日中韓FTAシンポジウムの旅日記~その10

(続き)

 立派なホテル?のような宴会場につれて行かれる。駐車場の両脇も外車だ。

 格差社会だな~中国も。あとで聞くと、国賓等が来た際にも使われる場所だそうだ。そんなところに、着替えもせず汗くさい格好で乗り込むのは、かなり気まずいが、ここまで来たら仕方がない。そもそもこちらから宴会をして欲しいって頼んだ訳じゃないし。

 ところがホスト弁護士がおおトラ!だった。

 青島ビールの出来立てを、製造工場から直接持ってこさせるなど、実力者らしいが、飲めば飲むほど虎度がます。大学の理事でもあるそうだ。

 青島市は海沿いなので、海鮮の中華が勢揃い。それと共にチンタオビールも林立している。ああ、お酒がなくてゆっくり食べられるのなら良いのになあ~。と子供のようなことを考えつつ席に着く。

 有名な青島ビールはキンキンに冷えているわけじゃない。確かに冷たいがぬるい感じの冷たさだ。結局勧められて断れず、ビールを呑まされて、速攻頭痛に悩まされながらもこっちも、もうやけくそだ。

 盛り上がりたいんならやってやろうじゃないの。原潜見学でもらった帽子をかぶって敬礼したり、肩組んで写真撮ったり、やるだけやってやった。

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(チンタオの有力弁護士さんと~1)

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(チンタオの有力弁護士さんと~2)

 さらに大トラは乾杯を繰り返すことにより、トラ度がパワーアップして、結構絡んできた。中国語はよく分からんが、充血しかかった眼でこちらを見つめながら何かを言っている。もちろん意味など分からない。

 「わかった、わかった、○○先生最高!」といって、肩をバンバン叩くと相手も、にやっと笑って、グラスを差し出す。

 相手はお酒、こっちは強炭酸のミネラルウォーターで乾杯する。アルコールの影響による頭痛に悩まされながら、もうどうだって良いんだ。仲良くできたらきっとそれで良いんだ。世界は一つ、人類はみな兄弟なんだ。一日一善だ。もうどうにでもしてやってくれ~。

 しかし、そのうち大トラが近寄ってきて、太ももをスリスリと撫でられたときには、さすがに身の危険を感じた。やばい、目が座ってる。ほんまもんのトラになっとる。通訳してくれるGさんも他の弁護士と乾杯してるし、X教授も何かを食べていて、こっちに気付かない。舌なめずりするトラの前に放置されたヒヨコ状態だ。

 なんとかしてこのピンチを抜け出すには・・・。どうすればいい?

 ここは、あれだ、X教授から教わった最終手段を使うしかない。
 「ツ、ツァーサ、サイナア~リ」

 そういって、そそくさと席を立とうとすると、袖を引っ張られ、椅子にどんと座らされた。

 ??

 何が起こったのか分からないS弁護士に対して、身振りで、ここでやればいいと、大トラ。

 トイレという生理現象を尊重するのは万国共通。厳粛な裁判の尋問中だって、お腹が痛いからトイレに行きたい言えば、休憩を入れてくれたりするなど尊重してくれるもんだ。つまり最強の必殺技のはずだった。

 その最強の必殺技のはずが、それが通じない・・・。マジか!

 スペシウム光線をゼットンに跳ね返されたウルトラマンのように、倒れるしかないのか・・・。ゼットンを倒してくれる科特隊もここにはいない。孤立無援状態なのだ。

 もちろん国賓が来るところでそんなコトしちゃったら、国際問題だ。「やらかしました」では、たぶん済まない。運良く拘束されなくても、パスポートの表紙から裏表紙まで全頁にわたって「恥」というスタンプを押されるかもしれん。「日本の弁護士、中国で大失態!」などとワイドショーや週刊誌で報道されたら、懲戒されるかもしれん。

 やはり、ここは譲れない。

 勇気をふるって今度は毅然と「ツァーサ・サイナーリ!」といったら、聞きつけた隣の若い弁護士さんが連れ出してくれ、なんとかピンチは脱した。多分ゆっくりトイレを済まして戻れば、もう忘れているはずだ。

 しばらくして落ち着いたので戻ったら、大トラは、こっちのことは忘れていてくれたようだが、さらにパワーアップして絶好調。X教授にあなたを兄貴と呼ぶとかなんとか言ってからんでいる。しまいにはX教授の手をとって接吻をしたりしはじめた。

 しかしX教授の肝臓は凄い。あまた襲いかかる乾杯の嵐を平然と受け止め、底なしに飲んでいく。X教授がいてくれて宴会の場は本当に助かった。

 ようやく締めの時間になったようで、大トラとX教授が挨拶をする。しかし、それが終わると、大トラさんの記憶が瞬時に消去されるのか、再度また乾杯やらなんやら言い出して飲み始めて振り出しに戻る。リピート再生のように宴会が終わらない。

 何度目かの挨拶のあと、やっとこさ、宴会の終了となった。

 ホテルに帰ろうとしても,駐車場で大トラは、こっちの車に乗るんだと言って聞かず、かなり苦労した。

 開いている車の窓に取りすがって、X教授に向かって「あなたを兄貴と呼ぶ。兄貴ったら兄貴なんだよう!(S弁護士の推測による意訳)」と叫び続ける大トラさん。一瞬の隙をついてパワーウインドウでシャットアウトし、ようやく大トラを引きはがし、ホテルに向かって車が出発できたときには、かなり安堵の気持ちで一杯だった。

 帰りの車で、Y弁護士と凄いトラがいたもんだと話していたら、隣からX教授が「あいつは大したことがない。ただの酒が弱いだけの奴ですよ~」、と仰る。「そうですね~」、と答えると、「いやいや、本当にあいつは大したことがない。ただの酒が弱いだけです・・・」と、今度はX教授がリピート再生。

アイアンレバーを有するX教授も、酒精の影響は避けられないご様子だった。

 さらに、X教授はホテルの直前でGさんに「カラオケにいきましょう。おねーちゃんのいるカラオケがいい」、と言いだした。Y弁護士もカラオケならいいですと言っていたがおねーちゃんが来ると聞いて断固拒否。

 それでも、「いやいや中国のカラオケにはおねーちゃんはつきものなんです。だからそれが普通なんです。だから普通のカラオケなんです。普通のカラオケに行こうといっているだけなんです・・・」等とX教授。一見、見事な三段論法?で説得的だが、スタート時点でオネーチャンのいるカラオケの方が良いと言ってしまったことで、「普通のカラオケ=オネーチャンのいるカラオケ」という前提が成り立ちにくい。やはり酒精の影響か前提からして微妙に違っているような気がしないでもない。

 本当に中国のカラオケはおねーちゃんとセットなのが普通かどうかはよく知らないが、アルコールが体内でエネルギーに変換されるX教授と違って、飲めないお酒を飲んだせいで頭痛がしているS弁護士では、残念ながら中国カラオケの真髄を確かめに行くには、X教授のような体力が既に残っていない。

 さすがにX教授も大人なので、最後は折れてくれ、ホテルの部屋に戻れましたが、X教授のパワーには脱帽です。

 子虎がここにおりましたか・・・。(スミマセン!)

(続く)

日中韓FTAシンポジウムの旅日記~その9

(続き)

 ホテルから地元有力弁護士のいそ弁さんが運転するレンジローバーで、迎賓館見学。その後、かつての総督府?のようなところや検察庁を外から見学。

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(迎賓館)

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(青島市市南区人民検察院)

 郵便博物館ではY弁護士が封筒を100元で買っていた。わざわざ博物館の人を呼んでショーケースの中の物と同じものを所望している様子。もちろん消印が押されて、使えもしない切手と封筒なんだけれど。

 X教授とS弁護士はその価値が理解できなかった。Y弁護士によれば「貼ってあるパンダとコアラの切手のデザインが可愛くて、お母さんへのおみやげにいい」、とのことで、少しだけは納得ができた。

 それから海沿いの道へ案内されたが、ミニストップでX教授が味付けピーナッツ、Y弁護士が10元のスイーツを買う。Y弁護士はかなりご満悦のご様子。ただ、かなり歩いているので、だんだん疲れてきてはいる。

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(海沿いの道から)

 その次は、監獄博物館、司法資料館を見学。X教授がかつて中国で、731部隊の博物館で怪しげな展示を見せられた上に、反省の気分に陥りそうになっているところに、その気分に乗じて偽物を売りつけられそうになった際のお話を聞く。あまり話さないけれど、X教授には秘められた武勇伝は結構ありそうだ。

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(監獄博物館)

 気温はそう高くないようだけど、日向を歩くとかなり暑い。湿度がそう高くないのか日陰は涼しいが、歩き続けていると疲れとともに暑さがこたえてくる。

 海沿いを歩いていると、原潜が係留されているとのこと。しかも、海軍博物館にいけば、その原潜に乗れるのだそうだ。

 何を隠そう、S弁護士は潜水艦が好きである。古くはヴェルヌの小説「海底2万里」、小さい頃に父親と見た映画「眼下の敵」では、ドイツ軍Uボートとアメリカ駆逐艦の死闘に胸を躍らせ、トム・クランシーの「レッドオクトーバーを追え」、福井晴敏の「終戦のローレライ」などの潜水艦小説を読み、かわぐちかいじの漫画「沈黙の艦隊」を全巻大人買いした経歴からすれば、原潜に乗れるなんてテンション上がることこの上ない。「うわー、いいなあ」といっていたら、Gさんが聞いてくれていたらしく、そこに連れて行ってくれる様子。途中で、車を呼んでくれる。

 海軍博物館の入り口は以外に遠く、乗せてもらって大正解だった。海軍博物館のくせに、飛行機・戦車も野外展示されていて、人民軍博物館という方が正確だろうと思う。T34中戦車が3台展示されていた。

 小学生の頃、お小遣いを少しずつ貯めて、タミヤ模型の戦車プラモデル(1/35でリモコン操作のできるやつ)を、幾つか作った経験のあるS弁護士としては、たまらない。本当はドイツ軍のティーガーⅠ重戦車が大好きなのだが、それと互角に渡り合ったT34中戦車(ソ連製)だと思うと、感慨ひとしお。年がいもなく、砲塔によじ登って写真を撮ってもらう。

 軍艦の係留展示は、駆逐艦など4隻。そのうち2隻と原潜には乗れるが、原潜に乗るには別に100元が必要とのこと。Y弁護士のようにパンダとコアラの切手を貼った封筒に100元払う価値はわからないが、退役したとはいえ本物の原潜に乗れるなんて、こんな機会、多分死ぬまでない。100元の価値は十分ある。しかし、ほかの3人は、待っているとのこと。ああ、もったいない。。。

 100元で申し込むと、窓口の姉ちゃんが英語の説明はないよ、という英語の説明をした上で、ギフト、といって青い帽子と白手袋をくれた。おお、なんか盛り上がるな。気分はすでにサブマリナーやん。そのまま入ろうとしたがゲートのところで押し戻された。5時からだということのよう。案内がつくらしい。

 チケットには、おそらく原潜の名前だろう、長征一号と記載してある。 あとで調べてみたところ、長征一号はNATOのコードネームで漢級の攻撃型原潜であった。

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(繋留展示されている漢級攻撃型原潜「長征一号」)

 駆逐艦などをおざなりにみて、5時前に入り口に集合。どうやら荷物をロッカーに預けるらしい。パスポートだけあわてて取り出してポケットにつっこみ、見よう見まねで荷物をロッカーに入れる。横目で他人の行動を観察すると、赤いボタンを押すと空いているロッカーのドアが開き、荷物を入れて閉めると、紙がでてくる方式らしい。暗証番号を入れるそぶりもなかったし、中国語なんて読んでもわからないし、不安いっぱいだったが、「万一出せなかったらGさんに頼めばいいだろう、原潜体験はそれに勝る!」と自分を鼓舞してボタンをおし、荷物とカメラを放り込んで閉じる。予想通り紙片がでてきた。バーコード付きだから、多分これをかざせば開くんだろう。そう信じよう。

 原潜に関する中国語の説明はわかるわけがないが、案内の人は説明をだらだらしながらゆっくり歩く。原潜まで5分くらいかかってようやく到着。

 原潜にはいるハッチはとても狭く、両手でハッチのバーをつかんでよいしょっと体をいれ込んでいく感じ。中はとても狭い。

 アメリカ映画で敵潜水艦に遭遇したときに、警報に反応して兵士が潜水艦内を走り回ってた場面があったが、少なくともこの原潜では、無理。

 猫並に障害物を避ける能力があるなら別だが、警報に反応して走り回ったりしたら、顔面骨折、歯の折損、体中の打撲を負って、戦闘前に戦闘不能になるのが落ちだろう。

 最初は魚雷装填区、次は居住区、厨房、発電区など様々な箇所をみてまわったはずだが、説明がわからなかったせいもあり、艦橋部分がよくわからなかったのが残念。

 かなり満足して戻ってくると、X教授が「Sさんが、こんなにミリオタなんて知りませんでした。一番テンション高かったんじゃないですか?」と仰る。

 う~んそう見えたのかな。しかし、S弁護士としては自分がミリオタという自覚は全くない。小学生の頃、戦艦や戦車のプラモデル作りが流行っていたので、自然とある程度の戦艦・戦車についての知識がついただけだったのだ。決して普通のミリオタさんのように詳しい知識があるわけではないのである。

 確かに小学生ながら、子供向けの「大和と武蔵」という本の他、豊田穣の「撃墜」・「撃沈」や、伊藤正徳の「連合艦隊の栄光」、吉村昭の「戦艦武蔵」・「零式戦闘機」等の文庫本を読みあさってはいたが、その頃は、どこの小学生も同じように興味があるものだと思っていた。

 海軍博物館を出たあとは、時間が押しているということで、そのまま宴会会場に向かうことになる。

(続く)

日中韓FTAシンポジウムの旅日記~その8

(続き)

5月21日

 7時に朝食をとり、できるだけ早く出発しようという指令をX教授から受けていたので、7時直前に1階ロビーに出向く。しかしY弁護士しかいない。Gさんも来られたので、先に食べることにする。昨日と同じ中華だが、少しメニューが違うようだ。
大体10分くらい遅れてX教授が登場。

 朝食をとりながらX教授は、列車に乗れなくなるといけないから7時45分にはロビーに集合しましょうと仰る。もちろん異議なく了解だ。

 部屋の忘れ物がないか確認して、45分直前にロビーにつくと、やはりY弁護士しかいない。さて、X教授はなんと言って現れるでしょうか?というクイズを出すと、Y弁護士は、「多分なにもおっしゃらないでしょう」、と即答。
 チェックアウトに関してもGさんにお任せなので、我々はカードを渡すだけ。
 X教授の登場はやはり、5分ちょい遅れ。大物はやはり違うのだ。クイズはY弁護士の大正解だった。すぐに車に乗って、済南駅まで。

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(済南市内で見たバス~たぶん日本のTV番組「あいのり」の中国バージョン?)

市内は、そこそこ渋滞している。道路工事中のため、歩行者用通路が設定されているのだが、そこを強引に突っ走って突破するタクシーをみる。駅前辺りの道路が、かなり混んでおり、駐車場にまではとても入れている時間がないということで、慌てて駅前の路上で降りることになる。

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(済南市駅前のバスターミナル~このあたりの渋滞が動かない!)

 Gさんがパスポートを持って切符を買いに行ってくれる。なかなか戻ってこないので、前回チンタオで乗り遅れかけたことから少し心配する。済南市駅では青島駅と異なり物乞いはいなかったが、特別警察の詰め所が駅前にあることは、同様のようだ。

 荷物チェックなどはかなりスムーズにすすみ、待合いで座って待つこともできた。X教授がオレンジジュースを買っている。改札は自動改札。出発7分前くらいに列車が入ってくる。一瞬早すぎないかと思ったが、乗ってから荷物を網棚に載せるまでが大混雑。

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(済南市駅のホーム)

 車両の前寄りの席のくせに、でかいトランク引っ張って、後ろの乗車口から乗ってくる人やその逆の人が多く、車内が大渋滞。生憎私達の席は車両のほぼ真ん中。渋滞にはまってしまい、交差する乗客の持ち上げたトランクの車輪にこすられながら、「全く自分の席に近い乗車口から乗れよ!」と小言を言いたくなった。

 何とか荷物を網棚に載せ、席に着いたのとほぼ同時に発車。停車時間を多めに取っていたのは、こういうことなのか、と理由がわかる。

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(車内の様子~やはり車両間のドアは開いている。)

 車両は前回乗ったものよりも新しいのか、窓もきれいで汚れていないのは好感が持てる。行きと同じく窓側はX教授通路側はS弁護士。Y弁護士が気を使って3人席の真ん中に座ってくれる。車両は行きに乗ったものよりも新型のようだ。先頭車両の外見は、ドイツのICE4に似ている気がする。やはり時速200キロは超えない。おそらく線路の性能の問題なのではないだろうか。
 車内で、ポメラを使ってメモを書いたり寝たりしているうちに、12時前にチンタオに到着。終着駅だからゆっくり降りられる。折り返し北京行きになるようだ。

 駅前で少し待っていると青島に来たときにお世話になった若手弁護士のKさんが、レンジローバーでお出迎え。ホテルまで案内してくれる。ホテルはかなり高層の高そうなホテル(青島ファーグローリーレジデンスホテル)。表示されている宿泊費は1500元。
 海のみえる部屋が2つしかないとGさんがいうが、あまり気にしないので、くじ引きでいいんじゃないですかと、話しておく。実際にGさんが四つカードキーを持ってきて、どうぞと、くじびきになった。X教授は、じゃあ奥から3番目といって、カードキーを取る。そのとなりを私がとり、Y弁護士、Gさんの順でキーを取る。部屋のドアをあけてのお楽しみ。

 部屋はかなり広く多分当たり。キッチン、洗濯機、冷蔵庫、食器洗い機もついていた。翌日チェックアウトの直前にドアの裏側の表示で見てみると、隣のX教授の部屋より、広そうだった。残念ながらバスタブはなかった。

 すぐに昼食ということで、24階のレストランに行く。外を見るとレストランの窓とほぼ同じ高さまで凧が揚がっている。高層ビルと凧というアンバランスが面白かった。

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(高層ホテルから見た凧)

 メニューにビジネスランチがあったので、ステーキっぽいビジネスランチにする。X教授はカツカレーランチ、Y弁護士とGさんは、タンタン麺セット。注文の際に、ボーイさんから、「ここのタンタン麺はふつうより辛いがどの辛さを注文するか」と脅されて、普通の辛さを二人は選択したらしい。しかし、いざ担々麺がやってきてみると、全然辛くないとぶつぶつ言っている。ただ、しばらく食べていると、汗がでてきたそうで、やはり辛さはあったようだ。ステーキは結構固め。サラダのドレッシングなしを言ったのに、しっかりドレッシングがかけられており困った。

 X教授は完食。まあ美味しかったですよ、とのことだった。
 お腹も満たしたし、青島観光に出発だ。

(続く)

日中韓FTAシンポジウムの旅日記~その7

(続き)

 大明湖は、市民の憩いの場という感じで結構な人出がある。湖風が吹くと涼しい。柳の街路樹をみて、Y弁護士が、「おお~、心惹かれる」としみじみ言う。中国風の建物もあり、「やっと中国って感じがします」、とY弁護士が喜ぶ。

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(大明湖)

 ムンちゃんの彼氏も日本語ができるそうなので、彼氏にも日本語で話しかけるが、彼氏の方は照れているのか日本語で返してくれない。

 それでもめげずに話しかけていると、彼氏がムンちゃんを介して「先生は、関西人ですか?」といきなり切り込んできた。

 中国でも関西人は著名なのだろうか・・?一体彼氏の頭の中に想起されている関西人とはどんな人物像なのか・・・?疑問は浮かぶが、まあいいや。ここは中国、4000年の歴史。細かいことはどーでも良いのだ。

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(大明湖付近の中国風建物~家の前に人々が出て涼んでいる?)

 湖畔のお土産屋さん街には、なんと猫カフェがあった。ムンちゃんがへばりつくようにして入りたそうな気配を見せるが、彼氏以外全員スルー、ムンちゃんには申し訳ないが、これが形式的な男女平等かも。

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(猫カフェ~「八尾猫 珈琲館」というお店らしい。。。。たぶん)

 遊歩道の脇に選挙のときのように、顔写真がたくさん貼ったボードが置いてあった。聞いてみるとこの辺りの共産党の有力者の方々の写真なのだそうだ。やはり中国・共産党支配なんだという気がする。

 帰りの車が待ち合わせ場所になかなかこず、かなり待たされる。ようやく車に乗り込みホテルに向かう。

 法律事務所の方では是非とも事務所を見てもらいたいとのことだそうで、汗をかいた服を着替える余裕もなく、ホテルの6号館前の駐車場で乗り換えることに。そこで姜先生を待つ間に、朝に撮影した記念写真をもらえた。なかなか大きく立派。着替えもできず汗くさい軽装のまま、法律事務所にいくことになる。せめて名刺入れでも取りに行きたかったが、時間がないということでそれも却下。
 財布に名刺二枚しか入ってないよ・・・。

 法律事務所は、高層ビルのワンフロアーをど~んと占有してある。ぴかぴかに磨かれた床には自分の姿が映るくらいだ。ガラスにも埃のかけら一つもついていない。

 通路の両脇に飾ってある、高さ2m程もあろう、どでかい壷を倒さないように気を使う。万が一にでもカバンのヒモを引っかけて倒して割っちゃったなら、おそらく、数百万円の損害賠償は必至であると思われる。しかも、相手は凄腕ローファーム軍団なのだ。

 それにしてもオフィスは、映画に出てきてもおかしくないくらい格好いい。個室からトム・クルーズが出てきて「Hey! Sakano!」と声をかけられても全く違和感を感じないくらいだ。

 パートナーは約20名、アソシエイトは約50名くらいとのこと。パートナーは個室がもらえるが、アソシエイトはオーブンスペース。受験時代の参考書と思われる書籍をおいてある机もあった。

 休みの日だったが、アソシエイト数名が働いていた。所長室はやはり立派で、格差社会を痛感させるものだった。

 事務所内を案内されたあと、事務所紹介のビデオを見せてもらい、どのような仕事をしているかなどについてお互いが話す。お土産に、その事務所で特別にこしらえた茶器をお土産に頂く。

 その後、食事をご馳走してくれることに。
 中華もあるが鉄板焼もあるような店で、個室での会食。水木金などと曜日を表す名前が個室についていて、我々は「金」の部屋。机の上に注文するための用紙がおいてあり、それに記入して注文するシステムらしい。注文用紙には肉の焼いた物などがそこに載っており、野菜や魚介が苦手なY弁護士も、肉が食べられそうだと言うことで元気が出てきた様子。室内にある円形の中華テーブルの周りに椅子が並べてあるが、誰がどこの席にするかについては、パートナーの先生が決める。

 どうやら、酒席を設けるあるじが、一番奥の中心に座り、その右手に1番目の客、左手に2番目の客、という順番があるようだ。年齢順にX教授、S弁護士、Y弁護士の順序で座るよう指示を受ける。

 アルコール度52度の酒で乾杯をするらしいが、飲めない。飲め飲めと促されて、仕方なく、少しだけ飲む。シンナーのようななアルコール臭がする上に、のどがカット燃える。

 案の定、すぐに頭痛に襲われた。これは飲んべえの方には分からない辛さだろう。

 ステーキ肉、麻婆豆腐、回鍋肉など、少し辛いがおいしい。ただし、なぜか最後のラーメンだけは味がしなかった。

 途中で、トイレに立った際に、お店の人に「ツァーサ・サイナーリ」と言ってみた。1度目は??という感じだったが、再度大声で言ってみると、トイレを教えてくれた。おお、覚えておいて良かったぞ。X教授の教えに感謝するS弁護士だった。

 チャン先生?というおもしろい大学教授?も途中から参加。
 少し石原慎太郎の若い頃に似ていて、日本語がめちゃくちゃ上手い。これだけ日本語ができれば、日本人だといっても誰も疑わないだろう。「日本語上達の秘訣は、とにかく勉強よりも遊ぶことだよ!」と豪快に笑っていた。これだけ日本語がお上手だと妙に説得力がある。

 昨夜の歓迎会と同じく、ここでも何度も乾杯することは変わらない。それ以外にも、1対1で乾杯するところは同じだ。

 アルコールを飲むと頭痛がする私、アルコールに極めて弱いY弁護士は共にかなり厳しい状況。X教授の肝臓が丈夫で本当に良かった。そうでないと、3人とも歓待してくれるのに無礼な対応になりかねないところだった。ほんと、中国でのお付き合いにはアルコールに強いことが必須の条件である可能性が高い。

 帰りの車内で、Gさんと話していたX教授から、明日の夕食も宴会に決まりましたと告げられる。

 どうやら明日は、青島の有力弁護士さんがご馳走してくれることになったらしい。最後くらいはのんびりしたかったが、お誘い頂いた以上、もう行くしかないだろ。どうにでもなっちまえと、S弁護士は、飲めないアルコールを無理して少し呑んだために、がんがん痛む頭のなかで、半ばやけっぱちになって考えていた。

 ホテルに戻った際にX教授にエアコンをみてもらった。どうやら、太陽マークに見えたのは雪のマークで、雪のマークがついていれば冷房になっているとのこと。「まったく紛らわしい表示だな。」と自分の観察眼のなさを棚に上げて、昨晩の悲劇を振り返る。これで今日は安心して眠れそうだ。

(続く)