桜満開

 京都鴨川沿いの桜がほぼ満開だ。

 昨夜10時過ぎに、軽いジョギングをしながら、川沿いに白くボンヤリ浮かび上がるソメイヨシノを堪能した。

 夜も遅く、少し寒かったためか、賀茂川沿いの遊歩道には殆ど人はいなかった。

 誰が見上げているわけでもなく、誰が愛でているわけではない。平日の夜であり、花見と称した酒盛りが開かれているわけでもない。

 走りながら見たほぼ満開のメイヨシノは、見事だった。

 見事に咲いた桜について、咲きほこるという言葉があるが、私が昨夜見た桜には、その言葉のように自ら傲ったところは微塵も感じられなかった。

 私には、昼に比べて少しだけまなじりをあげて、きっと唇を結び、悲壮な気配を少しだけ漂わせながらも前だけを見て、冷たい夜風に吹かれつつ、その場でしっかりと精一杯咲いているように見えた。やがて散りゆく運命を、自ら受け容れ、見据えているのかもしれなかった。

 やはり満開の桜は夜に映える。

 私は、あと何度このような、桜花を目にすることができるのだろう。

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