現実はどうか?

 日弁連が、法曹人口に関する提言を理事会決議で決議して、公表してしまったことで、法曹人口問題は一応収束してきたのではないかという考えをお持ちの方もおられるでしょう。

 しかし法曹人口問題は、現実には何らの解決もされておりません。今年は1000人規模の失格者(法科大学院を卒業しても、新司法試験に合格できずに終わる方)が出るのではないかという意見もあるようです。

 先日、以前このブログでも紹介しましたが、「司法の崩壊」を書かれた、河井克行衆議院議員のブログを拝見しました。(法曹人口問題について深刻な問題意識をお持ちの数少ない議員の方です。)

 河井議員のブログ「あらいぐまのつぶやき」によると、「法曹養成と法曹人口を考える国会議員の会」が結成され、3月19日に第1回勉強会、3月26日に第2回勉強会が行われたそうです。(第3回の勉強会についての記事はまだ掲載されていません。)

 その勉強会の内容はかなり凄いので、法曹人口問題について興味のある方は、是非河井議員のブログをご覧になって頂きたいと思います。

 ちなみに、第1回勉強会での参加された議員の共通認識は、次のようなものだそうです(以下、河井議員のブログから引用)。

① 旧試験時代と比べて法科大学院修了生の「質」は確実に下がってしまった。これは法曹の質量ともに向上すると約束した当初の理念が裏切られたことであり、結果として無駄な予算が法科大学院関連に垂れ流しになっている、

② 三千人増員を推進する前に、日本社会に本当にそれだけの法曹人口が必要なのか、需要の検証を立ち止まってしっかりと行うべきである、

③ 「質」が伴っていないのに数ありきの発想で新司法試験合格者数が年々増やされているのは国家と国民の利益を著しく損なっている、

④ 法科大学院に通える経済的な余裕がある層(無理して資金を工面している人の負担も大変です)しか新司法試験を受けられない現行の仕組みは社会の実情に合っていない。予備試験を充実させ幅広い多様な人材が法曹を目指せるよう抜本的な対策を講ずるべきである。

⑤ 役所の説明を聞いていると、「一度始めた制度は続けるしかありません」と他人事のような言い振りである。だからこそ、政治が動かなければならない。

(引用ここまで)

 「質」の点については、実力をつける前に卒業・新司法試験・司法修習となってしまっていることもあるため、断言することはできないかもしれませんが、その他は、至極まっとうな、議論が展開されているようです。日弁連の暴走ぶりに辟易している私には、このようなまともな議論がなされていることは、微かな救いです。

 逆に言えば、このようなまともな議論が何故日弁連で出来ないのか、それが不思議でなりません。一体何故なんでしょうね?

民事法律扶助制度

 理不尽に権利を侵害された人が、裁判を起こそうとしたときに弁護士に依頼するお金がない場合があります。その場合に、いったん、弁護士費用を立て替えてくれる制度が民事法律扶助制度です。

 そもそも憲法で裁判を受ける権利が保障されていますから、その権利を保障するためにも、この制度は国民の方にとって大事なものだと思います。

 他方、政党助成法という法律があります。この法律は、議会制民主政治における政党の機能の重要性にかんがみ、国が政党に対し、政党交付金による助成を行うこととし(中略)、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とする。とされており、その目的達成のために政党には政党交付金が交付されます。

 ここで問題です。民事法律扶助制度と、政党交付金はどちらがどれだけ多く国費が投入されているのでしょうか?

 おそらく多くのかたは、民事法律扶助制度は国民みんなのために直接役立つけど、政党交付金は何となく政党と国会議員だけが得しているような気がする。

 国会議員は衆議院480人、参議院242人だから、どれだけ政党や国会議員が大事と言っても、民事法律扶助制度にも同じくらいお金が出ているのではないか、と思われるのではないでしょうか。

 ところが・・・・・・。

 国民一人あたりの負担額にしてみると、

 民事法律扶助制度  国民一人あたり年間40円(日弁連新聞による)

 政党交付金      国民一人あたり年間250円(政党助成法第7条)

 なんと政党交付金の方が6倍以上も多くの国費が支出されているのです。

 政治にはお金がかかるというのも理解は出来ますが、いくらなんでも、民事法律扶助制度の6倍以上というのはいかがなものかと思います。

 しかも政党交付金により本当にクリーンな政治が行われるようになったのであればともかく、私には、西松建設事件に象徴されるように、従前とあまり変わらない、少なくとも目立ってクリーンな政治になったのかというと疑問があるように思われます。

 国民の方の権利保護に直接役立つはずの、民事法律扶助制度に対して、政党交付金と同じくらいお金を出してもらえれば、お金がなくて裁判が出来ず、泣き寝入りする人たちも減るのではないかと思うのですが、法律を作る立場の国会議員の方の多くが、政党交付金を受ける政党に所属している現状では、簡単ではないようです。

 どっちが国民のためになるのか、考える必要があるかもしれません。

大阪弁護士会法曹人口問題PT、終了す。

 佐伯照道弁護士を座長に、活動してきた法曹人口問題PTは、残念ながら本日の会議を持って終了ということになりました。

 PTの規定には存続期間として、「目的達成まで」とあるのですが、当PTは大阪弁護士会常議員の決議を経て結成されたものではなく、大阪弁護士会現執行部(理事者)の権限で設置されているものであり、執行部がこの3月で交代する以上、存続できないのだそうです。

 ただ、大阪弁護士会で設置されている委員会等の中では、相当活発な議論がなされていたようで、担当して下さった弁護士会事務局の中川さんからは、「いろいろ意見が出て、見ていて、とても楽しいPTでした。」との感想を頂きました。

 法曹人口問題については、ますます混迷の度合いを増しており、全く解決がなされていません。私としては、この問題の重要性から、継続的に考えていく必要があると思っていますので、次期会長が就任されたら、再度法曹人口問題を考えるチームを結成して頂けるよう、要望を出してみようと思っています。 また、来年度は、常議員としての活動を通して何らかの問題提起が出来ないか考えていくつもりです。

 佐伯座長、川下事務局長、森副会長、 平川副会長、その他PTの委員を勤められた諸先生方、事務局の中川さん、本当にお世話になりました。

 いろいろ憎まれ口を叩きましたが、私のような世間知らずの意見にも真剣に対応して下さり、PTに参加されておられた先生方には本当に感謝しております。有り難うございました。

 PS

 PTの最後に、佐伯座長に御著書の「なぜ弁護士はウラを即座に見抜けるのか?」(昨日の淀屋橋駅ブックファースト店での新書売上の第6位に入っていました。)にサインをして頂きました。一言頂けませんかとお願いしたところ、佐伯先生は快く、ペンを取って書いて下さいました。

 「強力な弁護士を目指して下さい。」 

 「えっ、・・・・・・・『強力』?」(まだまだ世間知らずのS弁護士であった(笑))

 佐伯先生の仰る弁護士像を探りながら、進んでいこうと思っています。

大阪弁護士会臨時総会の議案書付録

 私の所属する法曹人口問題PT(座長 佐伯照道弁護士)は、昨年12月1日に大阪弁護士会会長に対して、

大阪弁護士会は

 1 日弁連に対して

  ① 修習修了者の徹底調査

  ② 弁護士会入会後についての追跡調査

  ③ 法科大学院・司法試験・司法修習・2回試験を通じた成績の検証等を行うことを求め、当PTが実施した会員アンケート結果を踏まえつつ、上記調査・検証結果に基づいて、次年度以降の司法試験合格者の減員を提案するべきである。

 2 政府その他の関係機関に対して

  ①当面の間、法科大学院修了者の司法試験受験回数制限(5年以内3回)を凍結すること

  ②平成23年度から実施される予備試験について、法曹になりたいという意思と能力を有しながら、法科大学院に行くことが出来ない者が法曹になる道を確保するに足りる者とすること

  ③司法修習における前記修習を復活させること

 等を求めるべきである。

 という意見書を提出しました。

 これに対し、大阪弁護士会上野会長は、

 司法修習委員会(委員長:金子武嗣弁護士)

 法曹養成・法科大学院協力センター(委員長:檜垣誠次弁護士)

 司法改革推進本部(本部長:上野勝弁護士)

 司法修習生及び弁護士の就職支援に関する特別委員会(委員長:中本和洋弁護士)

 に法曹人口問題PTの意見についてどう思うか、意見照会をかけました。

 これらの、法曹人口問題PTの意見と、上記4つの委員会・本部・センターの回答が、大阪弁護士会臨時総会議案書の付録(参考資料)としてp176~掲載されています。法曹人口問題に関して、大阪弁護士会の、どの委員会がどのような意見を持っているのかが明確に分かる内容であり、非常に参考になります。

 これも付録として捨ててしまうのはあまりにももったいないので、ぜひ大阪弁護士会の内部で、法曹人口問題について、どこがどのような意見を持っているのか把握するためにも、是非ご一読下さい。

武本先生お疲れ様でした。

 兵庫県弁護士会の会長選挙に出ておられた、弁護士武本夕香子先生から、選挙結果のご報告を頂きました。

 結果は残念なものでしたが、わずかな準備期間にもかかわらず、有効投票数のうち、ほぼ40%弱の得票を勝ち得ておられます。

 武本先生の目標は、本当に国民のためになる弁護士制度、弁護士が弁護士として誇りを持って生きていける制度、を目指すことです。会長に立候補されたのは、その実現のための手段に過ぎません。

 武本先生の姿勢は今後もゆらぐことはないでしょう。

 私も、武本先生をはじめ、諸先生方にご教示頂きながら、少しずつ前に進んでいきたいと思っております。

 武本先生、お疲れ様でした。

法曹人口倍増計画

 今年1月30日に、鳥取県弁護士会が、弁護士人口倍増宣言達成に関する会長声明を発表しました。

 鳥取県弁護士会の弁護士人口倍増宣言は、平成12年8月に宣言されたもので、わずか8年あまりで達成されたということになります。

 上記の会長声明によると、弁護士人口(不足)の問題の解決に漕ぎ着けることが出来たということのようで、いわゆる弁護士過疎と言われてきた県でも、既に弁護士は余り始めてきたことが明らかになってきたといっても良いでしょう。

 弁護士過疎と言われていた地域でも、既に弁護士人口が余り始めているということは、従来から弁護士過疎でない地域は、既に過剰状態に陥っており、その傾向が深刻化しているということです。また、今後は全国的に弁護士過剰の状態が更に深刻化するということです。

 余っているならば、この数を維持するだけ合格させれば良いだけであり、もうこれ以上(全体的にレベルダウンしているとの指摘まで受けながら)弁護士を増やす必要はないはずです。

 文科省から法科大学院関連に2007年度だけでも210億円以上(奨学金事業含む)の税金を投入するくらいなら、むしろ今後の高齢化社会を考えて、お医者さんの育成に税金を投入する方が建設的とも思えます。

 なお、鳥取県弁護士会も所属する中国地方弁護士会連合会も、すでに2007年10月に司法試験合格者削減を求める決議を行っています。会長声明を併せて読めば、「弁護士急増の政策で既に十分な弁護士が地方にも配置された、これ以上は明確に過剰だ」ということになるのでしょう。

 それにも関わらず、弁護士人口の増加ペースを現状維持で構わないという日弁連や、大阪弁護士会の一部の方々は、何を考えているのでしょうか?

週刊法律新聞の「論壇」

 昨年の、法曹人口問題に関する大阪弁護士会臨時総会の顛末について、週刊法律新聞の「論壇」に掲載されたことは、すでに、お伝えしたとおりです(2008.9.17の私のブログ参照)。

 ごく希にですが、その記事を読みたかったと仰る方もおられるので、法律新聞社の許可を頂いて、2008.9.12日付週刊法律新聞から、私の書いた「論壇」について、PDFファイルで掲載させて頂きます。

 下記のリンクから、お読みください。

 恥ずかしながら、司法試験合格直後の私の顔写真もボンヤリとですが写っています(コンタクトで、ヒゲもない頃のものです)。

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Posted by sakano at 17:19  | パーマリンク |
2009年01月09日
マニュフェスト(粗案)

 私が仮に、大阪弁護士会の会長に立候補するのであれば、第1次粗案として、次のような選挙公報用論稿を考えていました(今後の戦略もありますので、たたき台として作成したものだけを公表します)。

 選挙公報は、字数制限も厳しく、また以下は、第1次粗案であるため、私が訴えたいことのごく一部しか記載できておりませんし、内容も練れているものではありませんので、その点はご容赦ください。

 大阪弁護士会の会員の一意見として、もしも、ご参考にして頂けるのであれば幸いです。

ご挨拶

 私は、この度、○○○○の推薦を受け、平成○○年度大阪弁護士会会長に立候補致しました。私の所信の一部を申し述べ、会員の皆様のご理解と御支援を賜りたいと存じます。

1 弁護士人口問題

 弁護士激増による弁護士過剰が現実のものとなり、2回試験に合格していながら法律事務所に就職できない人の数が相当数生じる時代が到来しました。

 司法統計をみても訴訟事件は減少、破産事件も横ばい状態であり、弁護士の仕事が、弁護士数の爆発的増加に見合うだけ増加している現実もありません。

 潜在的需要があると言われ続けて、一体何年、経過してきたことでしょう。現在の訴訟の3割を占めるといわれる過払バブルが去った後、独立間もない若手の生活は成り立つのでしょうか。私の知っている若手弁護士には、現在訴訟事件がゼロであるという人もいます。仕事が無くコンビニでのバイトを考えている、と大学時代の恩師に相談した弁護士もいると伝え聞いております。もういい加減に現実を見るべき時期です。弁護士の需要は、世間で言われる程は無いのです。あれほど需要があるといった経済界が弁護士をどれだけ雇用しているのでしょうか。需要が本当にあるのであれば、弁護士の就職難が発生するはずがありません。

 法曹人口の爆発的増加は直ちに是正されなければならない問題です。増員のペースダウンだけでは、現在のペースで事態が悪化し続けるだけです。このままでは、弁護士という職業が、努力しても食えない仕事となる可能性があります。そうなれば、優秀な人材が法曹界を目指さなくなり、その結果、法曹界全体のレベルがダウンしたり、アメリカのようにアンビュランス・チェイサーや一発狙いの高額訴訟も頻発するかもしれません。その場合に、最も被害を被るのは他でもない国民の皆様です。一部マスコミや現実を知らない規制改革会議の学者は、そのような危険を全く考慮しない発言を繰り返しています。

 このような時に、現実を国民の皆様にきちんと説明できるのは弁護士会しかありません。私は、国民の皆様にきちんと事実を説明し、近弁連、日弁連とも協働して法曹人口の増加を直ちに適正規模に戻すべく活動すべきだと考えます。具体的には定例の意見公表・記者会見の制度を設けること、マスコミ報道・政治家の発言等に誤解があれば直ちに意見表明すること、併せて法科大学院の三振制度の撤廃の提言等が考えられます。

2 業務基盤の拡大・確保

 弁護士数は激増しているにも関わらず弁護士の法律事務独占は次々と後退を迫られています。そして、他士業・サービサー・信託銀行などが従来弁護士の仕事であった分野にも続々と進出してきています。

 本来、弁護士数が増加すれば、弁護士の法律事務独占はより強固になって良いはずです。オールマィティに法律を扱える弁護士が増加するのですから、他士業等を参入させる必要は減少するはずだからです。

 ところが、現実は正反対です。このような事態を招いた原因の一つは、私には、弁護士業界の広告・宣伝の軽視と他士業の弁護士法違反を摘発する姿勢の曖昧さだったのではないかと思われます。

 インターネットでは、離婚専門や相続専門を名乗る行政書士がサイトを沢山開設しています。地裁で、形式的には、本人訴訟を行わせ、送達場所は自分の事務所と指定し、傍聴席から指示を送る司法書士も何人もいます。

 どの士業がどこまでのことができるのか、本当に頼れる法律の専門家は一体誰なのか、弁護士法に違反した場合どうなるのか等について、国民の皆様に知って頂く必要がどうしてもあると思います。同時に、悪質なネット広告を行う士業と戦う必要があるでしょう。

 そのためには、広告費増大の他、地方公共団体に他士業との違いを含めた分かりやすいパンフレットを配布する等、広報に力を入れると同時に、他士業との関係に留意しつつ、弁護士法違反行為には毅然と対処する必要があります。

3 国選弁護・国選付添人の負担金

 国選弁護、国選付添人の制度は、非常に低廉な報酬しか出ませんが、弁護士(会)全体で維持すべき制度であることは当然だと思います。国選制度の報酬を増額するよう求めていくことは、弁護士会として当然継続してやるべきです。

 ところが、国選弁護・国選付添人のわずかな報酬に対して、大阪弁護士会は5%の負担金を課しています。これは、犠牲的精神で国選制度を維持されている方にとって、2重の負担だと思います。

 私は、少なくともこの国選制度に関する大阪弁護士会負担金は、国選制度に登録されていない弁護士の方々で負担する方が公平だと考え、その制度の実現に向けて努力したいと思っています。

4 会内民主制の健全化

 現在の会長・副会長職は無給であり、殆ど専従しなければならない程の激務であるそうです。これでは、会長・副会長として執行部に所属しようとする方は、極めて余裕のある方でないと現実的には無理となります。しかし、そのように経営基盤を固めるには相当の時間がかかります。若手が自らの意見を執行部に所属して実現しようと考えても事実上不可能という現状になっています。また、私の経験上、選挙になっても、会派からの動員命令で若手の負担が大きくなるばかりではなく、政策論争というより情実選挙の様相を呈しているようにすら見えます。このような時代遅れの執行部選びをしていたのでは、時代の変化について行けません。また、会派による会派内意見統制も真に会員の意見を汲み取るためにはプラスではない場合もあると思われます。

 会内民主制の健全化を図るために、若手会員の会長・副会長就任時の援助制度や、選挙期間中の事務所訪問や電話による投票依頼の制限等も考慮すべきと私は考えます。また、総会議案の秘密投票を容易にする手段も考える必要がありますし、若手会員の意見を継続的に汲み取り反映するためのPTの設置行うべきです。

5 最後に

 今の大阪弁護士会は、法曹人口問題を大きな原因として、難破しかけている船に近い状態と私には見えます。今から急いで救命具を探しても、若手の数には足りません。また運良く救命具を身につけても船が沈めば、その渦に巻き込まれ、多数が生き残れない可能性もあります。旧来のやり方で難破しかかったのですから、早急に新しい視点の船長で船を救う努力をすべきであると、私は考えます。
 

Posted by sakano at 08:00  | パーマリンク |
2009年01月14日
法曹一元について~東京弁護士会の意見書関連

 法曹人口の大幅増加を容認した、平成12年11月1日の日弁連臨時総会で、法曹人口の大幅増加を容認する最も大きな理由の一つとして、法曹一元制の実現を期した、ということがあります(日弁連臨時総会議事録参照)。

 そもそも法曹一元という言葉を、多くの方は聞かれたことはないと思いますが、今日では、「(最高裁・簡裁判事を除く)裁判官の任用方法として、法曹資格を有する法律家のうち、裁判官以外の者、とりわけ弁護士から裁判官を採用しようとするもの」を意味するとされています。

 どうして法曹一元という考えが出てきたかというと、簡単にいえば、①日頃から一般の方と最も接点が多いと考えられる弁護士が裁判官になると、社会の実情を踏まえた広い視野からの判断が出来るのではないかという期待があること、②裁判官にも実際には転勤や昇給・昇格などによる官僚的人事管理が行われているのではないかとの疑問があったこと、③英米では法曹一元的裁判官採用制度を採ってきたこと、等の理由によるそうです。そして法曹一元制は弁護士会の悲願とされてきたようです。

 法曹一元制は、一見なるほどと思わせる主張です。

 確かに裁判官よりは弁護士の方が一般人である依頼者に触れる機会は多いでしょう。また裁判官が万一出世を気にしたり、次の転勤で僻地に飛ばされる危険を考えるとすれば、思い切った判決が書けないかもしれません。
 しかし、弁護士の方とて裁判官よりも広い視野を持っているという保証はありません。また一時自分の事務所を他人にまかせ、定年後にその事務所に戻ろうとする一種の腰掛け的意識が出ることはないのかという疑問もあります。
 なにより、国民の皆様が本当に弁護士が裁判官になる方が良いとお考えなのか、という根本的な問題が解決されていません。

 現実に弁護士の仕事をやっている実感からすると、法曹一元の実現は極めて困難というしかありません。なぜなら、裁判官に任命されるには、相当優秀な弁護士でなければなりません。それも相当優秀な弁護士が争って裁判官になりたがるようなシステムでなければ、優秀な裁判官を集めることが出来ません。しかし、優秀な弁護士が今まで時間と努力を注いで築いてきた経営基盤を全て捨てて、裁判官になるとはあまり思えません。収入が減る可能性が高いばかりでなく、転勤による子供の教育の問題もあるでしょうし、裁判官をやめた後、再び経営基盤をゼロから作り直すのは相当な時間と費用がかかるはずだからです。現に、弁護士を裁判官に任官させる制度はありますが、希望者が殺到しているとは到底言えない、お寂しい状況のようです。

 本当に、現段階で法曹一元制を実現し、優秀な弁護士を裁判官にして、より国民の皆様のためになる裁判所を目指すのであれば、①一度裁判官に任官すればそれだけで老後も大丈夫な程の高額な報酬を国家が保証するか、②弁護士が普通に仕事していては到底食えない程まで増員して、食えない弁護士よりも裁判官の方がマシと多数の弁護士に思わせるしかないように思われます。

 しかし、①は予算上困難(不可能)でしょうし、②は大多数の弁護士を食えなくさせ、しかも、国民の皆様に訴訟社会の到来というい犠牲を強いる方法なので、弁護士会として目指すべき法曹一元の実現手段というべきではないでしょう。

 このような、お話をなぜしてきたかというと、日本最大の弁護士会である東京弁護士会が1月13日に法曹人口問題に関する意見書を日弁連に提出したことと関係します。東京弁護士会の、法曹人口の激増スピードを緩めるべきであるという主張は、まだ良いのですが、法曹一元を目指すならば5万人の弁護士人口が必要であると、いまだに東京弁護士会は主張しているのです。

 東京弁護士会は、本当に今のままで法曹一元を実現できると思っているのでしょうか。①の実現手段が不可能な現状で、②の状況で法曹一元が実現しても、私は意味がないように思うのです。

 意見書を作成されるために多大な時間と労力を費やされたはずですから、関係された方々には本当にお疲れ様と申しあげたいところです。

 しかし、法曹一元を導入しないのであれば、5万人の法曹人口が必要という、最大の論拠はなくなるのです。現状では実現不可能というべき法曹一元の夢ばかり見るのはもうやめて、何が一番大事かという観点から、現実の需要を見据えた法曹人口問題を論じてもらいたかったという点で、少し残念な思いが残ります。

修習生の就職難

 昨日の日弁連から届いたメールマガジンの最後の方に、ひまわり求人求職ナビの現状が載っていました。

 そこには、12月15日現在で270名もの修習生が職を求めて登録しているということが書かれています。新61期の二回試験の発表は12月16日なので、今日二回試験に合格していれば、就職できてはいないが弁護士になる資格がある方が270名も溢れることになります。仮に就職出来た方が登録を抹消をしていなかったとしても、200名以上は、ほぼ確実に就職できていないことになります。

 このように、平成19年度新司法試験合格者1850人のうち、仮に270名の就職が出来ていないとすると、約15%弱が就職できていないことになります。島根県弁護士会全体の会員数は41名ですから、島根県弁護士会7個弱分に相当する数の新人弁護士が就職できずにあぶれることになります。

 以前から何度も言ってきましたが、本当にニーズがあるのであればどの法律事務所でもどの企業でも弁護士が欲しくてたまらないはずで、修習生の就職難などあり得ません。

 弁護士のニーズが無いにもかかわらず、あるはずだと述べ続ける、経済界・学者の方々、それに増員を直ちに止めない弁護士会執行部は、一体何を考えているのでしょうか?

 かつて、日弁連で事実上、司法試験合格者3000人を容認した平成12年11月1日の日弁連臨時総会(この議事録を読むと、執行部側が強引に討議を打ち切っている様子がうかがえます)において、当時の日弁連執行部は次のように話しています。

 「いやしくも数に偏して質を軽視することがあり得ないかと。『その通りです』ということであります。」(平山副会長~当時)

 →しかし、新司法試験では受験者の平均点以下の得点でも合格できている実態があります。これを、「数に偏して質を軽視している」と言わなくてなんというのでしょうか。

「マーケットとか、需要とかそういうものが法曹人口の一つのファクターになってくるということは、これは否定できないことだと思います。」(久保井会長~当時)

 「3000人で増やしていって5万人になったら打ち切りと言うことでロースクールが承知しないんではないかという質問がありましたね。確かにそういうことを仰る意味はよく分かります。しかし大企業でも、社会の要請によって大幅に工場を削減する。だから司法試験の合格者、社会の要請が無くなって、ロースクールで養成すべき学生が無くなるといいますか、減らしていくべきだということになれば、ロースクールを縮小していくということだって、当然これはあっていいこと(後略)」(久保井会長~当時)

→修習生の就職難が明確になっている現状では、需要がないことは明白です。日弁連としては直ちに弁護士の需要がないのであるから、ロースクールの大幅縮小を提言すべきなのではないでしょうか。それをなぜやらないのでしょうか。

 その他、面白い発言はたくさんありますが、読んでいくと当時の日弁連執行部の説明と今の日弁連執行部の態度とが整合性が取れていないのではないかと思われる部分(要するに執行部が日弁連会員を騙したのではないかと思われる部分)も見受けられます。

 日弁連執行部は嘘つきだったのでしょうか?

 ちなみに、先だってご紹介させて頂いた、兵庫県弁護士会の武本夕香子先生は、この日弁連臨時総会にも出ておられ、執行部の苦し紛れの議論に対し、非常に説得的な反対意見を述べておられます。

 機会があれば、追ってご紹介したいと考えております。

天才、ついに立つ!?

 来年の兵庫県弁護士会会長選挙に、私が以前ブログ(2008.2.1 「早すぎた天才」)でご紹介した、武本夕香子先生が、立候補される決意を固められたようです。

 武本先生は、法曹人口問題に関し深い分析と正確な洞察により、従前から警鐘を鳴らされていた方です。あちこちの弁護士会、弁護士連合会などで、法曹人口激増の弊害を指摘する提言がなされていますが、武本先生の論文「法曹人口問題に関する一考察」(弁護士寺本ますみ先生のブログ

http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/ で読むことが出来ます)は、各地の法曹人口問題を研究するチームに大きな影響を与えた論文であったと思います。

 私も、武本先生にお会いしたことがあるのですが、武本先生の鋭い洞察力と論理力、類い希なる行動力には感服しました。また、「是は是、非は非」と周囲に臆せず述べることの出来る芯の強さ、それでいながら女性らしい細やかな気配りを忘れない心をお持ちでした。またきちんと納得されればご自分の立場に固執されることもない、柔軟なお考えができる方です。一度お会いされれば、きっと理解して頂けるはずです。

 現実を全く知らない学者達が中心になって日本の実情に全く沿わない司法改革の青写真を描き、日本の司法を崩壊させつつあるなか、本当に国民の皆様のためになる司法は何か、弁護士のあり方はどうかについて、武本先生は最も真剣に考え、行動している弁護士の一人であることは間違いないでしょう。

 私と武本先生は、依って立つ立場は違うかもしれませんが、目指す方向は同じだと考えています。ですから私は、一弁護士として、武本先生が立候補された暁には、是非応援させて頂きたいと思っています。

 余談になりますが、弁護士会の会長選挙はいまだに、封建的と言っていいほど、時代から遅れた選挙です。

 私が見る限りですが、弁護士会の会長になろうと思った方は、自らの所属する会派の活動・弁護士会の委員会活動を必死にこなして、会派の中で地位を高める必要があるようです。そのためには、下っ端の頃には雑事を一生懸命にこなすことも必要ですし、ある程度地位が上がっても、食事会や勉強会と銘打った宴会を開催して会派の中での支持を集めていくことも行われるようです。まあ時間をかけた買収工作に近いようなものではないかと私は思っていますが。そして、会派の中で勢力を張り巡らせてのし上がり、会派の推薦を受けて副会長を務め、その後会長候補として推薦を受けるべき者として選出されれば、一段落です。

 しかし、会派内での競争に打ち勝ってもそれだけでは会長にはなれない場合もあります。他の会派にも同じように会長を狙う方がいるかもしれず、その相手との調整も必要な場合があるからです。他の会派が会長候補を出す場合は会派同士の調整があるようですが、調整しきれない場合は選挙になることが多いようです。

 その選挙がこれまたひどい情実選挙であること、選挙終盤には全候補者がこぞって「大苦戦」と表明して票をねだる情けな~い行動に出ることは、以前のブログ(2008.1.29など)で少し触れました。

 更に日弁連の会長まで狙う方は、現在の日弁連執行部の機嫌を損ねないように、日弁連執行部に対してごまをすりつづける必要があるようです。

 私は、「もうそんなことをやっている場合じゃない!弁護士激増による大変な時代が来ているのだ。もう、いい加減に自らの栄達ではなく、弁護士全体のことを考えなければならない時だ!今からでも遅いくらいじゃないか!!」と思うのですが、こんな簡単な現実が、今まで通りのやり方で会長の椅子を狙っている方にはどうも理解できていないようなので困ります。

 何度も言いますが、どんな名医でも死んでしまった人を生き返らせることは出来ません。生きているうちに、手遅れにならないうちに、治療しないと、後悔しても間に合いません。

平成20年度秋期司法特別演習B懇親会

 私が、関西学院大学法学部で担当している演習の参加者で懇親会が開かれました。

 演習参加者のうち数人の方は用事のため欠席ということになりましたが、普段の演習ではなかなか分からない学生の思いがけない一面などが、かいま見え、とても楽しい時間を過ごすことが出来ました。

 以前も書きましたが、学生時代の友人は本当に大きな財産になります。今回の懇親会と演習での出会いを大切にしていってくれればと思っています。

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~平成20年度秋期司法特別演習B懇親会(写真提供 山本和樹君)~