週刊法律新聞の「論壇」

 昨年の、法曹人口問題に関する大阪弁護士会臨時総会の顛末について、週刊法律新聞の「論壇」に掲載されたことは、すでに、お伝えしたとおりです(2008.9.17の私のブログ参照)。

 ごく希にですが、その記事を読みたかったと仰る方もおられるので、法律新聞社の許可を頂いて、2008.9.12日付週刊法律新聞から、私の書いた「論壇」について、PDFファイルで掲載させて頂きます。

 下記のリンクから、お読みください。

 恥ずかしながら、司法試験合格直後の私の顔写真もボンヤリとですが写っています(コンタクトで、ヒゲもない頃のものです)。

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Posted by sakano at 17:19  | パーマリンク |
2009年01月09日
マニュフェスト(粗案)

 私が仮に、大阪弁護士会の会長に立候補するのであれば、第1次粗案として、次のような選挙公報用論稿を考えていました(今後の戦略もありますので、たたき台として作成したものだけを公表します)。

 選挙公報は、字数制限も厳しく、また以下は、第1次粗案であるため、私が訴えたいことのごく一部しか記載できておりませんし、内容も練れているものではありませんので、その点はご容赦ください。

 大阪弁護士会の会員の一意見として、もしも、ご参考にして頂けるのであれば幸いです。

ご挨拶

 私は、この度、○○○○の推薦を受け、平成○○年度大阪弁護士会会長に立候補致しました。私の所信の一部を申し述べ、会員の皆様のご理解と御支援を賜りたいと存じます。

1 弁護士人口問題

 弁護士激増による弁護士過剰が現実のものとなり、2回試験に合格していながら法律事務所に就職できない人の数が相当数生じる時代が到来しました。

 司法統計をみても訴訟事件は減少、破産事件も横ばい状態であり、弁護士の仕事が、弁護士数の爆発的増加に見合うだけ増加している現実もありません。

 潜在的需要があると言われ続けて、一体何年、経過してきたことでしょう。現在の訴訟の3割を占めるといわれる過払バブルが去った後、独立間もない若手の生活は成り立つのでしょうか。私の知っている若手弁護士には、現在訴訟事件がゼロであるという人もいます。仕事が無くコンビニでのバイトを考えている、と大学時代の恩師に相談した弁護士もいると伝え聞いております。もういい加減に現実を見るべき時期です。弁護士の需要は、世間で言われる程は無いのです。あれほど需要があるといった経済界が弁護士をどれだけ雇用しているのでしょうか。需要が本当にあるのであれば、弁護士の就職難が発生するはずがありません。

 法曹人口の爆発的増加は直ちに是正されなければならない問題です。増員のペースダウンだけでは、現在のペースで事態が悪化し続けるだけです。このままでは、弁護士という職業が、努力しても食えない仕事となる可能性があります。そうなれば、優秀な人材が法曹界を目指さなくなり、その結果、法曹界全体のレベルがダウンしたり、アメリカのようにアンビュランス・チェイサーや一発狙いの高額訴訟も頻発するかもしれません。その場合に、最も被害を被るのは他でもない国民の皆様です。一部マスコミや現実を知らない規制改革会議の学者は、そのような危険を全く考慮しない発言を繰り返しています。

 このような時に、現実を国民の皆様にきちんと説明できるのは弁護士会しかありません。私は、国民の皆様にきちんと事実を説明し、近弁連、日弁連とも協働して法曹人口の増加を直ちに適正規模に戻すべく活動すべきだと考えます。具体的には定例の意見公表・記者会見の制度を設けること、マスコミ報道・政治家の発言等に誤解があれば直ちに意見表明すること、併せて法科大学院の三振制度の撤廃の提言等が考えられます。

2 業務基盤の拡大・確保

 弁護士数は激増しているにも関わらず弁護士の法律事務独占は次々と後退を迫られています。そして、他士業・サービサー・信託銀行などが従来弁護士の仕事であった分野にも続々と進出してきています。

 本来、弁護士数が増加すれば、弁護士の法律事務独占はより強固になって良いはずです。オールマィティに法律を扱える弁護士が増加するのですから、他士業等を参入させる必要は減少するはずだからです。

 ところが、現実は正反対です。このような事態を招いた原因の一つは、私には、弁護士業界の広告・宣伝の軽視と他士業の弁護士法違反を摘発する姿勢の曖昧さだったのではないかと思われます。

 インターネットでは、離婚専門や相続専門を名乗る行政書士がサイトを沢山開設しています。地裁で、形式的には、本人訴訟を行わせ、送達場所は自分の事務所と指定し、傍聴席から指示を送る司法書士も何人もいます。

 どの士業がどこまでのことができるのか、本当に頼れる法律の専門家は一体誰なのか、弁護士法に違反した場合どうなるのか等について、国民の皆様に知って頂く必要がどうしてもあると思います。同時に、悪質なネット広告を行う士業と戦う必要があるでしょう。

 そのためには、広告費増大の他、地方公共団体に他士業との違いを含めた分かりやすいパンフレットを配布する等、広報に力を入れると同時に、他士業との関係に留意しつつ、弁護士法違反行為には毅然と対処する必要があります。

3 国選弁護・国選付添人の負担金

 国選弁護、国選付添人の制度は、非常に低廉な報酬しか出ませんが、弁護士(会)全体で維持すべき制度であることは当然だと思います。国選制度の報酬を増額するよう求めていくことは、弁護士会として当然継続してやるべきです。

 ところが、国選弁護・国選付添人のわずかな報酬に対して、大阪弁護士会は5%の負担金を課しています。これは、犠牲的精神で国選制度を維持されている方にとって、2重の負担だと思います。

 私は、少なくともこの国選制度に関する大阪弁護士会負担金は、国選制度に登録されていない弁護士の方々で負担する方が公平だと考え、その制度の実現に向けて努力したいと思っています。

4 会内民主制の健全化

 現在の会長・副会長職は無給であり、殆ど専従しなければならない程の激務であるそうです。これでは、会長・副会長として執行部に所属しようとする方は、極めて余裕のある方でないと現実的には無理となります。しかし、そのように経営基盤を固めるには相当の時間がかかります。若手が自らの意見を執行部に所属して実現しようと考えても事実上不可能という現状になっています。また、私の経験上、選挙になっても、会派からの動員命令で若手の負担が大きくなるばかりではなく、政策論争というより情実選挙の様相を呈しているようにすら見えます。このような時代遅れの執行部選びをしていたのでは、時代の変化について行けません。また、会派による会派内意見統制も真に会員の意見を汲み取るためにはプラスではない場合もあると思われます。

 会内民主制の健全化を図るために、若手会員の会長・副会長就任時の援助制度や、選挙期間中の事務所訪問や電話による投票依頼の制限等も考慮すべきと私は考えます。また、総会議案の秘密投票を容易にする手段も考える必要がありますし、若手会員の意見を継続的に汲み取り反映するためのPTの設置行うべきです。

5 最後に

 今の大阪弁護士会は、法曹人口問題を大きな原因として、難破しかけている船に近い状態と私には見えます。今から急いで救命具を探しても、若手の数には足りません。また運良く救命具を身につけても船が沈めば、その渦に巻き込まれ、多数が生き残れない可能性もあります。旧来のやり方で難破しかかったのですから、早急に新しい視点の船長で船を救う努力をすべきであると、私は考えます。
 

Posted by sakano at 08:00  | パーマリンク |
2009年01月14日
法曹一元について~東京弁護士会の意見書関連

 法曹人口の大幅増加を容認した、平成12年11月1日の日弁連臨時総会で、法曹人口の大幅増加を容認する最も大きな理由の一つとして、法曹一元制の実現を期した、ということがあります(日弁連臨時総会議事録参照)。

 そもそも法曹一元という言葉を、多くの方は聞かれたことはないと思いますが、今日では、「(最高裁・簡裁判事を除く)裁判官の任用方法として、法曹資格を有する法律家のうち、裁判官以外の者、とりわけ弁護士から裁判官を採用しようとするもの」を意味するとされています。

 どうして法曹一元という考えが出てきたかというと、簡単にいえば、①日頃から一般の方と最も接点が多いと考えられる弁護士が裁判官になると、社会の実情を踏まえた広い視野からの判断が出来るのではないかという期待があること、②裁判官にも実際には転勤や昇給・昇格などによる官僚的人事管理が行われているのではないかとの疑問があったこと、③英米では法曹一元的裁判官採用制度を採ってきたこと、等の理由によるそうです。そして法曹一元制は弁護士会の悲願とされてきたようです。

 法曹一元制は、一見なるほどと思わせる主張です。

 確かに裁判官よりは弁護士の方が一般人である依頼者に触れる機会は多いでしょう。また裁判官が万一出世を気にしたり、次の転勤で僻地に飛ばされる危険を考えるとすれば、思い切った判決が書けないかもしれません。
 しかし、弁護士の方とて裁判官よりも広い視野を持っているという保証はありません。また一時自分の事務所を他人にまかせ、定年後にその事務所に戻ろうとする一種の腰掛け的意識が出ることはないのかという疑問もあります。
 なにより、国民の皆様が本当に弁護士が裁判官になる方が良いとお考えなのか、という根本的な問題が解決されていません。

 現実に弁護士の仕事をやっている実感からすると、法曹一元の実現は極めて困難というしかありません。なぜなら、裁判官に任命されるには、相当優秀な弁護士でなければなりません。それも相当優秀な弁護士が争って裁判官になりたがるようなシステムでなければ、優秀な裁判官を集めることが出来ません。しかし、優秀な弁護士が今まで時間と努力を注いで築いてきた経営基盤を全て捨てて、裁判官になるとはあまり思えません。収入が減る可能性が高いばかりでなく、転勤による子供の教育の問題もあるでしょうし、裁判官をやめた後、再び経営基盤をゼロから作り直すのは相当な時間と費用がかかるはずだからです。現に、弁護士を裁判官に任官させる制度はありますが、希望者が殺到しているとは到底言えない、お寂しい状況のようです。

 本当に、現段階で法曹一元制を実現し、優秀な弁護士を裁判官にして、より国民の皆様のためになる裁判所を目指すのであれば、①一度裁判官に任官すればそれだけで老後も大丈夫な程の高額な報酬を国家が保証するか、②弁護士が普通に仕事していては到底食えない程まで増員して、食えない弁護士よりも裁判官の方がマシと多数の弁護士に思わせるしかないように思われます。

 しかし、①は予算上困難(不可能)でしょうし、②は大多数の弁護士を食えなくさせ、しかも、国民の皆様に訴訟社会の到来というい犠牲を強いる方法なので、弁護士会として目指すべき法曹一元の実現手段というべきではないでしょう。

 このような、お話をなぜしてきたかというと、日本最大の弁護士会である東京弁護士会が1月13日に法曹人口問題に関する意見書を日弁連に提出したことと関係します。東京弁護士会の、法曹人口の激増スピードを緩めるべきであるという主張は、まだ良いのですが、法曹一元を目指すならば5万人の弁護士人口が必要であると、いまだに東京弁護士会は主張しているのです。

 東京弁護士会は、本当に今のままで法曹一元を実現できると思っているのでしょうか。①の実現手段が不可能な現状で、②の状況で法曹一元が実現しても、私は意味がないように思うのです。

 意見書を作成されるために多大な時間と労力を費やされたはずですから、関係された方々には本当にお疲れ様と申しあげたいところです。

 しかし、法曹一元を導入しないのであれば、5万人の法曹人口が必要という、最大の論拠はなくなるのです。現状では実現不可能というべき法曹一元の夢ばかり見るのはもうやめて、何が一番大事かという観点から、現実の需要を見据えた法曹人口問題を論じてもらいたかったという点で、少し残念な思いが残ります。

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