谷間世代への給付が日弁連財政を圧迫?

 先日の常議員会には緊急案件で出席が適わなかったが、常議員会資料を見てみると、日弁連から「一般会計から会館特別会計への繰入額見直しについて」の意見照会があったとのことだ。

 題名だけ見ると何のことか分からないのだが、提案理由にはこう書いてある。

 「日弁連は、本年3月1日の臨時総会において、いわゆる谷間世代会員のための給付制度、及び育児期間中の会費免除期間の延長を承認した。前者の財源として日弁連一般会計から日弁連重要課題特別会計に20億円の繰り入れを行う予定であり、後者により、毎年9000万円の減収が見込まれている。(中略)日弁連一般会計について大規模な支出と減収が予想されることから、日弁連財政の健全性を維持し、会計間のバランスを保つため、日弁連一般会計から日弁連会館特別会計に対する繰入額を変更することにつき、2019年6月28日付けで各単位会に賛否を問う照会があった。」

 要するに、谷間世代への給付を行うために一般会計がひっ迫するので、会員が納めている日弁連会費のうち、日弁連会館積立金に回されている毎月800円部分を700円にして、実質毎月100円を一般会計に残したい、ということだろう。もちろん将来の会館の修理等に関する積立金は当初の予定よりも減っていくことになる。

 では、今年3月1日の臨時総会で日弁連執行部はどう言っていたかみてみると、

「今回の給付制度の金額を検討するに当たっては、今後も当連合会が積極的な活動を続けられ、かつ想定され得る有事にも対応できるだけの経済的基盤を確保することを前提とした。谷間世代の会員数は約9,700人であり、給付金額20万円とした場合、その事業規模は20億円程度となる。当連合会は、平成29年の決算の一般会計の繰越金は、約44億円であるところ、南海トラフ地震や首都直下型地震といった有事を想定した際の非常時の支出を想定しても、給付金20万円であれば、当連合会の活動の経済的基盤を辛うじて維持できるものと判断した。」

 つまり、南海トラフ地震、首都直下型地震が来ても大丈夫と大見得を切っているわけだ。

 ところが、今回の提案理由をみれば、会館特別会計に積み立てるお金を減らして、一般会計に回さないと日弁連財政の健全性が維持できないということであり、本年3月1日の説明から僅か3ヶ月あまりで、当初の目論見と異なり毎月の会館積立金を減らして一般会計に回さなければ財政は不健全になってしまう事態が明らかになったということだろう。

 一体どんな杜撰なシミュレーションをすれば、3ヶ月で健全性が破綻するような判断が可能なのか、執行部に聞いてみたいものだ。

 今回の提案にも、会館特別会計繰入額を変更しても大丈夫という、ぺらぺらのシミュレーションが一応ついているが、そもそも3ヶ月で破綻するようなシミュレーションしかできない執行部に、まともなシミュレーション能力があるとも思えない。また、シミュレーションの前提たる大規模修繕費をどう算出したかも一切明確にされていない。こんな穴だらけかつ根拠不明のシミュレーションで会員を説得できると思っているのなら、弁護士全員は日弁連執行部に完全になめられ切っていることになるだろう。

 一般企業で、このような滅茶苦茶な事業計画を役員達が立案して実行し企業の財政にダメージを与えたら、よくて左遷、場合によってはクビをとばされても文句は言えまい。

 毎月の会館積立金額が減るだけではないかと思われるかもしれないが、天災が発生した際に日弁連会館の修理費用は、誰も援助してくれないだろうから、当然日弁連会員が負担しなくてはならない。

 会館積立金の額を減らし、当然見込まれる将来の会館修理等の資金積み立てを先送りにしていくことは、将来発生した場合に必ず必要となる天災による大規模修理等にかかる費用を、前倒しで食いつぶしていることとさほど変わらない。

 そもそも谷間世代を産み出したのは、国の政策ミスであり、本来であれば国が責任を負うべきであって、日弁連が谷間世代に対して給付金を支給することは全くの筋違いも良いところなのだが、日弁連執行部はええカッコしたがりなのか、いわば他人の金をアテにして給付金支給を提案し総会決議を得てしまったのだ。

 私は日弁連執行部に言いたい。

 ええカッコしたいなら、みんなのお金をアテにせず自腹でやれ。
 先を見通せないのなら、せめて将来に禍根を残すことはするな。

(追補)

 この意見照会に対して大阪弁護士会の意見は次のとおり(このまま常議員会で議決されたかは不明だが、おそらく議決されたものではないかと思われる)。

 「賛成する。ただし、各単位会及び会員間の財政の健全性に関する更なる議論のために、より充実した資料を提示すべきである。」

 いや、意見照会に対して、大阪弁護士会で検討して意見をまとめるためには、まず資料を先に出させるのが本筋ではないのか。資料を検討して初めて賛成すべきかどうか分かるはずではないのか。

 とにかく一旦賛成しておいて、あとで資料を出すようにって、結局日弁連執行部への盲目的追従ではないのか。

 この点に関して、大阪弁護士会執行部も、私から見れば、なんだかな~という感じは否めなかったりするのである。

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