嘘ついたり、騙したりしちゃあ~、いかんでしょ。やると言ったならやって下さいよ。

 7月29日付けの日弁連FAXニュースでは、法曹養成制度改革実現本部とやらの報告も書いてあるけど、法曹志願者の確保を最重要課題とするとしか書いてないよね。

 司法試験合格者1500人の実現は、そっちのけで、法科大学院と組んで弁護士の仕事のやり甲斐を説明すれば、法曹志願者が増えるとの目論見で、いろいろパンフレットなど作っているようだけど、意味があるの?
 優秀な人材を法曹界に集めたいなら、仕事のやり甲斐だけでは集まらないよ。当たり前でしょ。ヘッドハンティングで、やりがいだけをエサにしても、ごく一部の特殊な方を除いて、優秀な人材を多数確保できるわけないじゃない。やり方次第で儲かるなんて理屈は、どこの世界も一緒で、弁護士資格だけの特典では全くないからね。むしろ、怪しいフランチャイズの勧誘に使われそうな理屈じゃないの。
 やりがいと転職に見合うだけのリターンを保証しないと、普通ヘッドハンティングに応募なんてないでしょ。「仕事のやり甲斐はあるけど、リターンは不透明です。あなたのやり方次第では儲かりますよ。」ってな世界に、金と時間をかけて(即ち法科大学院を経由して)まで飛び込もうって奇特な奴はほぼいないと思うよ。そんなこともわからんのかね?

 弁護士資格は、法的需要が増えてないのに弁護士激増をどんどん進めた結果、既に月刊プレジデントではブラック資格(苦労して取得しても見返りがない)と、ばっさりやられているんだけどな。

 日弁連の法曹養成制度改革実現本部とやらに参加している弁護士さんが、大阪弁護士会の部会報告で言っていたらしいけど、日弁連の実現本部は、このまま何もしなくてもこれだけ法曹志願者が減少しているので、いずれ司法試験合格者は1500人になる、と見込んでいるらしい。
 その一方で、法曹志願者を増やすために、弁護士の仕事のやり甲斐をどんどん広告していくんだそうな。

 一見なんだか矛盾しているように感じるな。

 洪水対策に向けて一丸となって取り組みます!っていうから、現在氾濫している川の洪水対策をお願いしたのに、「現在雨が止んできたので、何もしなくても、そのうち洪水は収まりますよ~。」、と言って何もやってくれない。その一方で、水不足になったら大変だからと、決壊した堤防を直すこともせずに他から洪水を起こす元凶の水をどんどん氾濫している川に導こうとしているんだから、洪水を止めようとしているのか、更に氾濫地域を増やそうとしているのかよく分からんね。

 当たり前のようにやってはいるけど、法曹志願者の増加対策まで、日弁連の責任でやるべきものなのかも疑問がないわけじゃない。法科大学院の利害関係人とかが自分でやりたくて、自腹切ってやるならいいけどさ。もし日弁連の責任と言われるのなら、個人的には、相当違和感がある。

 そもそも本当に、法科大学院の教育に価値があるのなら、法科大学院志願者・入学者が壊滅的に減少するはずがないでしょ。

 いみじくも、成仏理論を唱えた学者が、「世の中の人々のお役に立つ仕事をしている限り、世の中の人々の方が自分達を飢えさせることをしない」、って言っていたじゃない。それは嘘だったんでしょうかね?それとも法科大学院が世の中の人々のお役に立つ仕事じゃなかったことの裏返しなんでしょうかね?

 弁護士会費を、弁護士の仕事の魅力紹介なんて、無駄なことに使わんでもらいたい。

 もっと、弁護士会員は、日弁連に対して、怒ってもいいように思うけどなぁ。

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