司法制度改革って一体・・・・

 司法試験の合格者が増えすぎて、合格者全体の質が下がった問題、OJTができなくなっているという問題、新人弁護士の就職難等を指摘すると、決まってマスコミは、司法制度改革審議会で慎重な議論を重ねて導入した司法制度改革の理念を没却するな!と噛みついてくる傾向にあるように思う。

 しかし、その司法制度改革審議会及びその後の検討会が、いい加減な議論しかしていなかったとしたら、そのいい加減な議論に基づいて出来上がった司法制度改革路線もいい加減である可能性が高いはずだ。

 まともな議論もせずに、まともな結論が出るはずがないからである。

 福井康太、大阪大学大学院法学研究科教授の10月28日のブログによると、ある大学教授の方が、詳細に資料を検討した結果、

司法制度改革審議会とその後の検討会においては、

「(司法制度改革)審議会の主要な委員が、法曹の数が増えれば社会が変わるという程度の認識で法科大学院設置の議論をしていた」

 との研究報告があったそうだ。

 http://ktfukui.cocolog-nifty.com/rechtstheorie/2011/10/201110272-4a55.html

 もしも、その報告が正しいとすれば、司法制度改革を行う者の認識として、極めて大雑把、且ついい加減としか言いようがない。

 こんな認識で、多数の法科大学院を乱立させ、多くの法曹志望者からのお金と国民からの多額の税金を投入させ、結果的に、とても実務に耐えられない卒業生を濫造した責任は一体誰がとるのだろうか。

 マスコミも、有識者が委員に入っているというだけで、安心せずに、きちんとその内容まで把握して報道してもらいたい。

 司法修習生の給費について貸与制をとりまとめた、法曹養成フォーラムでも、有識者といいながらかなり偏った意見を濫発している委員がいる。

 その偏りを分かりやすく伝えることもマスコミの役割だとは思うのだが。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

韓国の弁護士増対策

 先だっての大阪弁護士会常議員会で、中本会長から、韓国の弁護士会との情報交換についてお話があった。

 韓国では、弁護士激増をさせる司法改革が日本と同じく進行中だが、弁護士会としても手を拱いて(こまねいて)いるわけではないそうだ。

 まずロビー活動を活発に行い、経済界の反対を押し切って、商法を改正し、コンプライアンスオフィサー制度を一定以上の規模の会社に義務づけし、弁護士を会社の内部に組み込むよう強制した。

 次に、既に実現している法曹一元制度を下敷きに、ロークラーク制度として、裁判所・検察庁・国会などに配置する制度を創設しているそうだ。

 さらに、地方自治体や大きな警察署などに、護民館を設置して、弁護士を常駐させる制度も構想中だとのこと。それでも、激増する弁護士を、今後も吸収し続けることができるものではないようだ。

 確かに韓国のような制度を作れば、大きな司法は機能するかもしれない。しかしそのコストは企業や国民が負担することになる。

 このように、法化社会は公正かも知れないが高コストの社会なのだ。

 司法改革を行う前に、まずそのコストを負担する国民の合意があったのか、どうやって合意があると判断したのか、司法制度改革を実行した人達は説明する義務があるはずだ。 そして今後、その高コストを負担する合意が国民の中にあるのか、明確に説明する必要がある。

 大きな司法のコスト負担を全く無視し、弁護士だけを増やし続けている日本の司法改革は、極めて歪んだものとなっていることを認識すべきだろう。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

法曹養成フォーラムの目的は???

 先日、日弁連の会議で、法曹養成フォーラムに関する報告があった。

 私の記憶なので、確実な情報ではないかもしれないが、現在の法曹養成フォーラムは、8月31日にとりまとめをした後、次回開催期日がまだ決まっていないようだ(10/11時点)。

 法曹養成フォーラムの8月31日の第1次とりまとめは、

 ①司法修習は、法曹養成に必須の過程であり、司法修習生が修習に専念できるよう、修習生活中の生活の基盤を確保する必要があり、経済的支援を行う必要がある。

 ②貸与制を基本として、十分な資力を持たない者に対する負担軽減措置を講ずる。

 ③奨学金制度を参考に猶予期間を設ける。

 等を報告し、今後は、司法制度改革当時の想定ほど法曹の社会進出が進んでいない点や養成制度のあり方についての様々な問題点が指摘されているので、法曹の活動領域のあり方、法曹養成制度のあり方、法曹人口のあり方について意見交換をする予定とのことだ。

 しかし、8月31日にとりまとめをした後、まだ日程が決まっていないとはどういうことだ。

 そもそも、司法修習生への給費制の問題は、法曹養成制度のあり方に大きく関係する。例えば、司法修習期間に必要とされる費用と、法科大学院に必要な費用とでは明らかに、後者の額が大きいだろう。

 そして法科大学院制度の下で、きちんと教育を受けたはずの新司法試験受験生が、どうして基礎的知識不足、日本語文章作成能力の不足を痛いほど指摘されているのだ。いっちゃ悪いが、無駄な教育機関に多額の税金を投入するくらいなら、その教育機関の廃止を検討し、そこに投じられている税金を、フォーラムも必須と認めている司法修習生の給費に充てた方がよほど有効な税金の使い方ではないのだろうか。

 このように、司法修習生の給費制問題は、法曹養成制度の問題と密接に関わっている。

 ところが、フォーラムでは、その問題を切り離し、給費制問題だけのとりまとめを行ったのだ。しかも、次回期日も決まっていないと聞く。

 そもそも以前にもブログに書いたが、有識者委員の人選にしても、司法修習生の給費制より法科大学院の予算の方が遥かに大事な、法科大学院関係者が多く選出されている。この顛末を見る限り、法曹養成フォーラムは、給費制問題にケリをつけるだけの目的で、開催された出来レースと評価されても仕方がないように思う。

 今後の議論においても、法曹養成フォーラムにおいては、法科大学院制度維持を最大の目的とした議論が展開される危険が多分にある。私にいわせりゃ、制度が大事なのではない。国民の皆様にとって必要な優秀な法曹が生み出されることの方が大事なのだ。

 法科大学院関係者の自己満足的な、現状肯定的なフォーラムになっていないか、今後の議論をよく見ていく必要があるように思う。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

またしても日経新聞社説の弁護士バッシング

 日経新聞本日の朝刊の社説に、下記の通りの記述がある。

「法務分野では、司法試験の合格者増をテコに、個人や企業に質の高いサービスを提供する弁護士をもっと増やすべきだ。日弁連は合格者を減らす入り口規制で質向上をめざすと主張しているが、これはおかしい。

 多くの弁護士が切磋琢磨(せっさたくま)を重ね、質の低いサービスしかできない弁護士は淘汰される仕組みが利用者本位につながる。」

 社説のほんの短い部分なのだが、相変わらずの弁護士バッシングだ。

 まず、現在の司法試験合格者の全体としてのレベルは相当ダウンしている。これは、法務省で公開されている司法試験採点雑感等を見れば一目瞭然だ。

 最新の司法試験採点委員の雑感から、以下長くなるが引用する。

「当該事案の問題点に踏み込む姿勢が乏しく,違憲審査基準(比例原則にしても同様)を持ち出して,表面的・抽象的・観念的な記述のもとで,あらかじめ用意してある目的手段審査のパターンの範囲内で答案を作成しようとする傾向が見られる。(憲法)」

「論理的な一貫性や整合性に難点があるにとどまらず,判読自体が困難なものや文意が不明であるものも見受けられた。自覚的な文章作成能力の涵養が望まれる。(憲法)」

「選挙権という重要な権利が問題になっているので「厳格審査の基準」でその合憲性を審査するなどとするのみで,具体的な検討なく安易に違憲としている答案も多く,逆に,「選挙権は権利であると同時に公的な義務」と位置付けるだけで,安易に制限を合憲とする答案も意外に多かった。(憲法)」

「総じて,一定の視点から事案を分析・整理した上で,法令の解釈・適用を行うという法実務家に求められる基本的素養が欠如していると言わざるを得ない答案が多かったのは,残念である。(行政法)」

「問題文をきちんと読まず,設問に答えていない答案が多い。問題文の設定に対応した解答の筋書を立てることが,多くの答案では,なおできていない。(行政法)」

「実体法の解釈・適用に弱いとの傾向は,今回も見られた。(行政法)」

「「見せ金」の概念及び問題の所在を示した上で,本件事案が見せ金に該当するか否かを論じている答案は,少なかった。(商法)」

「判例・学説等を踏まえて論じた答案はごく僅かであった。また,本件募集株式発行については,見せ金を除くごく一部につき実際の払込みがあることを,本件募集株式発行により発行された株式の効力を考える上で,いかに評価するかを論じる必要がある。しかし,これを論じている答案は更に少なかった。(商法)」

「(中略)後者の責任については,そもそも論じていない答案も多く,論じても,AのほかBも責任の主体になり得るか等の問題の検討や,見せ金による払込みの効力及び株式の効力と整合的に,貸借対照表及び履歴事項全部証明書の内容を分析することが,不十分であっただけでなく,同条第2項第1号の要件を満たすから同条第1項の責任が認められると議論する等,前者の責任と後者の責任の関係を理解していないものが圧倒的であった。(商法)」

「上述の会社法第52条や第429条の責任の問題のように,基本的な会社法上の責任の構造に関する理解に不十分な面が見られる。また,判例をきちんと身に付け,それを踏まえて議論するという,法曹に求められる基本的な思考方法が十分に身に付いていない感がある。(商法)」

「前記のように,手続保障や信義則など抽象的な規範のみから結論を導く答案,題意をきちんと把握せず,定義や制度趣旨など自分の知っていることを書き連ねている答案,問題を正面から受け止めることをあえて避け,自分の知っていることに無理やり当てはめようとする答案が目立った。このような傾向が見受けられるのは,題意をきちんと把握するだけの基礎学力の不足に起因するところが多いように思われる。特に,基本的な制度や判例について,自らその意味を掘り下げて考えるという作業を怠り,定義,要件,結論を覚えて,それを具体的な事案に当てはめるということだけを学習しているのではないかが懸念される。(民訴法)」

「試験において,判例が扱っている問題について判例とは別の角度から検討を求めたり,判例に反する立場からの立論を試みることを求めたりすると,全く歯が立たない受験生が多く認められる。察するに,判例についての表面的な理解を前提に,その結論を覚えて事例に当てはめるということはできても,その判例がそのような結論に至る論拠はどこにあるか,反対説の根拠は何か,その違いはどこからくるのかといったより根本的なことが理解されていないように思われる。基本的な制度や判例の根拠をきちんと考えることを習慣づける教育が求められる。(民訴法)」

「刑法総論・各論等の基本的知識の習得や理解が不十分であること,あるいは,一応の知識・理解はあるものの,いまだ断片的なものにとどまり,それを応用して具体的事例に適用する能力が十分に身に付いていないことを示しているものと思われる。(刑法)」

「刑法の基本的事項の知識・理解が不十分な答案や,その応用としての事例の分析,当てはめを行う能力が十分でない答案も見られたところである。(刑法)」

「関連条文から解釈論を論述・展開することなく,問題文中の事実をただ書き写しているかのような解答もあり,法律試験答案の体をなしていないものも見受けられた。(刑訴法)」

「本件での具体的な事実関係を前提に,要証事実を的確にとらえ,伝聞法則の正確な理解を踏まえた論述ができている答案は少数にとどまった。(刑訴法)」

「司法警察員により作成された捜査報告書の証拠能力を問うているにもかかわらず,これを無視し,録音テープであるから知覚,記憶,叙述の過程に誤りが入り込む余地はなく,当然に非伝聞証拠であるなどと断じた答案まで見受けられた。このような答案については,厳しい評価をすれば,基本的知識,事実分析能力及び思考能力の欠如を露呈するものと言わざるを得ない。(刑訴法)」

「決定的に重要な事実を指摘して,証拠能力の有無を検討している答案は少数であった。(刑訴法)」

「今後の法科大学院教育においては,手続を構成する制度の趣旨・目的を基本から正確に理解し,これを具体的事例について適用できる能力,筋道立った論理的文章を書く能力,重要な判例法理を正確に理解し,具体的事実関係を前提としている判例の射程範囲を正確にとらえる能力を身に付けることが強く要請される。特に,確固たる理論教育を踏まえた実務教育という観点から,基本に立ち返り,刑事手続の正常な作動過程や刑事訴訟法上の基本原則の実務における機能を正確に理解しておくことが,当然の前提として求められよう。(刑訴法)」

「手形の不渡りという事実が現れているにもかかわらず,それが支払停止に該当するかどうかを検討せずに,破産手続開始決定や自己破産の申立てといった事実から直ちに支払不能を認定したり,代物弁済の時点で既に支払不能となっていると認定する答案が少なからずあった。条文や基本的な概念の正確な理解及び具体的事案を的確に把握する能力を養うことの重要性が感じられた。(倒産法)」

「総じて,実体法上の検討が十分に行われていないという印象を受けた。(倒産法)」

「争点について検討する能力のみならず,主張を法律的に構成する能力を養うことの必要性が感じられた。(倒産法)」

「具体的事案を的確に把握して,当事者にとって最適な解決方策を検討する能力が不十分と感じさせられた。(倒産法)」

「条文に則した勉強がされていないのではないかとの危惧を感じた(倒産法)」

「同法第56条が「ないものとみなす。」と規定している意味を理解しない答案も散見され,基本的知識を具体的事案に適用する訓練が不十分な受験生が一定程度存在することも実感された(租税法)」

「経済法の問題は,不必要に細かな知識や過度に高度な知識を要求するものではない。経済法の基本的な考え方を正確に理解し,これを多様な事例に応用できる力を身に付けているかどうかを見ようとするものである。法科大学院は,出題の意図したところを正確に理解し,引き続き,知識偏重ではなく,基本的知識を正確に習得し,それを的確に使いこなせる能力の育成に力を注いでいただくとともに,論述においては,論点主義的な記述ではなく,構成要件の意義を正確に示した上,当該行為が市場における競争へどのように影響するかを念頭に置いて,事実関係を丹念に検討し,要件に当てはめることを論理的・説得的に示すことができるように教育してほしい。(経済法)」

「残念ながら,期待していた水準に達している答案は多くはなかった。論点や出題の意図を理解していないと思われるもの,論点に関するキーワードが不完全な形で記載されており,理解不足が露呈しているものなどが多数見られた。(知財法)」

「従前から指摘していることであるが,まず基本的事項につき,単に記憶させるのではなく,十分に理解させるような教育をお願いしたい。(中略)今回の答案審査に当たり,基本的事項を十分理解することなく記述していると思われる答案が多かったので,特に強調して指摘する次第である。(知的財産法)」

「必要な論点の抽出が非常に不十分な答案が相当数あり,期待される水準に達していた答案が予想以上に少なかった。(労働法)」

「労働法の基本的理解に欠けると思われる答案も散見された。(労働法)」

「法令・判例・学説に関する基本的知識については,正しい理解に基づき,かつ,網羅的に習得することを更に目指していただきたい。(労働法)」

「環境法学習においては,基本的考え方や基本的仕組みを理解することは重要であるが,それは言わば「点」でしかない。それが具体的制度とどのように関係するか,どのような場面で適用することができるかを学習することによって,「点」を「面」に発展させることができるのである。法科大学院においては,単なる仕組みの解説にとどまるのではなく,このような視点に留意していただけると有り難い。(環境法)」

「全く理解や知識がないためか,「他国に損害を与えてはならない」という「常識論」しか記載されていない答案も目立った。(国際公法)」

「第1問,第2問のいずれについても言えることだが,答案に問題を改めて記載する例が少なからず見られたが,問題を写したとしても加点されず,意味がないばかりか,答案用紙の紙幅が足りなくなって論ずるべき点の記載が不十分になるなど弊害にもなる。解答は長く書く必要はないが,結論だけでなく結論に至る各自の理解を記載してもらわないと加点されないので,その点は注意してほしい。(国際公法)」

「①国際私法・国際民事訴訟法・国際取引法上の基本的な知識と理解を基にして論理的に破たんのない推論により一定の結論が導けるか,②設例の事実からいかなる問題を析出できるか,③複数の法規の体系的な関連性を認識しながら,析出された問題の処理に適切な法規範を特定できるか,④法規範の趣旨を理解して,これを設例の事実に適切に適用できるか,である。
 本年度は特に上記②と③の基準から見て不十分と言わざるを得ない答案が目立った。逆に言えば,これらの基準を満たす答案であれば「優秀」答案となる可能性が高くなる。④の点についても法規範の趣旨が十分に理解されていないと見られる答案,換言すれば,文理にのみ着目して規定の単純な当てはめだけを行う答案が多かった。その結果,規定の立法趣旨などに言及する答案は,相対的に,少なくとも「良好」となる可能性が高いと見られる。そして,規定の単純な当てはめ作業に終始しつつも,少なくとも①の基準をおおむねクリアーしている答案が,多くの場合,「一応の水準」答案となるのではないかと見られる。(国際私法)」

 もちろん、私は新司法試験合格者でも上位の方が優秀であることは否定しない。しかし、採点雑感を見れば明らかなとおり、全体としてみれば相当やばいレベルの方でも合格できる試験になりつつあるのが現状だ。この事実は、日経新聞の社説を書くくらいの人なら当然知っていて然るべきだし、知らないで社説を書いているのであれば、多くの人に誤解を与える非常に罪な行為だろう。

 だから日経新聞の社説は、司法試験のレベル低下の問題を全く無視した点で、少なくとも的外れだ。合格者のレベルを上げるには、競争を強化するしかないだろう。一生に一回かもしれない事件を依頼する弁護士に、最低限度の知識・応用能力がないと困るのは、一般の方ではないか。

 日経新聞の社説は、言い換えれば、医学部卒業生全てに医師資格を与えて競争させれば、自由競争による淘汰によって、良い医師が生き残るから良いではないかという主張とほぼ同じだ。淘汰に至る過程で、藪医者にかかって殺される人がいてもそれは、情報もなくその藪医者を選んでしまった人が悪い、自由競争だからしょうがないという、強者の論理だ。

 確かに日経新聞は、情報網もお金もあるだろうから、優秀な弁護士を雇えるだろう。しかし、一般の人が弁護士に依頼する際に、その弁護士の仕事が素晴らしいかどうかは正直言って分かるだろうか。弁護士の作成した専門的な書面を読んでも良いかどうか分からないし、その弁護士の方針が正しいかすら分からないことが多いはずだ。

 現にあれだけ弁護士が氾濫しているアメリカでも、富裕層は弁護士選びに困らないが、中間層以下は情報もなく広告などを参考に選ばざるを得ないと報告されている。自由競争が成立していないのだ。

 日経新聞の社説を書こうかという人が、それくらいの知識もなく書いているとは思えないので、敢えて善解するならば、少なくとも社説のこの部分は弁護士バッシングを意識して書かれたものなのだろう。

 突っ込み処はまだある。

 果たして、個人や企業はそれほど弁護士を必要としているかという点だ。

 日経新聞は、個人や企業は弁護士を必要としていると主張しているようだが、それならどうして新人弁護士の就職難が蔓延しているのだ。

平成12年の司法制度改革審議会のアンケートですら、弁護士にアクセスするのに、「大いに苦労した人3.8%、やや苦労した人6.1%」でしかなかった。つまり、弁護士を探そうとして本当に苦労した人は25人に1人くらいだったのだ。平成12年から弁護士は、約178%に増員された。こういう現実を一切無視するのが日経新聞なのか。

 企業が弁護士を必要としていると主張するなら、まず日経新聞がどれだけの社内弁護士を雇用しているのか明示したらどうだ。企業内弁護士の統計を見ると、日経新聞は少なくとも企業内弁護士が所属する上位20社に入っていないから、仮にいたとしても、5名未満の企業内弁護士しかいないはずだ。日経新聞だって企業だから、本当に企業に弁護士が必要なら何十人と日経が雇用して見せればいいのではないか。

 日弁連が2009年11月に、上場企業に向けてアンケート調査した結果、回答1149社中97%が企業内弁護士採用に消極的との回答を寄せているが、日経はこれと違う根拠を持っているのか。仮に、なんの根拠もなく、企業に弁護士が必要などと勝手な社説を書いてお金を頂けるのならそんな楽な仕事はなかろう。

 いつまでも、根拠無しの社説を書くのではなく、いい加減きちんと根拠を持って記載して頂きたいものだ。

 私も一応日経をとっているが、こんないい加減な社説を掲載しているのでだんだん嫌になってきちゃった。早く善処して欲しいものだ。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

弁護士未来セッションは本気か?

 大阪弁護士会の本日のレターケースに、【「弁護士未来セッション@大阪」のご案内】と題する、チラシが入っていた。

 そのチラシによると、全国の多くの会員とともに英知を結集して幅広い議論を行い、その成果を日弁連の政策や会務執行に反映させることを目的としているらしい。

 大阪の呼びかけ人は、歴代大阪弁護士会会長(あんまり関心がないのでよく知らないところもあるが、多分そうだと思う)が名前を連ねている。

 立派なHPも立ち上がっており、その問題提起に、法曹人口問題もあった。内容は次の通り。

2.弁護士人口問題
 司法改革の理想、理念の追求が重要であることは言うまでもありませんが、現実をしっかり見据えて議論を進める必要があります。法の支配の理念を社会の隅々までいきわたらせるために、法曹人口を増加させる必要があるとして、急激に司法試験合格者数を増やしてきました。ところが、このような急激な法曹人口(ほとんどが弁護士人口)の増加政策は、新しい法曹養成制度の中核となった法科大学院の中には学生や教育の質を確保できないところも少なからずあり、「法曹の質」の維持という観点から深刻な懸念を生じさせています。また、大量の弁護士の需要を生み出すための制度的基盤の整備が不十分なまま、長引く経済不況を迎え、新人弁護士の雇用状況の悪化は年々深刻化し、OJTの機会すら得られない新人弁護士が増えています。そこで、日弁連の法曹人口政策会議は、2011(平成23)年3月の緊急提言で「当面の緊急対策として、司法試験合格者数を現状よりさらに相当数減員することを求める。」と提言し、さらに、今後も適正な法曹人口のあり方について検討を進めるとしています。弁護士をとりまく現実の状況を踏まえれば、議論をさらに深め、司法試験合格者数については思い切った減員をする必要があると考えます。

 へ~、思っているより、まともなことを言っているなぁ。と一瞬思った。

 それと同時に、この趣旨に賛同して呼びかけ人となっている大阪弁護士会歴代会長のかつてのご意見、行動と違うんじゃないかと思った。

 基本的に、ここ4~5年は、上野元会長を除いて、法曹人口問題は日弁連マターだからと大阪弁護士会内での議論を避け、日弁連任せにしてきた会長ばかりだったように思う。少なくともここ3年は、私は常議員会で「毎年」、法曹人口に関するPT(プロジェクトチーム)を作って欲しいと要望してきては、会長に断られてきたので間違いない。

 その歴代会長達が、急に司法試験合格者の大幅減員に賛成をはじめたということか。

 それはそれで、ようやく現実を見はじめてくれたということで、私としては喜ばしいことだ

 しかし、そうだとすれば、呼びかけ人のうち近弁連理事を務める者も複数いるのに、つい先日、どうして近弁連大会に兵庫県弁護士会が司法試験合格者1,000人決議を上程しようとしたときに、近弁連理事会で握りつぶされたのか、という疑問が湧く。

 少なくとも呼びかけ人のうち2名は近弁連理事だ。そうでなくても会長を務めるくらいだから大阪弁護士会の各会派でも大きな力を持ち、その会派の近弁連理事くらい動かせたはずだ。また、大阪弁護士会の会長は日弁連副会長を兼務するから、日弁連内でもそこそこの力を発揮できる。元会長であってもある程度の影響力を行使することは可能だろう。それにも関わらず、どうして日弁連はもっと強力に司法試験合格者の減員を主張できないのか。どうも腑に落ちない。

 疑問はさておき、とにかく、呼びかけ人は、少なくとも上記の司法試験合格者の思いきった減員に賛成しているのだろうから、実際に司法試験合格者の思い切った減員が必要であることを、堂々と公の場で、積極的に主張するなど、自らの行動で示してもらいたい。

 また、弁護士人口激増に関して、もうこれ以上放置できないとして有志で発足させた、「法曹人口問題全国会議」と一緒に激増問題に対処するよう動いてくれても良いはずだ。

 それが言行一致というもんだ。

 大人の態度というモンだ。 

 私としては、「弁護士未来セッション」が、次期日弁連会長選挙向けた事前選挙活動(しかもパフォーマンス)でないことを祈らざるを得ない。

 どのようなことをしてくださるのか、見に行きたいが、大阪では、3000円の参加費(但し、登録10年未満弁護士は無料)がかかる。 ちょっと悩ましいところだ。

 法曹人口問題全国会議HP

http://jinkoumondai.housou.org/index.html

 弁護士未来セッションHP

http://bm-session.jp/

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

公認会計士試験の合格者数

平成22年以降の合格者数のあり方について
公認会計士試験については、公認会計士・監査審査会において運用されているところであるが、平成22年以降、当面の合格者数については、金融庁としては、合格者等の活動領域の拡大が進んでいない状況に鑑み、懇談会のとりまとめを踏まえた所要の対応策が実施されるまでの間、2千人程度を目安として運用されることが望ましいものと考える。(第1回公認会計士制度に関する懇談会資料)

平成23年以降の合格者数のあり方について
公認会計士試験については、公認会計士・監査審査会において運用されているところであるが、合格者等の活動領域の拡大が依然として進んでいないことに加え、監査法人による採用が低迷していることに鑑み、平成23年以降、当面の合格者数については、金融庁としては、1千5百人程度から2千人程度を目安として運用されることが望ましいものと考える。(第10回公認会計士制度に関する懇談会資料)

 現在の公認会計士制度は、監査業界のみならず経済社会の幅広い分野で、公認会計士あるいは会計専門家が活躍することが期待されるという考え方に基づき、平成15年に公認会計士法が改正をされて、社会人を含めた多様な人材でも受けやすいような試験制度になったということで、平成18年より新しい制度が実施されている。

 公認会計士試験合格者は、平成7~13年までは約670~960名程度、平成14年~17年までは、約1150~1370名程度だった。

新制度導入後は、

平成18年 3108名

平成19年 4041名

平成20年 3625名

平成21年 2229名

と合格者を激増させてきた(以前の当職のブログと数値が違うのは、旧第2次試験合格者等の短答式試験見なし合格者を除外するなどの点で、ずれが生じている)。

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/04/14.html

 しかしながら、現状においては、公認会計士試験合格者等の経済界等への就職は進んでおらず、また、想定していた社会人の受験者、合格者についても十分増加していないなど、現行の制度のねらいは道半ばの状況にあるし、結果的に試験制度の魅力が低下する(つまりは優秀な人材が集まらない)という可能性もあるということで、わずか3年で合格者減少へと舵を切った。その現れが冒頭に上げた、「合格者数の在り方」なのだ。

 公認会計士に対する社会のニーズに合わせ、質を維持しながら合格者数を決定しようとする動きであり、至極当たり前の行動である。当初のニーズ予測が大きく外れたことによる修正であり、現実を見据えたものともいえる。

 一方、司法試験はどうか。法科大学院制度を擁護することに執着する学者が、具体的にはどんなニーズかと質問しても答えられないくせに(当職のブログ「奥島孝康氏への質問状」「王様は裸だ」参照)、ニーズがある、ある、と強弁し、現実すら見ようとしていない。

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/06/07.html

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2011/06/27.html

 しかもそのような学者を制度を検討するフォーラムに組み込むから、間違った道に進んでいても軌道修正ができない。一度決まったことであっても間違っていたのなら直ちに過ちを認め修正するのが知恵のある人間というべきだ。

 この点、公認会計士試験に関する金融庁の対応は、少なくとも司法試験に関する関係諸機関の対応に比べて優れていると言えよう。マスコミも特に批判していない。正しい対応だから当然だ。

 しかし、ことが司法試験に関することになると、合格者等の経済界等への就職は進んでおらず、また、想定していた社会人の受験者、合格者についても十分増加していないし、結果的に試験制度の魅力が低下するという可能性もあるにもかかわらず、マスコミは、とにかく一度決めたことを守れと、叫び続ける。

 マスコミの誤導に惑わされずに、法曹に優秀な人材は必要なのか不要なのか、仮に優秀な人材が必要であるとするなら、そのために必要な施策はなんなのか、立ち止まって考える必要があるように思うのだ。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

法曹人口問題は、近畿弁護士連合会で議論すらできないのか!

 兵庫県弁護士会が、近畿弁護士連合会(近弁連)大会に、司法試験合格者を1,000人にするべきとの決議案を上程しようとしていました。

 近弁連大会で議題にするには、近弁連理事会で承認されなければなりません。

 ところが、本日、近弁連理事会決議で、兵庫県弁護士会の案は、賛成6、反対29で否決されました。

 近弁連大会で議題にすることすらできなかったのです。

 伝聞ですが、各単位会会長の理事会での意見が流されてきました。

 大阪の中本会長の御意見は次のようなものだったそうです。

・  法曹養成フォーラムで法曹養成問題と法曹人口 問題がこれから議論される。  
・ 大阪でも法曹人口の人数については議論されていない。  
・ 1000人という数字については、全く話しをしていない。
・ 会として意見を言える段階ではない。  
・ むやみやたらと数を出すべきではない。  
・ 戦略論もあり、もっと考えた上で出すべき。  

 (もし間違っていたなら、ご指摘下さい。その旨、訂正致します。)

 (追記 9月20日の大阪弁護士会常議員会で、中本会長が本件について言及され、ご発言の趣旨について解説されました。但し、坂野がきちんとメモを取れなかった部分もあるため、後日、中本会長とお会いする機会がありましたら再度お聞きして、ご発言の趣旨を踏まえて訂正しようと思います。ご指摘有り難うございました。)

 今後法曹養成フォーラムで、司法試験合格者も含めた議論がなされることは事実です。しかし、法曹養成フォーラムは、有識者委員の顔ぶれから見ても分かるとおり、法科大学院擁護の基本路線が前提にあり、現実を見据えた議論ができていません。給費制でも結局法科大学院擁護派有識者の声の大きさに押された面も少なからず見えたように思います。

 そのようなフォーラムに期待できるとお考えなのでしょうか。まずそこが疑問です。

 次に、大阪でも法曹人口の人数については、議論されていない。とのことですが、議論できないようにされているのです。 私は常議員として大阪の常議員会で、畑会長・金子会長・中本会長のいずれに対しても、法曹人口を検討すべきPTを設置して欲しいと言い続けてきました。しかし、歴代会長は、法曹人口問題は日弁連マターであるとして、一向に法曹人口問題に関するPTを設置してくれませんでした。議論の場を設定しないという状況にしておきながら、大阪で議論されていないから、とはちょっと理解できません。

 1,000人の数字については、全く話しをしていない。ということですが、近弁連=大阪ではないのですから、近弁連大会で議論をすればよい問題だったのではないでしょうか。近弁連大会で議論する機会すら設定しないとは、これも理解できません。

 会として意見を言える段階ではない。ということですが、そういう段階に至っていないのは、要望を出していたのに前述のPT設置すらしてこなかった、ここ数年の執行部の責任ではないでしょうか。また、近弁連の意見をまとめるための近弁連大会ではないのでしょうか。

 むやみやたらと数を出すべきではない。ということですが、逆に日弁連が相当数の減員という主張をして国会などに陳情に赴いた際、では具体的にどれくらいを想定していますかと聞かれた際に、どう答えるつもりなのでしょうか。相当数減員という玉虫色の主張の方が、むしろ問題が大きいのではないでしょうか。

 戦略論もあり、もっと考えた上で出すべき。とのことですが、現在どのような戦略を会員のために立てているのでしょうか。具体的な戦略など、残念ながらお聞きしたことがありません。戦略をお考えなら、当然大阪弁護士会なり日弁連なりでその戦略に沿った動きをする必要があるはずですが、そのようなお話は、少なくとも私はお聞きしたことがありません。現実には、どの程度の戦略を練っておられるのかも分かりません。逆にいえばいつどのようにして出すおつもりなのでしょうか。それも示さずに、戦略があるからといわれても、納得できるはずがありません。

 ただ、近弁連大会にどうしても、議案を上程したくなかった理事者の本音はおそらくこうでしょう。

 近弁連大会の議題に提出された場合、その議決は、出席者の多数決で決まります。今までのように、委任状をかき集め会派の動員をかけて、多数決で押し切ることが困難なのです。それを恐れたのでしょう。

 いずれにしても、各単位会内で議論していないというのは理由になりません。だってそのために近弁連大会という、近弁連の意見を決めるために議論する場が設定されているのですから。

 納得のいく説明を聞かせて欲しいものです。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

法科大学院制度は、やはり、失敗と考える。

 新司法試験合格者が発表された。合格率が23.5%と最低になったと騒がれているようだが、それでも旧司法試験よりも合格率で10倍程度合格しやすい状況だ。

 それはさておき、未修コースを経ての合格者が260人と全体の1割強しかないのは、法科大学院制度のセールスポイントであった、多様な人材の登用というお題目が、絵に描いた餅だったことの証明だ。未修コースに入学したとしても、法学部以外卒とは限らない。実力が不足していると自覚している法学部卒業生も未修コースに入っている可能性が相当ある。そうなれば、数字以上に、多様な人材の登用は実現していない可能性がある。むしろ旧司法試験の法学部以外卒の割合の方が、高めともいえる。法科大学院適性試験受験者数も、実数で7,000人台にまで落ち込んだ。

 つまり、未修者に関しては、大学のお偉い先生方は、法律を勉強したことがない人でも、エラ~イ私(大学教授)が教えてやれば、3年で司法試験合格レベルに引き上げてやれると、なんの根拠もないのに無謀にも信じて、それを政府や国民に約束し、マスコミもそのように世論操作をしたのだ。そして、鳴り物入りで法科大学院が実際に導入されたものの、結果として、やはり、そのような夢物語は実現不可能・無理だった、ということだ。新司法試験採点委員の意見も年々、こんなレベルで実務家にして良いのかという趣旨の意見が増えているように読める。

 これまで、そのえら~い学者達やマスコミのいうことを信じて、法科大学院に多額の税金を投入してきた国民としては、まんまと血税を文科省や大学、そして法科大学院募集の公告を受託するマスコミに、無駄に使われちまったということだ。

 文科省は、合格率低迷6校に対して、補助金削減を行うとのことだが、そもそも、そのような法科大学院を認可したのはどこの誰だったのだ。きちんと教育するだけの教師と設備が整っていることすら調査できずに認可していたということになるのではないか。

 ウナギもさばけないのに「うなぎ屋」の看板を出すことを役所(文科省)が認め、美味しいウナギを食べさせると大見得切った店(法科大学院)があったとする。グルメ本(マスコミ)も、大して取材もせずに美味しいウナギだと激賞している。その店が、客に通常より高めの鰻重の代金3000円(税金)を前払いさせておいて、散々待たせたあげく、結局、「うなぎはさばけませんでした。閉店しますから許して下さい。」と言ってきた。

 こんな店に対して、常識ある人でも、金返せ、というのが普通だろう。ウナギもさばけないのに「うなぎ屋」の看板を出すことを許した役所、大して取材もせずに思い込みの記事を書いたグルメ本も、客からは当然責められるべきだろう。

 こんなことなら、自分で勉強させ、頑張って司法試験に合格した人間に、給費制司法修習制度で十分費用と時間をかけて法曹を育てる旧制度の方が、何倍もマシだ。

 文科省、法科大学院、マスコミ、法務省、多くの会員の反対を押し切って法科大学院制度を容認する方向をとった当時の日弁連執行部、一体、誰が責任をとってくれるんだろう。

※なお当ブログの記載は、当職の個人的意見であり、当事務所の他のいかなる弁護士にも関係はございません。

お人好しすぎる弁護士会と弁護士

 法テラスから、国選弁護事件に関して、裁判所での審理時間についても、裁判所に報告させることにするという通知があったようだ。つまり、裁判所でどれだけの審理時間がかかったかという弁護士からの報告は、信用ならないので、裁判所に確認するということらしい。

 何度も言うが、国選弁護は、経営者弁護士では絶対にペイしない。

 私選弁護(起訴後)だと、弁護士会相談センター基準では、事案簡明な事件に関する着手金50万円以下、執行猶予判決を得た際の報酬は50万円以下とされている。

 これが国選弁護だといくらになるか。おそらく、事案簡明な事件で起訴後弁護だけだと着手・報酬併せて10万円に届くことは絶対と言って良いほどない。私選弁護の1/5~1/10の報酬しか出ないのだ。

 つまり、国選弁護事件をやろうとする、経営者弁護士は、この低報酬に対し、耐え難きを耐え、忍びがたきを忍びつつも、司法修習の給費制という税金で育ててもらったという意識や、使命感で、可能な限り良い弁護をしようとしてきた。弁護士会も、私選と国選で区別なくきちんと弁護するよう指導しているし、少なくとも私のまわりの弁護士はそうだ。

 弁護士も、規制緩和だ、自由競争だ、というのなら、頂ける費用に見合った弁護しかしなくても、文句を言われる筋合いはないだろう。

 タイムチャージが3万円の弁護士なら、6万円の報酬しか出ない国選弁護事件においては、2時間働けば、それで終わり。弁論要旨を作成して、公判に一度出席すれば、2時間なんてあっさりオーバーする。それ以上働かなくても、文句を言われる筋合いはないだろう。

 だって、それだけの価値のある専門家を利用したのだから。それ以上専門家を利用したいのなら、その専門家を利用するに価値に見合った費用を払うのが、自由主義経済では当たり前のことなのだ。  

 どこの世界に、ワンメーター2㎞、650円の料金しか払わずに、20㎞先までタクシーに乗れて当然というばかげた国があるというのだ。そんな国でタクシーがやっていけるわけがないではないか。しかも今回の法テラスの通知は、20㎞走らせた確認に留まらず、その運転の仕方にまでチェックを入れるということだ。

 ワンメーター2㎞の料金で、タクシーを20㎞走らせて、なおかつその走り方までチェックしないとお金を払わないという客が、いても良いのか。そこまで馬鹿にされてまだ、弁護士は国選弁護というタクシーを運転し続けなければならないのか。 

 確かに、某県での弁護士の国選弁護費用不正請求事件があったことは事実だ。

 しかし、その前に、国選弁護に関して、国民の皆様は正当な料金を弁護士に対して支払ってこなかったということを、忘れてはならないように思う。つまり先の例で言うと、今まで国民の皆様は、何十年にもわたって、2㎞ワンメーター料金で、その5~10倍の10~20㎞のドライブを弁護士にさせていた、弁護士はお人好しにも、若干の文句をいうだけで、そのひどい所業にずっと耐えて働いてきたという事実に着目すべきなのだ。

 正当な料金を支払ってもらっていればいざ知らず、何十年もの間、2㎞の料金で、20㎞走らされていた赤字のドライバーが、釣り銭を少し誤魔化した場合、そんなにひどく非難されなければならないのか。

もう、弁護士会としても、お人好しをそろそろやめて、きちんと対応すべきではないか。規制緩和、自由競争を弁護士に導入するなら、当然活動に見合った費用を請求できて当然だ。

 その費用が国から出ないのなら、逆に国選事件の活動を制限するのが筋となるだろう。例えば、国選事件では、接見は1回に限定。弁論要旨も3ページ以内。証人尋問や、被告人質問は時間がかかるので省略。 しかし、こんな国選弁護で、人権が守れるわけがなかろう。

 国民の健康を守るために医療費がかかるように、国民の人権を守るにも費用が当然かかる。

 最大の問題は、国選弁護制度を作っておきながら、その制度運用に見合った費用を国が出さないことであり、お人好しにもワンメーター料金で、その5~10倍もの距離を走り続けてきた弁護士と弁護士会にあるように思う。

 ここまで、馬鹿にされるなら、そろそろ、ストライキを含めて、お人好しを止めることを考えても良いのではないだろうか。

ひまわり求人求職ナビ

 大阪弁護士会の中本和洋会長名義で、司法修習修了予定者の採用についての依頼文が配布されている。

 日弁連は、司法修習生の就職のために、ひまわり求人求職ナビというサイトを開設し、司法修習生の就職支援を行っているが、

 求人登録者数1021名に対して、求人登録数は139件しかない。

 どう考えたって、超就職氷河期状態でしょ。というより、もう終わってる状況に近い。

 日弁連や各弁護士会は、司法修習生の就職難をなんとか解決しようと必死な様子だが、これを解決させる方法は、ある意味簡単だ。

 ニーズがあると言っている人に雇ってもらえばいい。

 若しくは、弁護士激増に賛成している人が採用すればいいのだ。

 法科大学院の教授がまだまだニーズがあるというなら、法科大学院に法律事務所を作ってもらって、法科大学院附属法律事務所が司法修習生を雇用して、法科大学院教授がいうところのニーズを開拓して、処理すれば良いではないか。

 新司法試験に合格したあとの就職の面倒も見てくれるなら、その法科大学院の志願者もきっと増加するだろうし、そのニーズとやらのおかげで収益が上がるだろうから、法科大学院の経営にもプラスになるだろうし、全てうまくいくんじゃないか。

 マスコミがニーズがあるというなら、そのマスコミが法律事務所を作って司法修習生を雇用して困っている人を助けたらいいじゃないか。そのニーズによって収益も上がるだろうし、そのマスコミだって、司法修習生ばかりではなく、社会で困っている人を助けたということで、社会的貢献も出来ることになる。絶対イメージもあがるぞ。

 次に日弁連は、弁護士激増賛成の弁護士を公表して、司法修習生の雇用を義務づけるべきだ。まさか、ニーズもないのに弁護士激増賛成とは言っていないだろうから、その人達が考えるニーズを司法修習生を雇用して開拓すれば良いだけだ。

 さすがに弁護士激増論者と言えども、弁護士激増だけええカッコして発言しておいて、まさかそのツケを他人に回そうという卑怯な人はいないだろう(力一杯、皮肉です)。

 どうして、そのようなことを法科大学院もマスコミも激増論者もやらないのか。

 本当は、その人達がニーズと言っているものの多くが、本来到底ニーズとは言えない、全くペイしない仕事であることが分かっているからに違いない。

 そうでなければ、頭の中に黄色いタンポポが咲き乱れている方々だ、という他ない。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。