森本会長、考え直して頂けませんか?! ~その2

 私が噛みついた、もう一つの執行部提案(正確には報告議案)は、次のような内容だった。

【人権擁護活動奨励賞】
 人権擁護活動を行う大阪弁護士会会員、大阪弁護士会会員が参加する団体に対して、大阪弁護士会が表章し支援することにより、当該人権擁護活動を社会に知らしめ、広範な人権活動を高揚させるとともに社会正義を実現することを目的とする。
 財源として事業戦略費(予算200万円)を用いるとのことだ。

 これまで、大阪弁護士会会員以外の人権活動について、大阪弁護士会は「大阪弁護士会人権賞」を制定して、表章と金一封・記念品の贈呈を行っている。

 それと同様の制度を作って、弁護士も表彰の対象にしようという制度だ。

 私としても「大阪弁護士会人権賞」の意義は分かるが、そもそも、20年以上実施しているものの世間にはあまり(殆ど)知られていないことから、目的である人権活動の高揚と社会正義の実現についての効果は明確ではないと感じており、費用対効果の観点からも、人権賞に関する会費支出についても、基本的には賛成ではない。

 さらに、弁護士に対してもそのような賞を設けて表彰しようというのが今回の森本会長の意向なのだが、私は真っ向から反対意見を述べた。

 理由は、既に人権保障活動をされている方は、人権保障の信念に基づいてその活動をされているのであり、そのような賞が創設されて弁護士会から表彰されようがされまいが、その活動に揺るぎはないと思われる。弁護士会が表彰してくれないなら人権保障活動を止めちまうぞ、というような功利的な人なら、そもそも人権保証活動に従事していないだろう。


 また、これまで人権保障活動をしてこなかった方が、このような賞が設けられたからといって、その賞を目当てに人権保障活動を突然やり出すという状況も考えにくい。何時表彰されるか(選んでもらえるか)分からない賞(しかも世間的に評価されるかさえも不明確な賞)を目当てに、基本的にはペイしない人権保障活動に注力するとは考えられないからである。

 だとすれば、こんな賞を設けても、多分現状は何ら変わらないのである。

 人権保障活動に従事しようという弁護士が増えるとも思えないし、社会正義の実現につながるとも思えないのである。

 法律でいうところの立法事実が見出せないのである。

 そればかりではない。
 事業戦略費を用いるというのも、引っかかるところである。

 事業戦略費は、その名前からすれば、大阪弁護士会が戦略的に事業を行う為の費用だと考えられる。事業戦略費を使うのであれば、非弁活動の取り締まり強化など、大阪弁護士会や会員に直接プラスになる見込みが高い事項に使うべきなのではないか。会長のやりたいことをやるために自由に使って良いお金なのか。

 また、他会でも似たような制度を実施しているというような資料も添付されていたように記憶しているが、他会を参考にするのなら、他会で徴収されていない国選・管財人・LACなどの負担金制度を止めるのが先じゃないのか。

 確かにこれまで、陽の光が当たりにくかった、人権保障活動に対して、努力されている方々の活動に光を当てたい、という森本会長の意図も分からなくはない。
 また、人権保障活動に尽力されてこられた方としては、表彰されれば評価されたということもあり嬉しいだろうということも否定はしない。

 ただ、そもそも大阪弁護士会は、人権保障活動に熱心に取り組んでいる委員会も多く、どの会員(団体)を選択するのかという点についても問題が生じかねない点を指摘する常議員の先生もいた。俺たちはA団体より絶対人権保障に関して頑張っているのに、どうしてA団体が表彰されて金一封もらい、俺たちには何もないのか、という思いを生じさせかねないということである。

 一応、自薦・他薦で応募する制度にはなっているが、選考委員会としても選考委員が良く知っている団体や会員を高く評価しがちになるだろうということは避けられないと思われる。

 私は、この制度を森本会長がどうしてもやりたいのなら、個人のポケットマネーでやるべきだと考えた。

 そうすれば、どの弁護士・団体が表彰されようと、会長の個人的な評価ということで済むので選考の問題もクリアできるし、会長のポケットマネーから金一封(事業戦略費200万円を、全額使いたいような説明だった)が支払われるのであれば、大阪弁護士会の会費の無駄遣いも避けられる。大阪弁護士会からの表彰であろうが、大阪弁護士会会長個人からの表彰であろうが、表彰された方が嬉しいのは、特に変わらないと思われる。そして、その表彰の結果、仮に人権保障活動の新たな展開がなくても、会長のポケットマネーなら弁護士会の財政にも影響しないので誰も文句は言わないだろう。

 

 実際、森本会長は、「確かに御指摘のとおり、選考の問題はあるが、私はやりたいと考えています。」という趣旨のお話しをしていたので、そんなに森本会長がやりたいなら、個人の負担ででやれば良いだけではないかと考え、反対意見に付け加えて、私は「そんなにやりたいのなら、会長のポケットマネーでやればいいじゃないですか。」と申し上げた。

 
 仮に会長のポケットマネーで始めて、この奨励賞の設置により人権保障活動が活発になることが分かったのなら、会費を使う正当性も出てくるだろう。

 私の意見に対して、別の常議員の先生から、「そういう問題じゃない」との反論もあったが、私はそういう問題だと思っている。

 弁護士会費は、支払わねば弁護士会から懲戒処分を受け、最後には退会させられるという弁護士にとって極めて重いくびきである。
 そうやって無慈悲に集めた会費を、使うのであれば、費用対効果も考えて会員にとってプラスになる可能性が高い使い方をするのが、会員の信任を受けた執行部の役目なのではないか。

 

 結局この案件は、報告案件として常議員会に上程されただけなので、私がどれだけ反対しようが、あくまでそれは意見ということで、森本会長の意向で実現されてしまう可能性が高い。

 さらに危険だと思うのは、森本会長が、この制度を次年度以降も恒常的に行うことを目指すと実施要領に記載していることである。
 次年度以降も事業戦略費から200万円(最大)が効果も分からない制度に、毎年毎年支出されるというのは、私から見れば納得できない。


 弁護士が全員それなりの余裕のある生活が出来ているのなら、構わないが、そのような状況にはないはずである。

 日弁連や弁護士会の執行部に入られる方々、特に会長職に就かれる方は、弁護士業でも成功しており(森本会長も大阪の超有名大手事務所のトップの方である。)、ご自身ないしご自身の事務所にいる弁護士を基準に、弁護士の状況を考えている可能性が高い。

 前々回(だったかな?)の日弁連会長選挙で、法テラスの弁護士報酬増額を目指すと候補者全てが述べていたが、実際に法テラス案件を自ら処理したことがあるのは及川先生(千葉)、お一人だけで、他3人は法テラス案件を自ら処理した経験がない人たちだった。


 経営がうまくいっている事務所の上層部だった日弁連会長候補者達は、人権保障・社会正義などといいながら、法テラス案件などやっていなかったのである。

 実際に法テラスの弁護士報酬の理不尽な低さを経験していない人たち、市井の弁護士の辛さを何ら理解していない人たちに、その改善に関して真剣に取り組めるとは思えない。

 森本会長、あなたの事務所の弁護士さんだけでなく、もう一度、市井の弁護士の実情をよく見て下さい。

 君子は豹変す、といいます。間違っていたなら正すことが出来るのが君子です。

 一度決めた制度であっても、本当に会費を出すだけの効果が見込めるのかをよく考えて頂き、勇気を持って考え直すべきではないかと、私は考えます。

(この項終わり)

ラトビアで見かけた柴犬(記事とは関係ありません)

森本会長、考え直して頂けませんか?!~その1

 先だって、8月5日の大阪弁護士会常議員会で、生活保護者破産管財事件予納金に関して、法テラスが出してくれない部分を、弁護士会が自腹を切って負担する制度が提案され、私は猛反対したが、採決の結果、賛成多数で可決された(若手の常議員の方は何名か反対して下さった)。

 この件に関して、X(元ツイッター)で呟いたところ、約19万回も表示され、コメントのほとんどが「信じられない」「全国に広まったら迷惑」などであり、賛成するコメントはなかったように思う。

 ちなみに、大阪弁護士会会館のエアコン交換に関連してだと思うが、常議員会資料では令和7年度予算において、会館積立金を17億円以上取り崩す予定になっている。その結果、今年の会館積立金(約4900万円)が入金されても、会館積立預金残高はわずか1950万円しか残らないことが予想されている。
 しかも、常議員会での執行部の報告によると、大林組の施工費見積もりが、大阪弁護士会の当初の見積もり予測よりも、はるかに高額になっているらしい。 
 そのため、17億円支出しても交換必要な状態にある会館エアコンの全てが交換できるかは微妙であり、場合によれば、エアコン交換用の特別会費を会員から徴収しないとエアコンが交換できない危険すら生じかねない状態だと私は考えている。

 このような状況では、どんなに額が低い支出でも、弁護士会費の無駄使いはするべきではない。

 大阪弁護士会館が機能しなくなれば、大阪弁護士会事務局ひいては大阪弁護士会自体も機能しないので、いくら生活保護者の人権保障に必要だといっても、大阪弁護士会の十全たる活動と比較すれば、どちらを優先すべきかは明白である。

 更に言えば、生活保護者の人権に役立つとしても、本来法テラス(国)が負担すべき費用を、法テラス(国)が出さないからといって、どうして弁護士会が自腹を切る形で負担しなければならないのか、全く理解が出来ない。

 確かに、弁護士の生活が国から完全に保障されていて、どんなにボランティアをしようが生活に苦しむおそれがないのであれば別かもしれない。しかし、弁護士は基本的には個人事業主であり、人間である。

 人間である以上、ボランティア活動の前に生活を立てなければならないし、家族も守らなくてはならない。

 しかも、司法改革の際にマスコミや法科大学院推進派の学者は、弁護士も資格に甘えず競争しろといっていたではないか。国民の皆様も特に反対せず、弁護士の激増が決められてしまったではないか。

 市場で競争しろということは、儲けられなければ市場から撤退しろということである。生き残るためには稼げということである。
 そのような社会に放り込まれた状況で、更に日弁連・大阪弁護士会も弁護士の激増に歯止めをかけようともしていない状況下で、いまさら、生活保護者の人権のために自腹を切れと言われても納得が出来るはずがないではないか。

 前回のブログにも書いたが、20年前に比べて、裁判件数は4割減、弁護士数は2.25倍に激増している。弁護士一人あたりの裁判件数は、20年前の約27%しかないのである(裁判所データブックからの計算)。弁護士の所得水準もずいぶん落ちている。
 実際の数値から、なぜ判断できないのか。

 確かに森本会長は、弁護士としては素晴らしい能力をお持ちだと伺っているし、弁護士としては尊敬している。


 しかし、弁護士の支払う弁護士会費で成り立っている弁護士会なのだから、弁護士会や弁護士会会長は、まず会員である弁護士を大事にする施策を考えるべきではないのか。

 一度決まったとしても、勇気を持って考え直すべきだと私は思う。

 

実は、この常議員会で、私は、もう一つの執行部提案にも噛みつくことになる。

(続く)

上高地の星空(山腹の灯りは、登山者のテントの灯り)

日弁連会長選挙に関する事前の雑感~3

 次に及川候補の選挙公報を見てみる。

 及川候補の選挙公報


 なぜ立候補したのか
 「司法改革」の誤りを正す!
 弁護士の仕事と生活を守る!
 第1 司法改革の誤りを正す!
 第2 会員の意見を汲み取る
 第3 人権を守る
 6つの重要政策 実現に向けて
 及川智志の経歴・活動

 と区分けして記載されている。

 弁護士の所得の中央値が2006年に1200万円だったものが、わずか8年後の2014年には600万円に半減しており、回復していないこと、
 2000年に約17000人だった弁護士数は、2022年には44000人に増加しているが、現在の司法試験合格者数を維持すれば、さらに弁護士数が増加して6万4000人を超えてしまうこと
 国選弁護制度や民事法律扶助(法テラス案件)のように、赤字案件を弁護士の善意に頼って実施させている政策の問題点などを指摘している。

 基本的に及川候補の主張は、客観的データを用いた主張であり、抽象的概括的な主張に過ぎない渕上候補の主張に比べると、現実の問題点を把握したうえで、それに対処しようとする説得的な主張が見受けられる。

 弁護士は基本的に見栄っ張りな人が多いので、なかなか本音を言わないが、年間所得が600万円程度に過ぎないのなら、大企業に就職していた方がよほど安心・安全な生活を送れる見込みが高い。資格取得に苦労と費用と時間がかかったあげく、弁護士の仕事は、他人の喧嘩を代わりにやる面もあるので、ストレスフルなものが多い。

 仮にうつ病になってしまえば収入はゼロ。収入がゼロでも、生きていくための生活費は当然かかる。ここまでは給与所得者の方と同じだが、さらに、経営者弁護士だと生活費に加えて事務所の経費が年間2000万円位は平気でぶっ飛んでいく。
 近年、企業内弁護士の志望者が多くなっていることには、弁護士業のリスクに対する不安の大きさも一つの理由だと考えられる。

 弁護士には、基本的には国民年金しかないし、健康保険も東京など健康保険組合を立ち上げている一部の弁護士会などを除けば、国民健康保険である。退職金制度もない。その分を貯蓄しておかなければ、余生は生活保護の危険すらあるのだ。

 それにも関わらず、日弁連主流派(大阪弁護士会執行部もそうだが)は、人権を守るために必要なら、本来国がやるべき制度であっても、その制度をとにかく実行したがる。そして、その制度が全くペイせず、弁護士会員に負担を押しつけるものであってもお構いなしなのである。
 そもそも国選弁護だって、国からもらえる報酬は諸外国よりも相当低く、私選弁護の1/5~1/10位しか支払われず、全くペイしない制度である。日弁連は、長年ずっと値上げを求めているが殆ど無視されており、弁護士の犠牲で成り立っている制度なのである。
 民事法律扶助(法テラス案件)、被疑者国選も同様である。

 医師会だって、無医村への医師派遣には、経済的にペイするかどうかをまず考える。医師だって職業だから当然である。私は、人権保障に必要でもまず経済的に成り立つかどうか考えてから実行すべきだと、いつも大阪弁護士会の常議員会で主張するのだが、とにかく、「人権保障に必要なら苦しくても日弁連や弁護士会が、自腹を切ってでもはじめるべきだ。いずれ国が分かってくれて制度化してくれる。法テラスや被疑者国選だってそうじゃないか。」と日弁連・大阪弁護士会執行部などは主張するのである。
 しかし、被疑者国選も法テラス案件も、制度化はされたものの、弁護士に支払われる対価は極めて安く抑えられており、全くペイしないのだ。人権保障には役立つが、経済的に見れば、弁護士に赤字と分かっている仕事を、さらなる犠牲を、押しつけただけなのである。

 日弁連や執行部が、「私たちは人権保障のためにこんなに素晴らしい制度を国民の皆様の為に実行しています!」と良い格好する裏で、実際に担当させられる弁護士は赤字案件をやらされることになるのである。

 確か前回の日弁連会長選挙の際に、法テラス案件を自ら担当して処理した経験があったのは、及川候補だけだった。日弁連主流派の候補者は、人権保障に役立つがペイしない法テラス案件を自ら処理した経験がなかったのである。

 おそらく、日弁連主流派や大阪弁護士会執行部等に所属してええ格好している弁護士の先生方の多くは、「弁護士が生活に困ることなどあり得ない。人権のために会費を使ってしまって不足しても、会費を値上げすれば良いのだ。」と現状を把握できずに旧来の弁護士像がいまだに維持されていると安易に考えているようにしか思えないのだ。

 渕上候補のことはよく知らないが、日弁連主流派が推している候補者であるし、これまでの日弁連主流派の政策を引き継ぐようなので、おそらく上記の方々と同様に考えている可能性が高いのかもしれない。
 及川候補は、弁護士の仕事と生活を守ることを公約に掲げているので、このような点についても切り込んでくれる可能性を秘めている。

 日弁連会長選挙は究極のどぶ板選挙で、例えば、「A弁護士はB弁護士に頭が上がらないからB弁護士から説得すればおちる。だからB弁護士に電話で説得させればいい。」というようなことが常時行われている。


 組織力だけでみれば、これまで日弁連の中枢を握ってきた主流派の圧勝である。
 そうであっても、主流派の圧倒的牙城の中で、弁護士の仕事と生活を守る点を掲げた及川候補がどれだけ得票できるか、私は注目している。

(この項終わり)

森の墓地(世界遺産~ストックホルム郊外)

※写真は記事とは関係ありません。

日弁連会長選挙に関する事前の雑感~2

(まず、私は公聴会に出席しておらず、選挙公報だけしか見ていないので、極めて雑駁な感想に過ぎないことを事前にご了解下さい。)

渕上候補者の選挙公報は、
はじめに
第1 立憲主義と恒久平和主義を守る
第2 市民の人権を守る
第3 司法の未来-裁判手続を中心に
第4 法の支配を社会のすみずみに
第5 弁護士自治を守り新たな弁護士会の未来を築く
終わりに

 と区分けされ、種々雑多な主張がなされているようであるが、ほぼこれまでの日弁連の政策の継承といってもよいと思われ、特段目新しい主張は見当たらないように読める。

 弁護士の仕事の安定等については、第4の中で、若手支援・活動領域の拡充のさらなる推進の項目で少し触れられているくらいである。
 一方、渕上候補は、司法過疎・偏在の解消を目指すこと、司法試験合格者1500名を当面維持することを明言しており、弁護士の生活の安定に向けた施策はあまり考えていないように思われる。

 若手の支援も明記されているが、そもそも弁護士業が安定して収入を上げられる職業であり、右肩上がりなら、若手の支援など敢えて主張する必要はないのである。現に私が弁護士に成り立ての頃は、若手支援を声高に主張する役員は1人もいなかったと記憶している。
 つまり、若手支援の必要性を主張することは、実際には弁護士業がそう安定しておらず、見通しが明るくはないという現状の裏返しなのである

 この点に関して、渕上候補の主張として弁護士業を安定させる方向性の施策には、中小企業支援や自治体連携など、たいして目新しいモノはない。
 私が弁護士になった、四半世紀近くも前の頃から中小企業支援や自治体連携による業務拡大はずっといわれ続けてきている。しかし、実際には、大して実現されていない(実現されていれば渕上候補が敢えて業務拡大策として主張するはずがない)のである。

 だから私に言わせれば、渕上候補の主張する業務拡大施策は、絵に描いた餅でしかないのである。

 そもそも、日弁連執行部などは、無料法律相談の希望者が、たくさんいるから潜在的弁護士需要はたくさんある、等というわけの分からん理屈を振り回すこともあったと記憶している。
 そもそもタクシー会社で、取締役が、「たくさんの人がバス停に並んでいるし、駅にも電車に乗る人がたくさん並んでいるからから、タクシー需要はある。」と主張したら、アホかと言われ、クビになるだろう。
 タクシー料金を支払ってでもタクシーを利用する人が、タクシー需要なのであり、無料や、タクシーがペイしないバス料金・電車の料金と同じくらいの安さならタクシーに乗りたいという人については、タクシー需要ではないのである。

 弁護士の需要だって同じである。

 もっとひどい言い方をすれば、先行する弁護士たちが肥沃な大地や金鉱を先に押さえてしまってから、若手に対して、(自分はやらんけど)荒れ地でもやり方次第で商売になると思うから少し支援する、(ペイしないから自分はやらんけど)海には大量の金が溶け込んでいるから取り出せば儲かるかもしれんので少し支援する、等といっているように聞こえて仕方がない。

 以上から、渕上候補は、弁護士の需要、弁護士の生活の安定について、キチンと把握・対応せずに、今後2年間の、日弁連のかじ取りをしようとしていることは明らかではないかと考えられる。

 それでいて、渕上候補は法曹志願者を増やす必要があるとして、仕事のやり甲斐をアピールするなどの方策を掲げるが、その施策は弁護士会費の無駄使いだと私は思う。

 旧司法試験は、合格率が2%を切ることもあったが、ほぼ一貫して志願者は増え続けていた。旧司法試験合格は人生のプラチナチケットと呼ばれたこともあったが、その頃に、日弁連や裁判所が法律家の仕事のやり甲斐をアピールして、志願者を増やそうとしていたことなどないのである(少なくとも私は知らない)。

 ところが、新司法試験は合格者を増やし合格率が桁違いに跳ね上がったにもかかわらず、志願者の減少傾向がなかなか止まらない。

 その原因は簡単だ。資格の濫発により、法曹資格の価値が下がったことから、人気が失われたのである。それだけの合格者を出さないと法科大学院が維持できないという裏の理由もあったのであろう。

 
 現在の国家資格で食っていける確率が最も高いのは医師資格であり、医師資格は資格の価値が高いのである。そのように価値が高い資格は、どれだけ取得難易度が上がろうと志願者は増大する傾向にあることが多い。旧司法試験の志願者増加傾向や、現在の医学部人気を見れば分かるであろう。

 人は、自らの一生をどの仕事に費やすかについては、慎重に検討することが多い。

 ある仕事に、どれだけのやり甲斐があっても、やり甲斐だけでは生活できないから、その仕事の将来性も検討することになる。
 その検討中に、裁判件数の減少、今後の人口減少、弁護士数の激増等という状況が揃えば、弁護士業界が右肩上がりであるとは、とてもいえまい。

 このように、法曹志願者減少問題は、仕事のやり甲斐などをアピールするだけで解消される問題ではない。むしろそのようなアピールに騙されて法律家を目指すようでは、現状把握能力に問題ありと言われても仕方がない。
 既に、大学も、法科大学院も、文科省も、日弁連も、法曹志願者が減少してから、何年もそのようなアピール活動を実施しては、失敗し続けているのである。

 弁護士会員の貴重な会費を、そのような無駄な自己満足的な施策に用いて欲しくはないのである。

(続く)

日弁連会長選挙に関する事前の雑感~1

 来る2月9日に、令和6年度・7年度の日弁連会長選挙が行われる。

 立候補者は、2名。
 東京弁護士会の渕上玲子氏、千葉県弁護士会所属の及川智志氏だ。

 一言で言えば、渕上氏は旧来の日弁連主流派であり、渕上氏が日弁連会長になっても、これまでの日弁連と何~にも変わらない2年間となるだろう。
 及川氏は、日弁連主流派ではないので、及川氏が日弁連会長になれば、これまでと違う日弁連が誕生する可能性はある。

 選挙結果の予想としては、おそらく、主流派の渕上氏が勝利する可能性が高いだろうが、どこまで及川氏が得票できるかは一つの見所である。

 私の見たところ、これまで日弁連の会長選挙で反主流派として勝利を収め日弁連会長に就いたのは、宇都宮健児元会長だけではないかと思う(もちろん主流派内部での争いはあっただろう)。

 宇都宮元会長は、弁護士の貧困につながる弁護士人口激増問題にも誠実に向き合い、各地から意見を求めるための会合を開き、できるだけ公平に意見を容れて検討していた。
 私も委員として何度も東京に出かけたが、極めて活発な議論が交わされていた。

 日弁連主流派弁護士たちの、
 「弁護士が食うに困るはずがないだろう。現にオレは困っていないし、弁護士を激増させても問題ない。法科大学院制度を否定したら、日弁連執行部が間違った判断をしたことを認めることになるじゃないか・・・」
 という現実無視の極めて自己中心的な超楽観論に対し、及川氏も委員として、裁判件数の減少、弁護士の所得減少の実態など、客観的な証拠を根拠に積極的に反論していた。

 結局、宇都宮元会長は、日弁連改革のために再選を目指したが大激戦の末、敗れ、再度主流派が日弁連執行部を把握した。

 私にいわせれば、その後、主流派は、旧来の日弁連主流派(執行部)の施策を当然のように無批判かつ盲目的に実行し続けてきたようにしか見えない。

 例えていうなら、近年は気温が低く、近くまで氷山が流れてきている可能性があるし、現にいくつか氷山が見えているくらいだから、南側航路を選ぶべきだし、せめて速度を落として航行すべきじゃないのか、と豪華客船(日弁連)の多くの船員が感じている状況であるにもかかわらず、船長(日弁連主流派)は、北側航路を運航することは以前に決めたことだし、氷山なんてどうせたいしたことない、とその意見に取り合わず、猛スピードで氷山の漂う海をばく進している状況に見えるのである。
 タイタニックがその後どうなったかは、皆さんご存知のとおりである。

 その間、民事裁判件数は減少し、刑事少年事件も激減している。それにも関わらず、弁護士数の激増は止まらず、弁護士の所得の下落傾向も止まらず、弁護士の資格の価値下落を生じさせ、法曹志願者の激減を招いていることは、現に生じているところである。

 弁護士といえども、職業である。
 職業は、自らの価値を実現する場であると同時に、生活の糧を得る場でもある。弁護士業によって、自らと家族の生活を支えなければならないのである。

 日弁連会長は、理想を語りその実現を目指すのも良いが、それにはまず、理想の実現をになう働き手たる日弁連会員(弁護士)の生活が安定してからのことだろう。

 ちなみに、裁判所データブック2023(法曹会)によれば、
 令和4年の地方裁判所の民事通常訴訟事件の新受件数は126,664件にすぎない。この数字は、平成4年の同じ事件の新受件数(129,437件)以降の30年間で最低の数である。
 端的に言えば、地方裁判所に1年間で持ち込まれる民事裁判の数は、30年前よりも少なくなっているのである。

 ちなみに平成4年の弁護士数は14,706人、令和4年の弁護士数は42,937名である。

 弁護士一人あたりの事件数にすると、平成4年では8.8件、令和4年では2.95件であり、約76%の減少になっているのだ。

 さらにいえば、刑事事件(人)は、平成4年1,701,470(人)→令和4年で812,872(人)と人数にして53%減少。弁護士一人あたりにすれば、84%の減少だ。

 家事事件は増加しているものの、少年事件(人)については、平成4年402,231人→令和4年45,740人と、人数にして88.6%の減少。弁護士一人あたりにすれば96%の減少だ。

 さて、この現状を踏まえたうえで、渕上候補者、及川候補者が選挙公報で、どう言っているのかをみてみたい。

(続く)

サモトラケのニケ(ルーブル美術館)

※写真は記事とは関係ありません。

法テラス大阪常駐弁護士配置に反対する意見

 昨日の大阪弁護士会常議員会で、法テラス大阪に4人の常駐弁護士をおいて欲しいという日弁連・法テラスからの要望に対する決議がなされた。

 実はこの常駐弁護士配置の要望は、しつこく何度も日弁連・法テラスから出されていたものであったが、大阪はもともと委員会活動が盛んで法的弱者救済をきちんと手がけてきていたこと、法テラス大阪の職員が、法テラスなら無料で相談できるなどと明らかに民業圧迫の営業をかけた事件が発生したことなどもあり、これまで、大阪弁護士会は賛成しては来なかった。

 「常駐型スタッフ弁護士の増員・新規配置は、いずれも当会としては受け入れられない」とのこれまでの大阪弁護士会の方針を転換し、福田執行部は「法テラスの意向が、当会に対しても常駐型スタッフ弁護士の配置を求めるものである場合、当会はあえてこれに反対しない」との意見を提出したいとのことであった。

 私は、4つの理由を挙げて反対した。他にも反対意見を唱える先生もおられたが、決議の結果は賛成多数(しかも大多数?)で可決されてしまった。少なくともズーム参加の常議員の方で反対されたのは私だけだった。賛成された常議員会の先生方は本当に法テラスの言いなりになって良いとお考えだったのだろうか。

 ちょっと悔しいので、私の反対理由を以下に示しておく。

(反対理由ここから)

1 必要性がない


  ・最近5年間の援助決定件数は横ばいから減少傾向(全国・大阪とも)
    ~法テラスがHPで公開している最近5年間の援助決定件数 資料28
によれば、全国的にも5年前の119,296→107,658件、大阪でも11,927件→10,441件(全国の件数の約1/10を大阪で援助開始している)と横ばいから減少傾向にあり、今まで法テラス案件につき特に大きな問題が生じていない状況で、更に法テラススタッフ弁護士を配置しなければならない必要性がない

  ・震災関連と思われる二本松・東松島などの法テラス事務所の閉鎖はともかく、震災関連ではない法テラス事務所を閉鎖する際に、法テラスは、地元弁護士の増加により国が公的支援をする必要性がなくなったことを理由にしている。法テラス松本・八戸閉鎖(閉鎖日は2019.03.31)を伝える日経ネット記事(2018.09.05)は、地元弁護士の増加により国が公的支援をする必要性がなくなったことを理由として記載している。

→この法テラス事務所閉鎖の理由からすれば、弁護士も多く、司法アクセス・司法弱者救済等について特に尽力している大阪では、法テラス事務所を閉鎖しても良いくらいであって、常駐弁護士はなおさら不要といえる。

2 法テラスは採算性を重視してきている

・法テラスは「誰もが、いつでも、どこでも、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会の実現を目指します。」との使命を掲げているが、北海道中頓別簡裁管内の弁護士不足を理由に、日弁連が法テラス7号事務所設立を求めたが、法テラス側は需要が見込めないとして拒否し、日弁連によりオホーツク枝幸ひまわり法律事務所(2019.04開設)が開設された経緯がある。このように法テラスは当初の理念よりも採算性を重視する傾向にあると思われる。

日本司法支援センター中期目標(R4.2.28法務大臣指示)p10、第6財務内容の改善に関する事項の記載として、自己収入の獲得等が最初に挙げられ、その中で、寄付金受入や有償事件の受任等により、自己収入の獲得確保に努めるとの指示が出されている。

 ちなみに多くの弁護士が希望している法テラス経由事件の報酬の引き上げ、つまり算定基準見直しについては、上記中期目標(15頁もある)の最後に、おまけのように3行程度で「多角的視点から検討を行い、その結果の適切な反映を図る」と触れられているだけであり、報酬を上げるとも明言されていない。

・この法務大臣からの目標を受けた法テラスの令和4年度目標にも、有償事件受任等による自己収入確保を目的とする記載がある


→これらの法テラスの採算重視傾向からすれば、常駐弁護士を配置すれば有償事件を獲得する方向(これは民業圧迫である)に繋がる危険性が高い。大阪での法テラス職員の営業事件も、この採算重視のための事業の一環と見る方が、担当者の独断専行と考えるよりも、合理的である(ちなみに大阪弁護士会はこの事件について、法テラスの言い訳を鵜呑みにして、担当者の独断専行であったと判断しているが、私は自己収入確保の法テラス中期目標達成のために、上層部から指示されて行った行動ではないかと考えている)。

3 そもそも弁護士業に余裕はなく、法テラスは民業圧迫である

裁判所に1年間に持ち込まれる事件は減少傾向にあり、弁護士業に余裕はないことを、最新の状況を私が弁護士登録した頃と比較して示してみる。


全裁判所新受件数
H12:約554万件 弁護士数17707人 1人あたり312.71件
R2: 約336万件(40%減)弁護士数43230人(2.44倍)1人あたり77.41件(75%減)

地裁第1審民事通常訴訟事件(新受)
H12:156,850件(弁護士1人あたり8.9件)
R02:133,427件(弁護士1人あたり3.1件 65%減)

事件数の減少を指摘した場合、弁護士選任率は上がっていると反論する方がいるので敢えて次の資料もつけておく。

民事第1審通常訴訟既済事件中弁護士選任状況(弁護士が就いていた事件数)
H12:15万8779件(弁護士1人あたり8.967件)
R2:12万2749件(弁護士1人あたり2.8394件 68%減)

(以上は全て裁判所データブック2021:法曹会からのデータ引用である)

このように、弁護士業界は相当厳しい状況にあり、法テラスによる民業圧迫を許すだけの余裕はない。

4 天下りの可能性

 法テラスの安すぎる報酬に異論がある人が多く、多くの弁護士が赤字を覚悟して法テラス案件の処理を行っている。私もかなり不満がある。しかも、法テラスの中期目標等の記載状況(最後にちょろっと触れるだけ~しかも内容として、「検討結果の適切な反映を図る」とだけ記載され報酬を上げるとも明言されていない~の記載状況)からすれば、適正な報酬に改定されることは相当困難と見込まれる状況にある。

 一方、歴代法テラス理事長のうち政治家・官僚を除く、法テラスの理事長は4名いるが、全て法曹であり、日弁連会長経験者、日弁連事務総長経験者で占められている。

 一般弁護士が苦労して赤字覚悟で事件処理をしている中、法曹出身の理事長もボランティア的にやってくれているのかと思いきや、法テラス理事長の給与は年額約1,800万円強と相当高額であることに加え、退職金規程も完備されている。法曹出身理事長が、苦労している弁護士会員に配慮して、理事長給与削減を申し出たとか、退職金を辞退したとの情報には、少なくとも私は接していない。

 結局、法テラス理事長ポストは、天下り的なポストになりかけているのではないかとの疑念がある。
 日弁連執行部は法テラス側の意向を汲むことにより、このポストを維持しようとしているのではないかという懸念を捨てきれない。

5 小括

 以上3点、
 ・事件数の推移及び多くの弁護士が所属し公的支援に従事している現状から見て大阪に法テラス常駐弁護士を配置する必要性がないこと
 ・法テラスの採算性重視傾向から、民業圧迫に至る可能性が高いこと
 ・弁護士業界には民業圧迫を許容する余裕はないこと

 とプラス1点(天下りの懸念)から大阪弁護士会管内の法テラス常駐弁護士配置に反対する。

(反対理由ここまで)

日弁連会長談話の矛盾

本年3月28日に、日弁連の荒会長は、

若手会員への支援の充実・法曹志望者増に向けての会長談話~「法曹人口政策に関する当面の対処方針」取りまとめを踏まえて~

を公表した。

「法曹人口政策に関する当面の対処方針」については、これまで指摘したように、まず結論ありきで作成されていたとしか考えられない。

法科大学院としては、司法試験合格者が減少すれば制度自体を維持できなくなるから、司法試験合格者数は何としても維持して欲しいのだ。

日弁連の描きたい結論は、司法試験合格者を減らす必要などないという意見だ。

この意見は、日弁連執行部が法科大学院とべったり結託しているから、端的に言えば法科大学院の利益を代弁したものである。

しかし、このブログで何度も指摘しているように、法科大学院制度は導入から20年近く経ってもいまだに、その制度の改変を続け、ついには法科大学院での教育半ばで司法試験を受験させるという、「プロセスによる教育という大看板」すら放棄するような内容の制度を導入するに至っている。

また、法科大学院の教育内容の充実が制度導入からずっと叫ばれ続けている。

一般の会社で考えれば、こんな感じだろう。

ある取締役(法科大学院制度導入論者)が、こういう機械(法科大学院制度)を導入して製造(教育)すれば、これまで以上に優秀な製品(法曹)をたくさん生産できると豪語したので、費用(税金)を投入して導入した機械が、その取締役の豪語するような性能も発揮できず機能不全を起こし、機械の半数以上が壊れた(潰れた法科大学院は半数以上)状態になっている。しかもその取締役、20年近く経ってこれだけの惨状が明らかになっているにも関わらず、機械が上手く動けば上手く行くはずだと言って、機械をあれこれいじるだけで何ら結果を出せていない。

まあ、普通の会社なら、その取締役がクビになるのは当然だわな。更にすすんで取締役の業務に関する任務懈怠責任を、会社(国民)から問われても仕方がないだろう。

 ところが、日弁連執行部は法科大学院推進に同調して協力したため、今さら間違っていたとはいえないのだろう。だから、無理をしてでも、会内の相当数の反対を押し切ってでも、法科大学院をアシストすべく、司法試験合格者を減らす必要はないとの意見書を出したのだ。

 要するに、私から見れば、日弁連執行部は、なんの具体的根拠もなく適当な根拠を並べ立てて弁護士の法的需要はあると断言しているのだ。

 (裁判所に持ち込まれる全事件の数は年々減り続けているのに)仮に日弁連がいうとおり、世間には法的需要が有り余っており、弁護士の仕事もたくさんあるのなら、その仕事で食っていけるはずだから、わざわざ会費を支出して若手の支援をする必要などないはずなのだ。

 法的な需要があると言いながら、若手支援に注力するという態度は、完全に矛盾していると私は思う。

 会費を払わず(払えず?)退会命令を受ける会員もいる昨今である。

 会費の無駄使いは会員全員に対する裏切り行為だろう。

 現に私が弁護士になった20年以上前では、若手の支援など誰も言っていなかった。むしろ正月やGWなどに若手が多く当番弁護士を割り当てられたりしていた記憶があるくらいだ。

 もういい加減、日弁連執行部は現実を見ないとダメだ。

 「弁護士であれば、かすみを食ってでも生活できる(んじゃないかな??)」という幻想は今すぐ捨ててもらいたい。

 

法テラススタッフ弁護士配置依頼に対する、大阪弁護士会の回答

 3月15日、16日のブログで、日弁連から法テラススタッフ弁護士を配置するよう依頼されており、大阪弁護士会がどう対応するかに関する記事を記載した。

 先日の常議員会で、大阪弁護士会の日弁連に対する回答が明らかになったので、ご報告する。

 大阪弁護士会の回答は、

『当会は、2011年(令和3年)3月8日付ノキ連合会からの照会に対する回答書において「常駐型スタッフ弁護士の配置に関する当会の方針転換を白紙に戻す」として「常駐型スタッフ弁護士の増員・新規配置は、いずれも当会としては受け入れられない」との回答を致しました。

 今般、上記の回答を変更するかを検討致しましたが、現段階での方針変更は時期尚早であるとの結論に至りました。』(若干の字句修正はありうる)

 というものであった。

 率直にいえば、もっと毅然と断れんもんかねぇ・・・というのが私の感想である。法テラスは民業圧迫行為をしたのである。大阪弁護士会との信頼関係にヒビを入れたのは法テラスの方なのだ。

 しかし今回の回答案は、私から見れば、「日弁連のご意向はごもっともで本当はご意向に沿わせて頂きたいのはやまやまなのですが、いろいろございまして、現時点ではご意向には沿うことが出来ないようで、大変申し訳ございません。いずれそのうち、必ずやご意向に沿って見せます。」と、腰をかがめモミ手をしながら言い訳しているように読める。

 おそらく、大阪弁護士会会長が日弁連副会長を兼ねていることが大阪独自の主張を大きく阻害している一因ではないかと私は考えている。

 そもそも、日弁連副会長は日弁連会長を補佐し、日弁連会長の意向に沿って活動する地位である。日弁連代議員会で何度も見てきたが、日弁連副会長に選任された人たちはほぼ例外なく日弁連会長や日弁連執行部を支えて行くと挨拶する。要するに、日弁連副会長は日弁連会長の意向に逆らえない立場にあるといっても良い。

 一方、大阪弁護士会会長は大阪弁護士会を代表する地位であるから、大阪弁護士会の意見を主張していく立場にある。

 ところが、慣習上大阪弁護士会の会長は、日弁連の副会長を兼任するから、大阪弁護士会の意見を主張する立場でありながら、日弁連会長の意向に逆らえない立場を有するという、矛盾しかねない立場を兼ねることになるのだ。しかも週のうち、半分近くを東京で過ごす必要があるなど大阪弁護士会の職務はその多くを副会長にお願いする状況にもなっているようだ。

 私はずいぶん前から、このような状況はおかしいと思っていて、常議員会の懇親会などで会長や次期会長に対して、大阪弁護士会会長と日弁連副会長はそれぞれ別の人が担当すべきで、現状のように大阪弁護士会会長と日弁連副会長を兼任すると、日弁連の意向に逆らえなくなるなどの問題が生じるのではないかと提言したこともある。

 多くの方は、そうではなく、大阪という大単位会の会員を代表しているという地位が日弁連で大きく意味を持つのだというお考えのようだった。

 果たして本当にそうなのだろうか。

 大阪という大単位会の意向が日弁連にどんどん提案され取り入れてもらえるのならばともかく、私が常議員会で見聞してきたところによれば、大阪弁護士会執行部は日弁連執行部の意見をできるだけそのまま通そうとする傾向が強いように感じている。

 どこかで、変える必要があるように、私としては思うのだが。

法テラス常駐弁護士~日弁連は民業圧迫に賛成なのか?-2

(続き)


 前回記載したように、2020年3月の今川執行部により大阪弁護士会は法テラスの常駐・常勤スタッフ弁護士設置に反対しないとの方針転換を行い、その方針を維持することを同年8月に川下執行部でも確認することになった。

 ところがその3ヶ月後である2020年11月、法テラス大阪地方事務所の事務局長が、大阪弁護士会と連携関係にあった生活保護施設を訪問し、その際に、法テラス大阪地方事務所に常駐型スタッフ弁護士が配置されることになったこと、法テラス大阪事務所においては無料での法律相談の行うことが可能であること等について説明(営業)を行う事態が生じたのである。

 前回ブログのように医師のケースに例えれば、国が設立した病院の事務局長が、別の病院と提携関係にある施設を訪問し、「ウチにも常勤の医師が来ることになりましたから、これからはいつでも無料で診療が受けられますよ。だから、今までの提携関係にあるお医者さんを切って、ウチに来てもらう方がお得なんですよ。」と営業するようなものである。

 このようなことは、完全に民業圧迫であるし、そればかりでなく大阪弁護士会と法テラス大阪地方事務所との信頼関係を完全に破壊する行動と評価されても仕方がないだろう。

 おそらく、法テラス大阪地方事務所の事務局長が自分の考えだけで、このような面倒な営業行為をするとは到底思えないから、おそらく法テラスの上層部の方から、法テラス大阪地方事務所に対して営業するようにとの指示なり圧力があったと考えるのが合理的である。

 法テラスは、経済的に困った方のために国が設けた制度であったはずなのに、採算が取れない地方では地方事務所を閉鎖するなど、次第に採算を重視する傾向が見られるようになってきており、本来の制度目的とは異なる方向に動いているように思われる。

 そのような点に鑑みれば、一旦は「弁護士費用は、無料ですよ~。」と採算度外視で行えることを利用して営業行為を行って集客し、集客後は、そのお客に繋がる人脈等を利用して、採算に繋がる事件を法テラスで受任しようとする意図があったのではないか、と考えざるを得ない。弁護士への事件依頼は、一度受任した人からの紹介によるものが相当部分を占めるからだ。

 この事態を知った、当時の大阪弁護士会川下執行部は(多分)激怒し、2021年1月の日弁連からのスタッフ弁護士配置依頼に対しては、これまでの回答を白紙撤回し、待機期間型常駐弁護士はともかく、常駐型常勤弁護士の増員・新規配置とも受け入れられないとの内容の回答を返している。

 それにもかかわらず、今年も日弁連から令和4年度スタッフ弁護士の配置についての依頼が大阪弁護士会に届いている。

 日弁連執行部には、法テラスが民業圧迫に繋がっているという認識が完全に欠落していると言わざるを得ないだろう。

 確かに民業圧迫よりも経済的弱者の保護を優先したいという見上げた発想に基づいている可能性もなくはないが、仮にそのような自己犠牲をしたいなら、日弁連執行部で法テラス常駐弁護士を提案する人たち(自己犠牲をしたい人たち)で、やれば良いのだ。

 そもそも、日弁連という組織は、弁護士会員の利便のために動くべきではないのか。

 過疎問題に関しても、医師会などは過疎地域での医療に関して経済的に成り立つかをしっかり見極めることが大前提だとするが、弁護士会は過疎解消の美名に酔いしれて、経済面を無視して突進し、自腹を切りまくっているように見える。その負担は各弁護士の納めた弁護士会費から出されるのである。

 この前の日弁連会長選挙で、及川候補を除く主流派の候補2人は、法テラス案件を自分の事件として受任し処理していた経験はなさそうだったが、仮にそうだとすれば、日弁連執行部(主流派)は自己犠牲の精神を高らかに歌い上げながら、自己犠牲を執行部以外の会員に押しつけていることになりはしないか。


 弁護士も職業である。職業は生活の糧を得る手段である。かすみを食って生きるわけにはいかない。

 私の経験から言わせてもらえば、きちんとした法的サービスを提供しようとするなら、法テラス基準の対価では到底不可能で事務所を維持できない。

 ちなみに、私の場合、法テラスは、経済的弱者でどうしてもやむを得ない方については利用するが、民業圧迫の際たるものだと思っているので、常議員会では常に法テラス拡充方向の議案には反対の意見・反対投票してきたつもりである。

 田中執行部がどのような回答を行うのか、後日ご報告する予定である。

(この項終わり)

法テラス常駐弁護士~日弁連は民業圧迫に賛成なのか?-1

 日弁連は、各弁護士会に対し、毎年のように法テラスのスタッフ弁護士の配置に関して意見を求めている。
 意見照会の形を取ってはいるが、表題に「令和4年度スタッフ弁護士の配置について(依頼)」とあるように、実質は、法テラスのスタッフ弁護士を配置してくれというお願いである

 法テラスのスタッフ弁護士は、定額の給与を法テラスから受け取るので、採算を度外視して無報酬でも事件を受任出来る。
 分かりやすく医師に例えれば、国が病院を設立して医師を雇用し、採算度外視(無償)で患者を診る制度といったところである。こんな制度を作られたら普通のお医者さんは食べていけない。

 あからさまに民業圧迫だからであるし、そのような制度を医師会が放置するとは到底思えない。

 しかし、日弁連は、事実上、民業圧迫に繋がりかねない法テラスのスタッフ弁護士を各弁護士会におくように依頼を続けているのである。

 これに対し大阪弁護士会は、委員会活動が活発であり、困った方のために手弁当でも対応する弁護士が比較的多いことなどから、当初は法テラス法律事務所もスタッフ弁護士も不要との立場を取っていた。

 ところが、2012年、法テラス本部から日弁連に対し、大阪に法テラス法律事務所を設置して、各地に赴任するまでの待機期間のみ常勤する待機スタッフ弁護士を配置したいとの要望が出された。当時の大阪弁護士会執行部は、待機期間中の待機スタッフ弁護士であれば異議はない旨の回答を出したため、2013年には法テラス大阪事務所が設置され、待機型常勤弁護士が常駐するようになった。

 私の目から見ればだが、大阪弁護士会執行部は、何年かに一度、日弁連会長を大阪弁護士会から輩出していること、大阪弁護士会会長が日弁連副会長を兼任する慣習があることなどから、日弁連執行部とかなりべったりの関係にある。
 以前法曹人口問題等で執行部に近い先生と意見交換していた頃は、「日弁連への影響力が・・・」等と発言する年輩の先生も複数いたので、よほど日弁連会長・副会長の席に憧れる人が多いのだろう。私なんぞは、仮に大阪弁護士会から日弁連への影響力が残っても、弁護士界全体が沈没したら意味ないじゃないかと思っていたのだが、年輩の先生方の考えは違うようだった。
 そのようなことから、私の目から見れば、大阪弁護士会執行部は日弁連の意向に迎合する場合が多いように感じる。

 閑話休題。

 結局、2013年に日弁連を通じての法テラスの要望に屈した大阪弁護士会であるが、待機型常駐弁護士しか認めていなかったため、さらに毎年のように日弁連から待機型でない常駐・常勤スタッフ弁護士を置いて欲しいという意見照会(お願い)が来ていた。
 そのため、PTで検討させた結果、2020年3月、当時の今川会長執行部が待機期間中ではない常駐の法テラス常勤弁護士の受入に反対しないとの意見に変更し、2020年8月にも当時の川下会長執行部が、同様の意見を日弁連に対して回答した。

 ところが、その3ヶ月後、事件が起きる。

(続く)