日弁連速報って

日弁連速報が届いた。

速報といっても、日弁連の理事会報告が多い。
それもFAXで届くから、要らない人からすれば、会費とFAX用紙の無駄使いをされている気になるかもしれない。

今回のメインは、預り金横領など弁護士不祥事対策のようだ。

成年後見人としての立場を悪用するものが多いとの指摘で、具体的改善策としては、①質が担保された後見人等推薦名簿のあり方、②早期発見・早期対応の為の家裁との対応・調整関係の検討、③弁護士会による早期発見早期対応のためのチェック・助言体制の検討、④家裁への後見人等候補者の推薦方式のあり方、⑤弁護士後見人の研修体制・OJT・相談支援体制等の強化等を求めているとのことだ。

しかし、正直いえば、私はこのような手段で防止できるのなら、もう防止できているのではないかと思う。
問題は他にあるように思う。それはずばり弁護士の貧困化だろう。

そりゃ、たった10年で弁護士数がほぼ2倍になれば、当然である。法的紛争は10年で2倍になるどころか、過払い金訴訟を除いた民事訴訟は減少傾向にあるといわれている。これまで1個のパンを1人で食べていたところ、パンがなんぼか減っただけでなく、2人でその分量の減ったパンを分けなければならなくなった状態なんだから、お腹も空いてあったり前である。

決して不祥事を起こした弁護士を擁護するわけではないが、一般論として考えても、どんな聖人君子であれ食うに困れば悪いことを考えてしまっておかしくはない。生きるために必死という状況では、弁護士といえども弁護士倫理や法律すらかすんでしまう。背に腹は代えられないからだ。
①の質の担保の審査の際に、弁護士としての処理能力ではなく弁護士の預金残高をチェックされる日が間近に迫っているのかもしれないぞ。

最近読んだ「資格を取ると貧乏になります」(佐藤留美 著~新潮選書)には、こう書いてある。

『弁護士法1条1項には「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と定められている。だが、社会正義を実現するにも、自分が空腹では無理だ。恒産無くして恒心無しとはよくいったものである。職業倫理の一線を踏み越えてしまった弁護士も、食うがために泣く泣くやったことかもしれない。誰が彼らばかりを責められるだろうか。』

一方で、
これからは事後的救済社会で司法の役割は増大する、弁護士は社会的インフラだ、と持ち上げ弁護士大増員にGOサインを出しながら、役割が増大したはずの司法分野・弁護士に対してなんら費用をかけようとしない国、
自由競争の前提が崩れている分野であるのに弁護士増員と自由競争で全てが解決するかのようにあおり続けたマスコミ、
自らの教育能力を無視して法科大学院を乱立させたばかりか、法科大学院維持のために現実に目をつむり司法試験合格者増員を叫び続けている大学・文科省、
そのうち需要が増えるはずと高をくくって増員を受け入れ、たまたま過払いバブルで増員を吸収できていたに過ぎないことを無視して、適切な対応を怠ってきた日弁連
責任を取ってもおかしくない連中はたくさんいる。

でも、多分、誰~れも責任取らないんだろうな。

日弁連新聞

今日、日弁連新聞が届いた。
新聞といいながら基本的には月刊だ。日弁連でこんなことをやっているという報告が多く、一般の弁護士さんからすれば「ふ~ん、俺にはあんまり関係ないな」で終わることも多いのではないだろうか。

だが、今回は、1面下部にちょっと見逃せない記事が出ている。
「シンポジウム 司法試験と予備試験のこれから」という記事だ。

記事を読むと、正直がっくりだ。

あれだけ問題点を指摘され、法曹養成制度権等顧問会議でも、あれだけアンケート結果でのだめ出しや、最高裁・検察庁の意見を代弁していると思われる顧問から(上品に)非難を受けていながら、日弁連は何故か法科大学院制度は素晴らしいものと信じ切っているらしく、法科大学院制度と心中するつもりらしい。

パネリストに法科大学院関連の教授だけを呼んでくる時点でもう終わっている。賛否両論の論客をパネリストとして招待してやった方が、シンポジウムとして面白いし、お互いためになるだろうに。言っちゃ悪いが、予備試験を欠席裁判にかけたのと変わらないのでは、と思ってしまう。

兵庫県弁護士会は2011年2月に、弁護士大増員をテーマにシンポジウムをやろうとしたところ、平等に賛成派、反対派にパネリストになって頂けるよう声をかけていた。ところが、増員賛成派のエライ先生方の都合が軒並み急に悪くなったそうで、やむなく増員に賛成できない方が多数を占めるパネリスト構成になったことはある。しかし、一応平等に招待はしていたように思うぞ。

それはさておき、日弁連新聞の論調も、かなり法科大学院寄りに偏向している。

京大の土井教授は予備試験について「『法曹への最短ルートとなっており、すでに当初の目的とかけ離れた制度と化している』と厳しく批判した。」と記事にはある。わざわざ「厳しく」と書いているところからも、日弁連新聞の偏向ぶりが分かるではないか。

しかし、先日のブログにも記載したとおり、日本の名だたる大手事務所が予備試験合格者を、司法試験合格前から優遇して囲い込もうと奔走している。

この現実を、土井教授・日弁連はどう考えるのだろうか。

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2014/01/24.html

法科大学院が当初の目的通り、素晴らしいプロセスによる教育とやらで、質・量とも豊かな法曹を生み出しているのなら大手事務所が予備試験合格者に群がるはずがないではないか。

法科大学院こそが「実務界から全く評価されておらず、すでに当初の目的とかけ離れた制度と化している」と厳しく批判されても仕方がないように思うんだけど。

エライ大学教授の先生方は、遠くを見通しておられるつもりなのかもしれないけど(それだって正しいかどうか誰にも分からない)、足下は見えてないのよね、多分。

会館特別会費の議論に思う。

大阪弁護士会の常議員会で、現在月額5000円を徴収している会館特別会費の減額について議論がなされた。

私もよく知らなかったのだが、現在は原則として、5000円×12ヶ月×18年を支払えば一応会館特別会費の徴収は終了ということになっているらしい。

これを月額3000円に減額できないのかという話だ。昨今良く言われる若手を中心とする弁護士の経済的苦境等に鑑みれば、馬鹿高い弁護士会費(大阪では、月額約5万円弱+隠れ会費~管財事件負担金・国選事件負担金・法律相談負担金など)の会費減額は急務であろうし、若手支援にもつながるということで、一つの提案として十分考慮に値する提案だと考えられた。
弁護士会側のシミュレーションによると2036年には、積立額で約20億円の差が出るとのこと。つまり仮に会館特別会費を減額し、2036年に会館を建て替えるなら、月々の支払いは楽にはなるが2036年に立て替える際の大阪弁護士会会員の負担が約20億円増えるという計算になるともいえる。

確かに、若手への支援策にもなるという執行部の理由は分かる。しかし、今でも苦境の若手が多いといわれているのに、弁護士需要が急に増加するとも考えられない状況下では、将来の弁護士がさらに苦境に立っている可能性の方が高いようにも思う。結局どちらが良いのかは容易には判断できない。私は、決議において保留せざるを得なかった。

結果的には、この議案は、賛成多数で、総会に提出されることになった。

議論の過程で、「公平の観点から、減額後に入会した新会員が結果的に3000円×12ヶ月×18年で足りるのなら、現在5000円支払っている会員に不公平であるため、総額で3000円×12ヶ月×18年に達したら以降の支払いは免除すべきじゃないのか」、との意見もだされた。
確かに会館特別会費徴収が開始された2007年から7年以上経過しているので、差額の2000円×12ヶ月×7年=168000円をどうしてくれるんだ、という批判は当然ありうると思う。

この意見を聞いて改めて思ったのは、若手会員の会費減免措置は一見当然のように見えるが、実は一般会員からすれば極めて不公平な制度だということである。通勤に使う電鉄会社だって、新入社員は給料が少ないから運賃を割引きしましょうとは言わないだろう。運賃に見合ったサービスを提供しているからだ。弁護士会だって本当はこの電鉄会社と同じなのだ。
この不公平を改めるためには、公平に弁護士会費を負担させることが最も単純な解決策だが、それも若手会員にとって厳しいとなれば、残る手段は、弁護士会費を全員一律に大幅に減額することしかないように思う。そのためには弁護士会が本当に必要なこと以外には手を出さないことが、今後は求められるのではないか。

いままで、弁護士会は、人権擁護に必要なことだから、良いことだから、等の理由でどんどん支出を増やしてきたように思う。それを支えたのが、弁護士の正義感と馬鹿高い弁護士会費だった。
弁護士が少ない時代であれば、それでも弁護士は仕事にあぶれることもなく会費を支払えた。しかし、司法改革による弁護士激増策の結果、現状は大きく変わってきている。就職出来ない新人弁護士の増加もそうだ。弁護士とはいえ同じ人間だ。人間は生活しなければならない。だから、背に腹は代えられない。理想は現実にはかなわない。ベテランの先生から、新入会員の希望する委員会は、人権擁護の分野よりも仕事につながる可能性が高い委員会が圧倒的だ、との嘆きを聞いたこともある。

結局、弁護士激増策は、弁護士の経済面を大きく損なわせただけでなく、弁護士の正義感も失わせることにつながり、次第に顕在化しつつあるのではないかと、私は危惧している。