(続き)
5月22日
午前11時30分に、空港までの送迎お迎えが来るとGさんから聞いていたので、その15分前にロビーに集合しましょうという話になる。Y弁護士とは9時には朝食に一緒にいこうと話しており、9時に部屋まで呼びに来てくれることになっていた。なんと、Y弁護士の部屋にはバスタブがあったそうだ。これは、ホテルの部屋のくじ引きで、Y弁護士が1等、S弁護士が2等を引き当てたのかもしれない。
朝になり、カーテンを開けて青島市街を一望しようとしたところ、スモッグか雲かわからないが、真っ白で視界が効かない。昨日は、視界の端の方に見えていた海も今日は見えない。一面真っ白の世界だ。
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(朝の部屋~真っ白でまるで外が見えない)
朝食は、ビュッフェ形式。初めて洋食系の料理がある朝食となる。生野菜と目玉焼きと野菜炒め、ベーコン、春巻きなどを食べる。結構おいしくて何度かお代わりしてしまう。嬉しいことに、コーヒーやジュースがおいてあった。やはり朝はコーヒーが飲みたいものだ。
あとからビュッフェにやって来たGさんにお礼を言ってしばらくお話しをする。X教授のご指摘どおり自ら認める面食いらしい。美人系がすきなのだそうだ。自動車も好きでシボレーがいいと言っている。
部屋に戻る際に、エレベーターのところで、Y弁護士が、Gさんに、杜甫の春望(国破れて山河あり・・・)は日本でも有名だ、と話しかけているが、Gさんは原文がわからないので、ちょっとわからないと返していた。日本人のイメージする中国・中国国民と現実のそれとは、当然ギャップがある。もちろん逆もそうだろう。こういうことは実際に中国の方とお話ししないと分からないものだ。
部屋に戻って荷造りをする。行きの飛行機に乗った際、エコノミー席でも足下が少し広い席を見つけておいたので、アイパッドミニを経由したオンラインチェックインで、その席の窓側を押さえる。そういえば、電気のスイッチが壁の穴と少しずれている部分があるなど、微妙に杜撰な設備もあったが、ホテルのwi-fiは、しっかり使えた。
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(微妙にずれたスイッチ群。)
荷造りを終えて、少し時間があるので部屋で、ぼーっとする。未だに、霧は晴れず視界が効かないが、寝やすいベッドだったので、もっとゆっくりできたらよかったのにと思ってしまう。
11時15分ジャストにロビーに到着。すでにY弁護士とX教授がいる。
珍しくGさんが遅れてきた。
チェックアウトして、有力弁護士さんのイソ弁さんがレンジローバーで待っているところへ荷物を運ぶ。イソ弁さんが、昨日の大トラさんからのお土産だと言って大きな貝殻を2種類ずつ持ってきたくれた。
2種類の貝殻を一つずつ各自が頂くが、本当に持ち帰って大丈夫な貝殻なのか、よく分からんけど、ワシントン条約かなんかで引っかかるのではないか、と3人とも結構心配になる。しかも、リュックに入れてみると結構でかいため、貝殻の尖った部分がリュックの生地を突き破って出てくるではないか。
「怪しいものでも持っていませんか?」と関空で税関に聞かれて、満面の笑顔で「いいえ」と答えても、リュックの生地を突き破って出ている象牙色の突起を税関職員に見られたら、「ちょっとあちらでお話ししましょうね~」と別室に連れ去られるような予感がする。う~んホンマに大丈夫なんやろうか。。。
敢えて、「相手も弁護士だからそれくらいは考えてくれてるんじゃないですかね~」、と独り言っぽく希望的観測をいってみたところ、X教授とY弁護士から、そろって、「それはない!」と瞬殺されてしまった。・・・やはりね。大トラさんでしたものね、そうですよね・・・。
空港に向かう車内の中でGさんの電話が鳴り、Gさんが何かしゃべっている。なんと、昨日の大トラさんが空港近くのお店に、出来立ての青島ビールを運ばせることができるので、そこでお昼と一緒に食べないかと誘っているとのこと。
S弁護士は中華料理は結構好きだし、特にランチに必須と思われるチャーハンなんぞ血糖値に悪いことは分かっていても大好きである。しかし、今回は、フライトまで時間があまりない。
なにより、トラが出てくるのは夜だけとは限らない。昼間に大トラに襲われたら、それこそ今日中に日本には帰れまい。
そこはX教授が、「また今度お願いしますと伝えておいて」、と即座にGさんに賢明な指令を出し、お断りする。まさに「虎口を脱する」とはこのことか。
そういえば大トラはX教授のことを昨日、兄貴と呼んでいたりしたから、かなり気に入られていたのではないだろうか。X教授によると、中国人は友人となったらとにかく歓待してくれるのだそうだ。半分冗談かもしれないが、「日中戦争になっても、あの弁護士さんに助けてくれと言えばきっと助けてくれますよ。」とまで言っている。
確かに、その話が冗談ではないように思えるほど、私達は献身的な歓待を受けていたように思う。徹底した反日教育がなされ、中国国民はみんな感化されているかのようイメージを日本のマスコミは報道しているが、一体どうなっているんだろうか。
青島空港の入り口で、Gさんに御礼をいってお別れし、その後は、出国手続きを行うまで自由行動となった。本当にGさんが何もかもお膳立てしてくれたから、楽しく中国を満喫できたのであり、単独の旅行であればとても、こんなにお気楽に過ごせることはなかっただろう。感謝の極みである。
チンタオ空港でS弁護士は、中国のナショナルジオグラフィックのような雑誌と、中国の自然景観100選だと思われる本を買った。ファストフードに造詣の深いY弁護士は、中国のマクドナルドで、チキンのバーガーを買って実地検証していたようだった。う~んでも、世界のどこでも同じ味を提供するのがマクドナルドじゃなかったっけかな~。
出国手続きも、入国のときと同じく人民軍のような制服を着た係官がいて、無表情でパスポートをチェックしている。昨日の宴会のときに粗相をしなかったこともあって、幸いにもパスポートに「恥」という漢字は押されていなかった。
搭乗までの間に、免税店で事務員さんには小さな香水のセット、喫煙者のイソ弁君にはタバコ。父親には烏龍茶、母親には美人の店員さんに翻弄されつつスカーフを買った。X教授が昨日、味付のピーナッツを買っていたことに影響されて、豆のお菓子も買ってみたが、これは帰国後に開けて見ると、ものすごい上げ底仕様で、やられた感が半端ない商品だった。
上げ底という手段は、昔の日本のお土産でも良くあった手口だが、勝った方の「がっかり度」は、かなりでかい。もう二度と買わねえぞ!と固く決意してしまうくらいだから、長い目で見ると、きっと損なのだろうと、あとで思った。
記憶がはっきりしないのだが、搭乗前にX教授は、パスタ入りミートソース?を食べたといっていた。なんでもパスタとミートソースの比率が通常の逆だったそうだ。それならそれで食べてみたかったという気もするが、聞いたのが搭乗直前であり断念。
搭乗してみると機体は、行きと同じくボーイング737型。座席は狙いどおり足下が少し広いエコノミーで一番前の席の窓側。幸いにも3人掛けの真ん中には誰も乗ってこない様子だ。
機内では、専らポメラを使って今回の旅日記を書いていた。通路側の席に座っていたのは、ツアコンと思われる青年で、たくさんの入国用書類を1人で黙々と仕上げていた。ときどきちらっとこっちを見るのが気になったが、飛行機が着陸態勢に入り、S弁護士がポメラを仕舞おうとしたところ、「ソレハナンデスカ?」と興味津々で聞いてきた。なんだ、ポメラが気になっていたのか。
ポメラはデジタルメモ専用機で、パソコンとつながる機能はないこと、しかし即起動、即メモが可能であること、乾電池電源で場所を選ばないこと、SDカードに記録すればパソコンなどにデータは移せることなどを説明する。「中国語ノハ、ナイノデショウカ?」と聞かれるが、あいにく知らないが、電気量販店で聞いてみたらどうだろうと返事をしておく。
ちなみに、S弁護士が愛用するポメラは、5年ほど前に安くなっていたところをアマゾンで6,200円で買った、ガンダムコラボシリーズのランバラル仕様(限定品)である。元値が3万円程度と書いてあった上に、今でも15,000円位の値段のようだから、ほぼ底値で買えたという点でも嬉しい一品であった。
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(帰路の軌跡)
関空に着陸後、モノレールに乗り、入国審査場の方まで到着するが、X教授とY弁護士がやってこない。仕方がないので、入国審査場の前で待っていると、3分ほどしてX教授とY弁護士がやってくるようだ。X教授が「Sさんはねぇ~・・・」とY弁護士に話しているのが聞こえる。
X教授に「また、僕の悪口でも言っていたんでしょ・・・?」と鎌をかけると、「いやいや、Sさんプレミアムエコノミーに乗ったようだよ、お金持ちだね~と話していたんです、、、」とのこと。
確かに、よそから見れば足下が少し広いあの席は、エコノミーの中でもラッキーな席に見えたのかもしれない。
「でも、その認識、間違ってます。第一、私がお金持ちだという点が大きく間違ってますし。それよりなにより、この便にプレミアムエコノミーの設定がないですし・・・・。」とソクラテスの弁明よろしく説明するも、X教授は、笑顔で「まあ、いいじゃないですか」でまとめてしまった。確かに、まあいいことなんだけど、Y弁護士が変な誤解していないかだけが、ちょっと心配だ。
荷物をターンテーブルから受け取って、ここで解散しましょうということになる。X教授とY弁護士に御礼をいって、税関に向かう。貝殻の突起は無理矢理ビニールを噛ませて、リュックの生地から出ないように細工しておいたが、いつその細工も破れるか分かったモンじゃない。若干ひやひやしながらの税関検査になったが、あっさり、「どうぞ」で終わってしまった。考えて見れば象牙でもないし、生きた貝でもないから、そこまで神経質になる必要もなかったかもしれない。
関空構内で、多分しばらく使うことがないだろう人民元を日本円に両替する。ところが100元札が一枚だけどうしても機械を通らない。両替屋さんから、偽札とは断言できないけど、本物と確認できないからうちでは両替できないといわれてしまった。さすが中国、最後まで何があるのか分からないところだった。
それでも、人々のパワーはものすごく感じられる国だった。人々の潜在的パワーだけで考えると、多分日本は、いろいろな面で適わないようにも感じた。
Gさん、X教授のおかげで、とても歓待して頂いたこともあるが、今までの中国の人に対して抱いていたイメージが、かなり変わった。
やはり、勝手に想像しているだけではなく、実際に会ってみることは大事だと強く感じた、貴重な体験であった。
改めて、このような貴重な機会を与えて下さった、X教授と、Gさんに感謝したいと思います。
本当に有り難うございました。
(このシリーズはこれで終了です。)