男女共同参画からの提案に弱い常議員会?

 男女共同参画推進本部(以下「共同参画」という。)から、常議員会に会費免除に関する提案がなされ常議員会で議論、採決がなされた。

 現在、大阪弁護士会では育児期間中の会費免除の制度はあるが、育児期間中に弁護士業務を休業していないと免除が適用されていない。共同参画は、この休業要件を撤廃し、育児期間中に弁護士業務を行って売上を上げていても、会費免除を認める内容にすべきだというのである。休業要件撤廃を要求する理由は、「育児期間中における会員の負担軽減を図り、育児参加を促進する(その結果、男性の育児参加を促進することになる)ための積極的施策」として行いたいとのことであった。

 大阪弁護士会の会費免除規定には、疾病の場合の規定もあるが、この場合は常議員会で調査小委員会を編成し、調査小委員会が本人・主治医等に意見を直接聞くなどして、本当に業務ができない状態かを厳格に判断し、弁護士業務遂行が不可能で真にやむを得ないと判断された場合でないと会費の免除は受けられない。近親者の疾病や老親の介護の必要性があって、弁護士業務の大半を休む必要がある弁護士がいても、その会費は免除対象にすらなっていない。

 弁護士会費は弁護士会維持存続のための不可欠な財源であり会費収入は極めて重要である。会社と同じで弁護士会もお金が無ければ何もできない。

 その会費収入の重要性からすれば、会費免除は真にやむを得ない事由がある場合に限るべきであり、疾病の場合の厳格な調査は会費収入の重要性に鑑みれば相当なものであると考えられる。なぜならこのように厳格な判断を行わないのであれば、どの程度の事由があれば免除されるのかという限界が不明確となり、ずるずると会費免除される場面が拡大していき、弁護士会の経済的基盤が崩壊する危険性があるからである。

 また、上記の通り会費収入の重要性に鑑みるならば、今回の共同参画からの提案にように、何らかの政策目的を実現するための積極目的での会費免除は、可能な限り認めるべきではない。
 なぜなら、積極目的での会費免除を認めれば、どのような積極目的であれば免除が相当なのかという点が全く不明確となるからである。


 例えば、今回の提案を受け入れ、育児の男性協力は素晴らしいからそれに繋がる育児期間中の会費免除に休業要件をなくしてよい、という判断をした場合、その後、家族の看病・介護を行うことは素晴らしいことだから看病・介護の負担を負う会員は、弁護士業ができていても会費免除しようという主張が出てきた場合、どうするのか。男性の育児参加促進のための会費免除はOKだが、家族の看病・介護のための会費免除はNOであるという判断ができるのか。
 さらに、積極目的での会費免除を認めるのであれば、今回の共同参画のように声の大きな委員会の意見ばかり通る危険性も否定できない。

 私の個人的意見にはなるが、育児期間中とはいえ、弁護士業務を実際にやっているのであれば、大阪弁護士会の会員として弁護士業務を行って売上を上げていることになる以上、大阪の弁護士をまとめている大阪弁護士会に何らかの負担を負わせていることになるから、その経費である弁護士会費を支払うのは当然だと思う。また、売上を上げている以上、会費負担能力も認められるであろう。

 誤解して欲しくないのだが、私自身、男性の育児参加促進を否定しているわけではない。仮にある積極目的(例えば今回のように、男性の育児参加促進)を達成するために、該当会員に対して会費免除相当額の援助が必要なら、そのような制度を作り特別会費を徴収して援助を実行すれば良いのであって、会費免除という目立たない手段で、結果的に弁護士会の存続の基盤である経済的基礎を揺るがす危険のある方策を取るべきではないという意見なのである。

 将来の弁護士業界の悪化に伴う会費減少の事態に陥るなどして、会費免除を廃止する必要性が出た場合には、疾病で働けない弁護士の会費免除は維持しつつ、積極目的での会費免除から停止・廃止すべきであることは当然であろうと思われる。この場合、特別会費を徴収する手段で行っておけば、その積極目的の会費免除について廃止する可能性についてもその制度の中に予め定めておきやすく、廃止しやすいとも考えられる。


 ところが、共同参画側の提案者もしたたかであり、新たな会費を徴収する制度を提案すれば、多くの会員から反対にあう可能性が高いことは分かりきっているから、できるだけ目立たない会費免除という手段をとっているのである。また、総会では大量の委任状等で決議できるから、常議員会さえ通過できれば、なんとかなるという目算もあるのだろう。

 共同参画からの提案理由の中には、財政的になんとかなるという検討結果や、他の弁護士会が休業要件を撤廃していることなども理由に上げられていたが、私はそれらの理由は何ら根拠になっていないと考えている。

 仮に今回の会費免除を追加して行っても問題ないほど弁護士会費が潤沢に残っているというのであれば、それは本来会費の取り過ぎであり、全会員に還元すべきものであるはずだ。


 休業要件の撤廃について他の弁護士会と平仄を合わせる必要あるという理由なら、国選・管財事件の負担金制度を取っていない弁護士会もあるのだから、そちらと合わせるべきだろうし、ラックの持込案件まで会費負担を負わせているのは日本中で大阪弁護士会だけのはずだから、その負担金制度も廃止すべきという議論にならないとおかしいではないか。

 以上のような主張を常議員会で行ったが、この議案を総会に提案するかどうかの採決で反対したのは、インターネット参加の常議員では私1人だけだった(会場参加の方の賛否は不明)。インターネット参加の常議員の方で保留された方が4名いらっしゃったことが救いだったが、多くの常議員の先生方は、あっさり賛成されていた。

 私は10年以上継続して常議員を務めさせて頂いているが、総じて男女共同参画推進本部からの提案について、異論を述べる先生や反対される先生は極めて少ない。


 私の目から見れば、常議員会は、男女共同参画からの提案に、すこぶる弱いのである。

日弁連法曹人口検証本部取りまとめ案の偏向

 各単位会に意見照会をした結果、相当数の単位会が反対するなどしたため、再度内容を訂正していた日弁連法曹人口検証本部だが、やはり司法試験合格者1500人を維持する方向での声明(現時点では合格者を減員する理由はないとする声明)を出したいようだ。


 結論を導く理由について読んでみると、まあ偏った判断が並んでいる。自分達の声明に不利な方向の根拠は理由がないとか確認できないとかの理由で切り捨てながら、自分達の声明に有利な方向の根拠は推測だろうと何だろうと取り入れていく。

 特に客観的な資料の引用に、偏向を感じる部分が明確に出る。

 例えば、検証本部は、裁判所が新たに受けた事件数(新受件数)に関して、概ね「地裁民事通常訴訟事件の新受件数自体は微増にとどまり,裁判関係業務の業務量に大きな変化はうかがわれない。」と評価しているようである。

 しかし客観的データから見ると、民事通常事件は微増もしていないし、家事事件を除き裁判関係業務は大幅に減少している。

 最高裁事務総局が編集している「裁判所データブック2021」によると、地裁民事通常訴訟事件の新受件数について10年前である平成23年と令和2年で比較すれば次のとおりである。
 平成23年 地裁民事通常事件新受件数  196,366件
 令和2年  地裁民事通常事件新受件数  133,427件(▲32.05%)

 つまり、客観的な資料から、10年前と比較して30%以上も減少している新受件数を、検証本部は微増と評価しているのである。

 百歩譲って、検証本部が日弁連の2012年(平成24年)提言後の事情に限定して検討をしていると仮定しても、
 平成24年 地裁民事通常事件新受件数  161,313件
 令和2年  地裁民事通常事件新受件数  133,427件(▲17.29%)
 であって、地裁民事通常事件の新受件数は、どこをどう見ても大幅に減少しているのであって微増などではない。

 このように、前述の検証本部のこの部分に関する記載は完全な虚偽である。小学生でも分かる欺瞞を、検証本部は平気で行っているというほかない。

 ところで、弁護士の業務量を推定するのに様々な資料は考え得るが、弁護士の業務量は基本的には法的紛争の量が反映されるから、最も客観的で信頼できる資料は、どれだけの事件が裁判所に持ち込まれたかであると考えられる。

 前記の民事通常事件だけではなく、民事行政を併せた新受件数、刑事事件新受件数(人)、家事事件新受件数、少年事件新受件数(人)を10年前と比較すると、次のとおりである。

民事・行政事件 1,985,302件 →1,350,254件(▲31.99%)
刑事事件    1,105,829人 →  852,267人(▲22.93%)
家事事件      815,524件 →1,105,407件(+35.55%)
少年事件      153,128件 →   52,765件(▲65.54%)
合計      4,059,783件 →3,360,756件(▲17.22%)
※合計は、全裁判所に持ち込まれる全新受件数である。

 裁判所に持ち込まれる件数が、10年前と比較して約2割弱も減少している客観的データがあり、そしてここ10年で弁護士数が1万人以上増加している現状がある。

 単純に、裁判所全新受件数を当時の弁護士数に割り当ててみると、10年前の弁護士数は約30,000人、令和2年の弁護士数は約42,000人なので、
 平成24年:4,059,783÷30,000≑135.33(件)
 令和2年 :3,360,756÷42,000≑80.02(件)

 つまり裁判所に持ち込まれる事件数を弁護士数で割ってみた数値は10年前と比較してなんと40.87%も減少している。

 客観的データがあるにも関わらず、検証本部の取りまとめは、弁護士の裁判関係の業務量に大きな変化は見られないと断言しているのだ。

 少なくとも裁判所データブックのような客観的データがありながら、その評価として、弁護士の裁判関係業務量に変化がないと断言する奴は、客観的に見て、データを理解できない阿呆か、ある方向の結論を出すため偏向しているとしか言いようがないことは、ご理解頂けるだろう。

 検証本部で真剣に議論された先生方には、大変ご苦労なさったと思われるが、本部のとりまとめがこのような欺瞞に満ちた内容になるのでは、何のために時間と労力を費やしたのかと徒労感も大きいところだろう。

 検証本部のとりまとめを行う立場の委員に申し上げる。
 偏向するな!

日弁連会長選挙が始まる

 日弁連会長選挙は2年に一度行われる。

 今年の立候補者は、1月6日18:00時点では、日弁連のHPに告示されてはいないようだが、少なくとも50音順で以下の3氏の立候補は確実だと思われる。

 及川智志氏
 小林元治氏
 髙中正彦氏

 私は大阪弁護士会内においても会派に何ら所属しておらず、妖しい裏の事情などさっぱり分からないので、あくまで素人目から見た三者の感想である。

 及川智志氏は、前回に引き続き再度の立候補である。東京・大阪等の大弁護士会の派閥の力を全く使わず、独自の活動で今までの大弁護士会の主流派優先ですすめられてきた弁護士会運営に疑問を投げかける。
 私は及川氏とは、宇都宮氏が日弁連会長であったときに開催された、法曹人口問題政策会議(だったかな?)のメンバーとして面識を得ている。熱く真っ直ぐな人で、権威を恐れず直球で勝負する方である。ご自身の名誉など全く考慮外で、弁護士を職業として維持して行くためにどうすべきかを真剣に考えておられた。市民目線を言われることから生じる、ちょっと左がかっているかもしれないという周囲の偏見・思い込みを打破できれば、若さは武器でもあるし、面白いかもしれない。

 小林元治氏は、賛同者を見ると日弁連元会長や大阪弁護士会の元会長などの有力者が名前を連ね、主流派からの候補者であろうと思われる。前回の日弁連会長選挙前にも政策団体を立ち上げるなどして立候補の予定を窺わせる行動を取っていたが途中で立候補しない方針に変更したと聞いた記憶がある。まあ主流派の中でいろいろな駆け引きなどがあり、前回は我慢したので今回こそは当選させてもらうという意向なのだろう。1月4日時点の賛同者は4000名を超えると、同陣営(政策団体)から送られてきたFAXには記載がある。
 残念ながら私は小林元治氏とは多分面識はない。しかし、有力者の多さから見て、主流派候補の本流ではないかと考えられる。おそらくは今回の選挙の本命と目されている方だろう。

 高中正彦氏の賛同者にも、日弁連元会長や大阪弁護士会の元会長などが名前を連ねているようであり、主流派の流れを汲むのかとも思われるが、有力者の名前が少なく感じられることから考えて、主流派の本流ではないのかもしれない。しかし、1月4日時点の賛同者は3300名を超えると、同陣営(政策団体)から送られてきたFAXには記載がある。
 ずいぶん前だが、元大阪弁護士会会長から日弁連会長も務めた中本和洋先生のご紹介で高中氏とお話ししたことがあるが、気さくで話がとても面白いお方だった。確か法曹人口政策会議にも出ておられたと記憶するが、法曹人口問題は当時の主流派と同じ意見であり、合格者減員を言わなくっても・・・という感じだったような記憶がある。

 仮に主流派が、まとまりきれずに小林氏(本命)と高中氏(対抗)に分裂しているのであれば、及川氏(大穴)が割って入る事態も起こりうるかもしれず、そこそこ面白い選挙戦になるかもしれない。

 日弁連の政策は、会長が誰になるかによって大きく変わりうる。だから、各弁護士の一票は大事なのである。

 仮にボスから投票先を命令されても、秘密投票なので、投票時に面従腹背は可能である。そもそも投票先を命令するボスなど部下の意思を無視している危険なボスかもしれないし、そのようなボスがあなたの未来を必ず守ってくれるとは限らないだろう。

 もちろん私は、イソ弁である永井君に、投票先の指示などしたことはない。

新人弁護士(の多く)は、大阪弁護士会をなめるな

 先日の常議員会から、新規登録弁護士研修について増加する未履修者に対して、どのような対策を取るかべきかが討議されている。

 大阪弁護士会の新規登録弁護士研修は、下記の通り会則で新規登録弁護士に対し、1年以内に履修する義務が課されている研修である。

(研修履修義務)
第十一条 弁護士である会員は、継続して研修を履修しなければならない。
2 本会に入会した弁護士である会員で、入会前に通算一年以上の弁護士経験を有しない者は、前項に定める研修のほか、新規登録弁護士研修を履修しなければならない。
(中略)
5 弁護士である会員と同一の法律事務所で執務する弁護士である会員及び弁護士である会員を雇用し、又は社員とする弁護士法人である会員は、第一項及び第二項の規定による研修を履修するよう指導し、協力しなければならない。

 このように、新規登録弁護士研修の履修は、大阪弁護士会の会則で定められた新規登録弁護士が果たすべき義務である。
 そして、下記の通り、会則違反については、懲戒事由にもなりうるものである。

(懲戒委員会)
第七十七条 懲戒委員会は、会員が、法又は連合会若しくは本会の会則、会規若しくは規則に違反し、本会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行のあった場合において、本会の請求により、会員の懲戒に関し、必要な審査をする。

 さらにいえば、大阪弁護士会に入会する際に、入会申込者はもれなく誓約書を提出するが、その誓約書には
「私は、弁護士法、日本弁護士連合会及び大阪弁護士会の会則その他諸規定を遵守し、弁護士の社会的使命を自覚して誠実に職務を遂行することを誓約いたします。」
 と不動文字で明記され、署名押印する書式になっている。

 つまり、新規登録弁護士研修は、大阪弁護士会の会則で定められた義務であり、大阪弁護士会に入会する者は、その義務を私は必ず果たしますと誓約書を提出して、自ら誓約した上で、大阪弁護士会に入会しているのである。

 以前の常議員会で、近時は新規登録弁護士研修に未履修者が多くなっていると聞かされており、多くても2~3割くらいの未履修率かなぁ・・・と呑気なことを考えていた私であったが、配布された未履修者数一覧の資料を見ると、驚愕の数字が並んでいた。

 最近5年の新規登録弁護士の未履修者割合は、
 69期 48.9%
 70期 56.1%
 71期 73.7%
 72期 78.8%
 73期 92.8%

 

 繰り返すが、これは未履修者の割合である。
 会則を守っていない新人弁護士の割合である。

 73期に関しては、一斉登録から遅れて登録した人もいるだろうから、もう少し減る可能性もあるが、多くの者は登録後1年以上経過しているから、本来新規登録弁護士研修を終えていなくてはならないはずなのだ。

 この数字は、もはや、多くの新人弁護士が、会則で定められ、かつ、自ら守ると誓約した義務すら果たさなくても平気だ、と考えていると評価されても仕方がないだろう。
 裏を返せば、大阪弁護士会は、多くの未履修新規登録弁護士達に完全になめられきっていると言っても過言ではないのかもしれない。

 新規登録弁護士研修といえども、講師は一流の実務家だ。受講する価値は十分にある研修であると思う。
 それに、自ら誓約した義務を果たさない(しかも会則違反の)行動は、場合によれば、「秩序または信用を害する行動」、「品位を害する行動」であると評価されるリスクもある。
 弁護士会に懲戒の端緒を与えるような行動は、今後の弁護士活動に際しても非常に危険だ。合わせ技一本で懲戒される可能性もゼロとはいえないのだ。

 なにより、会則を守ると誓約のうえで入会申込をして、大阪弁護士会に入ったのではなかったのか。

 新規登録弁護士研修未履修の方は、大阪弁護士会が、今は黙っているからといって、舐めてはいけない。

弁護士業務実態報告書2020から~8

☆隣接士業等資格保有者との関係(無回答を除く)

~弁護士はどの士業と協力関係を多く持っているか?

(1)外国法事務弁護士
・紹介、被紹介実績あり       2.0%
・紹介可能、被紹介可能者がいる    7.2%
・いない             80.1%

(2)外国弁護士
・紹介、被紹介実績あり       3.3%
・紹介可能、被紹介可能者がいる    5.5%
・いない             80.6%

(3)弁理士
・紹介、被紹介実績あり       6.1%
・紹介可能、被紹介可能者がいる   17.6%
・いない             66.3%

(4)税理士
・紹介、被紹介実績あり      38.7%
・紹介可能、被紹介可能者がいる   31.5%
・いない             25.6%

(5)公認会計士
・紹介、被紹介実績あり      12.6%
・紹介可能、被紹介可能者がいる   29.8%
・いない             48.5%

(6)司法書士
・紹介、被紹介実績あり      38.8%
・紹介可能、被紹介可能者がいる   30.5%
・いない             25.6%

(7)行政書士
・紹介、被紹介実績あり      14.5%
・紹介可能、被紹介可能者がいる   24.9%
・いない             51.3%

(8)社会保険労務士
・紹介、被紹介実績あり      12.0%
・紹介可能、被紹介可能者がいる   28.2%
・いない             50.6%

(9)不動産鑑定士
・紹介、被紹介実績あり       5.8%
・紹介可能、被紹介可能者がいる   24.2%
・いない             60.9%

(10)土地家屋調査士
・紹介、被紹介実績あり       7.0%
・紹介可能、被紹介可能者がいる   24.7%
・いない             59.5%

(11)中小企業診断士
・紹介、被紹介実績あり       1.8%
・紹介可能、被紹介可能者がいる    9.8%
・いない             78.1%

(12)社会福祉士
・紹介、被紹介実績あり       5.9%
・紹介可能、被紹介可能者がいる   12.7%
・いない             71.5%

※業務(仕事)を紹介したり紹介されたりする実績ありと回答された士業は、税理士及び司法書士が高い割合を占めている。また業務紹介も紹介されることも可能な人がいる割合も税理士・司法書士が高い割合を示している。

※相続に関連する相続税の問題や、不動産に関連して登記の問題が不可避となる場合もあることから、税理士、司法書士の知り合いを開拓しておくことは弁護士としても有益であると思われる。

弁護士業務実態報告書2020から~7

非経営者弁護士の自己自身案件の受任体系
(経営者でない弁護士は自己事件を受任出来るか、できるとしてどのような形態なのか?)

☆全体の傾向


 ・引受け可、収入は全て自分のものとなる 32.7%
 ・引受け可、一部事務所に納入      51.1%
 ・引受け不可、事務所等受任の上で担当   6.8%
 ・引受け不可                2.7%
 ・その他                  5.3%
 ・分からない                1.2%
 ・無回答                 0.2%

※ 事務所宛に依頼が来たわけではなく、その弁護士に直接依頼したいという依頼者が来た場合に、その依頼者の事件を事務所とは関係なく自分の事件として受任して処理して良いかという問題である。

※ 経営者弁護士からすれば、経営者でない弁護士は事務所の賃料や事務員の給与など事務所を維持する経費を負担していないことから、自己事件を受任することを認めるか、認めるとしてもどういう条件を課すかが問題となる。

※ 全体の傾向としては、2010年調査時と比較して、自己事件引受け可能で収入は全て非経営者弁護士のものとなる形態の割合が41.8%→32.7%とほぼ10%ダウンしている。

※ また、引受け可能であっても、一部を事務所に納入する形態の割合は2010年調査時と比較して42.9%→51.1%となっている。

※ 以上から、非経営者弁護士が事務所経費を負担せずに自己事件を行える割合が減少し、非経営者弁護士が自己事件を行う場合に収益の一部を事務所に納入させる割合が増加していることになる。

※ 経営者弁護士の経営が余裕たっぷりなら、非経営者弁護士に自己事件をさせてその収益が事務所に入らず非経営者弁護士の収入となっても、経営に大きな問題とならないであろうことから考えると、経営者弁護士の事務所経営に余裕が失われつつある傾向にあると見てよいであろう。

☆地域による傾向


※ 引受け可、収入は全て自己(要するに非経営者弁護士にとっては、事務所経費を負担せずに自分で事件を取ってきて処理できるという恵まれた環境~いわゆるノキ弁は除く)の割合は、高裁不所在地が他の地域よりも低い。したがって、誤解を恐れずにわかりやすく言えば自己事件に関して言えば、田舎の方に行けば行くだけ、非経営者弁護士にとって恵まれた環境になりにくいともいえる。

☆期別の傾向


※ 自己事件引受け可、全て自己収入となる割合は、期が若くなるほど減少する傾向に見える。また、自己事件引受け不可(事務所等受任の上担当、引受け不可)の割合は、60期以降に見られ期が若くなるほど自己事件引受け不可の割合が高くなる。特に完全に引受け不可の割合は、70期以降では9.0%(事務所等受任の上担当も含めれば16.7%)にものぼる。つまり、弁護士としての経験が浅いほど、自己事件を自分で受任して自分の収入とすることが許されなくなってきている70期以降では6人に1人は自己事件が引き受けられない状況傾向にあるといえる。

※ 上記の傾向はおそらく、大規模に広告を打って全国展開している弁護士法人の勤務者が若手に多いことも影響していると思われるが、経営者弁護士からみれば、仮に自己事件をやらせて失敗すれば事務所の名前にも傷がつくので、経験の浅い弁護士の処理能力に不安を覚えて自己事件を受任させていない可能性も考えられる。

☆性別による傾向


 男女の間で大きな差は見られないようである。

弁護士業務実態報告書2020から~5

(各事務所の経営者弁護士の数は?)

☆全体の傾向

・1名          45.4%
・2名           15.4%
・3~5名         18.5%
・6~9名          6.9%
・10~19名        5.9%
・20名以上         5.8%
・無回答          2.1%

※2010年調査では経営者弁護士1名の事務所割合は59.1%であったことから、複数人による経営が進んでいる。

☆地域による傾向

※東京の経営者弁護士1名事務所の割合は39.8%で、東京地域の中では最も多い割合だが、他の地域と比較すれば低い。東京での複数人による経営の傾向は進んでいる。また、2010年調査では、東京の経営者弁護士1名の事務所割合は48.8%であったが、さらに複数人での経営傾向が進んでいる。なお、東京では経営者弁護士数6名以上の事務所割合が他の地域よりも高くなっている。
※大阪・愛知においても、経営者弁護士が1名の事務所は41.2%で同地域内ではもっとも比率が高い。2010年調査では60.2%であったことと比較すれば、急速に複数人経営の事務所が増加していることになる。
※高裁所在地、高裁不所在地でも経営者弁護士数が1名の事務所はそれぞれ50%強と最も多い割合であるが、2010年調査ではそれぞれ69.8%、72.4%だったので、やはり急速に複数人経営の事務所が増加していることになる。

いずれの地域でも経営者弁護士の複数化が急速に進行中である。その原因は分析されていないが、私見では、経営環境の悪化から固定費のリスクを分散する必要性が高くなってきたこと、広告等により大規模に集客する弁護士法人の全国展開などが理由ではないかと考えられる。

☆期別による傾向

※70期以降の弁護士が所属している事務所のうち、17.7%が経営者弁護士数20名以上、9.2%が経営者弁護士数10~19名以上であり、70期以降の弁護士のうち1/4以上が経営者弁護士が多い大規模事務所に所属していることが分かる。

→経営者弁護士が多い事務所は一般的に大規模事務所であり、70期以降の弁護士は大規模事務所に所属する傾向が強いということである。おそらく大規模に広告を行って集客する全国展開中の弁護士法人等が、集めた事件を処理するために多くの若手弁護士を吸収しているのではないかと考えられる(私見)。

☆性別による傾向

※経営者弁護士数の観点から、男女の比較を行うと、経営者1名の事務所に所属する男性弁護士は46.7%、女性弁護士39.7%、経営者2名の事務所に所属する男性弁護士は14.5%、女性弁護士20.0%、であり、女性弁護士の方が経営者2名の事務所に所属している傾向が強い。その他の形態の事務所では、男女比率に大差がない。

→私見であるが、男性比率が高い職業であることから、男性経営者弁護士1人の事務所が多いと考えられることから、経営者側としても参加者側としても、異性弁護士と1対1になる状況を避ける傾向があるのではなかろうか。

(続く)

弁護士業務実態報告書2020から~4

(事務所に所属する弁護士数はどのくらいか?)

☆全体の傾向


・ 1名          21.7%
・ 2名           16.6%
・ 3~5名         24.5%
・ 6~9名         13.7%
・ 10~19名        8.4%
・ 20名以上        13.6%
・ 無回答           1.5%

※2010年調査では、弁護士1名事務所の割合が全体で34.1%であり、所属弁護士1名の事務所が激減(34.1%→21.7%)している。
※2010年調査では、弁護士数6~9名の事務所の割合が8.4%であり、所属弁護士6~9名の事務所の割合が大きく増加(8.4%→13.7%)している。

☆地域による傾向

※東京では、
 所属弁護士1名の事務所が2010年調査時には26.2%あったが、2019年調査では17.4%と大きく減少している。
 その反面、
 弁護士数6~9名の事務所は11.4%→15.3%、
 弁護士数20名以上の事務所は18.0%→21.8%に増加している。
※大阪・愛知でも
 所属弁護士1名の事務所は2010年と比較して34.1%→20.6%に大きく減少。
 弁護士数10~19名の事務所は4.7%→8.3%、
 弁護士数20名以上の事務所は5.1%→13.6%に大幅増加。
※高裁所在地では、
 所属弁護士1名の事務所が39.8%→25.7%と減少
 所属弁護士3~5名の事務所は28.1%→36.2%、
 所属弁護士数6~9名の事務所も6.3%→9.9%に増加
※高裁不所在地では、
 所属弁護士1名の事務所が45.7%→27.8%に減少
 所属弁護士6~9名の事務所が4.9%→11.9%
 所属弁護士数10~19名の事務所2.4%→6.0%
 所属弁護士数20名以上の事務所 0.5%→3.4%と増加

以上から、どの地域も、弁護士1人の事務所は減少し、複数の弁護士が所属する事務所、大規模事務所が増加する傾向にある。都会になるほどその傾向は強いと考えられる。

☆期別による傾向

・70期以降の弁護士では、所属弁護士数20名以上の事務所に所属する割合がもっとも高く28.4%、、10~19名の弁護士が所属する事務所に所属する弁護士も含めるとほぼ半数に及ぶ。
・66~69期の弁護士では、弁護士数3~5名の事務所に所属している割合が30.7%で最も高い。次いで、弁護士数20名以上の事務所に所属している割合が19.7%で高くなっている。
・50期以降の弁護士は、概ね66~69期の弁護士の傾向に近い。

※複数弁護士の所属する法律事務所の増加、法律事務所の大規模化傾向に加え、若手弁護士が大規模事務所に多く所属していることが分かる。


 背景には売上の伸び悩みから経費負担リスクの分散の必要性が生じてきたこと、広告等を行い大量に事件を集める全国型弁護士法人が、集めた事件を処理する為に多くの若手弁護士を採用している可能性があるのではないかと思われる(私見)。

☆性別による傾向

※男女別に見ると、所属弁護士数1名の事務所に所属している女性弁護士の割合は男性の約半分の割合(♂23.4%、♀12.8%)となっており、弁護士が1人で事務所を開設する際に女性の割合が少ない傾向が顕著といえそうである。
 一方、弁護士数10~19名、20名以上の事務所に所属する弁護士の男女別の割合はほとんど差がみられない。


 以上から、1人で事務所を開設する弁護士は男性が多い傾向にあると考えられる。

(続く)

弁護士業務実態報告書2020から~3

(事務所の経営形態はどのような傾向にあるか?)

☆全体の傾向
・1名の弁護士のみが経営に携わる事務所  42.2%
・複数の弁護士が経営に携わる事務所     44.4%
・法人経営の事務所             12.7%
・その他                  0.7%

※2010年との比較では法人経営の事務所5.6%→12.7%と倍増している
※2010年との比較では複数人が経営する事務所が増加傾向にある。

☆地域による傾向
※高裁不所在地の比較データしかないが、2010年との比較で
 個人経営事務所が68.0%→47.3%(減少)
 共同経営事務所が23.3%→37.4%(増加)
 法人経営事務所が 7.3%→14.9%(増加)
※ 全国に支店を持つ弁護士法人の増加が関連しているのではないかとの指摘。

☆期別による傾向(法人経営の事務所に所属する割合)
・70期以降    31.9%
・66期~69期  19.7%
・60期~65期  13.2%
・54期以前     7.0%未満

※法人経営形態の事務所で期の若い弁護士が多く活動する傾向がある。

※全国に支店を持つ弁護士法人が、TVCM等を利用して顧客を集め,その事件処理のために期の若い弁護士を多く採用している可能性が考えられる(私見)。

☆性別による傾向
(男性)
・1名の弁護士のみが経営に携わる事務所  43.6%
・複数の弁護士が経営に携わる事務所     42.4%
・法人経営の事務所             13.2%
・その他                  0.8%
(女性)
・1名の弁護士のみが経営に携わる事務所  35.7%
・複数の弁護士が経営に携わる事務所     53.8%
・法人経営の事務所             10.2%
・その他                  0.3%
※複数弁護士が経営に携わる事務所に女性弁護士が所属する割合が高い。この傾向は2010年調査時も同様であるとのこと。
※2010年調査時での法人経営の事務所に所属する弁護士比率は男性・女性とも5.5%であったことと比較すると、法人経営に所属する弁護士の割合が大きく増加しているといえる。

(続く)

弁護士業務実態報告書2020から~2

(弁護士はどんな場所で働いているのか?)

☆全体の傾向
 ・ひまわり基金法律事務所       0.3%
 ・都市型公設事務所          0.4%
 ・法テラス法律事務所         0.7%
 ・企業                7.6%
 ・官庁・自治体             0.3%
 ・外国法共同事業事務所         0.9%
 ・それ以外の一般的な法律事務所    89.3%
 ・その他                0.5%
 ・無回答                0.1%

※10年前と比較すると、企業内弁護士が1.8%→7.6%と増加していることが注目されるが、企業と官庁・自治体を併せても1割に満たないことから、弁護士の働く環境が多様な広がりを見せているとまではいえない。

☆地域による傾向
 東京では、一般的な法律事務所に勤務する弁護士は83.8%(全体と比して5.5%低い。)、企業に勤務する弁護士は12.8%(全体と比して5.2%高い)となっており、東京の弁護士にとっては、企業で弁護士として活動する領域が広がっている。
 しかし、それ以外の地域では、一般的な法律事務所で勤務する弁護士がほぼ94%であり、東京以外では弁護士の活動領域が拡大しているとはいえない。

☆性別による傾向
 女性弁護士が企業内弁護士として活動する割合が14.2%となっており、男性が企業内弁護士として活動する割合6.1%と比較して、女性弁護士が企業内弁護士となる傾向が男性よりも相当高いと見られる。
 官庁・自治体で弁護士として活動する割合も、男性0.3%に対して、女性0.5%となっており、女性弁護士の方が官庁・自治体に所属する比率が高い
 登録間もない弁護士が企業等で活躍する傾向にあることを合わせ考えると、女性の場合出産等のために休業が取りやすい活動先が選択されている可能性が高い(裏を返せば、一般法律事務所では出産等のための休業等を取りにくい可能性があるのかもしれない)。

(続く)