依頼者保護給付金制度~大阪弁護士会の意見は賛成

「残念ながら」というべきか、「予想どおり」というべきか、昨日の大阪弁護士会常議員会で、依頼者保護給付金制度についての大阪弁護士会の意見は、日弁連案に賛成するという決議となった。

 私は、このブログでも対案を出しているように、依頼者保護給付金制度自体には各種の問題があり、その問題も解決できていない段階にある以上、賛成できなかった。

 執行部作成の大阪弁護士会の意見も、両手をあげて賛成という意見では、もちろんない。意見照会をかけた各委員会でかなり多く反対意見が出ていたことを踏まえて、制度運用開始前に十分検討を求め、不祥事根絶の総合的対策を具体化するよう注文を付けてはいる。
 私の見た限り反対意見の委員会の方が多かったと思うが、執行部としてはあくまで参考意見で聞いただけなので、委員会の反対意見が多かろうが、大阪弁護士会としては賛成意見を出すということなのだろう。

 しかし、制度案に問題があるのなら、制度案の訂正を求め、その問題を解決した新たな制度案をもって賛否を問うべきだし、仮にそれがダメでも、真に問題解決が重要であると考えるのであれば、問題解決を条件に賛成するという、条件付賛成の意見とするのが筋のはずだ。

 大阪弁護士会の意見は、平たくいえば、「制度には問題があるけれども、とにかく賛成する。問題点の検討だけはしておいてね。検討の結果、日弁連が問題点を改善しなくても賛成意見は変えないよ。」ということだ。日弁連が問題点を検討した結果、それを改善しない可能性があるがそれでも賛成意見は変わらないという趣旨かと、私自身が山口会長に質問して確認したのだから間違いないだろう。そこから見ても、完全に賛成ありきの意見としか私には思えなかった。

 私は60期代後半の先生数人から、若手の多くは反対しているという話も聞いていたため、執行部に対して、「若手の意見もきちんと踏まえてのことか、対外的なアピールばかり目を奪われて、弁護士会内の世代間分裂が起きたら弁護士自治など崩壊するのではないか」との指摘もさせて頂いたが、執行部が若手の方の意見に配慮している様子は、私には窺えなかった。

 もちろん私も子供ではないので、現在の日弁連会長の中本先生が大阪弁護士会所属であり、大阪弁護士会が中本会長の意向に反する意見を事実上出せないという大人の事情があることくらいは承知している。
 声に出していう人こそ少なくなったが、かつて法曹人口問題等で日弁連の脳天気な意見に反対すべきであると私が述べたときに、「日弁連に反対すると大阪弁護士会の日弁連への影響力が削がれるからダメだ。」という理由で反対する意見も聞かされたことがある。
 おそらく今回もその一環に属するものである可能性が高い。

 でも私は思うのだ。

 大阪弁護士会の日弁連への影響力って何なんだ。結局、大阪から日弁連会長を出せるかどうかだけなんじゃないのか。
 そんなにポストが大事なのか。

 大人の事情で、若手の不満を溜め込むことの方が、弁護士会内の世代間分裂を加速させ、弁護士自治の危機を招く危険性を孕んでいるような気がしてならない。

 ちなみに、常議員会の議決は、賛成33、反対8、棄権・保留5だったと記憶している。会派に縛られずに自分の意思で投票できる若手の方があと10名ほど常議員であれば、結論は変えられたかもしれない。
 

 若手弁護士の方が、数としては圧倒的に多くなってきていることを忘れて、旧態然とした会務運営を続けていると、外部からの圧力より先に内部が崩壊する危険性が高いように思うのだが。

依頼者保護給付金制度の対案

 依頼者保護給付金制度について、大阪弁護士会でもどのような意見を出すか、常議員会で検討中だ。しかし、各種の問題点が指摘されていることは間違いない。

 ツイッターでも呟いたが、そんなに問題が指摘される制度を導入しようとするなら、まず試しに小規模にやってみて問題点を洗い出した方が良い。一度制度を導入してから問題点が発覚して「やっぱり止めます」ということになった方が、日弁連の信頼をより損なう危険が高いし、制度を一旦導入した以上、撤退することは相当困難になるから、どれだけ弁護士会財政に打撃が及ぼうとも体面を気にしてずるずる撤退できずに弁護士会財政に危機をもたらすおそれもないではないからだ。

 特に私の見たところで恐縮だが、日弁連執行部の先生方は体面を気にする方が多いように見受けられるので、制度を一度導入した以上、仮にその制度に大きな問題点が発覚したとしても、少なくとも自分の任期中は撤退したくないとして、ずるずると継続してしまう危険性は極めて高いだろう。

 そこで対案だが、日弁連執行部で本制度に賛成の方々がポケットマネーでまず試行して頂くというのが最も良いのではないか。
 弁護士の多くを占める若手の多くも反対だという情報もあり、制度に反対する人も強制的に徴収される弁護士会費を財源にするのでは、不公平感や不満は溜まるばかりだ。仮に、弁護士会内部で世代間の不満が爆発すれば、日弁連は一体性を失い、弁護士自治などと言っていられなくなる可能性すらある。

 日弁連執行部は会長・副会長併せて14名だし、私の見る限り功成り名を遂げた立派な先生方ばかりなので、お一人200万円出して頂いたとしても、司法書士の有志が成年後見制度不祥事に関して準備している年間2000万円の見舞金規模を800万円も上回る規模の給付財源が生まれる(全員給付金制度に賛成していると仮定しての試算)。それに制度に賛成する過去の日弁連会長にも寄付をお願いすればもっと財源は豊かになる。

 依頼者保護給付金制度導入が日弁連の選択として正しいと信じるのであれば、問題点を指摘する人や反対する人の財布をあてにせずに、まず正しいと思う人だけでやってみればよいではないか。
 被害者にとっても、エライ先生方のポケットマネーから見舞金が出たと知れば有り難みも増すかもしれないし、なにより、依頼者保護給付金制度が当初の目的を果たさないと分かったときに、「なにぶんポケットマネーですから」ということで撤退しやすい。

 それに、自身の栄達だけではなく弁護士界全体のことをおもんばかって執行部役員に立候補した方ばかりだろうし、その中でも給付金制度に賛成した方なんだから、まさか、制度には賛成するが自分のお金は出したくはないとはいわないだろう。だから、確実に資金も集まるはずだ。
 さらに、制度を実行しようとする人達が率先して自ら動けば、若手会員の不満も解消に向かうだろうし、世代間対立の緩和にもつながる。

 なにより、万一、依頼者保護給付金制度が弁護士会全体に利益をもたらすことが想像ではなく事実の上で明確になれば、その制度導入の際には、全会員の納得も得られやすいはずだ。

 決しておかしな対案ではないと思うがどうだろうか。

依頼者保護給付金制度について~5

2.依頼者保護給付金制度の賛否~その4

N:④不良弁護士の尻ぬぐいを真っ当な弁護士がするのはおかしい、この意見は分かりますよ。横領をするような弁護士は、お金に困っているから横領しているのであって、被害弁償するだけのお金はもうありませんよね。だから、お見舞い金の出所は、きちんと真面目に会費を支払っている弁護士さんが納めた弁護士会費しかない。だけど、それは結果的には、真面目な弁護士さんはなんにも悪いことをしていないのに、悪い弁護士の尻ぬぐいをさせることになっておかしい、こういういことですよね。
O:まあそうだね。誤解を恐れずに分かりやすくいえば、君の高校で野球部が、仮に不祥事を起こしたとした場合、その不祥事に対して被害者へのお見舞い金をだすとして、そのお金を他のクラブが部費から負担しなければならないのかって問題だね。

N:う~ん。確かにこの問題は納得できませんよ。何の問題もなくクラブ活動しているクラブにもお見舞い金を負担させるのは、理屈が立たない気がします。
O:だから、反対している人もいるんだね。確かに同じ弁護士だから責任を少しでも取るべきだという意見は一見もっともらしく聞こえるかもしれない。
   しかし、「弁護士」を「ラーメン屋さん」に変えてみたらどうだろう。「新聞社」に変えてみたらどうだろう。同じくラーメン屋さんだから他のラーメン屋の不祥事の見舞金を負担しろとか、同じく新聞社だから他の新聞社の不祥事の見舞金を負担しろとかいわれても、おそらく納得はできないだろうね。

N:⑤の将来の弁護士会財政への不安とは、どういうことですか?
O:一旦このような制度を創ってしまったら、仮に不祥事がバンバン起きて日弁連からどんどんお金が出て行ってしまって、日弁連が今までやって来た人権活動もできなくなってきても、今さらやめますとは言いにくいだろう。一度作った制度をやっぱりやめますというのは、日弁連に対する信頼をより損ねる可能性があるだろうね。そして、おじさんの経験から言えば、日弁連執行部の人はええカッコしいの人が多いから、一般の弁護士がどれだけ困っていても、この制度を続ける可能性が高いと思うよ。

N:へ~。日弁連って、弁護士さんのための組織かと思ってた。日弁連が弁護士さんの足かせにもなったり、弁護士さんに辛い思いをさせる可能性があったりもするんだね。なんだか変なの。
O:それに、裁判自体が減少しているのに弁護士ばかり増やしているから、弁護士さんの収入も平均すれば、どんどん落ちて行っているのが現状さ。会費が高すぎるという不満の声も次第に大きくなってきている。

N:う~ん確かに、所得2000万円の人にとっての年間100万円は5%だけど、所得300万円の人にとっての年間100万円は、33%にもなるもんね。辛さの度合いが違って来ちゃうよね。
O:これまでのように、弁護士さんに余裕があって、日弁連の活動にお金が足りなければ会費を増額すれば簡単に解決するというような時代ではなくなっているのさ。こんなに高額な弁護士会費が必要なら、会費の安い第2日弁連とか第2大阪弁護士会とかを作っちゃった方が楽になるんじゃないかという意見すら若手から出たりしていると聞くよ。

N:そんなに大変なら、無理せずにできる範囲に絞ればいいのに。
O:そこのところが、一般の弁護士と日弁連執行部で日弁連を動かしているセンセイとの感覚の違いかもしれないね(苦笑)。

N:最後の税金の問題はどうなります?
O:依頼者保護給付金制度による支出分は、会の一般財源から拠出される。すなわち、一般の弁護士さんが汗水流して働き依頼者からいただいて得たお金から支払った、他士業に比べてきわめて高額の会費から拠出されることになると思われる。けれども、依頼者保護給付金に相当する会費相当部分は、会員には何一つ収益をもたらすものではないんだね。だから、費用収益対応原則の観点からすれば、この会費相当部分は、損金としては否認されるのではないか、という指摘があるよ。

N:う~ん、難しいですね。
O:要するに、とても簡単に言えば、依頼者保護給付金制度で日弁連からお金が出ていってもそれは経費にはならない可能性があるということのようだね。
   例えば、日弁連に10億円の収入があって、経費が5億円なら、残った儲けの分である5億円に税金が課せられる。仮に、日弁連に10億円の収入があって、経費が5億円、依頼者保護給付金で5億円支出したら、実際には日弁連には一銭も残らないはずだろう?それにも関わらず、依頼者保護給付金が損金にならないとすれば、日弁連には10億円の収入があって経費が5億円だったのと同じということになり、手元には一銭もないのに、5億円の収入があったのと同じ税金を課せられかねないということのようだ。

N:納税は国民の義務とはいえ、それはないですよね。手元に一円も残ってないのに、5億円儲けた人と同じ税金を課せられたら、やっていけませんよ~。
O:税務当局の判断もあるとは思うけど、このような税金に関する問題があると指摘する人も中にはいるのさ。

N:う~ん。確かに依頼者保護給付金制度はあった方が良いように思ったけど、いろいろ問題もあるんだね。特に弁護士さんにとってはそうだよね。
O:確かに、悪い弁護士の被害に遭われた方は本当に気の毒だ。その気持ちは、どの弁護士も変わりはないと思うよ。ただ、その被害に対して、他の善良な弁護士さんの犠牲のもとでお見舞い金を出すべきなのか、それで弁護士・弁護士会への信頼が回復するのか、よくよく考えてみないといけない問題なのさ。
   なんせ、もともと弁護士を増やして競争しろといっていた人達は、「悪い弁護士はいずれ淘汰されるからどんどん資格を与えて増員すればいい。悪い弁護士を選んでしまったことは、自己責任だ。」と無責任にいっていたのだからね。そしてその方向へ国会が制度を変えて、そういう世界を実現してしまったのだから、今後弁護士さんが困窮して不祥事が多発しても、それは最終的には国会議員を選んだ国民の責任と言えなくもない。このまま突き進むのか、過ちを認めてやり直すかも、最終的には国民の意思にかかっているんだよね。

N:そっか。そんな議論があったなんて知らなかったけど、政治を、もう少し気をつけてみておかないといけなかったんだね。
O:N君を含めた、国民の皆様がこの国の主権者なのだからね。

(この話題はこれで終わります。)

依頼者保護給付金制度について~4

2.依頼者保護給付金制度の賛否~その3

N:それじゃあ、次に、③そもそも弁護士会が損害のお見舞い金を出す法的理由がないというのはどういうことなの?
O:そもそも、この問題が出てきた背景には、成年後見人制度で後見人に就任した弁護士さんのごく一部が、預かったお金を横領したことなども背景にあるんだね。それに、弁護士会が個々の弁護士の業務を指揮命令する権限はないから、弁護士会が個々の弁護士の不祥事の尻ぬぐいをする法的な理由はないのさ。弁護士会は研修を義務づけたり、不祥事を起こした弁護士を懲戒する、苦情窓口を設置して苦情に関する対応を行う等の各種手段を通じて、弁護士を指導監督できるけれど、個々の弁護士の行っている業務そのものに関して指揮命令する権限はない。だから、個々の弁護士の不祥事に関して原則として法的責任を負わないことになる。法的責任がないのにどうしてお金を出すのか、ということが疑問とされている。

N:う~ん、後半は何となく分かる気がします。例えば、僕が弟を監督するように言われて監督していたときに弟が悪さをしたら、僕の監督も悪かったことになるんですよね。僕も責任を問われるかもしれない。でも、そうじゃないときに弟が悪さをしてもその責任を取らされたらやってられませんよね。そういうことですね。
   でも前半がよく分からないよ。成年後見人制度がどう関係するの?
O:後半の理解は大体そんなもんでいいと思うよ。
   では前半の疑問について答えようか。成年後見人制度は、とても簡単にしていえば、痴呆や病気などによって自分のことをきちんとできなくなってしまった人のために、後見人が就いてその人が不利益にならないように面倒を見て上げる制度のことだ。成年後見人には、弁護士・司法書士などの他、親族が選ばれる例も少なくはない。そして成年後見人は、家庭裁判所が任命(選任)して監督することになっている。一番多いのは親族後見人による横領だといわれているよ。

N:へ~、弁護士会が選ぶんじゃないんだね。監督するのも家庭裁判所なのかぁ。それなら弁護士会が、弁護士の成年後見人の業務を調べることもできないし、それはおかしいとか、こうしろとかも言えないんだ。
O:そのとおりさ。家庭裁判所が成年後見人を選んで任命するのだし、家庭裁判所が成年後見人を監督することになっているのだから、もし、後見人が不祥事を起こした場合は、もちろん不祥事を起こした後見人が責任を負うのは当然だけど、後見人を選んで監督しているのは家庭裁判所だから、家庭裁判所に法的責任が生じる。親族成年後見人の不祥事に家庭裁判所の責任を認めた裁判例もある。だから、選ぶこともできず監督もできない成年後見人に対して、日弁連が責任を負ういわれはないという主張にも理由はあるのさ。

N:でもでも、司法書士会は日弁連が言っているのと、似たような交付金制度を創っているって新聞に書いてなかったっけ?
O:確かにN君の言っている内容に近い記載の新聞もあるようだね。でもN君の理解は2つの点で大きく間違っている。

N:ん?どこがちがうの?
O:まず司法書士会が制度を創っているわけではなく、司法書士の中で成年後見制度を仕事にしようと希望する人達が集まって、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートセンター(以下「LS」とする。)を設立して、そこが交付金制度を創ったのさ。司法書士会が作った制度ではなく、成年後見制度をお仕事にしたい人達で創った団体が設置した制度なんだ。だから成年後見人に就いた司法書士の不祥事に限られた制度なのさ。司法書士一般の不祥事に適用される訳じゃない。

N:成年後見人として仕事をしようと思えば家庭裁判所から、成年後見人に選んでもらう必要があるんでしたね。それなら、交付金制度があるからLS所属の司法書士はまだ安心ですよっていえば、家庭裁判所は仕事をくれやすいってことですね。LSは成年後見人として仕事をしようとする人達の集まりだから、LSの仲間が不祥事を起こしたときには、自分の仕事を守るためにも交付金制度があった方が良いことになりますね。
O:そうだね。これに対して、日弁連の提案している依頼者保護給付金制度は、成年後見人の分野に限らない。弁護士が関与する分野全てに及ぶ。成年後見人として全く仕事をするつもりもない人からのお金も成年後見人の不祥事に使うことが想定されているから、自分の仕事を守るためという理由も成り立ちにくい。
   例えば、君の高校で、野球部の不祥事に備えて野球部に関係する人がお金を積立をするのは自由だし、それに文句はないだろう?
   ところが、帰宅部である君を含む野球部以外の生徒やその保護者から、野球部が不祥事を起こしたときに信頼回復のためにお金がいるのでお金を徴収します、と学校が提案してきたらどう思う?

N:そんなの、野球部の責任で、僕の責任じゃないでしょ。どうして僕がお金を出さなきゃいけないの?って怒ると思います。
O:誤解を恐れずに例えてみれば、それと同じようなことなんだね。

N:もう一つ大きく違う点があると言うことでしたけど。
O:それは制度の規模だ。

N:制度の規模?どういうことですか?
O:LSの交付金の規模は、不誠実行為による財産侵害として1名500万円、期間中(1年)2000万円までと定められている。加害司法書士1人に対して、500万円まで。1年間で、交付金が2000万円までしか出さないということになっている。

N:ん~、ということは、1月から6月までに4人ひどい司法書士がいて、500万円ずつ交付金を出したら、併せて2000万円になっちゃいますから、そこで終わりですか?7月以降の5人目の司法書士の被害者は救われないってことですか。
O:制度上はそうなるんだろうね。

N:それって、なんだか不公平な気がするなぁ。
O:財源も必要だから制度としてやむを得ない点でもある。ただ、これで安心ですよって胸を張れるレベルのものかといわれると疑問も出るかもしれない。

N:日弁連の方はどうなんですか?
O:現在執行部が検討している案は、1被害者あたり500万円を上限として、1弁護士あたりの上限額を儲けることはしない。年間給付額の上限は検討中ということで決まっていないようだよ。

N:え~っと、ちょっと待って下さいね。そうすると1人の弁護士さんが10人の被害者を出したときは、日弁連が5000万円までお金を出そうって言うんですね。100人いたら5億円ですか!もし、被害者100人の悪い弁護士さんが10人いたら、50億円になりますよ!LSの250倍規模ですよ。そんなお金良くありますね。しかも、不祥事がもっと多ければ、これで済みませんよ。すげー!
O:それを、他の善良な弁護士さんからの弁護士会費で払おうというのだから、納得しない弁護士さんも当然多くいるだろうね。弁護士会費は、単位会によっては年間100万円を超える場合もある。どの弁護士さんも一生懸命にその弁護士会費を支払っているけれど、近頃の弁護士激増で、収入が減っている弁護士さんが多くいて、弁護士会費が高すぎると批判も多く出ている。だが、弁護士会費は支払わないと懲戒処分を受けて弁護士バッジが飛ばされてしまうから、支払わないわけにはいかない。
   このような時代に、給付金制度で上限も定めず弁護士会費を使いますってことは、昔の余裕のある弁護士さんの時代ならともかく、ちょっときついところがあるだろうね。弁護士会は弁護士のための会ではないのか、という批判もあるくらいさ。

(続く)

後記:最近得た情報によれば、弁護士1人あたり2000万円を上限とする案が出されているということです。

依頼者保護給付金制度について~3

2.依頼者保護給付金制度の賛否~その2

N:②弁護士の信頼回復につながらない、という理由なんですけど、これはどういうことなんですか?
O:日弁連は、特定の弁護士の横領事件等の被害者に見舞金を出すことで、弁護士や弁護士会に対する一般の方々の信頼を維持できると主張しているんだけど、果たしてそうなのかという疑問だね。例えばN君が、(不埒な)X弁護士さんに遺産分割の話し合いを依頼したところ、X弁護士さんに横領されて、本来受け取るべきだった遺産の1億円が全てなくなってしまったとしよう。どう思う?

N:X弁護士さんには刑務所に入ってもらうのは当然として、もう弁護士なんかに頼むもんか!って思いますね。もう弁護士全体を信用できないって強く思うんじゃないですか。
O:仮に、真面目に仕事をしている優秀なA弁護士さん、B弁護士さんがいるし、殆どの弁護士さんはきちんと仕事をしてるんだけど、そのことはどう思う?

N:そんなの関係ないですよ!とにかく僕は横領されたんですよ!おじさんには悪いですけど、もう弁護士自体許せない!ってなってしまうと思います。
O:まあ、まあ、仮の話なんだから、そう興奮しないで(笑)。それに大多数の弁護士さんは真面目にきちんと仕事をしているんだから。N君の気持ちは分かるけど、きちんとした弁護士さんも含めて恨むのはちょっと筋が違うんじゃないかな。例えば、君のクラスの誰かが万引きして捕まったときに、君のクラス全員がお店から恨まれたとしたらどう思う?

N:そりゃまあ、言われてみれば、おかしいのは分かりますけど・・・・。気持ちとしてはつい、弁護士許すまじ!ってなってしまいますね。
O:それはさておき、とにかく、N君はX弁護士に横領される被害にあった、弁護士許すまじの気持ちになっているとしよう。そこに弁護士会から、「Nさん、お気の毒でした、お申し出があれば、お見舞い金500万円をお出しさせて頂きます。」と言われたらどう思うかな。

N:1億円なくなっているのに500万円で足りるはずないじゃないですか。残りの9500万円をどうしてくれるんだって言いたいです。誰が500万円で許してやるもんですか。
O:弁護士会から「そこをなんとか。真面目な弁護士も多いので、500万円でまた弁護士を信じて下さい。」とお願いされたらどうする?

N:言い方は悪くなりますが、答えは、「アホぬかせ!!」ですね。到底被害回復に足りないお金だし、悪いX弁護士を野放しにした弁護士会の責任はどうなってるんだ!って逆に問い詰めたいくらいです。
O:弁護士会にX弁護士の横領に関する責任があるかどうかは後で話すとして、おそらく、多くの方の反応は、N君と似たような反応になるんじゃないかと思うね。そうだとすると、お見舞い金を出したところで、弁護士会や弁護士に対する信頼が回復する可能性は高くはないと予想されるのさ。弁護士会や弁護士に対する信頼は、弁護士さんが悪いことをしないで、ずっと活躍し続けることで、少しずつ積み重ねていくしかないんだよ。
   そのためには、悪いことをした弁護士に対するきちんとした処分と、再発防止策を徹底することが必要になる。被害に比較して微々たるお金をお見舞いとしてお渡しすることで弁護士に対する信頼が回復する訳じゃないのさ。

N:なるほど、大事なのは不祥事を起こさないように予防することなんですね。その予防に関する対応はできているんですか?
O:残念ながら、その点に関しては、明確な新規の予防手段は日弁連からは提示されていないようだよ。実際、どんな予防手段をとってもその裏をかいたり、予防手段をかいくぐられればどうしようもない。企業の不祥事や犯罪だって同じだね。法律でいろいろ規制していても、それを踏み越えてこられたら、防ぎようがない。弁護士の不祥事全てに効果的な予防手段はおそらく存在しないと思うよ。仮に効果的な予防手段があれば、もう導入されているとは思うけど、そのようなウルトラCはないようだね。

N:公務員だって警察官だって会社だって、不祥事撲滅とか言っているけど、実際には完全に不祥事をなくすことは不可能ですよね。確かに、何もしないよりはマシかもしれないけれど、お見舞い金制度は弁護士不祥事を防ぐ手段ではないことは理解できました。

(続く)

依頼者保護給付金制度について~2

2.依頼者保護給付金制度の賛否~その1

N:でも、悪い弁護士さんの被害にあった人にお見舞いのお金を支払うのなら、良いことのように思えるのだけれど、どうして反対する人がいるの?
O:そうだね、いろいろ理由はあるけれど、①そもそも弁護士不祥事の対策にはならない、②弁護士の信頼回復につながらない、③そもそも弁護士会が損害のお見舞い金を出す法的理由がない、④不良弁護士の尻ぬぐいを真っ当な弁護士がするのはおかしい、⑤将来の弁護士会財政に対する不安、⑥税金面の問題などがあげられているようだよ。

N:ふーん。たくさん理由があるんだね。まず①はどういうことなの?
O:不祥事を起こした弁護士の被害者に、日弁連がお見舞いのお金を渡すことで、弁護士の不祥事がなくなるか、ということだね。N君はどう思う?

N:そうですね~。不祥事を起こすかどうかは弁護士さん次第ですよね。どんなに困っても不祥事を起こさない人もいれば、ギャンブルにはまって他人のお金に手を出してしまう人もいる。そうだとすれば、悪いことをしそうな弁護士に仕事をさせないようにすることが、弁護士の不祥事をなくすために必要なんじゃないですか?
O:そうだね。確かに弁護士の不祥事で被害を受けた方は本当に気の毒だ。この制度に反対している弁護士さんがその気持ちを失っている訳じゃない。でも、Nくんも気付いたように、お見舞い金を渡すこと自体では弁護士の不祥事をなくすことには直接つながらないんだね。
   また少し脱線するけど、弁護士の数が物凄く増えたことも背景にはあるだろう。裁判所に持ち込まれる事件は減少の一途だが、弁護士だけは爆発的に増加し続けているからね。TVドラマの中と違って弁護士も相当大変なのさ。背に腹は代えられないという諺もあるように、ご飯が食べらず餓死寸前の人に、目の前の預かっているパンを食べるな、といってもなかなか守れないだろう?

N:そんなこと、弁護士さんを増やそうとする前に、分からなかったことなの?
O:いや、おおよそ分かっていた事態だと思うね。法科大学院を設置して弁護士を爆発的に増やす制度を創ろうとしていたときに、そのことを指摘していた人達もいたんだよ。

N:じゃあなぜ止められなかったの?マスコミはどういっていたの?
O:マスコミは、弁護士も競争するべきだといっていたのさ。弁護士は資格に守られてのんびりしているから、弁護士もどんどん資格を与えて競争させればいい。競争すれば、悪い弁護士には誰も頼まなくなるからそれで良いんだという理屈だね。でもこの理屈は大切なことを見落としていた。

N:何を見落としていたの?競争すれば良い弁護士さんが残るんじゃないの?
O:話を分かりやすくするために、お医者さんに例えてみようか。お医者さんも資格に守られて儲けているから、実力不足でもいいので、どんどん資格を与えて増やして競争させればいい。そうすれば、藪医者には誰も頼まなくなるから、良いお医者さんが残る、といわれた時にどう思う?

N:う~ん、一見、正しそうに思うけど。お医者さんも競争した方が良いお医者さんが残るんじゃないのかなぁ。
O:ヒントを出そうか。良いお医者さんが残るためには、藪医者がはっきりしないとダメだよね。この先生、藪医者だな~と分かるためにはどういうことが必要なんだろう?

N:藪医者がはっきりするためには・・・。誤診とか医療過誤とかを何回も繰り返せば藪医者と分かりますけど・・・・・。あっそうか、藪医者が藪医者であると世間に分かるまでには、誤診とか医療過誤でひどい目に遭う人がたくさんでないといけないんだ。
O:わかるかい。医者も競争すれば良いという発想は、競争で藪医者が淘汰されるまでに被害に遭う人のことを完全に無視しているのさ。それだけじゃないぞ。お医者さんの良し悪しなんて本当に素人に分かるものだろうか。テレビに出ているから信頼できそうとか、人当たりの良い院長先生だから等という単純な基準で評価していないだろうか。

N:う~ん確かに、お蕎麦屋さんなら、すぐ美味しいかどうか分かりますが、お医者さんのホントの腕の良し悪しは、なかなか分かりませんよね。よく「様子を見ましょう」とかいわれますけど、何の病気が分からなくてそういっているのか本当に様子を見た方が良いのか、僕には分かりませんしね。
O:医療行為は専門的な事柄だから、一般人には良し悪しが判断できないことが多いのだろうね。良し悪しが判断できないのなら、競争させても、良い医者かどうかは分からないということになるね。そうなると、競争させても判断する人が分からないのだから、必ず腕の良いお医者が残るという訳でもないことは分かるだろう?

N:そうですね。何か怖くなってきた。
O:更に怖いのは、今までより基準を緩めて資格をどんどん与えるわけだから、当然質の悪いお医者さんもどんどん生まれてくることになる。つまり、一部の藪医者が淘汰されたとしても、また新しく藪医者候補がどんどん世の中に追加されてくるってことさ。そうなると、いつまで経っても良いお医者さんだけ残るということにはならないよね。

N:そうですね。医師の資格を持っている以上、その資格に見合った実力を持っていることを信頼できないと怖くて病院にも行けません。単純に競争させれば良いというものでもなかったんですね。
O:ちょっと脱線が過ぎたね。話を戻そうか。

(続く)

依頼者保護給付金制度について~1

 平成28年8月23日に朝日新聞が日弁連の「依頼者保護給付金制度」について下記のような報道をしています。
  http://www.asahi.com/articles/ASJ856QV7J85UTIL04Y.html
                                 
(抜粋はじめ)
 「成年後見人として預かった高齢者の財産を着服するなど、弁護士の不正が相次いでいることを受けて、日本弁護士連合会が被害者に見舞金を支払う制度を創設する。経営に苦しむ弁護士の増加が背景にあるとみており、「市民の信頼低下を防ぐことが急務」との考えだ。早ければ来年4月にも導入する。」(中略)

 「「依頼者保護給付金制度」は、弁護士の着服について刑事裁判の有罪判決や弁護士会による懲戒処分が出た場合、被害者に見舞金を支払う仕組み。」で
 「上限は被害者1人当たり500万円で、複数の被害者がいる場合は弁護士1人当たり2千万円を上限とする。日弁連に新設する審査会で被害者らに事情を聴いた上で支払い額を決める。」(以下略)

以下、依頼者保護給付金制度について、私なりの考えを示していこうと思う。内容が難しくなりがちなので、誤解を恐れず、対話形式でできるだけ分かりやすく単純化してお伝えできればと考えている。

1.依頼者保護給付金制度の検討状況

N:おじさん、新聞に出てた記事は本当なの?
O:日弁連が検討しているのは確かだね。そして、日弁連から、各地の弁護士会に対して、意見を求めている段階にあるよ。

N:え!新聞では、もう決まったように読めるんだけど、ホントはまだ、決まっていないの?
O:その通りだよ。日弁連ではまだ決議されていない。だからホントはまだ決まっている訳じゃないのさ。現在は、日弁連から「こんな制度はいかがでしょうか、御意見を下さい。」と各地の弁護士会に意見を求めている段階だよ。

N:え~、それなら、どうして決まってもいないことが新聞で報道されちゃったの?
O:おそらく日弁連の執行部あたりがマスコミにリークして、それが報道されているんだろうね。読売新聞なんか、もっと前から報道していたよ。多くの弁護士が、そのような制度が検討されていることを知らせてもらえず、急に報道されてびっくりした、という笑い話まであるくらいさ。
   弁護士や各地の弁護士会から反対の意見が上がるかもしれないから先手を打って、マスコミに情報を流して報道させて、反対しにくい雰囲気を作っているんじゃないかという人までいるくらいなんだ。もちろん、おじさんの加入している大阪弁護士会でもまだ意見は決まっていない。

N:ふ~ん、本当に執行部がリークしたのなら、自分達の意見を先に広めて、反対できない空気感を作って、意見を言えなくしちゃうわけだ。なんだかズルしているみたいだね。太平洋戦争を止められなかったのも、何となくみんなが反対できない空気に流されちゃったからだ、というTVのドキュメント番組も見たけど、なんだかそれみたい(笑)。
O:(苦笑)あくまで推測だから、もしそうなら、ということだよ。まあ、日弁連執行部以外に情報の出所はないだろうけどね。でも、テレビ番組の指摘にもかかわらず、日本の政治は未だ変わっていないという人もいる。ちょっと脱線しちゃうけれど、例えば、ある制度を作りたいとか維持したいときには、かたちの上では、有識者を集めて検討させるんだけど、それが茶番ということも実際には良くあるんだよ。

N:本当なの?有識者って、普通は大学教授とか、エライ人だよね。どうして茶番になるの?
O:例えば、君たちの学校は修学旅行の行き先は生徒会が、生徒会役員の多数決で決められると仮定してみようか。そしてN君が生徒会長で、どうしても、東京ディズニーランドに行きたかったとする。生徒会役員のメンバーはこれから君が決められる。君はどういうメンバーを選ぶ?

N:もちろん、いろんな意見の人を公平に・・・・といいたいところだけど、どうしてもTDLに行きたいのなら、秘かに賛成してくれる人をメンバーに入れて多数決で勝てるようにしちゃうかも・・・・。冗談ですけどね(笑)。
O:それが大人の世界では冗談じゃないのさ。例えば、法科大学院制度を維持したいと考えたときには、法科大学院制度に賛成してくれそうな有識者を中心に会議のメンバーを設定するのさ。もともと法科大学院賛成の有識者だから、そいつらがいくら会議しても、結局は法科大学院制度維持の結論しか出ない。有識者を選ぶ段階で、もう結論が出ているような会議を設定し、かたち上は「有識者の意見を聞いたところ結論はこうでした。」ということで、公平に議論したかのように装って、その方向に進めていく。有識者は公平とは限らないからね。まあ、僕も大人になってからこの残念なからくりに気付いたんだけどね・・・。

N:でもでも、賛成してくれそうで、いざ会議になったらそうじゃない人もいるよね。そんなときはどうしているの?
O:確かに、そういう場合はありうるよね。その中で思ったように賛成してくれない人がいて、会議が思った方向に行きそうにないときは、期限切れなどで一度会議を終わらせて、改めて別の会議を作る。そのときには賛成してくれなかった人は選ばれない。別の賛成してくれそうな人に変えてしまうのさ。民法改正などでも、そのような手法がとられていた、という批判もあるよ。

N:う~ん大人の世界は、きれい事では済まないと良く聞くけど、ちょっと幻滅だなぁ~。

(続く)

日弁連にひとこと言いたい。

 今年の3月11日、日弁連の臨時総会で、執行部案が大差で決議された。もちろん、総会決議があったのだから、執行部はその実現をする義務を負うことになった。

 ところが、先日、常議員会の日弁連報告で、日弁連は、司法試験合格者1500人に向けての活動を何ら行っていないことが報告された。

 3月11日の臨時総会における、執行部の議案説明における司法試験合格者1500人に関する部分を、議事録から引用すると次の通り。

伊藤茂昭副会長:(前略)・・・昨年の司法試験合格者数は1850人であり、1500人は未だ実現されていません。このような現状において日弁連が緊急に取り組まなければならないのは、人口提言にあるとおり、まず1500人の実現です。(中略)執行部としては、推進会議決定のとりまとめがなされ、法曹養成制度改革の実現を目指す新たな段階を迎えた今、年間の司法試験合格者数につきましては、まず緊急の課題として「1500人の速やかな実現を図る」というメッセージを明確に打ち出し、日弁連と全国の会員、弁護士会が一丸となって取り組むことを提案する次第であります。(後略)

 日弁連は、司法試験合格者1500人に向けて、緊急に取り組まなければならないんでしたよね。
 日弁連は、緊急の課題として、司法試験合格者1500人の速やかな実現を図るとのメッセージを明確に打ち出して、日弁連、会員、各弁護士会が一丸となって取り組むことを約束した議案だったんですよね。
 そしてその議案が総会で可決された以上、執行部はその決議に拘束されているはずなんですよね?

 で、司法試験合格者1500人に向けて取り組んでいないという日弁連執行部の現状は、説明できるんですか?
 総会決議を無視しちゃっているんじゃないですか?

 やると言った以上は、ちゃんとやって下さいよ。まさか、どうせ忘れちまうからいいだろうと、会員をなめきって提出した議案じゃないんでしょ。

 「弁護士たる者」、な~んて執行部におられるような立派な方々は、良く言いたがるように思うよね。ならば言わせてもらうけど、弁護士たる者、嘘ついたり、騙したりしちゃあ~、いかんでしょ。やると言ったならやって下さいよ。

 7月29日付けの日弁連FAXニュースでは、法曹養成制度改革実現本部とやらの報告も書いてあるけど、法曹志願者の確保を最重要課題とするとしか書いてないよね。

 司法試験合格者1500人の実現は、そっちのけで、法科大学院と組んで弁護士の仕事のやり甲斐を説明すれば、法曹志願者が増えるとの目論見で、いろいろパンフレットなど作っているようだけど、意味があるの?
 優秀な人材を法曹界に集めたいなら、仕事のやり甲斐だけでは集まらないよ。当たり前でしょ。ヘッドハンティングで、やりがいだけをエサにしても、ごく一部の特殊な方を除いて、優秀な人材を多数確保できるわけないじゃない。やり方次第で儲かるなんて理屈は、どこの世界も一緒で、弁護士資格だけの特典では全くないからね。むしろ、怪しいフランチャイズの勧誘に使われそうな理屈じゃないの。
 やりがいと転職に見合うだけのリターンを保証しないと、普通ヘッドハンティングに応募なんてないでしょ。「仕事のやり甲斐はあるけど、リターンは不透明です。あなたのやり方次第では儲かりますよ。」ってな世界に、金と時間をかけて(即ち法科大学院を経由して)まで飛び込もうって奇特な奴はほぼいないと思うよ。そんなこともわからんのかね?

 弁護士資格は、法的需要が増えてないのに弁護士激増をどんどん進めた結果、既に月刊プレジデントではブラック資格(苦労して取得しても見返りがない)と、ばっさりやられているんだけどな。

 日弁連の法曹養成制度改革実現本部とやらに参加している弁護士さんが、大阪弁護士会の部会報告で言っていたらしいけど、日弁連の実現本部は、このまま何もしなくてもこれだけ法曹志願者が減少しているので、いずれ司法試験合格者は1500人になる、と見込んでいるらしい。
 その一方で、法曹志願者を増やすために、弁護士の仕事のやり甲斐をどんどん広告していくんだそうな。

 一見なんだか矛盾しているように感じるな。

 洪水対策に向けて一丸となって取り組みます!っていうから、現在氾濫している川の洪水対策をお願いしたのに、「現在雨が止んできたので、何もしなくても、そのうち洪水は収まりますよ~。」、と言って何もやってくれない。その一方で、水不足になったら大変だからと、決壊した堤防を直すこともせずに他から洪水を起こす元凶の水をどんどん氾濫している川に導こうとしているんだから、洪水を止めようとしているのか、更に氾濫地域を増やそうとしているのかよく分からんね。

 当たり前のようにやってはいるけど、法曹志願者の増加対策まで、日弁連の責任でやるべきものなのかも疑問がないわけじゃない。法科大学院の利害関係人とかが自分でやりたくて、自腹切ってやるならいいけどさ。もし日弁連の責任と言われるのなら、個人的には、相当違和感がある。

 そもそも本当に、法科大学院の教育に価値があるのなら、法科大学院志願者・入学者が壊滅的に減少するはずがないでしょ。

 いみじくも、成仏理論を唱えた学者が、「世の中の人々のお役に立つ仕事をしている限り、世の中の人々の方が自分達を飢えさせることをしない」、って言っていたじゃない。それは嘘だったんでしょうかね?それとも法科大学院が世の中の人々のお役に立つ仕事じゃなかったことの裏返しなんでしょうかね?

 弁護士会費を、弁護士の仕事の魅力紹介なんて、無駄なことに使わんでもらいたい。

 もっと、弁護士会員は、日弁連に対して、怒ってもいいように思うけどなぁ。

3月11日の日弁連臨時総会に参加して~

※ 以下の感想は、慣れないアイパッドミニで実況中継しながら聞いていた私の記憶に基づく印象・感想であり、誤解を含んでいる可能性も否定できません。実際の質問・討論の内容については、是非議事録をご参照下さることをお薦めします。

 3月11日の臨時総会は、正直言って疲れる総会だった。

 ひとつには法科大学院出身の若手の先生方が元気よく質問、討議されている姿は、悪くはなかったが、その内容が至極残念だったからだ。

 ある若手の先生は、「隅々まで法の支配をという、司法改革の理念に賛同したから、法曹を志願した。(だから司法改革は悪くない)」と主張されていたようだが、隅々まで法の支配を、という理念を元もとお持ちだったのなら、なぜ、司法改革が唱えられる前、法科大学院制度が出来る前から、旧司法試験にチャレンジして自らの理想を実現するよう努力されていなかったのか。真に理想に燃えておられたのであれば、合格の可能性が飛躍的に高まる法科大学院制度の実現を待つ必要など無かったはずだ。

 ある若手の先生は、「自分の周りに食うに困っている若手はいない。就職に関しても、もはや売り手市場になっていると認識している。」と発言されていたようだが、一括登録時に登録できず、その後も登録できていない若手・同期の修習生の存在を完全に無視している。少し調べれば分かる事実だ。発言者は、おそらく有力法科大学院を卒業し優秀な成績で合格され、就職には何ら苦労しなかったし、発言者の友人もそうだったのかも知れない。しかし、その事実だけから自分の周囲以外の若手の就職が、今もこれからも安泰で、就職も売り手市場であり続けると断言できるはずがないだろう。そこを敢えて断言することは、プレゼン能力でもなんでもない。単なる思い込みか、強弁にすぎない。
 努力が必ず評価されるという公平な世界なら、評価されない人は努力不足なので自己責任と言われてもやむを得ない場合もあろう。しかし、人生とは不公平なもので、どんなに努力しても報われないこともある。自分は悪くなくとも、不幸な事故に巻き込まれることもある。人生の不公平さをおもんばかり、不幸にも競争に敗れた者にも敬意を払うべき場面もあるだろう。自らの現在の地位は、たまたま幸運に恵まれただけかも知れないのだから。
 しかし、発言者には、残念ながらそのような配慮は感じられなかった。

 また、ある先生は「独学時は、予備校で学び論点暗記主義で合格できなかったが、法科大学院で考え方を学んで合格できた(だから法科大学院は良い制度だ)。」と発言されていたようだが、もともと旧司法試験だって、論点暗記主義で合格できる試験ではないから、当たり前であり、旧司法試験時代でもダメだと言われていた論点暗記主義を採用し、考え方を身に付けなければならないと気付けなかった点にむしろ問題があるように思う。だから、この先生の発言は法科大学院を支持する理由にはならないように思う。

 多くの若手の先生方は、若手の質が悪いと言うなという点に触れておられたように記憶するが、志願者が減少し、受験者層が薄くなっているのだから、上位層はともかく全体的な質は当然落ちている。旧司法試験では、合格者激増の時代を除いて、東大・京大出身者でも10~15人に1人しか合格できなかった。多数の受験者がありながら合格者を殆ど排出できない大学はたくさんあった。今は、東大・京大出身者はもっと高い確率で合格しているはずだし(既に優秀な人材は法曹界を見限って他の業種を志望している可能性も高いと思うが)、かつて合格者を殆ど出せなかった大学でも合格者を相当数輩出できているはずだ。また運動競技に例えても、同じ競技で全国大会の上位30人と、県大会の上位30名を比較すれば、全体としてどちらがより成績優秀である蓋然性が高いかは明白だろう。

 最高裁が、2回試験のトンデモ答案を公表した事実や、司法試験委員の採点雑感等を読めば、年々ひどくなっていく受験生の質が明確に現れているように思われる。
 採点雑感に関する意見にも、つい数年前、司法試験に合格したからといって優秀だと思わずしっかり勉強しろという趣旨の記載もあったように記憶している。採点委員からみても、これはまずいというレベルでも合格できる試験になっていることの証左ではないだろうか。

 さらに、若手の先生だと思うが「年寄りの議論に付き合っている暇はない」
とヤジを飛ばしていた。元気なのは結構だが、あまりに目に余るヤジだった。

 発言する度胸は良いが、発言内容は、根拠なく断言する発言が多いため到底説得的とは思えず、私にはかなり残念な内容に思えた。法科大学院はプレゼン能力も身に付けさせていると言っていたような気もするが、発言する度胸を身に付けることだけでプレゼン能力を高めたと考えているとしたら、それは完全に誤っていると思った。

 私は、丙案の犠牲になったこともあり司法試験合格には苦労した。合格した際に、自分が優秀だとはもちろん思わなかった。こんな実力で合格してしまって良いのだろうか、と思った。修習時代には、他人の人生を扱う、仕事の責任の重大さに震えた。もっと勉強しなければならないと思った。そんな記憶がある。

 しかし、私が若手の先生方の発言から感じたのは、おそらく私が司法試験に合格した際に感じた感覚とは異なった印象だった。

 大変失礼な物言いになるかも知れないが、俺たちは、立派な法科大学院を卒業して司法試験に合格しているのだから、厳しいと言われている状況でも食っていけてるのだから、質が悪いと言うな。という、自らの未熟さを顧みない、ある種傲慢な感覚をお持ちのように感じられた。

 弁護士は(そしておそらく人も)いつまでたっても勉強だ。いつまでたっても未熟な存在なのだと思う。自らの未熟さを顧みることが出来ないとすれば、それは危険な兆候ではないか、と私は思う。

 私は、第2案が否決されたことを確認して会場をあとにした。
 村越会長の挨拶がホールに響いていた。
 村越会長が、若手の発言を心強く思った、という趣旨の発言をしているのが聞こえた。これを法科大学院制度の成果と言ったかどうかは聞き逃したが、とにかく結論として法科大学院を支持する内容の若手の発言を誉めている発言をされているように聞こえた。

 私は、日弁連の自動ドアをくぐりながら、背後に聞こえる、若手の発言内容を全く考察していないと思われる村越会長の発言に愕然としながら、やはり、もう日弁連はダメなんだろうな、との思いを押さえきれずにいた。

ちょっと真摯さに欠けないか、日弁連執行部~

 明日の日弁連臨時総会について、臨時総会請求者側の窓口になっている先生のところに、執行部から次の通り、申し出があったそうです。

(以下私が聞いた執行部からの申し出内容)

(1)請求者側の発言人数と時間配分

イ 提案理由の説明  1人、10分

ロ 質問       2人、1人2分

ハ 討論       5人、1人3分

(2)副議長

いつもの2名を1名追加して3名にしてもよいが、上記の発言者数と時間配分を了解することが条件である。

(申し出ここまで)

 請求者側の窓口を担当してきた先生は、上記の(1)と(2)がセットであること、提案理由の10分制限、討論の3分制限は、余りにも不合理、不適切であると答えられたようですが、この点に関する話し合いは、執行部側から打ち切られた模様です。

 果たして、どのような総会運営がなされるのか、興味深いところですが、上記のような申し出があったというのが事実なら、日弁連執行部は議案請求者及び議案請求者に賛同する方の意見を殆ど聞くつもりはないということなのだと考えざるを得ませんね。

 日弁連ニュースを使ったなりふり構わない執行部側への委任状集めもそうだけど、日弁連は会員(弁護士)の納めた会費で運営されているのですから、もう少し、会員の意見を大事にする姿勢を示すべきなんじゃないでしょうかね。

 こんなことやってるから、任意加入団体にすべきなんて意見が出てきたりするんじゃないのかなぁ。

 明日、私は、日弁連代議員会と臨時総会の双方に出席する予定です。時間の許す限り見てこようと思っています。