安易な相続放棄は・・・危険かも?

弁護士をしていると、もちろん相続放棄の相談もある。

 マイナスの財産しかない被相続人が亡くなったので、相続放棄をして欲しいと相続人から頼まれることも多いが、実は、「相続放棄した方が良いと他の相続人から言われているのでそうしたい」、という相談もときどきある。

 よくよく確認してみると、相続財産の全体は教えてもらっていないのだが、先代の不動産の登記名義がまだ変更されていないから面倒だとか、相続するなら葬儀費用を負担しろと言われるなど、面倒なことに巻き込まれるかもしれないことばかりが、頭に浮かび、もういいや、となっている場合もある。

 そんなときに、相続人全員が放棄するのかと聞いてみると、実はそうではなく、誰か1人が相続することになっている場合だったこともある。

 冷静に考えれば、誰か1人が相続したいという以上、何らかのメリットが相続にあるとしか考えられない。

 そこで、きちんと相続財産を確認してから、決断した方が良いですよとアドバイスするのだが、なかなか正しく理解して頂ける人が多くはないのである。

 以前、相続人のうち1人が「俺が相続して面倒なことは全てやってやる」と言っているので、放棄したいと相談に来られた方がいたが、よくよく調べてみると、多少不動産が売りにくいものの、相続すれば600万円ほどの遺産が手に入る案件だった。

 あのまま放棄していれば、この相談者は600万円をもらい損ねることになったはずだ。

 安易に相続をすれば、借金を負わされる可能性があるという危険があるが、その反面、安易に相続放棄をすれば、本来もらえるべき遺産をもらえなくなる危険もあるのだ。

 特に誰か1人が面倒なことは全てやってやるから他の相続人は放棄しろという場合は注意が必要だ。

 後になって、悔いを残さないようにきちんと弁護士に入ってもらって、調査し、納得したうえで、放棄すべきなのだ。

 兄弟の言うことを安易に信じて放棄してしまい、後悔している相談者の方は何人も見てきた。相続放棄の申述は詐欺・強迫・錯誤等があれば争えるには争えるが、立証の問題もあって、通常、ひっくり返すことは極めて難しい。

 安易に相続放棄する危険についても、相続人はよく知っておくべきだと思うのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です