去る、4月22日、私は、大阪弁護士会畑会長宛に、要望書と題する書面を送らせて頂きました。普通郵便でお送りしたので、届いているかどうかの確認のしようがないのですが、その内容は以下のとおりです。
要 望 書
大阪弁護士会会長 畑守人 殿
平成21年4月22日
大阪弁護士会会員 坂 野 真 一
冠省、畑会長におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
当職は、大阪弁護士会に所属する若手会員の一人です。司法改革仕上げの年であるともいわれる昨今ですが、司法改革という名の下に弁護士人口だけが激増され、その歪みがほぼ全て弁護士(特に若手)に押しつけられているように感じております。ノキ弁・宅弁・即独・携帯弁護士、OJTの困難など、ほぼ数年前までは全く問題が生じていなかった様々な問題が、若手中心に生じていることは、畑会長もご存じのところと思います。
先だって、第1回常議員会で、畑会長は、法曹人口5万人の目標を変更する理由はないとお考えである旨発言回答されました。しかし、法曹人口5万人を必要とする国民的な需要はあるのでしょうか。もし、本当に国民的な需要があるのであれば、新人弁護士の就職難など生じるはずがありません。地裁受理事件は微増に過ぎず、また、その約半分以上が過払い事件であるという情報もあります。その情報が事実であれば、過払い事件が一過性のものであることから、司法に対する国民的需要はむしろ減っているというべきだと思います。本当に司法に対する国民的需要が増加しているのであれば、1990年頃に比較して現在では、弁護士が倍増しているのですから、地裁受理事件が激増していてしかるべきだからです。
私の目から見れば、明らかに、法曹に対する需要は司法改革を始めた頃に想定された需要を大幅に下回ったままであるとしか思えません。
この状況下で、法曹人口5万人(その多くが弁護士だと思われますので)を目指すということは、法曹に対する国民の需要が減少傾向である中で、現在約27000名の弁護士をほぼ倍増するものであると言っても過言ではないと思います。
平成20年12月11日には、自由民主党「法曹の質について考える会」が法務大臣宛に、現状を憂慮し、司法試験合格者1000名程度とすべきなどの提言を、意見書として提出しております。
さらに、平成21年4月17日には、高村正彦元法務大臣を会長とする「法曹養成と法曹人口を考える国会議員の会」が、法科大学院を基本とする法曹養成制度の問題点とこれまでの法曹需要増加の論拠が杜撰であったことなどから、現実を直視し、国民の利益のために変えるべきところは勇気を持って変えるべきであるとし、①予備試験の簡素化・簡易化、②司法試験合格者の目安の撤廃、③養成課程の少数化・厳格化、④司法試験の受験資格制限について、⑤法曹人口のあり方について、等の緊急提言を行っております。
本来上記の問題点は、当事者である弁護士が最もよく知りうるところであり、日弁連、各弁護士会が提言していくべき内容であります。
ところが、大阪弁護士会では、昨年度上野前会長が設置された法曹人口問題PTも消滅し、国会議員ですら理解できる問題点を無視したまま、法曹人口問題についてこれまでの日弁連執行部路線を墨守し続ける委員会しか残されていないように見受けられます(平成21年3月10日臨時総会議案書添付資料参照)。また、司法試験予備試験に関するパブリックコメントに対して、意見を提出すべきであるとしたのは法曹人口問題PTだけでした。本来、司法試験合格者の最も多くが弁護士になるのですから、予備試験に対するパブリックコメントを各弁護士会が行うことは当然だと考えられますが、他の委員会(司法改革委員会、法曹養成・法科大学院協力センター、司法改革推進本部、就職支援委員会など)からは、何らかのパブコメを出すべきだとする意見は出ていなかったように思われます。
以上のように、法曹人口問題に対応して行くには、現存する委員会等だけでは不十分であることは明白だと当職には思われます。
よって、直ちに、法曹人口問題について検討する委員会ないしプロジェクトチームを立ち上げて頂いて、迅速且つ適格に情勢の変化に適応する体制をとって頂きたいと考える次第です。その際には、法曹人口問題に最も利害関係の深い若手を中心に委員を選定して頂くことが望ましいと思われますので、念のため申し添えさせて頂きます。
畑会長におかれましては、日弁連副会長も兼務され非常に多忙であることは十分分かった上で敢えて、事態の緊急性に鑑み、要望させて頂く次第です。
是非ともご検討頂き、ご回答頂けますよう、よろしくお願い申しあげます。
草々
その後、特にお返事も頂けないまま昨日の第3回常議員会が開かれました。そこでは昨年度の決算書類に関する常議員会の承認と、本年度予算案の臨時総会提出についての決議が図られました。
平成20年度上野執行部の報告書の中に、平成21年度に大阪弁護士会が取り組むべきと考えられる各種問題を列挙された部分がありましたが、その中で最初に挙げられていたのが法曹人口問題への取り組みです。
平成21年度の畑会長の「平成21年度の事業計画と予算編成について」という書面にも、法曹人口に触れた部分がありました。
現状は、ようやく増員一辺倒であった政府自民党内部にも異論が出始め、マスコミの論調もようやく法科大学院制度の問題点を指摘し始めるなど、法曹人口問題がやっと動き始めた状況にあると思います。
そこで、この問題につき最も現場に近い弁護士の意見を反映すべく、法曹人口問題に関するプロジェクトチームないし委員会を、再度予算を投じて(といっても昨年度の法曹人口問題PTが使ったお金は475,735円)設置して頂くお考えはないか、質問させて頂きました。
執行部の回答は、既に法曹人口問題に関して検討できる委員会ないしPTがいくつもあるので、敢えてそれ以上、設ける必要はないとの考えであるとのことでした。
それに対し、(緊張して明確に言えたかどうか分からないのですが)3月の臨時総会議案の参考資料を見れば分かるとおり、今残っている委員会は日弁連万歳の意見しか出せない、予備試験に関するパブコメにも意見を出していない、若手のことを本当に考えていないのではないかという趣旨の意見を申しあげたところ、執行部から、「確かに委員の固定化はあるかもしれない。希望されるのであれば、会長委嘱という形でもいいので、委員会に入って頂いて、そこでご意見を言って頂いても良い」旨の回答を頂きました。
平成20年度の会長選挙では、3候補全てが法曹人口問題は大問題であると指摘され、選挙の大きな争点となっていたはずです。平成21年度は会長選挙は無投票でケリがつきましたが、法曹人口問題は全く解決されずむしろ放置されたまま悪化の一途をたどっているように思います。
本当にこれで良いのでしょうか?