司法試験委員が法科大学院に求めるもの~労働法

今回は労働法である。

(採点実感に関する意見から引用)

6 今後の法科大学院教育に求めるもの
 基本的な法令,判例及び学説については,正確な理解に基づき,かつ,基本的な概念に関する知識を習得するように更なる指導をお願いしたい。その際,条文の内容を正確に理解することはもとより,当該規定の趣旨を踏まえて事案に適用する能力が求められるほか,主要な判例については,判旨部分を単に記憶するのではなく,事案の内容を正確に把握し,当該事実関係の下でどのような規範を定立して当てはめが行われたかを理解する必要があることに十分配意いただきたい。また,事例の分析の前提となる基礎的事実を正しく把握し,結論を導くために必要な論点を抽出した上,論点相互の関連性を意識しつつ,法令,判例及び学説を踏まえた論理的かつ一貫性のある解釈論を展開し,これに適切に事実の当てはめを行って,法の趣旨に沿った妥当な結論を導くという,法的思考力を更に養成するよう重ねてお願いしたい。

(引用ここまで)

【超訳】~試験委員の言いたいことを推測しての私の意訳

 とにかく、基本的な法令、判例、学説について正確に理解させて欲しいねん。実務家として必要な基本中の基本が、全く身についてへん。それだけやのうて、基本的な概念に関する知識を身に付けさせるよう、ホンマにしっかり教えたらなあかんと思うで。

 法令の基本の理解、判例の基本の理解、学説の基本の理解、どれもダメ。それらしいことを書く奴はおるけど、正確な理解が出来とる奴はほとんどおらん。基本的概念の知識なんざ、当然必要なもんやで。それも知らんと、法的な議論なんてできへんわな。基本的概念の知識も無しに実務家になりますって洒落にならんで。一体何を教えとんねん。

 「更なる」って念を押しとるのは、ホンマにやばいからやで。法律家には知識も要る。基本的なところは、覚えとかなアカンところも仰山あるんやで。お医者が病気の知識なかったらなんの病気か診断つかへんやろ。確かに意味も分からず丸暗記すんのはあかんけど、理解した上で覚えなアカン知識は絶対にある。暗記の弊害とかアホなことゆうて知識を身に付けさせることをおろそかにしとるんと違うか。

 学生さん教えるときは、条文の内容を正確に理解させなあかん。それが全ての出発点や。ほんでその条文がなんで規定されたんかっちゅうことを踏まえて、どの事案に使うべきか、どこまでの事案に使えるんか判断して、条文を事実に適用する能力がいるねん。

 細かい判例までは要らんけど、主要な判例について言うたら結論だけ暗記するんやのうて、まずどんな事案やったんかを正確に把握して、その事実関係の下で、どんな規範が定立されて、どう事案に適用されたんか、を理解せなあかん。数学の公式かて、どうやって公式が導かれとるのかっちゅう理屈が理解できてへんと応用がきかんへんのは当たり前やろ。法律実務家の扱う事件は全部事情が違うねん。何一つ全く同じなんて事件はあらへん。応用効くよう勉強してへんと実務家としたら使いモンにならへんのや。結論(判旨)の暗記だけなんざアホのやることやで。せやけど、結論だけを暗記しとるとしか思われへん答案ばっかしや。くどいようやけど、出来てへんし、相当やばいと思うとるから、「十分配慮頂きたい」と念を押しとるンやで。

 それだけやのうて、問題となっとる事案にいろいろ事実が出てくるやろ、そん中で事例分析の鍵になる基礎的な事実っちゅうもンがある。その鍵になる事実をちゃんと見抜いて、結論を導くのに乗り越えなあかん論点をきちんと抽出せなあかん。ほんで、そのいくつか出てきた論点がどないな関係にあるんかを整理したうえで、法令、判例、学説を踏まえ、破綻せんよう論理的且つ一貫性をもった法律解釈論を述べて、論点をクリアにし、ここはこう解釈すべきと定める。ここまでやった上で、事案に適用していかなあかん。もちろんその結論は法の趣旨に沿った、妥当なもんやないとあかんで。良くいわれる法的思考力やな。

 答案見とると、法的思考力は全然アカンねん。ええように行っとるんやったら「法科大学院の教育成果が上がっていることが感じられます。この調子で頑張って下さい」で足りるねん。そこを敢えて「法的思考力を更に養成するよう」「重ねてお願い」しとるんは、ホンマにやばいからやで。実務家の質が落ちて、誰も司法を頼りにせんようになりかねへんからや。このままやと司法が沈没するからやで。

 出来てからず~っと教育の質の向上ってゆうとるけど、法科大学院っちゅうところは、どこまで危機感持ってやっとんのや。

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