司法試験委員が法科大学院に求めるもの~国際私法~

今回は国際関係法(私法)を取り上げる。

(以下、採点実感に関する意見から引用)

5 今後の法科大学院教育に求めるもの
昨年と同様に,本年の「国際関係法(私法系)」においても,規定の趣旨を正確に把握した上で,必要があればこれを一般的な解釈論として表現し,事案へ的確に当てはめる能力の有無が問われている。
このことにつき,特に次の3点を指摘したい。第1に,明文の規定を的確に理解することが求められる(離婚の際の親権者との関連で述べたように,通則法第32条につき理解の精度が不足している答案が目についた。)。第2に,法規範が明文上完全な形では表現されていない場合,解釈による補充が求められる(通則法第27条について連結時点を意識していないと見られる答案が多数あった。)。第3に,法規範の抽象性が高い場合,解答を得るためには筋道立った推論が求められる(公序則の発動要件や鏡像理論との関連において,結論に至るまでの推論の過程を整然と示すことができない答案が多数あった。)。
これらの点を日頃から意識して学ぶことが必要のように思われる。

(引用ここまで)

【超訳】~試験委員の言いたいことを推測しての私の意訳

5 今後の法科大学院教育はこうやってもらわんと

 今年の「国際関係法(私法系)」の試験問題について言うたら、受験生に求めとるのは去年と全然変わってへんで。要するに、規定の趣旨を正確に(大体ではないで、正確にやで)掴んでもろたうえで、その趣旨を一般的な解釈論として表現してもらい、事案にきっちり当てはめる能力、~まあ、法律家に絶対必要な基本的な能力やね~これを身に付けとるかを問うてんねん。

 せやけど全然出来てへんから、特に3つの点について敢えて言わせてもらうで。第1に明文の規定を的確に理解してほしいねん。条文の理解なんざ法律家のスタート地点やろ。法律に書いとる条文の意味が理解できてへんかったら、そもそも法律家とはいえんやろがな。答案見とったら通則法32条の理解が足りへんもんが仰山あったで。

 第2に法規範は全ての現実を想定して作られとるわけやないし、人の考えたものやから、当然完全な形やない場合もある。そんなときは、条文が完全やないんやから、解釈でそのギャップを埋めなあかん。無理からその条文に事実を合わせこむなんざ、飛行機に身体を合わせろっちゅうような戦前の思想やで。きっちり条文を解釈して多くの人が納得するような形にしてから適用してやらなあかん。通則法27条のところの答案では不十分なやつが多かったな。

 第3に法規範は多くの状況に対応せなあかんから、抽象的な場合もようあるねん。法規範の抽象性が高いときは、結論よりも結論までにたどり着くまでの道のりがキモやで。何よりも筋道だった論理的で合理的な推論の過程をきちんと示すことが出来るかどうかや。それができへんのやったら、結論だけ書いとるのとかわらんで。公序則や鏡像理論の関連で、きちんと推論の過程を示せへん答案が続出やったわな。よう注意してもらわんと。

 基本的やし、当たり前のことやけど、少なくともこんな点を日頃から意識して学ぶことが不可欠やと思うな。ホンマしっかり頼むで。

各科目の超訳はこれで終了。

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