今年1年有り難うございました。

 ウィン綜合法律事務所は、明日から来年1月4日まで冬季のお休みを頂きます。

 クライアント他、多くの方々の御支援を頂戴し、今年1年を無事に乗り切ることが出来たように思います。皆様に深く感謝し、御礼申しあげます。

 新年は、1月5日より通常通り事務所を開けます。

 皆様が、よき年末を過ごされ、よき年始を迎えられますよう、祈念しております。

 今年1年間、本当に有り難うございました。

司法試験委員が法科大学院に求めるもの~労働法

今回は労働法である。

(採点実感に関する意見から引用)

6 今後の法科大学院教育に求めるもの
 基本的な法令,判例及び学説については,正確な理解に基づき,かつ,基本的な概念に関する知識を習得するように更なる指導をお願いしたい。その際,条文の内容を正確に理解することはもとより,当該規定の趣旨を踏まえて事案に適用する能力が求められるほか,主要な判例については,判旨部分を単に記憶するのではなく,事案の内容を正確に把握し,当該事実関係の下でどのような規範を定立して当てはめが行われたかを理解する必要があることに十分配意いただきたい。また,事例の分析の前提となる基礎的事実を正しく把握し,結論を導くために必要な論点を抽出した上,論点相互の関連性を意識しつつ,法令,判例及び学説を踏まえた論理的かつ一貫性のある解釈論を展開し,これに適切に事実の当てはめを行って,法の趣旨に沿った妥当な結論を導くという,法的思考力を更に養成するよう重ねてお願いしたい。

(引用ここまで)

【超訳】~試験委員の言いたいことを推測しての私の意訳

 とにかく、基本的な法令、判例、学説について正確に理解させて欲しいねん。実務家として必要な基本中の基本が、全く身についてへん。それだけやのうて、基本的な概念に関する知識を身に付けさせるよう、ホンマにしっかり教えたらなあかんと思うで。

 法令の基本の理解、判例の基本の理解、学説の基本の理解、どれもダメ。それらしいことを書く奴はおるけど、正確な理解が出来とる奴はほとんどおらん。基本的概念の知識なんざ、当然必要なもんやで。それも知らんと、法的な議論なんてできへんわな。基本的概念の知識も無しに実務家になりますって洒落にならんで。一体何を教えとんねん。

 「更なる」って念を押しとるのは、ホンマにやばいからやで。法律家には知識も要る。基本的なところは、覚えとかなアカンところも仰山あるんやで。お医者が病気の知識なかったらなんの病気か診断つかへんやろ。確かに意味も分からず丸暗記すんのはあかんけど、理解した上で覚えなアカン知識は絶対にある。暗記の弊害とかアホなことゆうて知識を身に付けさせることをおろそかにしとるんと違うか。

 学生さん教えるときは、条文の内容を正確に理解させなあかん。それが全ての出発点や。ほんでその条文がなんで規定されたんかっちゅうことを踏まえて、どの事案に使うべきか、どこまでの事案に使えるんか判断して、条文を事実に適用する能力がいるねん。

 細かい判例までは要らんけど、主要な判例について言うたら結論だけ暗記するんやのうて、まずどんな事案やったんかを正確に把握して、その事実関係の下で、どんな規範が定立されて、どう事案に適用されたんか、を理解せなあかん。数学の公式かて、どうやって公式が導かれとるのかっちゅう理屈が理解できてへんと応用がきかんへんのは当たり前やろ。法律実務家の扱う事件は全部事情が違うねん。何一つ全く同じなんて事件はあらへん。応用効くよう勉強してへんと実務家としたら使いモンにならへんのや。結論(判旨)の暗記だけなんざアホのやることやで。せやけど、結論だけを暗記しとるとしか思われへん答案ばっかしや。くどいようやけど、出来てへんし、相当やばいと思うとるから、「十分配慮頂きたい」と念を押しとるンやで。

 それだけやのうて、問題となっとる事案にいろいろ事実が出てくるやろ、そん中で事例分析の鍵になる基礎的な事実っちゅうもンがある。その鍵になる事実をちゃんと見抜いて、結論を導くのに乗り越えなあかん論点をきちんと抽出せなあかん。ほんで、そのいくつか出てきた論点がどないな関係にあるんかを整理したうえで、法令、判例、学説を踏まえ、破綻せんよう論理的且つ一貫性をもった法律解釈論を述べて、論点をクリアにし、ここはこう解釈すべきと定める。ここまでやった上で、事案に適用していかなあかん。もちろんその結論は法の趣旨に沿った、妥当なもんやないとあかんで。良くいわれる法的思考力やな。

 答案見とると、法的思考力は全然アカンねん。ええように行っとるんやったら「法科大学院の教育成果が上がっていることが感じられます。この調子で頑張って下さい」で足りるねん。そこを敢えて「法的思考力を更に養成するよう」「重ねてお願い」しとるんは、ホンマにやばいからやで。実務家の質が落ちて、誰も司法を頼りにせんようになりかねへんからや。このままやと司法が沈没するからやで。

 出来てからず~っと教育の質の向上ってゆうとるけど、法科大学院っちゅうところは、どこまで危機感持ってやっとんのや。

お医者さん110番

 お医者さんの法律問題に関しては、これまで、医療ブローカーのような方々が、お医者さんの御用聞きをしながら、対応されていたことも多かったようです。医療ブローカーのような方々の法的処理は、きちんとしていないことも多く、また弁護士費用よりも遥かに高額の費用を請求している例も多々見受けられます。

 お医者さんが法的問題に患わされることなく医療に専念して頂けるように出来ないか、との考えから、病院・医師の顧問経験の豊富な先生方が集まって、お医者さん110番を作りました。

 私もその末席に加えて頂いております。

 医師の法律問題に特化したサイトは、いくつかあるようですが、①定期的に勉強会を開催し、知識と経験の共有を図っていること、②全国対応であること、③担当弁護士がほぼ全員病院・医院の顧問経験を有していること、等は当会の大きな特色であると考えております。

http://doctor-rescue.idealaw.jp/

ですので、もしお困りの医師の方がいらっしゃったら、1度ご覧頂けると幸いです。

司法試験委員が法科大学院に求めるもの~経済法

今回は経済法を取り上げる。

(採点実感等に関する意見から引用)

5 今後の法科大学院に求めるもの
経済法の問題は,不必要に細かな知識や過度に高度な知識を要求するものではない。経済法の基本的な考え方を正確に理解し,これを多様な事例に応用できる力を身に付けているかどうかを見ようとするものである。法科大学院は,出題の意図したところを正確に理解し,引き続き,知識偏重ではなく,基本的知識を正確に習得し,それを的確に使いこなせる能力の育成に力を注いでいただくとともに,論述においては,適用条文の選択・操作,構成要件の意義を正確に示した上,当該行為が市場における競争にどのように影響するかを念頭に置いて,事実関係を丹念に検討し,要件に当てはめること,そしてそれを箇条書き的に列挙するのでなく,論理的・説得的に表現することができるように教育してほしい。

(引用ここまで)

【超訳】~試験委員が言いたいであろうことを、推察しての意訳

5 今後の法科大学院教育はこうあってほしいねん

 誤解してもろたら困るけど、経済法の問題は、細かな知識や、高度な知識を要求なんかしとらへん。経済法の基本的な考え方をきっちり正しく理解しとるんか、その正しく理解した基本的な考えを使うて、多様な事例に対応できそうなんか、できへんのか、を見とるだけやねん。なんもおかしなことやない。法律家なら当たり前の基本中の基本ができとるかを見とるだけや。

 法科大学院は、司法試験で聞いとるのは正確な基礎知識がまず第一で、それを使って事例を解決できるかっちゅうだけの問題やねんから、そこを先ずよう理解せなあかん。ほんで、知識偏重やのうて、基本的な知識を正確に習得しとるか、基本的な知識をきちんと使える能力を伸ばすよう力を入れてもらわんとあかんわな。前から言い続けとるけど、出来てへんから言うてんねんで。きちんとできとったら、敢えて言わんでもええことやねんから。答案見とったら、基礎的な知識も正確やないし、使い方も下手やねん。こんなんやったらまずいやろ。

 でもそれだけでは足りへんねん。答案書く時は、適用条文をきちんと選んで、どの条文が引用するどの部分が問題になってんのんかあたりもきちんと分かった上で、条文の構成要件の意義を正確に表現して、問題になっとる行為が市場における競争にどないな点でどないな影響を及ぼすのかを頭において、事実関係を丁寧に検討して、要件に当てはめて結論を出すことが出来なあかん。

 あ、いうとくけど、事情を箇条書きにする奴がおるけど、論外やで。一体どんな教育しとんねん。論理的、説得的に答案を書けんと話しにならんやろ。裁判所に提出する準備書面が箇条書きに事実を引っ張ってハイ結論やったら、法律家の文書とちゃうわな、全く説得力がないわな。そのあたりの教育ができてへんねん。

 まあ、いうたら、法律家として身に付けてもらわなあかん基礎が、ぜーんぶ出来てへんわけや。しっかり気張ってもらわんとあかんのちゃうか。

(続く)

司法試験委員が法科大学院に求めるもの~租税法

今回は租税法を取り上げる。

(採点実感に関する意見から引用)

4 今後の法科大学院教育に求められるもの
今年も,第2問の設問3において,法人税法に関する問題を出題した。今後も所得税を基本とする問題が出題されると思われるが,法人税についての基礎的な知識の修得も重要であることは言うまでもない。
また,今後も,事例中心の出題である点には変化はないと思われる。法科大学院においては,所得税法及びこれに関連する法人税法に関して,条文に則して理解を確かなものとするとともに,個々の規定の趣旨・目的や相互関係についても理解を深めるように努めた上で,そのような基礎的な学習を通じて習得した知識や能力を事例演習等によって確認し,事例解決のための応用力や総合的判断力を涵養していくというような教育が望まれる。

(引用ここまで)

【超訳】~司法試験委員の言いたいことを推測した私の意訳。

4 これからの法科大学院教育はこうやって欲しいんや

 今年も法人税法に関する問題を出題したんは、租税法科目は所得税を基本に出題してくけど、法人税についての基礎的な知識も不可欠やっちゅうメッセージやで。
 それに今後も、事例中心の出題をする点は多分変わらへんと思うわ。

 法科大学院では、所得税法とそれに関連する法人税法について、条文から理解を確かなものにする教育をせなあかん。それと同時に、個々の条文の規定の趣旨・目的、相互関係についても学生に理解を深めるよう教えてやらなあかん。法律は条文が全ての基本やろ、そこんとこからしてできてへんから言うてんねんで。なんでその条文が定められたのか、その条文の目的はなんなのか、条文同士が相互にどないな関係にあるんか、ちゅう当たり前のところについては、当然勉強できてなあかんところや。そこまでが、少なくとも基礎的なお勉強やで。中学生の勉強で言うたら教科書レベルや。しっかり教科書レベルを叩き込んだってもらわんとな、応用なんざ、夢のまた夢やで。

 今んとこ全然やけど、欲を言うたら、そんな基礎的な学習を通じて、学んだ知識や能力を、問題演習などで確認しながら、事例問題の解決に向けた応用能力や、総合的な判断能力を養ってもらわな、困るところや。法律実務家としては当たり前に必要とされとる力やねんから。

よう頑張ったってもらわなあかんな。

(続く)

司法試験委員が法科大学院に求めるもの~倒産法

今回は倒産法を取り上げる。

(採点実感に関する意見から引用)

5 今後の法科大学院教育に求めるもの
まず,倒産法における基本的な条文,判例及び学説を正確に理解し,身に付けることが最も重要であることは言うまでもない。その上で,修得した基本的な知識を応用し,事例を把握・分析して論点を過不足なく的確に抽出し,論理的かつ一貫性のある解釈論を展開して,妥当な結論を導く能力が求められる。
このような知識・能力の必要性は,倒産法の分野に限られるものではないが,倒産法は,実体法と手続法が交錯する法分野であり,民事訴訟法,民法等などについての幅広い理解・知識が基礎として求められる上,再建型及び清算型手続の異同についても理解することが必要であるなど,総合的かつ多角的な知識・能力が求められる分野である。
法科大学院においては,こうした点にも配意しつつ,上記の知識の修得や能力の涵養を実現するための教育を期待したい。

(引用終わり)

【超訳】~試験委員が言いたいことを推察した、私の意訳

5 今後の法科大学院教育はこうやってもらわな

 まず、なによりもやな、倒産法における基本的な条文、判例、学説を正確に理解させ、身に付けさせたってくれな困る。断っとくけど、「基本的な」部分やで。基本を正確に理解させることが必要やねん。基本を正確にっちゅうことは、どんな勉強でもスポーツでも当たり前のことやわな。いま言うてんのは、応用分野とか先端分野とか些末な論点と違うで。基本中の基本を言うてんねん。簡単に言うたら、基本的なものすらできてへんちゅうこっちゃ。

 それができた上で、その知識を使うて、事案を把握して、よう分析して論点をきちんと抽出して、論理的で一貫性のある解釈論を述べて、妥当な結論を導かなあかん。率直に言うたら、そのスタート地点の基本的な条文、判例、学説の正確な知識と理解ができてへんねん。100m競争で言うたら、スタート前に転けとるのと同じやで。

 ここで言うとる、知識とか能力は法律家としたら当たり前に必要なもんや。倒産法の分野だけの問題やないで。ただ、倒産法には実体法と手続法が混じり合う分野やから民訴や民法なんかの幅広い理解や知識も要るし、再建型だけじゃのうて、清算型手続もあるから、その異同も理解しとかなあかん。結構面倒な分野なんや。せやから、倒産法は総合的・多角的な知識や能力がいる分野やねん。

 法科大学院は、倒産法の性格も考慮に入れて、教育してもらわなあかん。

 なんも難しいことを言うとるのと違うで。法律家として当然必要なことについて言うとるだけや。答案見る限り、まだまだそんな教育を実現出来とらんようやけど、しっかりやってくれるよう期待しとるで(10年かけてこの調子やったら無理かも知らんけど)。

(続く)

司法試験委員が法科大学院に求めるもの~刑事系2

今回は刑事系第2問を取り上げる。

(以下、採点実感からの引用)

4 法科大学院教育に求めるもの
このような結果を踏まえると,今後の法科大学院教育においては,従前の採点実感においても指摘されてきたとおり,刑事手続を構成する各制度の趣旨・目的を基本から深くかつ正確に理解すること,重要かつ基本的な判例法理を,その射程距離を含めて正確に理解すること,これらの制度や判例法理を具体的事例に当てはめ適用できる能力を身に付けること,論理的で筋道立った分かりやすい文章を記述する能力を培うことが強く要請される。特に,法適用に関しては,生の事例に含まれた個々の事情あるいはその複合が法規範の適用においてどのような意味を持つのかを意識的に分析・検討し,それに従って事実関係を整理できる能力の涵養が求められる。また,実務教育との有機的連携の下,通常の捜査・公判の過程を俯瞰し,刑事手続上の基本原則や制度がその過程の中のどのような局面で働くのか,各局面ごとに各当事者は何を行わなければならないのか,それがどのように積み重なって手続が進むのか等,刑事手続を動態として理解しておくことの重要性を強調しておきたい。

(引用ここまで)

【超訳】~司法試験委員の言いたいことを推測しての意訳

4 法科大学院教育はこうやってもらわんと

 採点結果から見たら、今後の法科大学院教育は相当頑張ってもらわなあかん。前からなんべんも言うてきたけど、刑事手続を形づくっとるそれぞれの制度がどんなもんで、どういう目的で存在しとるのかということを、基本からしっかり正確に理解させなあかん。刑事手続き自体の理解があかんのやったら、そもそも判例やら論点やらを教えても理解できるはずがないやろ。先ずこれができてへんから言うてんねん。

 それができた上での話しやけど、重要で基本的な判例があるわな、その判例がどういう理屈でどういう結論を導き出しとるのか、その理屈の背景には何があるのかっちゅうこと、その判例がどんな事案まで適用できるんかっちゅうことを正確に理解させなあかんのや。その二つができたとして、制度や判例の考えを具体的な事案に、上手いこと使えるようにする能力をつけてやらんとイカン。それから論理的で筋道だった分かりやすい文章で表現する力も要るわな。理屈で勝負する法律家が、論理的でなかったらあかんやろ。ほんでホンマに理解しとるんやったら分かりやすく説明できるわな。大量の書面を読まされる裁判官を説得するには、即読即解の文章で表現できる能力が不可欠やねんで。

 なんも特別なこと言うとるのとちがうで。まあ言うたら、刑訴法の基礎・基本の勉強、実務家として当然やらなあかんことなんや。敢えて言うけど、このことは、強く要請しとるんやで。強く要請しとるっちゅうことは、全然できてへんからやで。

 特に法律の適用場面については、生のいろんな事実やら事情やらがあるわな、その事実や事情その絡みが、法規範を適用するっちゅうときにどんな意味を持ちうるのか、意識しながら分析・検討して、その観点から要するに事実はこうやってんな、と一通り整理できる能力を養ってもらわんとあかん。問題文の事情を抜き書きして、これらの事情からこうや、と結論に飛ぶのもあかん。例えばの話しで全てにあてはまるとは言わんけど、問題文から事情を引っ張るなら、「事情」→「条文の●●に該当」なんて直ちに書いたらあかんで。「事情」→「その事情が法的にどんな意味をもってんのかの評価」→「(評価を前提にして)法律の条文の●●に該当」とかにせなあかんし、もちろん条文の●●に争いがあるなら、そこんとこも決着つけとかなあかん。自分の主張に弱いとこがあるならそこも手当てしておく必要も当然あるやろ。
 都合のええとこだけ、引っ張り抜いてきて、こんな事情があります、ハイ結論、ではアカンねん。

 それから実務教育と、関連づけて教育してもらわなあかん。典型的な捜査や公判の流れをつかんで、刑事手続き上の基本原則やら制度やらがどないな意味を持ってどう動いとんのか、各場面で当事者はそれぞれ何を考え、何をせなあかんのか、それらがどうやって重なりおうて刑事手続きが進んでいきよるのか、全体的な流れとして刑事手続きを勉強しとかなあかん。このことを強調するのは、答案を見とると、受験生は、刑事手続きの全体的な流れがわかっとらんからやで。論点についてはそれらしいことを書いとるけど、刑事手続きの全体像を理解しとるとは思われへんのや。ずばり言うたら、論点主義になっとんねん。

 かつて大学側は予備校に対して「論点主義」やと批判したわな。法科大学院で教育したら論点主義やなくなるはずやってんな?せやけど実態は、全体の流れが分からんまま個々の論点を書いとるような答案ばっかしやで。

よう気いつけて、教育せなアカンやんか。

(続く)