お人好しすぎる弁護士会と弁護士

 法テラスから、国選弁護事件に関して、裁判所での審理時間についても、裁判所に報告させることにするという通知があったようだ。つまり、裁判所でどれだけの審理時間がかかったかという弁護士からの報告は、信用ならないので、裁判所に確認するということらしい。

 何度も言うが、国選弁護は、経営者弁護士では絶対にペイしない。

 私選弁護(起訴後)だと、弁護士会相談センター基準では、事案簡明な事件に関する着手金50万円以下、執行猶予判決を得た際の報酬は50万円以下とされている。

 これが国選弁護だといくらになるか。おそらく、事案簡明な事件で起訴後弁護だけだと着手・報酬併せて10万円に届くことは絶対と言って良いほどない。私選弁護の1/5~1/10の報酬しか出ないのだ。

 つまり、国選弁護事件をやろうとする、経営者弁護士は、この低報酬に対し、耐え難きを耐え、忍びがたきを忍びつつも、司法修習の給費制という税金で育ててもらったという意識や、使命感で、可能な限り良い弁護をしようとしてきた。弁護士会も、私選と国選で区別なくきちんと弁護するよう指導しているし、少なくとも私のまわりの弁護士はそうだ。

 弁護士も、規制緩和だ、自由競争だ、というのなら、頂ける費用に見合った弁護しかしなくても、文句を言われる筋合いはないだろう。

 タイムチャージが3万円の弁護士なら、6万円の報酬しか出ない国選弁護事件においては、2時間働けば、それで終わり。弁論要旨を作成して、公判に一度出席すれば、2時間なんてあっさりオーバーする。それ以上働かなくても、文句を言われる筋合いはないだろう。

 だって、それだけの価値のある専門家を利用したのだから。それ以上専門家を利用したいのなら、その専門家を利用するに価値に見合った費用を払うのが、自由主義経済では当たり前のことなのだ。  

 どこの世界に、ワンメーター2㎞、650円の料金しか払わずに、20㎞先までタクシーに乗れて当然というばかげた国があるというのだ。そんな国でタクシーがやっていけるわけがないではないか。しかも今回の法テラスの通知は、20㎞走らせた確認に留まらず、その運転の仕方にまでチェックを入れるということだ。

 ワンメーター2㎞の料金で、タクシーを20㎞走らせて、なおかつその走り方までチェックしないとお金を払わないという客が、いても良いのか。そこまで馬鹿にされてまだ、弁護士は国選弁護というタクシーを運転し続けなければならないのか。 

 確かに、某県での弁護士の国選弁護費用不正請求事件があったことは事実だ。

 しかし、その前に、国選弁護に関して、国民の皆様は正当な料金を弁護士に対して支払ってこなかったということを、忘れてはならないように思う。つまり先の例で言うと、今まで国民の皆様は、何十年にもわたって、2㎞ワンメーター料金で、その5~10倍の10~20㎞のドライブを弁護士にさせていた、弁護士はお人好しにも、若干の文句をいうだけで、そのひどい所業にずっと耐えて働いてきたという事実に着目すべきなのだ。

 正当な料金を支払ってもらっていればいざ知らず、何十年もの間、2㎞の料金で、20㎞走らされていた赤字のドライバーが、釣り銭を少し誤魔化した場合、そんなにひどく非難されなければならないのか。

もう、弁護士会としても、お人好しをそろそろやめて、きちんと対応すべきではないか。規制緩和、自由競争を弁護士に導入するなら、当然活動に見合った費用を請求できて当然だ。

 その費用が国から出ないのなら、逆に国選事件の活動を制限するのが筋となるだろう。例えば、国選事件では、接見は1回に限定。弁論要旨も3ページ以内。証人尋問や、被告人質問は時間がかかるので省略。 しかし、こんな国選弁護で、人権が守れるわけがなかろう。

 国民の健康を守るために医療費がかかるように、国民の人権を守るにも費用が当然かかる。

 最大の問題は、国選弁護制度を作っておきながら、その制度運用に見合った費用を国が出さないことであり、お人好しにもワンメーター料金で、その5~10倍もの距離を走り続けてきた弁護士と弁護士会にあるように思う。

 ここまで、馬鹿にされるなら、そろそろ、ストライキを含めて、お人好しを止めることを考えても良いのではないだろうか。

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