法曹養成フォーラムの岡田委員の誤解?~その1

 法曹養成フォーラムで、消費者問題関連の岡田委員が、弁護士不足を主張していると聞いた。

 新人弁護士の就職難からすれば弁護士は明らかに過剰になっている。過払い事件のように弁護士の生活の糧になるなら、弁護士は広告を展開し、争って受任する状況だ。

 しかし、弁護士の現状と岡田委員の感覚とは、大きくずれている。

 何故そのようなずれが生じるのか。

 私見ではあるが、おそらく、消費者問題を抱えた方を弁護士に紹介しても、弁護士が事件化して相手を訴える等の行動をとらない場合が多いからではないだろうか。

 事件化しないということは、結果的に、消費者被害事件の被害者が泣き寝入りせざるを得ないということで、一見、弁護士が、弱者切り捨てをしているのではないかと思われる方もいるかもしれない。しかし、現実は逆である。

 消費者被害事件では、詐欺的商法を行った加害会社が倒産している場合や、加害会社代表者が逃亡している場合も少なくない。また、被害が少額である場合がほとんどである。

 このような場合に、仮に訴訟にして相手を訴えて勝訴しても、日本の法制度では相手に資力(財産)がなければ回収できず、被害を回復できる可能性は、まずない。つまり勝訴判決をとっても絵に描いた餅で、その判決によって消費者被害の回復ができないこと極めて多いということだ。

 また訴訟を提起してもらう以上、当然弁護士費用はかかる。公務員のように、弁護士の生活が国により保証されているならともかく、弁護士は法的サービスを提供し、その報酬で生計を立てているから当然だ。タクシーに乗ったらタクシー料金がかかるのと全く同じだ。この点、消費者被害では被害が少額であることも多く、その場合、弁護士費用が、被害額を超えてしまう場合も多くなる。わずか10メートルの移動にタクシーを使う人がいないのと同じで、費用対効果の観点から5万円の被害を回復するのに10万円の弁護士費用をかける人は、まずいない。

 弁護士も、自分の儲けだけを考えるならば、上記のような回収困難・費用倒れが明らかな消費者被害案件でも、「勝訴できる可能性はあります」と伝えて、弁護士費用を頂戴して事件化することはやろうと思えば、当然できる。しかしその結果、仮に勝訴しても現実には被害金額が回収ができないから被害は当然回復できないし、勝訴のための弁護士費用までも(消費者被害を受けた)依頼者に負わせる結果になってしまう。

 これでは、勝訴したところで、被害回復が出来ず泣き寝入り、弁護士費用もかかって泣きっ面に蜂、ということになり、被害者救済にならないばかりか、却って被害者の経済的負担が増すことは誰の目にも明らかだろう。

 これは弁護士が悪いわけではない。弁護士は受任してきちんと勝訴しているからだ。資力のない者(資産を巧妙に隠匿する者)から賠償を得ることが極めて困難な日本の法制度、資力に乏しい人の弁護士費用を税金や保険で負担できない現代日本の制度上の問題なのだ(法律扶助制度はあっても原則償還制であり、後で返済する必要がある)。

(続く)

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