法科大学院制度は、やはり、失敗と考える。

 新司法試験合格者が発表された。合格率が23.5%と最低になったと騒がれているようだが、それでも旧司法試験よりも合格率で10倍程度合格しやすい状況だ。

 それはさておき、未修コースを経ての合格者が260人と全体の1割強しかないのは、法科大学院制度のセールスポイントであった、多様な人材の登用というお題目が、絵に描いた餅だったことの証明だ。未修コースに入学したとしても、法学部以外卒とは限らない。実力が不足していると自覚している法学部卒業生も未修コースに入っている可能性が相当ある。そうなれば、数字以上に、多様な人材の登用は実現していない可能性がある。むしろ旧司法試験の法学部以外卒の割合の方が、高めともいえる。法科大学院適性試験受験者数も、実数で7,000人台にまで落ち込んだ。

 つまり、未修者に関しては、大学のお偉い先生方は、法律を勉強したことがない人でも、エラ~イ私(大学教授)が教えてやれば、3年で司法試験合格レベルに引き上げてやれると、なんの根拠もないのに無謀にも信じて、それを政府や国民に約束し、マスコミもそのように世論操作をしたのだ。そして、鳴り物入りで法科大学院が実際に導入されたものの、結果として、やはり、そのような夢物語は実現不可能・無理だった、ということだ。新司法試験採点委員の意見も年々、こんなレベルで実務家にして良いのかという趣旨の意見が増えているように読める。

 これまで、そのえら~い学者達やマスコミのいうことを信じて、法科大学院に多額の税金を投入してきた国民としては、まんまと血税を文科省や大学、そして法科大学院募集の公告を受託するマスコミに、無駄に使われちまったということだ。

 文科省は、合格率低迷6校に対して、補助金削減を行うとのことだが、そもそも、そのような法科大学院を認可したのはどこの誰だったのだ。きちんと教育するだけの教師と設備が整っていることすら調査できずに認可していたということになるのではないか。

 ウナギもさばけないのに「うなぎ屋」の看板を出すことを役所(文科省)が認め、美味しいウナギを食べさせると大見得切った店(法科大学院)があったとする。グルメ本(マスコミ)も、大して取材もせずに美味しいウナギだと激賞している。その店が、客に通常より高めの鰻重の代金3000円(税金)を前払いさせておいて、散々待たせたあげく、結局、「うなぎはさばけませんでした。閉店しますから許して下さい。」と言ってきた。

 こんな店に対して、常識ある人でも、金返せ、というのが普通だろう。ウナギもさばけないのに「うなぎ屋」の看板を出すことを許した役所、大して取材もせずに思い込みの記事を書いたグルメ本も、客からは当然責められるべきだろう。

 こんなことなら、自分で勉強させ、頑張って司法試験に合格した人間に、給費制司法修習制度で十分費用と時間をかけて法曹を育てる旧制度の方が、何倍もマシだ。

 文科省、法科大学院、マスコミ、法務省、多くの会員の反対を押し切って法科大学院制度を容認する方向をとった当時の日弁連執行部、一体、誰が責任をとってくれるんだろう。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

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