全国地裁ワ号事件新受件数について(全国・東京高裁管内)

 一般の方には馴染みがないと思うが、裁判所では事件番号を割り振ることになっている。第1審の通常民事事件に付されるのがワである。事件番号としては平成○○年(ワ)第○○○○○号事件などと表記される。そのワ号事件を一年間にどれだけ地方裁判所が受理したかについての推移に関して述べようと思う。ワ号事件は民事通常事件だから、その傾向は弁護士ニーズの指標の一つとしては十分参考になるはずだ。
 

☆全国
 平成に入ってから、ワ号事件を地裁が最も多く受理したのは、平成21年の235508件である。平成26年のワ号事件地裁新受件数は142490件である。
平成21年の新受件数に過払いバブルの影響があったとはいえ、▲39.5%の減少である。

 以下、東京高裁管内の各地裁ワ号事件新受件数について、平成16~26年のうち最も多かった件数と、平成26年度の件数を比較する。併せて、平成26年の弁護士1人あたりの事件数(当該地裁新受件数を当該土地の弁護士会会員数で除した数値)も参考までに付しておく。

☆東京地裁管内
 52114件(H22)→37856件(H26)  ▲27.36%
 H26弁護士1人あたりの事件数             2.3件

☆横浜地裁管内
 10894件(H22)→8098件(H26)   ▲25.67%
 H26弁護士1人あたりの事件数             5.7件

☆さいたま地裁管内
 7885件(H21)→5436件(H26)    ▲31.06%
 H26弁護士1人あたりの事件数             7.5件

☆千葉地裁管内
 7478件(H21)→5255件(H26)    ▲29.73%
 H26弁護士1人あたりの事件数             7.8件

☆水戸地裁管内
 2935件(H21)→2052件(H26)    ▲30.09%
 H26弁護士1人あたりの事件数             8.2件

☆宇都宮地裁管内
 2068件(H21)→1685件(H26)    ▲18.32%
 H26弁護士1人あたりの事件数            8.6件

☆前橋地裁管内
 2591件(H21)→1674件(H26)    ▲35.39%
 H26弁護士1人あたりの事件数             6.3件

☆静岡地裁管内
 5208件(H22)→2679件(H26)     ▲48.56%
 H26弁護士1人あたりの事件数             6.4件

☆甲府地裁管内
 966件(H21)→617件(H26)        ▲36.13%
 H26弁護士1人あたりの事件数             5.3件

☆長野地裁管内
 2374件(H21)→1310件(H26)      ▲44.82%
 H26弁護士1人あたりの事件数               5.7件

☆新潟地裁管内
 2412件(H21)→1183件(H26)      ▲50.95%
 H26弁護士1人あたりの事件数               4.7件

(続く)

弁護士数の増加と増加率

 先日、私の所属している大阪弁護士会の委員会で、ある委員の先生が作成された資料を頂いた。そこには興味深いデータが掲載されていたので、いくつかご紹介したいと思う。

 まず弁護士の増加数である。
 平成16年12月31日時点での弁護士数は21174名。
 平成26年4月1日時点での弁護士数は35109名。
 9年と4ヶ月で13935名(165.8%)増えている。
 裁判所データブックによると、平成2年の弁護士総数が14173名なので、平成2年から弁護士数は、ほぼ2.5倍に増えたと言える。

 次にどこの弁護士が増加したかについてである。
 平成16年からの弁護士増加率を算出したデータによると、ここ9年4ヶ月の増加率上位は次の都道府県となる。
 ① 青森  地裁管内  268.2%
 ② 松江  地裁管内  246.4%
 ③ 大津  地裁管内  245.6%
 ④ 鳥取  地裁管内  242.9%
 ⑤ 水戸  地裁管内  234.9%
 ⑥ 佐賀  地裁管内  215.9%
 ⑦ 福井  地裁管内  215.2%
 ⑧ 長崎  地裁管内  212.2%
 ⑨ 千葉  地裁管内  210.3%
 ⑩ 旭川  地裁管内  209.1%
 ⑪ 津   地裁管内  207.2%
 ⑫ 鹿児島 地裁管内  205.6%
 ⑬ 宮崎  地裁管内  205.0%
 ⑭ さいたま地裁管内  204.2%
 ⑮ 釧路  地裁管内  200.0%

 逆に増加率が,全国平均(165.8%)以下の都道府県は次の通り。
 ① 那覇  地裁管内  134.2%
 ② 大阪  地裁管内  142.6%
 ③ 秋田  地裁管内  150.0%
 ④ 高知  地裁管内  158.2%
 ⑤ 東京  地裁管内  158.6%
 ⑥ 奈良  地裁管内  163.5%
 ⑦ 山形  地裁管内  163.6%
 ⑧ 函館  地裁管内  165.5%

次回から、地裁ワ号事件新受件数の推移についてご報告する予定。

高齢弁護士の会費免除年齢引き下げ問題

 弁護士が納める日弁連会費が余ってきたので、若手の会費減額の延長、会費免除となる年齢を77歳から75歳に引き下げること等を行おうとしているのだが、という問題に関する意見照会が日弁連から来ていた。

 大阪弁護士会執行部案は、若手の会費減額延長は賛成、会費免除となる年齢引き下げについては反対の案だった。

 私は、若手の方も等しく弁護士である以上、本当は若手の会費減額はすべきではないと思っているが、昨今の若手の方の大変さから、現状ではやむを得ないと考えるようになっている。

 一方、会費免除年齢引き下げ反対の案については、執行部としては意外にやるなと思ったのだが、複数の常議員の先生から、高齢の弁護士の生活が大変だから等の理由でおかしいのではないか、との意見が出た。

 私は、若手の生活はもっと大変であることを主張して、反論した。

 確かに、先達により弁護士会・日弁連が一定の地位を得てきた(?)ことは、否定しないし、その功績を評価していないわけではない。むしろ先輩方の努力があって、今の弁護士会があるとも思っている。

 しかし、言い方は悪いが、先達の方々は競争相手が極めて少なく、しかも、肥沃な土地が広がっている時代に収穫が可能だった方々だ。

今の若手の多くは、肥沃な土地はほぼ見当たらず、未開の地を開拓しなければならない。国家制度の問題でもあるが、年金や健康保険の自己負担分についても、若手がわりを食う設計になっているようにも思える。資産についても世代間格差が指摘され、資産の多くは高齢者が保持する傾向が強まっている。

 その状態で、会費免除の年齢を引き下げを主張し高齢会員を優遇するのは、すでに日弁連の多数派になっている若手に対して、ますます日弁連の求心力を失わせるものではないだろうか。

 日弁連・弁護士会の将来を思うなら、会費免除年齢の引き下げは愚策ではないかと思うのだけれど。