新聞は自由競争を否定するのね・・・

 朝日新聞を止めてからとっている日経新聞は、およそ、なんについてでも規制緩和・自由競争をもちだす傾向があるように、少なくとも私は感じていた。法曹人口問題しかりだ。就職出来ない新人弁護士の割合が高まり(63期は一括登録時で12%も登録できなかった~就職出来ていなかった~状況にある)、優秀な人材の法曹界離れが明白に進行中であろうとも、日経は朝日とともに、もっとニーズはあるから掘り起こせ、自由競争で淘汰すべきだからこれで良い、という論調を取り続けてきたように思う。

 ところが今朝の日経新聞朝刊に、小さく「販売ルール厳守 新聞7社が確認」との記事が掲載されていた。

 記事を読むと、「関西地区の新聞7社(朝日・毎日・読売・日経・産経・京都・神戸)は、経営トップと販売責任者による会合を大阪市で開き、新聞販売の過当競争を是正しルールを厳守することを再確認した」そうだ。

 さらに、新聞公正競争規約のルール順守をさらに強化することで一致したとのこと。

 新聞公正競争規約とは、なんだか国会で決められたようにもみえるが、実際は景表法に基づき、多くの新聞事業社で定めた景品提供に関する自主規制ルール(但し公取の認定は受けている)なのだ。

 通常、新聞販売に伴って提供される景品が多ければ多いほど、景品を提供する新聞を購読する者が増えると考えられる。

 ところが、自由な景品提供合戦になれば、新聞社の利益が損なわれるおそれがある。そこで、その景品の上限を制限したもののようなのだ。

 あれっ!

 確か、朝日も日経も、規制を緩和してどんどん自由競争をするべきだっていってなかったっけ?

 そういう自由競争による淘汰によって、より良いものが生き残るって発想じゃなかったっけ?

 それなら、どうぞ、ご自分達もそんな自主規制ルールを撤廃して、再販制度も止めてもらって、思う存分自由競争されたら良いんじゃないでしょうか。

 自分たちは、仲間同士で決めた自主規制で守られて競争しないが、他人はどんどん競争するべきだってのは、何となく卑怯なイメージがあるんだけどなァ。

お疲れの方に。

 友だちがみんなうちにかえってしまった晩、モモはひとりで長いあいだ、古い劇場の大きな石のすりばちのなかにすわっていることがあります。頭のうえは星をちりばめた空の丸天井です。こうしてモモは、荘厳なしずけさにひたすら聞き入るのです。

 こうしてすわっていると、まるで星の世界の声を聞いている大きな耳たぶの底にいるようです。そして、ひそやかな、けれどもとても壮大な、ふしぎと心にしみいる音楽が聞こえてくるように思えるのです。

 そういう夜には、モモはかならずとてもうつくしい夢を見ました。

ミヒャエルエンデ「モモ」~大島かおり訳(岩波少年文庫)~より。

アメリカの弁護士事情

 京都大学のクラスメートで、日本の弁護士だけでなく、ニューヨーク州弁護士、カリフォルニア州弁護士の資格を持つ、Tさんとお話しする機会があった。

 Tさんは、アメリカの法律事務所での勤務体験もあるということだったので、そのお話も聞かせてもらった。

 Tさんのお話で印象に残っているのは、概ね次のようなお話。

 アメリカの法律事務所では、相当厳しい売上のノルマを課されるそうだ。

 しかし、訴額が高い事件も安い事件も訴訟等の手間はそう変わらない(この点は日本でも同じ)。

 したがって、交通事故で軽傷を負った被害者の方が保険金請求のために法律事務所にやってきたとしても、売上ノルマの観点からは「この程度のケガの請求額なら大した報酬にならないな」という思いがどうしても浮かんでしまうようになっていく、ということだった。

 Tさん曰く、【人としてなら「ケガか軽くて良かったですね。」というのが自然なんだと思うんだけど、厳しいノルマで、そのような人としての自然な気持ちがだんだん失われていってしまう気がするのが嫌だった。】とのことだ。また、アメリカの法廷で、どんなに狡い手段を用いてでも勝てば良いという方針をとるロイヤー達にもたくさん会ったという。

 Tさんは数年後にアメリカの法律事務所を辞めて日本に戻ることになる。

 以前のブログで紹介したニューズウイーク日本版でも明らかなように、法律に関する知識を、ほぼ金儲けの手段としてのみ使おうとするアメリカのロイヤー達がいる。

 「弁護士は社会生活上の医師」という間違った美名の下、日本の弁護士達を自由競争にたたき込み、アメリカのロイヤーのような弁護士像を目指すことが、本当にこの国の未来にとって正しいのだろうか。

 Tさんのお話を、新幹線の中で思い出しながら、しばし考えさせられた。

アフラックのアヒル

 保険会社アフラックが、アヒルと若干アヒル口っぽい宮崎あおいのCMを流している。

 アヒルが時々可愛く、瞬きをしている。今どきのCG(と思う)は凄いなあ、と感心する反面、トリの瞬き(まばたき)は違うんだけどな、という気持ちがいつも湧く。

 アフラックのアヒルは、上からまぶたがおりてくる人間のような瞬きだ。しかし、私が飼っていたチャボ(小型の鶏)の目のまぶたは、下から、上に向かってあがる動きをした。

 鳥の目では、一瞬、まばたきしているかのように目を膜が覆う。しかも相当スピードが速く、一瞬しか見えない動きがある(これは瞬膜の動き~まばたきの代わり~と思われる)。

 普段は、気付かないことも多いが、チャボをなでていると次第に眠くなってゆっくりと目を閉じることがある。そのときはゆっくりと下から上に向かって、目を閉じていくのだ。

 まあ、アフラックのアヒルは、可愛さが大事だろうから、下から上に向かってまばたきしたら、ちょっと、ひくよなぁ、とも思うが、あのCMによって、トリのまばたきも人間と全く同じと考えてしまう子供が増えているのかもしれない。

 ちょっと気になったので。

人工衛星落下

 NASAの発表によると、米国の人工衛星が23日にも地球に落下するそうだ。

 しかも、部品が一部燃え残り、地上まで落下するとのこと。現在落下場所の特定まではできていないが、落下の可能性があるのは北緯57度~南緯57度と極めて広範囲で、NASAの計算によると人工衛星の破片が誰か人に当たる確率は1/3200だとのことだ。

 まあ、1/3200なんて大丈夫。宝くじで一等当たるようなもの、とお考えの貴方、全然違いますぞ。

 宝くじで1等が当たる確率は1000万分の1。つまり、1,000万÷3200=3125

 ということは、宝くじで1等に当選する確率よりも、今回人工衛星の破片が誰かに当たる確率は3125倍も高いのです。

 できれば誰もいない海に落下してくれることを祈っていますが、それにしてもNASAはもっと正確な落下地点の予測計算ができないものでしょうか。

弁護士未来セッションは本気か?

 大阪弁護士会の本日のレターケースに、【「弁護士未来セッション@大阪」のご案内】と題する、チラシが入っていた。

 そのチラシによると、全国の多くの会員とともに英知を結集して幅広い議論を行い、その成果を日弁連の政策や会務執行に反映させることを目的としているらしい。

 大阪の呼びかけ人は、歴代大阪弁護士会会長(あんまり関心がないのでよく知らないところもあるが、多分そうだと思う)が名前を連ねている。

 立派なHPも立ち上がっており、その問題提起に、法曹人口問題もあった。内容は次の通り。

2.弁護士人口問題
 司法改革の理想、理念の追求が重要であることは言うまでもありませんが、現実をしっかり見据えて議論を進める必要があります。法の支配の理念を社会の隅々までいきわたらせるために、法曹人口を増加させる必要があるとして、急激に司法試験合格者数を増やしてきました。ところが、このような急激な法曹人口(ほとんどが弁護士人口)の増加政策は、新しい法曹養成制度の中核となった法科大学院の中には学生や教育の質を確保できないところも少なからずあり、「法曹の質」の維持という観点から深刻な懸念を生じさせています。また、大量の弁護士の需要を生み出すための制度的基盤の整備が不十分なまま、長引く経済不況を迎え、新人弁護士の雇用状況の悪化は年々深刻化し、OJTの機会すら得られない新人弁護士が増えています。そこで、日弁連の法曹人口政策会議は、2011(平成23)年3月の緊急提言で「当面の緊急対策として、司法試験合格者数を現状よりさらに相当数減員することを求める。」と提言し、さらに、今後も適正な法曹人口のあり方について検討を進めるとしています。弁護士をとりまく現実の状況を踏まえれば、議論をさらに深め、司法試験合格者数については思い切った減員をする必要があると考えます。

 へ~、思っているより、まともなことを言っているなぁ。と一瞬思った。

 それと同時に、この趣旨に賛同して呼びかけ人となっている大阪弁護士会歴代会長のかつてのご意見、行動と違うんじゃないかと思った。

 基本的に、ここ4~5年は、上野元会長を除いて、法曹人口問題は日弁連マターだからと大阪弁護士会内での議論を避け、日弁連任せにしてきた会長ばかりだったように思う。少なくともここ3年は、私は常議員会で「毎年」、法曹人口に関するPT(プロジェクトチーム)を作って欲しいと要望してきては、会長に断られてきたので間違いない。

 その歴代会長達が、急に司法試験合格者の大幅減員に賛成をはじめたということか。

 それはそれで、ようやく現実を見はじめてくれたということで、私としては喜ばしいことだ

 しかし、そうだとすれば、呼びかけ人のうち近弁連理事を務める者も複数いるのに、つい先日、どうして近弁連大会に兵庫県弁護士会が司法試験合格者1,000人決議を上程しようとしたときに、近弁連理事会で握りつぶされたのか、という疑問が湧く。

 少なくとも呼びかけ人のうち2名は近弁連理事だ。そうでなくても会長を務めるくらいだから大阪弁護士会の各会派でも大きな力を持ち、その会派の近弁連理事くらい動かせたはずだ。また、大阪弁護士会の会長は日弁連副会長を兼務するから、日弁連内でもそこそこの力を発揮できる。元会長であってもある程度の影響力を行使することは可能だろう。それにも関わらず、どうして日弁連はもっと強力に司法試験合格者の減員を主張できないのか。どうも腑に落ちない。

 疑問はさておき、とにかく、呼びかけ人は、少なくとも上記の司法試験合格者の思いきった減員に賛成しているのだろうから、実際に司法試験合格者の思い切った減員が必要であることを、堂々と公の場で、積極的に主張するなど、自らの行動で示してもらいたい。

 また、弁護士人口激増に関して、もうこれ以上放置できないとして有志で発足させた、「法曹人口問題全国会議」と一緒に激増問題に対処するよう動いてくれても良いはずだ。

 それが言行一致というもんだ。

 大人の態度というモンだ。 

 私としては、「弁護士未来セッション」が、次期日弁連会長選挙向けた事前選挙活動(しかもパフォーマンス)でないことを祈らざるを得ない。

 どのようなことをしてくださるのか、見に行きたいが、大阪では、3000円の参加費(但し、登録10年未満弁護士は無料)がかかる。 ちょっと悩ましいところだ。

 法曹人口問題全国会議HP

http://jinkoumondai.housou.org/index.html

 弁護士未来セッションHP

http://bm-session.jp/

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

刑事弁護研究会

 http://keijibengo.housou.org/index.html

 司法修習の際に、大阪での検察修習でお世話になった、柿原弁護士(元検察官)と、よりよい刑事弁護を提供するため、刑事弁護研究会を立ち上げました。

 実直な柿原元検事(当然今は弁護士)にいろいろご教示願えることが、楽しみです。

公認会計士試験の合格者数

平成22年以降の合格者数のあり方について
公認会計士試験については、公認会計士・監査審査会において運用されているところであるが、平成22年以降、当面の合格者数については、金融庁としては、合格者等の活動領域の拡大が進んでいない状況に鑑み、懇談会のとりまとめを踏まえた所要の対応策が実施されるまでの間、2千人程度を目安として運用されることが望ましいものと考える。(第1回公認会計士制度に関する懇談会資料)

平成23年以降の合格者数のあり方について
公認会計士試験については、公認会計士・監査審査会において運用されているところであるが、合格者等の活動領域の拡大が依然として進んでいないことに加え、監査法人による採用が低迷していることに鑑み、平成23年以降、当面の合格者数については、金融庁としては、1千5百人程度から2千人程度を目安として運用されることが望ましいものと考える。(第10回公認会計士制度に関する懇談会資料)

 現在の公認会計士制度は、監査業界のみならず経済社会の幅広い分野で、公認会計士あるいは会計専門家が活躍することが期待されるという考え方に基づき、平成15年に公認会計士法が改正をされて、社会人を含めた多様な人材でも受けやすいような試験制度になったということで、平成18年より新しい制度が実施されている。

 公認会計士試験合格者は、平成7~13年までは約670~960名程度、平成14年~17年までは、約1150~1370名程度だった。

新制度導入後は、

平成18年 3108名

平成19年 4041名

平成20年 3625名

平成21年 2229名

と合格者を激増させてきた(以前の当職のブログと数値が違うのは、旧第2次試験合格者等の短答式試験見なし合格者を除外するなどの点で、ずれが生じている)。

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/04/14.html

 しかしながら、現状においては、公認会計士試験合格者等の経済界等への就職は進んでおらず、また、想定していた社会人の受験者、合格者についても十分増加していないなど、現行の制度のねらいは道半ばの状況にあるし、結果的に試験制度の魅力が低下する(つまりは優秀な人材が集まらない)という可能性もあるということで、わずか3年で合格者減少へと舵を切った。その現れが冒頭に上げた、「合格者数の在り方」なのだ。

 公認会計士に対する社会のニーズに合わせ、質を維持しながら合格者数を決定しようとする動きであり、至極当たり前の行動である。当初のニーズ予測が大きく外れたことによる修正であり、現実を見据えたものともいえる。

 一方、司法試験はどうか。法科大学院制度を擁護することに執着する学者が、具体的にはどんなニーズかと質問しても答えられないくせに(当職のブログ「奥島孝康氏への質問状」「王様は裸だ」参照)、ニーズがある、ある、と強弁し、現実すら見ようとしていない。

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/06/07.html

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/06/27.html

 しかもそのような学者を制度を検討するフォーラムに組み込むから、間違った道に進んでいても軌道修正ができない。一度決まったことであっても間違っていたのなら直ちに過ちを認め修正するのが知恵のある人間というべきだ。

 この点、公認会計士試験に関する金融庁の対応は、少なくとも司法試験に関する関係諸機関の対応に比べて優れていると言えよう。マスコミも特に批判していない。正しい対応だから当然だ。

 しかし、ことが司法試験に関することになると、合格者等の経済界等への就職は進んでおらず、また、想定していた社会人の受験者、合格者についても十分増加していないし、結果的に試験制度の魅力が低下するという可能性もあるにもかかわらず、マスコミは、とにかく一度決めたことを守れと、叫び続ける。

 マスコミの誤導に惑わされずに、法曹に優秀な人材は必要なのか不要なのか、仮に優秀な人材が必要であるとするなら、そのために必要な施策はなんなのか、立ち止まって考える必要があるように思うのだ。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

法曹人口問題は、近畿弁護士連合会で議論すらできないのか!

 兵庫県弁護士会が、近畿弁護士連合会(近弁連)大会に、司法試験合格者を1,000人にするべきとの決議案を上程しようとしていました。

 近弁連大会で議題にするには、近弁連理事会で承認されなければなりません。

 ところが、本日、近弁連理事会決議で、兵庫県弁護士会の案は、賛成6、反対29で否決されました。

 近弁連大会で議題にすることすらできなかったのです。

 伝聞ですが、各単位会会長の理事会での意見が流されてきました。

 大阪の中本会長の御意見は次のようなものだったそうです。

・  法曹養成フォーラムで法曹養成問題と法曹人口 問題がこれから議論される。  
・ 大阪でも法曹人口の人数については議論されていない。  
・ 1000人という数字については、全く話しをしていない。
・ 会として意見を言える段階ではない。  
・ むやみやたらと数を出すべきではない。  
・ 戦略論もあり、もっと考えた上で出すべき。  

 (もし間違っていたなら、ご指摘下さい。その旨、訂正致します。)

 (追記 9月20日の大阪弁護士会常議員会で、中本会長が本件について言及され、ご発言の趣旨について解説されました。但し、坂野がきちんとメモを取れなかった部分もあるため、後日、中本会長とお会いする機会がありましたら再度お聞きして、ご発言の趣旨を踏まえて訂正しようと思います。ご指摘有り難うございました。)

 今後法曹養成フォーラムで、司法試験合格者も含めた議論がなされることは事実です。しかし、法曹養成フォーラムは、有識者委員の顔ぶれから見ても分かるとおり、法科大学院擁護の基本路線が前提にあり、現実を見据えた議論ができていません。給費制でも結局法科大学院擁護派有識者の声の大きさに押された面も少なからず見えたように思います。

 そのようなフォーラムに期待できるとお考えなのでしょうか。まずそこが疑問です。

 次に、大阪でも法曹人口の人数については、議論されていない。とのことですが、議論できないようにされているのです。 私は常議員として大阪の常議員会で、畑会長・金子会長・中本会長のいずれに対しても、法曹人口を検討すべきPTを設置して欲しいと言い続けてきました。しかし、歴代会長は、法曹人口問題は日弁連マターであるとして、一向に法曹人口問題に関するPTを設置してくれませんでした。議論の場を設定しないという状況にしておきながら、大阪で議論されていないから、とはちょっと理解できません。

 1,000人の数字については、全く話しをしていない。ということですが、近弁連=大阪ではないのですから、近弁連大会で議論をすればよい問題だったのではないでしょうか。近弁連大会で議論する機会すら設定しないとは、これも理解できません。

 会として意見を言える段階ではない。ということですが、そういう段階に至っていないのは、要望を出していたのに前述のPT設置すらしてこなかった、ここ数年の執行部の責任ではないでしょうか。また、近弁連の意見をまとめるための近弁連大会ではないのでしょうか。

 むやみやたらと数を出すべきではない。ということですが、逆に日弁連が相当数の減員という主張をして国会などに陳情に赴いた際、では具体的にどれくらいを想定していますかと聞かれた際に、どう答えるつもりなのでしょうか。相当数減員という玉虫色の主張の方が、むしろ問題が大きいのではないでしょうか。

 戦略論もあり、もっと考えた上で出すべき。とのことですが、現在どのような戦略を会員のために立てているのでしょうか。具体的な戦略など、残念ながらお聞きしたことがありません。戦略をお考えなら、当然大阪弁護士会なり日弁連なりでその戦略に沿った動きをする必要があるはずですが、そのようなお話は、少なくとも私はお聞きしたことがありません。現実には、どの程度の戦略を練っておられるのかも分かりません。逆にいえばいつどのようにして出すおつもりなのでしょうか。それも示さずに、戦略があるからといわれても、納得できるはずがありません。

 ただ、近弁連大会にどうしても、議案を上程したくなかった理事者の本音はおそらくこうでしょう。

 近弁連大会の議題に提出された場合、その議決は、出席者の多数決で決まります。今までのように、委任状をかき集め会派の動員をかけて、多数決で押し切ることが困難なのです。それを恐れたのでしょう。

 いずれにしても、各単位会内で議論していないというのは理由になりません。だってそのために近弁連大会という、近弁連の意見を決めるために議論する場が設定されているのですから。

 納得のいく説明を聞かせて欲しいものです。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

法科大学院制度は、やはり、失敗と考える。

 新司法試験合格者が発表された。合格率が23.5%と最低になったと騒がれているようだが、それでも旧司法試験よりも合格率で10倍程度合格しやすい状況だ。

 それはさておき、未修コースを経ての合格者が260人と全体の1割強しかないのは、法科大学院制度のセールスポイントであった、多様な人材の登用というお題目が、絵に描いた餅だったことの証明だ。未修コースに入学したとしても、法学部以外卒とは限らない。実力が不足していると自覚している法学部卒業生も未修コースに入っている可能性が相当ある。そうなれば、数字以上に、多様な人材の登用は実現していない可能性がある。むしろ旧司法試験の法学部以外卒の割合の方が、高めともいえる。法科大学院適性試験受験者数も、実数で7,000人台にまで落ち込んだ。

 つまり、未修者に関しては、大学のお偉い先生方は、法律を勉強したことがない人でも、エラ~イ私(大学教授)が教えてやれば、3年で司法試験合格レベルに引き上げてやれると、なんの根拠もないのに無謀にも信じて、それを政府や国民に約束し、マスコミもそのように世論操作をしたのだ。そして、鳴り物入りで法科大学院が実際に導入されたものの、結果として、やはり、そのような夢物語は実現不可能・無理だった、ということだ。新司法試験採点委員の意見も年々、こんなレベルで実務家にして良いのかという趣旨の意見が増えているように読める。

 これまで、そのえら~い学者達やマスコミのいうことを信じて、法科大学院に多額の税金を投入してきた国民としては、まんまと血税を文科省や大学、そして法科大学院募集の公告を受託するマスコミに、無駄に使われちまったということだ。

 文科省は、合格率低迷6校に対して、補助金削減を行うとのことだが、そもそも、そのような法科大学院を認可したのはどこの誰だったのだ。きちんと教育するだけの教師と設備が整っていることすら調査できずに認可していたということになるのではないか。

 ウナギもさばけないのに「うなぎ屋」の看板を出すことを役所(文科省)が認め、美味しいウナギを食べさせると大見得切った店(法科大学院)があったとする。グルメ本(マスコミ)も、大して取材もせずに美味しいウナギだと激賞している。その店が、客に通常より高めの鰻重の代金3000円(税金)を前払いさせておいて、散々待たせたあげく、結局、「うなぎはさばけませんでした。閉店しますから許して下さい。」と言ってきた。

 こんな店に対して、常識ある人でも、金返せ、というのが普通だろう。ウナギもさばけないのに「うなぎ屋」の看板を出すことを許した役所、大して取材もせずに思い込みの記事を書いたグルメ本も、客からは当然責められるべきだろう。

 こんなことなら、自分で勉強させ、頑張って司法試験に合格した人間に、給費制司法修習制度で十分費用と時間をかけて法曹を育てる旧制度の方が、何倍もマシだ。

 文科省、法科大学院、マスコミ、法務省、多くの会員の反対を押し切って法科大学院制度を容認する方向をとった当時の日弁連執行部、一体、誰が責任をとってくれるんだろう。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。