兵庫県弁護士会市民シンポジウム~ご報告

 先週土曜日、兵庫県弁護士会で開催された、法曹人口問題に関する市民シンポジウムに参加してきました。

 先だってのブログに書いたとおり、私は基調講演と、パネルディスカッションのパネラーを兼務させて頂きました。

 基調講演の方は、市民の皆様にお伝えしたいことが多すぎて、最後の方は相当「はしょった」形になり、ご迷惑をおかけしました。この場を借りてお詫び申しあげます。

 パネルディスカッションに参加された方々は、河下真也氏(読売新聞記者)、橋詰栄恵氏(阪神クレジット・サラ金被害者の会、通称「尼崎あすひらく会」副会長)、木挽司氏(前衆議院議員、伊丹商工会議所青年部相談役)、古坂良文氏(弁護士:五島列島公設事務所)、そして私でした。

 その合間に、国会議員として、井戸まさえ議員、赤松正雄議員、冬柴鐵三元議員が実際に来られて発言をされていました。

 質問用紙を配布して会場からの質問を受け付けるだけではなく、終了予定時間も延長して、実際に会場からのご発言も頂戴するなど、かなり熱のこもったシンポジウムになったように思われます。惜しむらくは、増員路線賛成派の弁護士の方の参加が見当たらなかったことです。これについては、実行本部の方で相当弁護士の方にお声をかけられ、武本先生ご自身も日弁連法曹人口政策会議でチラシを配るなどして、お呼びしようとしたのですが、なぜか皆様、この日のこの時間だけは都合が悪い方ばかりで、ご参加頂けなかったようです。

 兵庫県弁護士会の担当の方々、本当にお疲れ様でした。さらに詳しいシンポジウムの内容については、弁護士武本夕香子先生のブログをご参照下さい(下記URL参照)。

http://www.veritas-law.jp/newsdetail.cgi?code=20110227120622

 その後の懇親会にも出ましたが、司法修習生達の就職戦線についてお聞きし、問題はますます深刻化しつつあることを再認識致しました。

 やはり、多くの方の前でお話しするということで、緊張していたのでしょうね。自宅に帰ると、物凄い肩こりになっていました(笑)。

 開催された兵庫県弁護士会の皆様、非常に意義のあるシンポジウムの開催、大変お疲れ様でした。

ちょっとお知らせ。

 TVのCMではありませんが、ちょっとお知らせです。

 自作サイトを、北海道の弁護士猪野先生にブログで誉めて頂いたので

(http://inotoru.dtiblog.com/blog-entry-282.html)、

 「保険金請求110番」という、次なる自作サイトを立ち上げました。

 下記のURLからご参照下さい。

http://hoken-mondai.idealaw.jp/

 今度は、イラストだけではなく、動画も少し入っており、当職の少年事件サイトよりも、ちょっとだけグレードアップしています。

 交通事故で保険会社の提示金額に納得のいかない方、せっかく保険料を支払ってきたのにいざというときに保険金が下りない方々の救済にお役に立てるかもしれません。

お見知りおきを・・・。

兵庫県弁護士会シンポジウム

  ご通知するのが遅くなりましたが、兵庫県弁護士会主催の下記の市民シンポジウムが開催されます。

【題 名】

「弁護士大増員時代に見えてくる私たちの暮らしの未来を語り合おう~失われるのは「和」の心か?「やさしさ」か?」

【日時・場所】

平成23年2月26日(土)

13時~16時

兵庫県弁護士会館本館4階講堂

【後援】

日本弁護士連合会・近畿弁護士連合会

僭越ながら、ご依頼を頂戴致しましたので、私も第2部で講演させて頂く予定になっております。

 聞くところによると、主催の兵庫県弁護士会の方では、私と対立する御意見をお持ちの先生もお呼びすべく、様々な努力をされているそうです。

 どんなシンポジウムになるのか私も分からず、結構ドキドキもんです。

 お手すきの方がいらっしゃいましたら、是非参加して頂けると光栄です。

 ps、先だって京都で行われた日弁連シンポと異なり、会場発言の時間も取る予定だそうです。この際だから、弁護士にひとこと、言ってやりたいとお考えの方、皆様の貴重な意見はとても勉強になります。是非、ご参加頂けますようお願い申しあげます。 

法曹養成制度に日弁連が緊急提言をするらしい。

 当職のツイッターではすでにご紹介済みですが、法曹養成制度に関して日弁連が緊急提言をする動きがあります。

(当職のツイッターは、少年事件サイトのトップ頁http://shonen.idealaw.jp/からも読めます。)

 詳しい内容は、取扱注意会内限りの案文ということで、このブログでご紹介できません。ただ、この緊急提言は日弁連名で出されることになると思いますが、総務省の法曹養成制度に対して出された日弁連名の意見書と同じで、本当のところは現実の日弁連の総意を表した意見書では決してないということです。各単位会に意見を聴取したわけでもなく、会員の意見を聞いたわけでもありません。もちろん、総会で決議を経たわけでもありません。

 しかし、日弁連内の法曹養成検討会議の意見がほぼそのまま、正副会長会議での決議の上で、出されることになるようです。

 こういうやり方は、(私の立場から言えばですが、)言っちゃ悪いが、伝統的な日弁連主流派がよく使いがちな日弁連(旧?)主流派の、ずるこいやり方のように思えます。

 法曹養成検討会議の委員選任の時点から、(日弁連が一度は賛成してしまった)現行の法曹養成制度にシンパシーを持つ委員を選任し、若しくは各単位会でそのような委員を推薦させ、その委員達が集まって「現状維持+若干の手直し」路線の意見書を作る。そして、その意見書を日弁連の意見として公表し、少なくとも外部から見た日弁連の方向性を固めてしまう。

  そうなると、法曹養成制度に関して、どんなに問題点が噴出していようと、多くの会員が路線変更に賛成していようとも、「日弁連は現状維持路線と言っていたじゃないか」と外部からの圧力がかかります。

 確かに全ての問題について、各弁護士会の意見や弁護士個人の意見を聞かなければならないとすれば、日弁連は意見書すら出せなくなってしまいます。しかし、総務省のパブコメでも、法曹を含む相当多くの方が現状の法曹養成制度に問題点があると指摘されているのですから、明らかに会内で相当意見を異にする問題についてまで、どんどん日弁連名の緊急提言を出すことは、果たして適切か疑問があります。

 ちなみに、法曹人口政策会議においては、宇都宮会長を含む会議の全委員が加入しているMLがあります。総務省のパブコメに日弁連名で意見書が出た際に、私は誰がどういう権限で出したのか教えて欲しい と質問しました。

 回答は、「従前の意見書等の範囲内であれば、正副会長会で承認の上、提出するという取扱いになっており、本意見書についても、1月19日の正副会長会で審議され、承認がなされた上で、総務省に提出しました。」というものでした。

  結局、どこの誰が、総務省に文句をつけるように言い出したのかまでは、残念ながら明らかにはなりませんでした。しかし、日弁連執行部には、こういう伏魔殿のようなところがあります。宇都宮会長は派閥の後ろ盾がない会長なので、伏魔殿の中では孤軍奮闘に近い状況にあると推察されます。 

 しかし、宇都宮会長は、昨年の日弁連会長選挙で、旧主流派候補を破って当選したのです。日弁連会員は宇都宮会長を支持したのです。相変わらず日弁連執行部の大勢を旧主流派が占めているようですが、 旧主流派の圧力に負けず、宇都宮会長には、是非頑張って頂きたいと思います。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

法曹人口問題政策会議

 現在法曹人口政策会議のお昼休み中。

 中間とりまとめに関して、事務局新案を中心にまとめることができるかどうか。

 みんなそれぞれご意見をお持ちなので、まさに少しいじれば、壊れてしまう微妙なガラス細工を修正しようとしているようなもの。

 この会議に出てみて、日弁連の図体のでかさ、方針転換(方向修正)の難しさを痛感した。

 機構改革して、風通しが良く、機動的な執行部にしないと、砂浜に乗り上げた鯨のようになっちゃうかもしれないね。

某国の仮定のお話~2

驚きの書面とは、次の書面だ。

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 なんと、法テラス(日本司法支援センター)が、法テラスの事業は国民の税金を投入して行われている事業なんだから、費用対効果の乏しい案件を法テラスで援助することは、納税者の納得が得られない、と主張しているのだ。

 そもそも、訴訟をしたくても費用がない人、弁護士に援助を求めたくても費用がなくて出来ない人、費用倒れになるかもしれないが法的正義を貫く必要がある人、そういう人のために弁護士費用を立て替える民事法律扶助制度を弁護士会が作り、それをうけて、法テラスができたんじゃあなかったの??

 費用対効果が乏しい案件を法律扶助の対象外とするというのは、税金の援助を受けている法テラスですら、費用対効果を考えざるを得ないし、ペイしない案件に法律扶助を出さないという宣言だ。

 税金の援助を受けていない一般の弁護士は、なおさら、費用対効果を考えざるを得ないだろう。

 悪い言い方をすれば、この国において、弁護士に依頼して、正義を実現できるかどうかは金次第であることを、法テラスという国家機関の出先機関が認めたということになりかねない。

 そればかりか、法テラスは経済的に恵まれない方の相談以外にも、一般層、富裕層の相談も担当させろという主張をしているらしく、民業圧迫も甚だしい。先日の例でいえば、某テラスが国家から援助を受けつつ新聞代を支払えない人のみならず、希望者には新聞を配布したいから認めろ、と言っているようなものだ。

 そういう法テラスに援助している日弁連もどうかとは思う部分もある。

 確かに、法テラス大阪の言い分通り、本当に納税者の皆様が費用対効果の見込めない民事事件に、税金を投入する必要がないと考えているのであれば、それでも良い。

 しかし、それでは、弁護士を社会生活上の医師としてあまねく配置し(そのための弁護士増員は実現)、民事法律扶助の飛躍的拡充とセットにして、弁護士による社会生活上の問題の解決を目指した、司法改革の理念と真っ向から反することになる。

 どこの世界に、治療費は支払わないが、病気になったら医者は診察して治療しろ、という制度がまかり通るというのだ。どこの世界に行けば、弁護士費用は支払わないが法的問題が起きたら弁護しろ、という制度がまかり通るのだ。

 マスコミはほとんど触れないが、そもそも、司法改革において、民事法律扶助予算と弁護士増員はセットだった。しかし、弁護士の増員は図られたものの、民事法律扶助予算は国際的に見ても極めて低いままである(少し前の日弁連データによると、国民ひとりあたりの負担にして、イギリスの80分の1、ドイツの18分の1、フランスの12.5分の1、アメリカの9分の1しか予算が講じられていない)。

 逆に言えば、民事法律扶助をアメリカ並みの整備に押さえるとしても、9倍の予算が必要なのだ。イギリス並みにしようとすれば、80倍の予算が必要になる。その予算が講じられて初めて司法改革が目指した社会が実現可能になるのだ。

 ただでさえ、ひっ迫している国家財政の中で、本当かどうか疑問だが、上記の民事法律扶助予算の負担を、納税者の皆様は負担するつもりがある(だろう)、という前提で司法改革が進められているのだ。

司法改革が主張する、「法の支配を社会の隅々まで」といわれてみると、とても良いことのように思える。その社会では確かに公正さは担保されるかもしれない。しかし、それと引き替えに、基本的には問題解決作用であり、それ自体では何ら価値を生み出さない司法に、膨大なコストがかかるのだ。

 誰も試算しないが、アメリカのリーガルコストはおそらく膨大な金額になっているはずだ。アメリカでは企業が訴えられているので関係ないと思われる方もいるかもしれないが、企業がリーガルコストを一度は負担してもいずれそれは、製品はサービスの代金に転嫁されて、一般の国民の方の負担になる。

 「法の支配の徹底」とは、そういう社会(公正だけれども高コスト)を目指しているのだということを、知るべきだ。特にコスト面を、マスコミは無視し続けているので、たちが悪い。

 もう一度、熱にうなされて突っ走った司法改革を見直す必要がないのか、冷静になってみる必要があるだろう。

 さらに付け加えると、現在の国家財政を見るならば、民事法律扶助予算が諸外国並みに整備されることはまず不可能だろう。

 弁護士人口増員派の一部の方は、ペイしない事件などまだまだ潜在的ニーズはある、司法基盤整備が整えば、弁護士増員は正しかったことになる、と主張される。

 しかし、今回の書面のように、ペイしない事件に対して税金を投入することを納税者の皆様が許さないのであれば、ペイしない事件は永遠にペイしない事件であり、何ら弁護士のニーズにならない。

 2㎞100円ならタクシーに乗りたいという人は、タクシーの潜在的ニーズ層とはいわないだろう。一部1円なら新聞を買って読みたいという人は、新聞の潜在的ニーズ層とは呼ばないだろう。それと同じである。

 まだまだ、諸外国と比較して不十分なことは間違いないので、国民の皆様のために司法基盤整備は続ける必要はあると思うが、抜本的な民事法律扶助予算拡充という夢物語にいつまでもしがみついている場合ではないように思う。

 それを明らかにしたのが、今回の文書でもあると思う。

 怒りのあまり、散漫な文章になってしまっていることをお詫びします。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

某国での仮定のお話~1

某国の話である。

仮に、某国で某国新聞協会に加入しないと各新聞社は新聞を発行できない制度があったとする。その制度のもとで、某国新聞協会が、各新聞社は国民の知る権利に奉仕する存在だから、希望する全ての国民に新聞を届けるべきだと考えたとする。

そこで、某国新聞協会が、新聞購読扶助制度と称して、一部国の援助を受けながら、お金がないという理由で新聞を買えない人のために、各新聞社から協会費に含めて半強制的にお金を徴収し基金を作って、新聞を買えないが読みたい人のために新聞を買えるお金を立て替え、かつ、そのような人に対する新聞料金を大幅値下げする、と某国新聞協会が決めて実行させるとする。

何か問題はないだろうか?

さらに制度が進展し、某国の国自身が新聞購読扶助制度を行うので各新聞社がその実行に協力を求められ、そればかりか、某国が某テラスという機構を作って直接新聞を発行し、新聞を買えない人に配布もするので、そのスタッフ養成費用を某国新聞協会で負担するとなるとどうか。

問題はいくつも考えられる。

そもそも新聞を買うお金のない人に新聞代を立て替えてあげても、そのお金はどこまで返してもらえるのか。
 仮に立て替えてあげることが正しいとしても、どうして新聞購読扶助制度を利用する人の新聞代だけ安くする必要があるのか、同じサービスを受けるなら同じ負担をするのが公平なのではないか。

いくら国民の知る権利に奉仕する仕事に従事しているとはいえ、どうして民間事業者である新聞社が、費用を負担しなければならないのか。

本当に国民がお金がなくても新聞を読みたいと考えるのであれば、国会の決議により税金を投入するなどして全面的に国家が行うべき費用援助事業ではないのか。

新聞の値段を引き下げかねない新聞購読扶助制度になぜ新聞社は協力しなければならないのか。

そもそも某国が某テラスを作って新聞発行をするのは民業圧迫ではないのか。

どうして民間事業者である新聞社が商売敵になる某テラススタッフ養成の費用負担までしなければならないのか。

さらに某テラス新聞は権力に隷従しないという保障はあるのか等々、いくらでも問題が見つかりそうである。

ところで民事法律扶助制度とは、裁判を提起したり弁護士に依頼したいが費用がない人たちに税金も投入して、弁護士費用等を立て替え払いする制度だ。

 本来弁護士費用の引き下げは目的ではなかったが、利用しやすい司法の美名のもと、民事法律扶助制度において弁護士費用の引き下げも行われている(つまり、法律扶助制度を使った場合、弁護士費用は従前の弁護士費用より相当額減額された額しか弁護士には支給されない。)。

私が弁護士になった頃も、確か民事法律扶助を弁護士会が中心(一部、国の援助があったはず)に行っており、弁護士会費から法律扶助のために相当なお金が出ていたようにも思う。詳しい制度内容は知らないが、私の記憶が正しければ、弁護士会は、会費を強制的に集めて弁護士費用がない人のための立て替え事業を行い、その事業に関する弁護士報酬の引き下げまで行ってきたといえそうだ。

ところで、先日、民事法律扶助制度を中心になって行っている法テラス大阪から、驚きの書面が届いた。

(続く) 

わけのわかんないTPP

 最近盛んに議論されている、TPPだが、ほとんどの国民の方はその内容を知らないらしい。

 私も農業に関する関税なんかの問題に限定されているのかなと、ボンヤリ考えていたら、どうも、TPPを批准すれば、金融業・サービス業・医師・弁護士らの世界も一方的に解放される(例えばアメリカの弁護士資格で日本の弁護士業を自由に出来るが、逆に日本の弁護士資格ではアメリカで弁護士業は出来ないなど)内容が含まれているらしいとの情報が聞こえてきている。

 いや、すごい。もし本当なら、この21世紀に、ペリー来航、幕末並みの不平等条約なんじゃないのか。

 医師会はすでに反対しているという情報もあるが、日弁連HPで検索してもTPP関連の記事は見つからなかったようなので、日弁連の態度はまだ決まっていないのかもしれない。

 それよりおかしなことは、周囲の人に聞いてみても誰もTPPの内容を知らないということだ。国民が知らないところで(若しくは故意に知らせないで)、国民に大きな影響を与える条約を勝手に締結するのは、なんぼなんでも横暴だろう。

 マスコミも、政府もまずTPPの正確な内容を国民に知らせるべきだ。特にマスコミは何をやってるんだ、国民の知る権利を充足するのが存在意義なんじゃないのか。

 この件に関しては、マスコミの公正な報道を期待しています。

大阪弁護士会次期執行部の方の公約(2)

 先日の続きになります。

木村圭二郎 次期副会長(会派:春秋会)

 弁護士を取り巻く急激な環境変化は、特に経済的側面において、若手弁護士を直撃し、弁護士の将来に強い危機感を生じさせることとなっています。弁護士が職業としての魅力を失うことは、弁護士の利害だけに関わるものではないことは明らかです。弁護士の職業としての魅力の喪失は、法曹界への有為な人材を集めることが出来ないことを意味し、それは、司法界を揺るがす大問題です。
 (中略)弁護士会は、急激な法曹人口の増加の負の影響を相殺すべく、当面の司法試験合格者の数を減少させ、同時に、司法改革の理念実現のための前提条件の整備に力を尽くすべきだと思います。

松本 岳 次期副会長(会派:一水会)

 大量増員に見合うだけの法的需要が開拓されていない現実があります。法律相談件数や訴訟事件数がここ数年の間に飛躍的に伸びたという報告はありませんし、裁判官や検察官の増員も実現していません。法律事務所への就職難は年々顕著ですし、企業、役所への修習生の就職も進んでいません。
 このような法曹実務家に対する需給ギャップの現実を踏まえると、司法制度改革審議会が目指した法曹人口の短期間での増員に無理が生じていることは明白ですし、弁護士の経済的基盤の劣化が各年代で進んでいる現状では、新規合格者の減員を求めるほかないと考えます。ただ、数字を示して具体的な減員要求を行うかどうかは質の維持を前提として日弁連が繰り返し行ってきた弁護士人口に関する決議の経緯を踏まえ、慎重に検討すべきものと思います。

増市 徹 次期副会長(友新会)

 (司法改革の)理念実現のためには法曹人口の増大も不可欠です。しかし他方、弁護士急増による就職問題、弁護士登録に至るまでの経済的負担の問題等が深刻化し、法科大学院の志願者は近時大幅に減少しています。このような司法改革に伴う「ひずみ」により万が一にも弁護士が疲弊し、その使命を担う力まで失うようなことがあってはなりません。司法改革の目指す制度基盤整備の拡充に力を注ぐことが必要です。(中略)他方その間、弁護士人口増加のペースを落とし、修習生の給費制の恒久化を目指すとともに(中略)様々な手段を講じる必要があります。

 各副会長の仰る詳しい内容については、大阪弁護士会選挙公報をご覧下さい。

 個人的に言えば、司法改革が言われて10年、どれだけ司法制度制度基盤の整備が出来たのか、今後迅速にその基盤整備が出来るのか、大いに疑問はあります。例えば基盤整備の一つとして民事法律扶助制度の抜本的拡充があげられることが多いのですが、この厳しい国家財政のもとで、どれだけ実現できるのでしょうか。

  以前私のブログに書いたとおり、平成21年度の日本司法支援センターの資料を見ると、民事法律扶助事業経費として支出予定の予算額は、わずか139億8400万円です。弁護士数2654名のローファームであるクリフォード・チャンスの売上約2000億円の約15.75分の1の予算しか、全国民の民事法律扶助のためには、つけられていないのです。この貧弱な司法基盤が、抜本的に拡充されるだけの余裕が国家にあるとはあまり思えません。

(続く)

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

映画「キック・アス」

 特殊能力ゼロ・モテ度ゼロ・体力微妙、あるのは正義の心だけ。

 そんな普通の少年が、通販で購入した覆面つきのウエットスーツを着用して、街にはびこる悪を退治に乗り出した。気持ちだけは無敵のヒーロー、その名は「キック・アス」。

 ところが・・・・・・。

 当事務所の久保弁護士から、「面白いですよ」と勧められて、先週末、見てきました。映画を公開している劇場が少ないため、見るには多少手間がかかるかもしれません。私も、上映30分前に劇場に行ったのですが、立ち見席しかないといわれ、次の上映にせざるを得ませんでした。

 しかし、それだけの価値はある映画かもしれません。

 暴力シーン等に過激な部分があるため、確か、R-15指定にされていたはずですが、私としては、中高生に見てもらっても良いのではないかと思いました。

 おそらく、ハリーポッターが大ヒットした際に、どうして自分のところにホグワーツから手紙が来ないんだ、自分ならハリー以上にやれるし、やってみせるのに、と多くの子供が思ったでしょう。しかし、いつまでたってもホグワーツからは手紙は来ません。多くの子供がそう願いつつも小説や映画の世界は実現できる世界ではありません。子供達も次第に現実を受け入れていきます。

 スーパーヒーローの世界も同じです。

 正義の心だけでは、現実社会は乗り切れません。現実の悪は退治できません。
 正義の心だけでは乗り切れない、辛く切ない現実社会ではあるけれど、一生懸命勇気を出して進んでいれば、本物にも通じる何かが宿るかもしれない、ひょっとすれば本物に近づけるかもしれない。
 現実にはあり得ないお話ですが、そんな気にちょっとだけさせてくれる作品です。

 作品を見て頂ければお分かりになりますが、闇雲に棒を振り回すだけの「キック・アス」より、遥かに素晴らしいアクションシーンを演じている「ヒット・ガール」(きっと人気が出るでしょう)の方がむしろ主人公なのでは、と言えなくもありません。しかし、作品の最後の方でやはり主人公は「キックアス」で良いのだと納得される方が多いでしょう。

 見ることができなかった方のために、DVDの発売も予定されているそうです。