法テラスに怒り

(平成28年4月15日に記載したブログは誤解があったようなので削除しました。これはそのブログ記事とは別の記事となります。)

 ○○がらみの離婚事件(特定防止のため伏せ字)で、昨年●月から夫婦関係調整(離婚)・婚費請求の調停を法テラスを使って受任した。 ○○がらみだけあって、相当難航する調停であり、調停も毎回長かった。調停間に本人とも何度も打ち合わせ、さらに相手方代理人と何度も調整を行い、6度目の調停期日で、5時間以上すったもんだしたあげく、10ヶ月以上かかって、ようやく調停が成立した。

 法テラスに事件終結の報告を事件終了後数日内に提出したところ、報酬決定は相手方からの金銭給付が行われてから考えるとの返事。通常の事件では事件が終了しているのだから、終結時点で支払うのが当然であり(大阪弁護士会法律相談センターの定型契約書でもそうなっている)、支払わないのなら法テラスが遅延損害金を支払うのが筋だとは思うが、そこは百歩譲って法テラスだから仕方ないかと我慢してやった。

 そして、本日報酬決定通知が来た。
 その決定内容が問題だ。

 20万円振り込まれたようだから
 弁護士報酬を2万1600円と決定する。
 受領した20万円から差し引いて17万8400円を依頼者に返せ。
(その後、依頼者に振り込まれる予定の100万円の10%も報酬として認めるが、振り込まれたら依頼者からもらえ。そのもらい方については弁護士が依頼者と勝手に協議しろ。)
以上

  久しぶりに怒った。

 終結報告書には、20万円は弁護士ではなく依頼者に振り込まれるものと明記してあるし、その旨の調停調書もつけてある(やむを得ず依頼者に振り込まれることになっている)。そもそも、依頼者に17万8400円を返せといわれても、私は20万円受け取っていない。これだけでもバカにしやがってと思うところだが、より大きな問題はそれ以外にある。
 法テラスは、金銭給付以外に、調停自体をまとめたこと、動産の財産分与を受けたこと等について全く考慮していないのだ。

 参考までに大阪弁護士会法律相談センターの離婚調停についての報酬基準は
①着手金50万円以下
②報酬金50万円以下
③財産的給付を受けた場合には、300万円以下の場合は8%の着手金・16%の報酬金の範囲内で適正な報酬を受領することができる。更に複雑な事案の場合は適正な額まで増額も可能。
となっている。
 つまり離婚調停はまとめるのが難しいからこそ、調停をまとめた際の報酬金が認められているのだ。
 上記②③で計算した場合、動産の財産分与を除いても報酬だけで78万8000円の範囲内で請求できたはずだ(事案が複雑な場合は更に請求可能だが、それは措く)。

 加えて言えば、本件の場合、法テラスの決めた着手金は調停を2件合わせて20万2000円だ。
 これだけでも、法律相談センター基準着手金の4割しか支給されていない。
 そもそも法テラス制度は、弁護士費用の立て替えをして法的サービスを受けやすくする制度であり、弁護士報酬の引き下げをする制度ではないはずだ。

 もし、法テラスが調停自体をまとめたことを報酬に評価しないのなら、今後の法テラス経由の調停案件が来たら着手だけして着手金を受領し、1回目の期日において、「私の判断からすれば調停成立の見込みが無い。調停成立は無理、不可能だ。」と述べて10分で不調にして終わる方がよほどいい。苦労に苦労を重ねて真面目に調停をまとめても全く評価されないのなら、6回も家裁に通って調停期日だけで20時間以上も費やして、真面目に調停をまとめなくても、法テラスが弁護士に文句をいう資格はないだろう。だって法テラス自体が調停をまとめることに評価するだけの意味を見出していないんだから。意味ないことを弁護士がしたって無駄なだけだろ。

 マスコミにも文句は言わせない。これまでマスコミは弁護士に自由競争しろと何度も言ってきた。自由競争しろとは、要するに儲けた者勝ちの社会で競えということだ。その儲けた者勝ちの社会の中では、儲かるように(損失を出さないように)工夫することは違法な行為でない限り、基本的には正義と見なされる。そして違法・不当な処理をする弁護士がいても、それは自由競争の中で淘汰されるはずだからとして、その過程の犠牲者は顧みないのが自由競争だ。だから、上記のような調停の扱いを(私はしないが)仮に実行した弁護士Aがいたとしても、マスコミはその弁護士Aを非難するよりは「お気の毒ですが、自由競争の範囲内ですね、そういう弁護士はいずれ自由競争で淘汰されますよ。」と冷たく述べて突き放すほうが姿勢として一貫するはずだ。それに、新聞を読みたい経済的困窮者のために「新聞法テラス」という公的制度ができたとして、一部160円で販売している新聞を、経済的困窮者で新聞を読みたい者に新聞法テラス価格の64円(定価の4割)で販売しろ、と言われて新聞社が納得するのだろうか。
 おそらく民業圧迫だと大反対するはずだ。

 弁護士だって個人事業者だ。依頼者の方から頂く正当な着手金・報酬金で生計を立てているのだ。国選弁護も法テラスも弁護士が金のなる木と暇な時間を持っているという前提で設計されているとしか思えない。
 
 当然上記の決定には不服を申し立てることにしている。
 正当な報酬も支払ってもらえずに何が社会生活の医師だ。

 ふざけるな法テラス。

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