新規登録弁護士研修

 大阪弁護士会には、平成12年度に設けられた新規登録弁護士研修制度があり、平成12年度以降に大阪弁護士会に新規登録する弁護士は、その研修を受講する義務を負っている。

 そもそも、新規登録弁護士研修制度は、実務家としての弁護士が最低限必要とする基本的知識及び能力を具備させることを目的として、大阪弁護士会会則で受講義務が定められているものだ。

したがって、この研修を履修していない会員は会規違反を続けていることになる。

 ところが令和2年1月時点で、上記の新規登録弁護士研修制度の未履修者は1039名で、履修を完了しなければならない者のうち、なんと38.2%が未履修者になっている。

 要するに、大阪弁護士会に所属している弁護士で、新規登録弁護士研修を受講しなければならないはずの者のうち約4割弱が会規を無視しているということになる。法律家として情けない数字と言わざるを得ない。

 資料によれば、特に未履修者の割合が高いのは60期代後半の弁護士となっているそうだ。

 未履修者からすれば、面倒くさいかもしれないし、既に知っていることだとタカをくくっているのかもしれないが、研修を受けてみれば何か一つくらいは役立つノウハウは見つかるものだ。

 むしろ、新人弁護士の状態では知っていることの方が、たかが知れているものなのだ。

 法律家なんだから、自分の所属している弁護士会の研修規則くらい守ろうよ。

 

 新人弁護士の頃から会規をナメているようでは、遵法精神に甘さがあるという可能性もあるし、将来さらに身勝手になって問題を起こしてしまう危険性も高いと思われちゃうぞ。

 

弁護士業務実態報告書2020から~1

(弁護士のうち12人に1人は弁護士業をしていない!)

 日弁連から、「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査報告書2020」の内容で、アンケート調査の結果をまとめた、「自由と正義」の臨時増刊号が届いた。

 アンケートは2020年3月から6月にかけて、層化無作為抽出法で日弁連会員名簿から抽出された、標本数12000に対して郵送で行われ、有効回答数が2192人(回収率18.3%)なのだそうだ。

 そもそも全会員に向けたアンケートでもなく、回収率も2割以下なので、どこまで実態を反映しているのかは明確ではないが、なかなか面白そうな内容がありそうなので、私自身も読みながら紹介していこうと思う。

1.弁護士業務に従事していない弁護士が7.8%も存在する。

 2019年に弁護士活動に従事していたかどうかについてのアンケートでは、弁護士業務に全く(もしくは殆ど従事していなかった)と回答した弁護士が、7.8%を占めている。

 およそ12人に1人の弁護士が、弁護士業務をやっていないということだ。

☆弁護士業務に従事しなかった者の弁護士経験年数


 ・5年未満             10.5%
 ・5年~10年未満          27.5%
 ・10年~15年未満         10.5%
 ・15~20年未満           6.4%
 ・20~25年未満           9.9%
 ・25~30年未満           0.6%
 ・30~35年未満           4.1%
 ・35~40年未満           1.8%
 ・40年以上             28.7%

 ※高齢者と若手に集中していることが分かる。

☆弁護士業務をやらなかった理由については以下のとおり(複数回答)。

 ・年齢上の理由                  37.4%
 ・弁護士以外の事業や経済的活動に専念するため   24.6%
 ・健康上の理由                  22.2%
 ・弁護士として活動しても依頼が少ないため     18.7%
 ・家事、育児、介護に専念するため         15.2%
 ・弁護士の仕事に情熱をもてないため         9.4%
 ・公職に就いているため               7.6%
 ・学業、研究に専念するため             4.1%
 ・その他                     22.2%
 ・特に理由はない                  1.2%

 ※弁護士業務をやらなかった人の内、およそ5人に1人が弁護士として活動しても依頼が少い(生活できるだけの収益が上げられないという意味だと思われる)と答えている点が昨今の弁護士激増による問題点を示しているように思われる。

(続く)

まさかとは思うけど

 日弁連が、女性の日弁連執行部への参加を推進するために、クォータ制による女性副会長の席を2つ設けていることは、ご存知のことと思う。

 私は相当前から日弁連代議員も務めているから、クォータ制が導入されてからの日弁連代議員会(副会長等を選ぶ会議)にも全て参加しているが、私の知る限り、クォータ制の日弁連女性副会長は、主流派が押さえている弁連等から推薦された方がこれまでずっと就任してきているはずだ。

 日弁連執行部への女性参加をより強力に推進するためであれば、弁連等で推薦されるのを待っている受動的な方よりも、意欲を持って能動的に参加を希望する方、つまり自ら立候補された方を優先すべきであるのが素直だと思う。

 しかも、立候補するには相当数の弁護士の推薦が必要であり、その推薦を自力で集めなければならないという高いハードルも設定されているので、なおさら立候補するためには強い意欲と行動力がないと困難なのである。

 ところが、今年も日弁連は立候補した女性弁護士をクォータ制副会長に選出しないと判断したそうだ。

 先日もご紹介した、武本夕香子先生のことである。

 武本先生は、長年、伊丹市、尼崎市及び芦屋市において、女性のための専門法律相談員を務めてこられた。しかも、上記各市における男女共同参画推進審議会委員等を務め、男女共同参画問題についても取り組んできている。武本先生の依頼者の9割近くが女性で占められており、弁護士業務においても、市井の女性の人権擁護の活動に取り組んでこられた。さらにこれまで、6名の女性弁護士を雇用する等しており、近年の女性弁護士の置かれている状況等についても深い理解があることから、クォータ制副会長候補者に適している。兵庫県弁護士会の会長経験もある。
 しかも、今回の立候補においては、短期間で全国から500名以上の弁護士の推薦を得ており、人望も篤い。

 そうであるにもかかわらず、日弁連のクォータ制副会長を選ぶ委員会は、武本先生を落選させたようだ。

 理由を聞いても、日弁連執行部は、どうせ、総合的な判断の上であるとか、人事に関する事項だから回答を差し控えるなどと言って、武本先生の落選理由をまともに説明しないだろう。

 しかし、武本先生程の経歴と資質と行動力と人望を持ちながら、クォータ制副会長に相応しくないというのであれば、逆に言えば、クォータ制副会長に相応しいといえる人物には武本先生を超越するだけの経歴と資質と行動力と人望が必要ということになる。

 殆どスーパーウーマンでなければ、そのハードルは越えられない。そうだとすれば、クォータ制副会長に適する候補者はごく僅かの女性弁護士に絞られてしまうだろう。

 要するに日弁連執行部は、武本先生を落選させる以上、武本先生以上のスーパーウーマンをクォータ制副会長にもってこなければ、理屈に合わないことになる。

日弁連執行部からすれば武本先生を落選させたのは、大人の事情なのかもしれないが、私はそういうのは大嫌いなので敢えて日弁連の本心を推察して言ってやると、「日弁連はクォータ制の副会長であっても、主流派執行部に従順な女性副会長を希望している。」ということなのではないか。

 より分かりやすく言えば、女性の視点を取り入れるためにクォータ制の女性副会長制度を設ける、但し、執行部の意向に従順な女性弁護士に限る、ということなのではないだろうか。

 この私の推測が正しければ、日弁連執行部の意向に従順という条件が、女性の意見を取り入れるという本来の目的よりも上位に存在することになりそうだ。女性に従順を強いるのは、男女共同参画から最も遠いような気もするが、どうも日弁連執行部はそのように考えているとしか思えないのだ。

 クォータ制女性副会長制度は、制度としては、やむを得ないのかもしれないが、現状の執行部のように、執行部に従順という見えない条件が絡まっているのだとしたら、それは女性参加に名を借りた執行部の地盤固めにすぎない。

 まさかとは思うが、仮に私の推測が万一、正鵠を射ていたとしたら、日弁連とはなんと器の小さい組織なのであろうかと、嘆息を禁じ得ない。

伏魔殿?!日弁連クォータ制副会長

日弁連の副会長のうち、2名はクォータ制により、女性と決まっている。

 日弁連が女性が副会長になりにくい制度を採っているわけではないと思うので、私個人としては男性への逆差別ではないかと思うのだが、男女共同参画の理念からすると私の感覚がどうもおかしいらしい。

 それはさておき、クォータ制の女性副会長の選出経緯は実に複雑怪奇の伏魔殿的な様相を呈していると私は思っている。

 クォータ制女性副会長になるには、弁連等から推薦される方法・自ら推薦人を集めて立候補する方法があり、最終的には日弁連会長が座長を努める委員会で候補者から選出される仕組みだったように記憶している。

 もちろん、他人に推薦されるのをじっと待っている候補者よりも、自ら女性共同参画の理念を日弁連執行部に実現するべく、推薦人を集めて立候補する人の方がやる気があるわけだし、日弁連のためにしっかり働こうとする意欲は高いと思われるのだが、実は、日弁連は推薦候補者を優先させ、立候補した候補者を落選させた前歴がある。
 さらに、立候補者がいないのであれば、弁連で推薦する、というのなら話は分かるが、クォータ制立候補者を募る公示をする前から既に弁連候補者を内定させていたという、本末転倒したようなお話(しかも、クォータ制導入する日弁連総会決議があったわずか3日後に既に弁連推薦候補者がきまっていたらしい)もあったりするのだ。

 日弁連代議員会で、何故立候補した方をクォータ制副会長に選出しなかったのかという質問も出たように思うが、日弁連執行部は政府答弁のように木で鼻をくくったようなお茶を濁した適当な説明だけをして、具体的な説明は、なにもなかったように記憶している。

 簡単に言ってしまえば、女性の積極的な参画を促しながら、積極的に立候補された、やる気のある方を排除するなど、私には到底理解不可能な選考を日弁連は行ってきたということだ。

 この点、確かに、弁連推薦のクォータ制女性副会長候補者は、弁連から推薦を受けていることからも分かるように、もともと弁連を押さえている日弁連主流派の息がかかった人材、すなわち日弁連執行部に逆らわないイエスマン的候補者だと思われるため、日弁連執行部としても、その方が楽に会務を遂行できるというメリットはあるだろう。

 しかし、そもそも何故日弁連はクォータ制女性副会長を導入したのか。

 それは、日弁連執行部の会務を円滑に行うことが主目的ではなく、女性ならではの視点を日弁連執行部に積極的に取り入れようとする目的からではなかったのか。

 だとすれば、より日弁連に女性の視点を反映させようと決意して、自ら推薦人を集めて立候補する人材は、やる気という点で弁連推薦者よりも優位に立つはずだし、能力面についても多くの会員から推薦を得られているのであれば大きな問題はないと考えられるから、明らかにクォータ制導入目的に沿う人材であると考えられる。

 
 それでも、日弁連は、クォータ制副会長に立候補した方を未だ選出したことがないはずだ。

 このように、私から見れば全然なっちゃいない日弁連のクォータ正副会長選出の経緯なのであるが、2度も立候補して煮え湯を飲まされていながら、負けずに再度チャレンジしようとする方がいらっしゃる。

 兵庫県弁護士会の武本夕香子先生だ。

 武本先生は、長年、伊丹市、尼崎市及び芦屋市において、女性のための専門法律相談員を務めてこられ、上記各市における男女共同参画推進審議会委員等を務めるなど、男女共同参画問題について積極的に取り組んで来られた方だ。

 兵庫県弁護士会の会長も務めた経験をお持ちで、経歴的にも日弁連副会長として何ら問題がない方でもいらっしゃる。会派などに阿ったりせず、是々非々で堂々と議論できる貴重な方である。
 なにより、女性の視点を日弁連執行部に反映させるために強い意思を持って再度立候補を表明されたやる気と行動力を、日弁連は汲み取るべきだろう。
 
 その武本先生が、クォータ制副会長立候補予定者として推薦人を募集しておられる。今の硬直化した日弁連執行部に対し、風穴を開け、日弁連執行部の会員無視のやり方を是正させる一筋の光となるかもしれない可能性をお持ちの方だ。

 武本先生のHPには、推薦人の書式も掲載されている。

http://www.veritas-law.jp/newsdetail.cgi?code=20201016204214

(リンクが上手く張れないので、コピーアンドペーストでお願いします。)

 推薦をして頂ける方は、お手数をおかけしますが、ダウンロードして署名(自署が必要だそうだ)、押印のうえ、武本先生の事務所宛にお送りして下さいとのことだ。

 日弁連執行部の硬直化は、おそらく誰もが感じていることだろう。高い会費を徴収しながら、会員の生活を無視してボランティアを求める執行部の施策に違和感を覚える会員も多いのではないだろうか。
 確かに、思っていても行動しなくては何も変えられない。
 しかし、自ら行動できなくても、変えようとしている方を支援することで、変化に向けた動きを起こすことはできる。
 
 そろそろ我々も、「執行部に任せていれば上手くやってくれるはずだ」という幻想から目を覚ますべきときが近いのではないか、とも思うのだが。

新型コロナウイルス特措法案と日弁連~2

(昨日のブログの続きです。)

 ここで話を戻すのだが、新型コロナウイルス特措法案で、法テラス適用要件を緩和するということは、経済的にさほど困っていない人でも法テラスを利用できるようにしようということだ。

 法テラスを利用することにより弁護士費用が抑えられるのであれば、多くの人は健全なそろばん勘定をした上で、利用可能であれば法テラスを利用するはずだ。現に「弁護士費用を安くする裏技」などとして、法テラス利用がインターネットで紹介されていたりすることからも、法テラス利用者が激増することはほぼ間違いあるまい。

 これは、弁護士業界に、提供する法的サービスに応じた報酬が得られない仕事が激増することと、同義である。また、多くの国民の皆様に弁護士費用の内的参照価格を大きく引き下げてしまう(弁護士費用は法テラス基準が普通であり、通常の弁護士費用の方を常に高価だと多くの方が感じてしまうようになる)というデメリットもある。

 野党の新型コロナ特措法において、法テラス基準の緩和を日弁連の方から申し出たという情報が事実なら、日弁連は、新型コロナウイルスで打撃を受けた人は被害者であり、被害者は救済してあげなければならない、とお人好しにも考えたのであろう。その意気やよし、である。
 しかしその考えは、裏を返せば弁護士業界にペイしない仕事を大量に導入させ、かつ将来の顧客の減少にもつながる愚策でもある。

 もっと解りやすい言い方をすれば、日弁連は、新型コロナウイルスで打撃を受けた人の生活や財布は心配してあげようとしたが、高い会費を支払って日弁連を支えている弁護士それぞれの生活や財布は心配しなかったのだ。

 もちろん弁護士が、特権的に保護され、全員が経済的に豊かであり、老後も含めて生活していくのに何の心配もない、という牧歌的な状況であれば、そのような夢物語を語っても許される場合があるのかもしれない。

 しかし現実は違う。

 法曹需要が伸びない現状を無視して弁護士の激増政策を継続した結果、弁護士の所得は減少の一途をたどっている。

 日弁連の弁護士白書によれば、2006年と比較して、2018年の弁護士の所得の平均値・中央値とも半減している。最も多い所得層は、所得200万円以上500万円未満である。弁護士には退職金もない。健康保険は国民健康保険で、年金も国民年金(平均支給額月額5万5千円)だ。もちろん会社が半額負担してくれるわけでもない。
 そして、今後、急に訴訟社会が到来する等、弁護士需要が激増するとの見込みも全くない。

 このように、自らの将来の生活を見通すことすら大変な状況で、日弁連執行部は、なお、弁護士は弱者を救えと言い張ったということなのだ。

 私にいわせれば、アホとしかいいようがない。

 やってることが完全に逆だからだ。

 他人の財布を心配できるのに、日弁連を支えている、所得急減中の会員達の財布を心配できないのは愚の骨頂である。日弁連執行部は、弁護士が金のなる木を持っていると勘違いしているのかもしれないが、日弁連執行部にお勤めのエライ先生方と違って、普通の弁護士は金のなる木などもっていないのである。

 日弁連は弁護士から会費を取って運営しているのだから会員である弁護士を守らなくてどうするというのだ。

 理想を追うのも結構だが、きちんと足下(会員の状況)を見た上で、できれば多くの国民の皆様の利益に沿う方向で、かつ、弁護士にとって利益のある提言をするべきだ。
 いくら弱者救済の理想を掲げても、経済的裏付けのないボランティア仕事を増やすことは弁護士制度の将来的な維持存続にとっても百害あって一利無しである。

 また、日弁連や弁護士会が掲げる理想が国民の皆様の意向に沿っていない可能性だってある。これまでも日弁連は理想に燃えて人権のため、社会正義のためと称して弁護士に負担をかけてきた。市民のためにと、大阪弁護士会が公設事務所として設けた大阪パブリック法律事務所(通称大パブ)もその一つである。

 私とて大パブの意義を否定するものではないが、これら弁護士らの努力が国民の皆様方の意向に沿っていて評価を受け、弁護士・日弁連等に感謝してくれているのであれば、もっと一般社会から日弁連や大パブに寄付が集まってもおかしくないはずだ。大学などに何十億円も寄付する実業家が存在するのだから、現実に社会のお役に立つ行動をとっていたのなら日弁連だって、大パブだって寄付の対象になってもおかしくはないだろう。

 ちなみに大パブは15年間で5億8800万円の自腹を大阪弁護士会に切らせたが、人権擁護などを主張するマスコミや、実業家などから大パブに高額の寄付金支援があったという話は、私は聞いたことがない。

 それでも、日弁連執行部が特措法を推進するなら、提案がある。特措法推進によって、仮に法テラス適用要件が緩和されたのであれば、日弁連執行部にいらっしゃる先生方、およびその賛同者の方々で、その仕事を(もちろん法テラス基準で)担当してもらいたい。

 口が悪い私に言わせてもらうなら、執行部の先生方は、勝手に理想をぶち上げておきながら、その理想実現という困難な問題を若手など他の弁護士に丸投げしているように思えることがある。

 その昔、弁護士過疎の問題が出た時に、若手に過疎地に行けと号令をかけたり、過疎地に行ってくれる弁護士の援助方法を検討している執行部の先生方はたくさんいたが、自ら過疎地に行こうとする先生はいなかった。

 私も、かなり前であるが、大阪弁護士会の常議員会で、弁護士過疎の対策が必要と力説する某会長に向かって「そんなに過疎対策が必要なら、会長や会長経験者が出向けば解決するでしょう。過疎地も会長まで務めた立派な先生が来てくれたらとても喜ぶでしょう。」と申しあげたこともあるが、結局、過疎地対策の必要性を力説する会長経験者が過疎解消のため自ら過疎地に出向いた例を、寡聞ながら知らない。
 

 日弁連は理想を追う前に、まず足元をきちんと見るべきだ。業界全体で見たときに、わずか10年ほどで所得が半減し、さらに弁護士増員が止められず、新たな需要も見いだせていないという危機的状況に目を瞑った状態で、どんなに気高き理想を唱えそれを追っても、現実は(そして会員も)、日弁連執行部の後に、ついていけないのである。

 いい加減に目を覚ましてもらいたい。

 あなた方と違って、普通の弁護士は金のなる木を持ってはいないのだ。
 会員のための施策を行わないのであれば、いずれ日弁連は瓦解する可能性が高いだろう。

 賢明な方には、既にその足音が聞こえているはずだ。

新型コロナウイルス特措法案と日弁連~1

 新型コロナウイルスに関連して野党が特別措置法を提案しているようだ。特別措置法の中に、法テラスの適用要件緩和が盛り込まれており、しかもその適用要件緩和について、日弁連が提案したという情報が流れており、弁護士の中で問題視されているように思う。

 ご存じの方も多いと思うが、法テラスは経済的な理由で法的サービスを受けられない方に、その費用を立て替えたりする制度である。

 その話だけ聞けば、法テラスとは経済的弱者を救済する素晴らしい制度と思われるかもしれないが、実際に法的サービスを提供する弁護士としては、手間ばかりかかり、しかも(通常事件に比べて)弁護士報酬の減額を強いられる、ひどい制度なのである。

 何の理由か分からないが、法テラスの弁護士報酬基準は、相当低く定められている。

 しかも、法テラスの弁護士報酬が普通に生活できる水準であれば、文句もいわないのだが、実際には法テラス報酬基準が低すぎてそのような報酬で事務所を維持し、生活するのは、ほぼ無理である。仮に法テラスの報酬基準で生活しようとすれば、多くの案件を受任した上で、相当手を抜いた業務をしないと不可能であろう。

 自らが提供する法的サービスに見合った報酬が頂けないとして、法テラスと契約しない弁護士が相当数存在することからも、その事実は明らかだ。

 この点、医者だって経済的に困っている生活保護の人の医療費を無料にして診療しているじゃないかという人もいると思うが、医師がボランティアで無料にしているわけではない。後で国が医師にきちんと医療費を支払っているのだ。
 医師の方は、そもそも制度がしっかりしていて、健康保険適用の医療行為でも、十分生活できるだけの報酬が確保されている。むしろ、何か問題を起こして、健康保険適用資格を剥奪されると、たちまち死活問題になる医師の方が多いのだ。

 ぶっちゃけいえば、法テラスは経済的に困っている人に対し、正規の弁護士費用ではなく、ダンピング価格で法的サービスを提供せよ、という制度であり、弁護士の善意がなければ到底成立しえない制度なのである。

 既に弁護士は、ずいぶん前から、刑事事件に関して、国選弁護というダンピングサービスを強いられてきたが、それに加えて民事事件においても法テラスというダンピングサービスを背負い込んだのである。

 私は、ずいぶん前から法テラス基準は低すぎて、他の事件の弁護士報酬の引き下げにもつながるとして、反対してきたし、あまりにひどい支給しかされなかった場合に異議を申し立てたこともある。

 とはいえ、私自身、国選事件は100件以上こなしたはずだし、法テラス案件も少ないながら引き受けることもある。自分でもお人好しだと思うが、司法修習時代に税金で育ててもらったという思いや、困っている人のお役に立ちたいという思いが消えてしまったわけではないからだ。とはいえ、経済的に困れば、当然ながらペイしない案件を引き受けるのは無理である。

 確かに、マスコミが大好きな「弱者への配慮」という点は、弁護士の使命である「社会的正義の実現」にも関係するので、忘れてはならない。しかし、問題は提供する法的サービスに見合った適切な報酬が確保されているのかという点である。適切な報酬が見込めない仕事はいずれ破綻する。理想は現実に勝てない。継続的に適切なサービスを提供するためにも、提供する仕事に見合った報酬は必要なのだ。

 例えば、政府がマス・テラスなる制度を設け、「経済的に困っている人でも知る権利は大事である。そのためには経済的に困っている人に対して、5割引で新聞や週刊誌を販売せよ。その負担はマスコミが負うこと。」と命じたら、どのマスコミも大反対キャンペーンを展開するだろう。そして反対にも関わらず導入されたら、多くのマスコミが破綻しかねない状況に追い込まれるであろう。おそらくそれは他のどの業界でも同じである。

 このように、私に言わせれば、資本主義社会ではあり得ない話が、何故かまかり通っているのが、法テラスという制度なのである。

(続く)

私、怒ってます(ミュンヘン:クローネサーカス)

日弁連副会長~近弁連ブロックの持ち回り

 日弁連副会長については、東京三会、大阪の会長が兼務することはよく知られているところだが、他の副会長がどうやって選出されているのかは意外と知られていないかもしれない。

 私自身、日弁連代議員として、日弁連副会長を選出する代議員会に出席している者であるが、代議員会の前に、選挙によらずに選出する場合の参考資料として副会長候補者の一覧表が送付され、代議員会では規程上選挙により副会長を選出するのが原則でありながら、必ず動議が出て選挙によらず、事前配布の候補者が当選するはこびとなっている。

 ところが、その事前配布の候補者をどうやって決定しているのかについては、代議員になっても知らされることはなかった。

 今日、常議員会で、近弁連で来年度(令和3年度)の日弁連副会長を推薦する単位会について、従前の申し合わせ・ローテーションを参考に討議したとの報告があったので、その申し合わせやローテーションを具体的に教えてほしいと質問してみた。

 担当副会長がちょっと明確に答えられなかったので、川下会長が直々に、答えてくださった。

 川下会長の説明で、近畿弁護士連合会に所属する大阪・兵庫・京都・滋賀・奈良・和歌山での、日弁連副会長の選出順序が私にもようやく理解できた。

 川下会長の説明はおおむね以下のとおりである。

 まず、近弁連管内に割り当てられている日弁連副会長の席は2つである。
 そして、2つのうち1つは、大規模会である大阪の会長が当確で日弁連副会長を兼務することになっている。

 残りの1つの席については、近弁連の単位会を、兵庫・京都・その他(滋賀・奈良・和歌山)の3つに分け、持ち回りで日弁連副会長を出す。

 つまり、ローテーション通りだと、大阪は毎年、兵庫・京都からは3年に一度日弁連副会長を出すことになり、滋賀・奈良・和歌山の弁護士会は9年に一度日弁連副会長を出すことになるそうだ。

 圧倒的大規模会である大阪に日弁連副会長を全て独占させるわけでもなく、かといって会員数が異なる小規模会と大規模会を完全に同じ扱いするわけでもないので、それなりに考えられた割り当てなのだろう。

 弁護士会執行部、日弁連執行部に色気がある方なら常識の範疇なのだろうが、私のように特に執行部参画に色気も持たずに生きてきた一会員としては、初めて知った知識であった。

 これでは、チコチャンに「ぼーっと、生きてんじゃねーよ!」と叱られてしまいそうである。

死刑廃止論に関する資料がでています。

 先日のブログで、死刑廃止決議に関する大阪弁護士会執行部の各委員会に対する意見照会回答書の公開について触れた。

 今川会長は、大阪弁護士会のHP会員専用ページで、各委員会(委員会の意向により一部非開示)の意見照会に対する回答を掲載することにされた。

 大阪弁護士会執行部は、最終的に、死刑廃止を求める総会決議を実施しようとしており、そのために会内での議論を活発化させるための方策だそうだ。

 大阪弁護士会の皆様には是非ご覧いただいて、死刑廃止を求める総会決議を行うべきかについて検討していただきたい。

 一般の方々は、弁護士会=死刑廃止論で凝り固まっているかのような印象をお持ちだと聞いたことがあるが、個々の弁護士は必ずしもそうではないことが分かる資料だ。また、死刑の代替刑として仮釈放のない終身刑導入を考えていることもわかる。

 ちなみに、私が聞いたところによると、学者で終身刑の導入に積極的に賛成している人は一部のようで、むしろ終身刑の導入については弁護士会等が積極的である、との見方もあるそうだ。

 私個人としては、とにかく死刑を廃止したいがために、その危険性を軽視したまま終身刑の導入に突っ走るのはいかがなものかと思っている。ドイツでは死刑廃止の際に、終身刑を導入したが、収容者の精神障害や自殺などの問題が発生したことから結局絶対的終身刑は廃止されるに至っているそうだ。

 このように実際にも導入後に大きな問題が生じた例があるにもかかわらず、死刑廃止を実現したいがために、死刑廃止に代わる刑としては終身刑をセットで提案してよいものか、慎重な検討が必要であろう。

 いずれにせよ、大阪弁護士会の皆様には、ぜひ多くの委員会の、死刑廃止に関する意見をお読みいただきたいと考えている。

死刑廃止論につき、またまた、常議員会で討議中

 昨年2月頃に、常議員会で死刑廃止論について大阪弁護士会で総会決議をあげるかについて検討されていたことは、ブログに書いた。そのときは、散々議論した結果、総会決議を得るために議案を総会に提出することは見送られた。

 しかし、再度、死刑廃止を求める総会決議を挙げようとする提案が常議員会に持ち込まれている。

 死刑廃止に関して、会内議論を喚起する目的でシンポジウムなども何度も開催されている。

 こんなに何度もされると、理由は分からないけれど大阪弁護士会執行部は、死刑廃止を求める決議をどうしてもやりたいのだろうな~と、私は思ってしまう。

 今回、大阪弁護士会執行部は死刑を廃止すべきかについて、全委員会、PTに意見照会をかけた。これ自体はよいことだと思う。私は、死刑存廃論は、その人の思想・生き方にも関わる重大な問題であると考えているし、そのような問題について、大阪弁護士会が、会として統一的な意見を出そうとするのであれば、様々な意見を聞き、議論を尽くした上で行うべきだと思うからである。

 今回、その意見照会の結果が、常議員会に提出されていた。

 私から見れば様々な意見(もちろん死刑廃止論ばかりではなく、存置論からの意見、思想に関わるような問題について弁護士会が意見を出すべきでないとの意見もある)が出されており、非常に死刑存廃議論の参考になると思った。そこで、その意見照会の結果を全会員に配布するか、そうでなければ公開させて欲しいと、昨日の常議員会で今川会長に申し入れた。

 もちろん常議員の中には配布に賛成ではないという意見の方もいたし、意見照会を全委員会・PTにかけた以上、その結果を全委員会・PTに伝えることは当然ではないのかという意見の方もおられた。

  今川会長は、慎重に検討して回答すると返答していたが、私としては検討するまでもなく、全会員に公表すべきだと考えている。

 弁護士会として、(会員内で必ずしも意見の一致を見ているとはいえない)死刑廃止を求める総会決議を行うのであれば、大阪弁護士会の中での多様な意見は、可能な限り会員に伝えて判断の参考資料とすべきだと思うからである。

 少数の常議員会で総会決議案に入れることを決定すれば、総会に現実に出席する人は少ないから、死刑廃止を求める決議が大阪弁護士会執行部の議案として総会に提出され、しゃんしゃんと総会を通過し、「大阪弁護士会の死刑廃止を求める決議」として世に出てしまう可能性が極めて高い。

 そうなった場合、世間は、大阪弁護士会所属弁護士は全て死刑廃止論なんだと誤解するだろう。

 もちろん今回の意見照会の回答を配布したから決議して良いというものでもないが、死刑存廃に関して弁護士会での統一的意見を出そうと考えるのであれば、最低でも可能な限りの情報を会員に提供すべきだろう。

 もし今川会長が、全会員に配布はしないものの、公開は止めないと仰ってくれるのであれば、PDF化して当ブログでも公開しようと思っているが、今川会長が配布もしないし公開も禁止するというのであれば、私としては全会員に有用と思われる資料を皆様にお伝えすることができなくなってしまう。

 なにも、おかしな情報を配布・公開せよと言っているのではない。ある重大な問題に関する弁護士会の各委員会等の意見を、大阪弁護士会の構成員である各会員に配布または公開して欲しいというだけの話である。

 私から見れば、配布しない方がおかしいのだが。

 現在は、今川会長の返事待ちというところである。

谷間世代への給付が日弁連財政を圧迫?

 先日の常議員会には緊急案件で出席が適わなかったが、常議員会資料を見てみると、日弁連から「一般会計から会館特別会計への繰入額見直しについて」の意見照会があったとのことだ。

 題名だけ見ると何のことか分からないのだが、提案理由にはこう書いてある。

 「日弁連は、本年3月1日の臨時総会において、いわゆる谷間世代会員のための給付制度、及び育児期間中の会費免除期間の延長を承認した。前者の財源として日弁連一般会計から日弁連重要課題特別会計に20億円の繰り入れを行う予定であり、後者により、毎年9000万円の減収が見込まれている。(中略)日弁連一般会計について大規模な支出と減収が予想されることから、日弁連財政の健全性を維持し、会計間のバランスを保つため、日弁連一般会計から日弁連会館特別会計に対する繰入額を変更することにつき、2019年6月28日付けで各単位会に賛否を問う照会があった。」

 要するに、谷間世代への給付を行うために一般会計がひっ迫するので、会員が納めている日弁連会費のうち、日弁連会館積立金に回されている毎月800円部分を700円にして、実質毎月100円を一般会計に残したい、ということだろう。もちろん将来の会館の修理等に関する積立金は当初の予定よりも減っていくことになる。

 では、今年3月1日の臨時総会で日弁連執行部はどう言っていたかみてみると、

「今回の給付制度の金額を検討するに当たっては、今後も当連合会が積極的な活動を続けられ、かつ想定され得る有事にも対応できるだけの経済的基盤を確保することを前提とした。谷間世代の会員数は約9,700人であり、給付金額20万円とした場合、その事業規模は20億円程度となる。当連合会は、平成29年の決算の一般会計の繰越金は、約44億円であるところ、南海トラフ地震や首都直下型地震といった有事を想定した際の非常時の支出を想定しても、給付金20万円であれば、当連合会の活動の経済的基盤を辛うじて維持できるものと判断した。」

 つまり、南海トラフ地震、首都直下型地震が来ても大丈夫と大見得を切っているわけだ。

 ところが、今回の提案理由をみれば、会館特別会計に積み立てるお金を減らして、一般会計に回さないと日弁連財政の健全性が維持できないということであり、本年3月1日の説明から僅か3ヶ月あまりで、当初の目論見と異なり毎月の会館積立金を減らして一般会計に回さなければ財政は不健全になってしまう事態が明らかになったということだろう。

 一体どんな杜撰なシミュレーションをすれば、3ヶ月で健全性が破綻するような判断が可能なのか、執行部に聞いてみたいものだ。

 今回の提案にも、会館特別会計繰入額を変更しても大丈夫という、ぺらぺらのシミュレーションが一応ついているが、そもそも3ヶ月で破綻するようなシミュレーションしかできない執行部に、まともなシミュレーション能力があるとも思えない。また、シミュレーションの前提たる大規模修繕費をどう算出したかも一切明確にされていない。こんな穴だらけかつ根拠不明のシミュレーションで会員を説得できると思っているのなら、弁護士全員は日弁連執行部に完全になめられ切っていることになるだろう。

 一般企業で、このような滅茶苦茶な事業計画を役員達が立案して実行し企業の財政にダメージを与えたら、よくて左遷、場合によってはクビをとばされても文句は言えまい。

 毎月の会館積立金額が減るだけではないかと思われるかもしれないが、天災が発生した際に日弁連会館の修理費用は、誰も援助してくれないだろうから、当然日弁連会員が負担しなくてはならない。

 会館積立金の額を減らし、当然見込まれる将来の会館修理等の資金積み立てを先送りにしていくことは、将来発生した場合に必ず必要となる天災による大規模修理等にかかる費用を、前倒しで食いつぶしていることとさほど変わらない。

 そもそも谷間世代を産み出したのは、国の政策ミスであり、本来であれば国が責任を負うべきであって、日弁連が谷間世代に対して給付金を支給することは全くの筋違いも良いところなのだが、日弁連執行部はええカッコしたがりなのか、いわば他人の金をアテにして給付金支給を提案し総会決議を得てしまったのだ。

 私は日弁連執行部に言いたい。

 ええカッコしたいなら、みんなのお金をアテにせず自腹でやれ。
 先を見通せないのなら、せめて将来に禍根を残すことはするな。

(追補)

 この意見照会に対して大阪弁護士会の意見は次のとおり(このまま常議員会で議決されたかは不明だが、おそらく議決されたものではないかと思われる)。

 「賛成する。ただし、各単位会及び会員間の財政の健全性に関する更なる議論のために、より充実した資料を提示すべきである。」

 いや、意見照会に対して、大阪弁護士会で検討して意見をまとめるためには、まず資料を先に出させるのが本筋ではないのか。資料を検討して初めて賛成すべきかどうか分かるはずではないのか。

 とにかく一旦賛成しておいて、あとで資料を出すようにって、結局日弁連執行部への盲目的追従ではないのか。

 この点に関して、大阪弁護士会執行部も、私から見れば、なんだかな~という感じは否めなかったりするのである。