2009年 「教育の質の向上のための改善方策について(報告)」
2012年 「教育の更なる充実に向けた改善方策について(提言)」
2013年 「今後検討すべき教育の改善・充実に向けた基本的な方向性」
2014年 「教育の抜本的かつ総合的な改善・充実方策について(提言)」
2018年 「抜本的な教育の改善・充実に向けた基本的な方向性」
2022年 「教育の更なる充実と魅力・特色の積極的発信について」
これらは、2004年に創設された文科省所管のある教育機関について、その機関に関する文科省特別委員会が発信してきた、提言等の名称の一部抜粋である。
上記の提言等の名称から、素直に考えれば、
この教育機関では、
創設の5年後には、当初の目的に比べて教育の質が低いという問題が生じており、その問題に対応するための改善策についての報告がなされている。
更にその3年後においても、教育を更に充実させなければならない事態が生じている(もしくは改善されていない)ことが分かる。
その1年後においても、教育の改善・充実が必要な事態は解消されておらず対応が求められている状況が分かる。
更にその1年後には、もはや抜本的・総合的な教育の改善と充実が必要な状況にまで陥っていることが窺える。
抜本的というのであるから、さすがに、これで改善したのかと思っていたら、
更にその4年後にも、抜本的な改善と充実が必要であることが示され、
その4年後においても、教育の更なる充実が必要であることが示されている。
あくまで提言等の名称からの推測に過ぎないが、この教育機関における教育の質に関する問題は20年も改善のために様々な議論をし、策を講じてきたものの、結局、何ら解決していないように見える。
この教育機関は、法科大学院であり、提言等を行っているのは文科省中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会である。
20年かけても改善できないのであれば、制度自体に大きな問題があると考えるのが最も合理的だ。
改善します、改善します、といいながら一向に成果が上がらないのであれば、民間なら、さっさと主導者をクビにし、これまでの制度を廃止して、新たな方策を取るはずだ。無駄な制度に投資する余裕など、どこにもないからである。
制度導入時に導入賛成側の学者は、具体的な根拠も示さず、法科大学院におけるプロセスによる教育が大事などと言っていた。しかし、それなら、実際の司法試験において、予備試験合格者、法科大学院在学中受験者に比べて、プロセスによる教育を最も長期間受けてきたはずの法科大学院卒業者の合格率が、一番低い(しかも圧倒的に低い)のは、なぜなんだ。
予備試験経由の実務家が法科大学院卒業の実務家に比べて劣っている証拠はどこにもないし、それどころか、大手法律事務所の多くは、プロセスによる教育と関連が最も低い予備試験経由の司法試験合格者を、むしろ優先的に雇用している。
これと逆に、「予備試験経由の合格者は、プロセスによる教育を受けていないので、採用しません」などという事務所を、少なくとも私は見たことがない。
このように、実務では、プロセスによる教育の必要性・優位性などは、どこにも見出せないのである。つまり、実務においてプロセスによる教育は全く評価されていないし、意味がないといっても良いくらいの状況にある。
法科大学院制度の最も重要な売りの一つであった「プロセスによる教育」に意味が見出せないのだから、文科省の権益や大学の権益、見栄もあるだろうが、もう廃止で良いじゃないか。
国民の皆様から多額の税金を投入してもらって、何やってんだ。
多額の税金を投入しても成果が出せず、実社会でも評価されていないのであれば、税金の無駄としか言いようがないではないか。