一枚の写真から~57

あるホテルにて~部屋の鍵と(バラが生けられていた)一輪挿し。

現在はカードキーになっているが、かつてこのホテルでは、写真のように金属製の鍵がキーホルダーに付けられて宿泊客に手渡されていた。

不便で時代遅れかもしれないが、形ある普通の鍵の方が、様々な人々の人生を反映している、そんな気がする。

一枚の写真から~56

ヨーロッパに向けてシベリア上空を飛行中に撮影。

地上は極寒なのだろうが、この景色はまるで芸術作品のよう。

誰が見ているわけでもないのに、このような美しい模様を作り上げている自然の営みに感動させられる。

電車一本遅れた理由

S弁護士は、朝の通勤電車に乗ろうとしていた。
始発駅なので、淀屋橋行き特急がホームに止まってドアを開けている。
いつも乗る特急より一本早く行けそうだ。

京阪特急2扉車は、進行方向に向かって2+2のロマンスシートである。
このシートは背もたれの位置を倒すことにより、常に進行方向に向かって座れるよう工夫されている。
通路側に座ると窓側の人が途中の駅で降りる場合に面倒なので、終点まで乗るS弁護士としては、できれば窓側に座りたいところである。

S弁護士が急ぎ足で特急に乗ると、前方に窓際が空いている席が見えた。
ラッキーだ。
さらに急ぎ足で、その席に向かう。
幸い誰も座っておらず、窓側の席が確保できそうだ。

しかし、その席には妙な違和感があった。
シートが進行方向の反対側に倒れきらず、途中で止まっているようだった。
後ろの席の男性が足下に大きな荷物を置いていたので、倒れないのかと思ったS弁護士は、「すみません。もう少し倒しますね。」と伝え、男性が頷くのを確認の上、シートを倒そうとした。

「ガッ」という音がしたが、やはりシートは完全には倒れない。
シートは何かに引っかかって倒れないことが分かった。
通路側の席と肘掛けの間の下の方に、何かが見える。
携帯ストラップのようなヒモだ。

携帯電話を落としてんのか?そそっかしい奴だな。
「ったく、こっちは迷惑なんだけどなぁ~」と心の中でぼやきながら、さらに引っ張る。
しかし何かに引っかかっているようで、出てこない。

ええぃ!まったくなんてこった!!
心のぼやきはさらに大きくなる。
仕方が無いので、指を突っ込んで引っ張り出そうとする。
ツッ!
何かにぶつかって、右手の人差し指に逆むけができてしまった。
あ~~~~、も~~~!!
心の中では、落とし物をこんなところに残した、そそっかしい前客に恨み節満開である。

しかし座るためには、背もたれをきちんとしなければならない。
だから放置するわけにもいかない。
痛む指を庇いながらなんとか引っ張り出す。
出てきたのは、ケース入りのICOCA定期券だった。

そのまま淀屋橋駅まで乗って行き、そこで忘れ物として届けることも考えられた。
誰かに勝手に使われるよりも、落とし物として届けてもらえば、それだけでもラッキーと違うんかなぁ・・・と一瞬思った。

しかしこういうときに限って、S弁護士の脳裏には定期を落として困っている人の姿が浮かぶのである。
自分が定期券を落としたらホント絶望的な気分で一日を過ごすことになるはずだ。

くっそ~、この駅の駅員さんに渡さないと。
S弁護士は、座席にショルダーバッグを置いて確保し、ケース入りのICOCA定期券を片手に、ホームに走り出て駅員さんを探す。

あっちゃ~、なんてこった、
いつもは、どこかにいる駅員さんが、こういう大事な時だけ、どこにも見当たらない。

「2番線淀屋橋行き特急、まもなく発車です」とのアナウンスが流れ、特急が発車する音楽が流れはじめた。


え~~~い、こんちきしょう!!
電車一本くれてやらぁ!!!

S弁護士は、特急に飛び乗り、座席をキープしておいた荷物をひっつかんでドアから飛び降りた。そのまま駅の有人窓口に早足で向かう。
まもなく、ドアは閉まり、特急は淀屋橋に向かって、S弁護士を乗せないまま発車していった。

有人窓口で、今出ていった特急の5号車に落ちてました、とだけ伝えてケース入りのICOCA定期券を渡し、振り返らずにその足で次発の特急に急いだ。

背中から聞こえる、駅員さんの「有り難うございます」との声が聞き取りにくかった。
S弁護士は、そこでようやく、ずっとイヤホンで音楽を聴いていたことを想いだした。

ホームへの階段を下りている際、音楽の合間に、定期の持ち主と思われる人を呼び出しているような場内アナウンスが聞こえた気がした。

S弁護士は次発の特急でなんとか席を確保し、少し読書した後は、淀屋橋まで爆睡したのだった。

日弁連会長候補者と法テラス案件

 日弁連会長選挙公聴会(九州地域)で、候補者に対して、いくつかの質問と一緒に法テラス案件を何件やっていますかという質問がなされていた。

 ご存じのとおり、法テラス案件は報酬が極めて低く設定されており、経営者弁護士にとっては、手を抜かない限りほぼ確実に赤字案件である。

 これに対して医師の健康保険治療はそれで十分生活できるだけの収入が認められているようであり、むしろ医師の世界では保険適用の治療ができなくなると死活問題であるとも聞く。

 ところが、弁護士の場合はそうではない。私の経験から言って、法テラスからの弁護士報酬だけで事務所を経営することは、ほぼ不可能である。

 しかし、今回のコロナ渦のなか、日弁連は、現在経済的弱者に限定されている法テラス利用を、経済的弱者以外にも拡大すべきという提案をしたかとかしなかったとかで、問題視されていた。

 要するに、その提案は、普通に弁護士費用を支払える人に対しても、法テラス基準の安い弁護士費用でサービス提供せよと日弁連が強いるに等しいものである。

簡単に言えば、
日弁連「コロナ渦なので、経済的に困っていなくても半額以下で弁護士を使えるようにしたいと思います~!」
一般人「お~、有り難い。さすがは、日弁連、やるね~。」
日弁連「もちろんです。日弁連は皆様の味方です!」

弁護士「で、誰がその差額を負担するの?」
日弁連「お前らの自腹にきまっとるやろ!!」

という感じだ。

 歯に衣着せずに言わせてもらえば、これまでの日弁連執行部主流派というものは、弁護士過疎解消!弱者救済!等という、かっこいい掛け声は大好きだが、たいてい若手や現場の弁護士等の犠牲の下に、その政策を実現させようとすることが多いように感じる。

 話がだいぶ飛んでしまったが、日弁連会長候補に話を戻す。

 法テラス案件を何件やっているかとの質問だった。

 法テラス案件をやった経験がないのであれば、法テラス案件の酷さが分かるはずがないので、私としては、法テラス案件でひどい目に遭わされた、現実を知る方に会長になって頂き、法テラスとしっかり戦って欲しいと思っている。

 それゆえ、この質問の回答には興味があった。

 及川候補はここ5年で100件くらいと明確に答えた。
 ~及川候補は確か単独事務所だから、選挙活動もしながら5年で100件もの法テラス案件をこなすとは、凄いとしか言いようがない。法テラスの酷さも十分お分かりなのだろう。

 小林候補は法テラススタッフ弁護士育成をやっていたので、共同受任で60件程と答えた。
 ~共同受任を60件と言われても、養成のためであり、自ら積極的に法テラスを利用したわけではないのだろう。自ら単独で何件も法テラス利用をしていれば、そちらの方がアピールしやすいから、当然その件数も答えたと思われるからだ。おそらく質問者は、候補者単独でどれだけ法テラス案件を処理したかを聞いているはずだから、「自分で処理した法テラス案件はゼロですが、育成のために共同で60件ほど関与しました」、というのが質問者の問に対する正確な答えであるべきだ。

 高中候補は、時間の関係で割愛しますと述べて質問に直接答えなかった
 ~おそらく高中候補は、法テラス案件をご自身で処理した経験がない可能性が高い。なぜなら、「○○件です」と答えた方が「時間の関係で割愛します」と答えるようりも短く答えられるからだ。とはいえ、正直な方なので嘘の経験もいえず逃げた答えになったのだろう。高中候補の顧客層は、法テラスなど必要のない方ばかりなのかもしれない。

 その人と同じ経験をしなければ本当の痛みは分からない。
 本当の痛みが分からないのであれば、その痛みに対する対処方法も真剣になれないことが多いだろう。

 そろそろ、法テラスに対しても、しっかりものを言ってくれる人が日弁連会長になってもいいような気もするね。

日弁連会長選挙公聴会をちょっと覗いて見た

 新型コロナウイルスが猛威をふるっている昨今であるが、日弁連会長選挙は進行中である。
 通常であれば、各地(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州)で公聴会が開かれ、候補者の声をじかに聞けるものなのだが、今回はコロナウイルスの影響もあってか、インターネット経由のリモートで開催されているようだ。

 上記の日弁連会長選挙公聴会は、弁護士なら日弁連の会員専用サイトで視聴することができ、現在(2022.01.28)、東北・北海道・中部・近畿・九州を対象とする公聴会について公開されている。

 近畿公聴会の質問の中で、私がブログで何度も、その内容が欺瞞と過ちに満ちていると指摘している日弁連法曹人口検証本部取りまとめ案に賛成するかとの質問があった。

 及川候補は、弁護士の需要は拡大していないこと、単位会の相当数の反対があること、検証本部の人選の偏り、架空の需要可能性を前提に結論を出している等から、取りまとめ案に反対する意向を明確にした。

 小林候補・高中候補は、取りまとめ案に賛成している内容の回答だった。
 まあ、日弁連主流派の流れを汲む両候補からすれば、反対などと言ったりしたら、たちまちのうちに主流派内での支持を失って、「はい、消えた!」となってしまうだろうから、口が裂けても反対できないのだろう。しかし、この取りまとめ案に賛成するということは、私が指摘したように判断根拠等に虚偽の内容が満ちている偏向した内容の取りまとめ案について、取りまとめ案に相当数の単位会が反対している事実を無視してゴリ押しすることに繋がるから、まあどちらが会長になっても今までの日弁連とおんなじやり方を踏襲するだろうということだ。
 高い会費を取っておきながら、日弁連は弁護士のための組織ではないのか、日弁連に会員の意見が反映されていないではないかという、弁護士に広がっていると思われる潜在的不満に対して、何ら意を払わない可能性があるだろう。

 さらに、法曹志願者の激減について、弁護士の経済的基盤が崩壊しているからではないのかという質問に対して、

 及川候補からは、弁護士業だって仕事であり、弁護士業で生計を立てていく必要があること、日弁連は20年以上前から業務拡大に取り組んできたが、成果が上がっていないこと等の問題点を指摘し、司法試験合格者を減員すべきだと主張している(誤解なきよう申し上げるが、司法試験合格者を現状の1500人前後から1000人前後に減少しても弁護士数は増加し続ける)。

 小林候補は、弁護士にも経済的基盤は大事であることは認めているが、魅力をアピールして志願者を増やせばいいとの回答だった。

 高中候補は、法曹の魅力(得に女性、中高生)を幅広く発信すればいいし、経済的基盤については活動領域の拡大をすれば良いとの回答だった。

 この点については、及川候補だけが正しい現状認識を踏まえた返答をしていると感じている。
 おそらく小林候補も高中候補も、本心では弁護士全体として見た場合、業務の拡大を大幅に上回る弁護士数増加の影響で、多くの弁護士の業務基盤が傷んでいることは理解しているはずだと思う。税務統計等からも弁護士業の収入の凋落ぶりは、相当程度明らかになっているのだから、仮に本当に、多くの弁護士が潤っていると考えているのなら、現状把握能力が全くない、「頭の中がタンポポ畑のお人」と考えざるを得ないからだ。
 しかし、両候補とも、その事実を認めるとこれまで日弁連を牛耳ってきた主流派方針が誤りだったということに繋がるため、やはり、認めるとはいえないのだ

 及川候補の言うとおり、日弁連は私が弁護士になった頃には既に、業務拡大の必要があるから、その努力をしていると言い続けてきたし、そこそこの会費を投入してきたはずである。しかし実際には、業務拡大どころか、司法書士の簡易裁判所代理権が認められてしまうなど、他士業からの浸食を抑制できていない。そればかりか、消費者系弁護士が勝ち取った過払金判決によって過払金バブルが生じたことから、問題を先送りしてしまい、結果的に弁護士数の増大に見合った弁護士業務の拡大ができていないと評価せざるを得ない。

 小林候補も、高中候補も弁護士業の魅力のアピールで法曹志願者が回復すると主張するが、既に日弁連は法科大学院と組んで弁護士業のアピールを相当の会費を突っ込んで何度も実施してきている。
 その上で、なお、司法試験受験者は減少し続けている傾向にあるのだ。

 いくらやりがいがあっても、仕事は生活の糧を稼ぐ手段でもある。食べられないのなら、その仕事を継続することはできない。

 中高生だってその事実は知っているし、だからこそ、現時点で唯一資格で食っていける可能性が高い医師、つまり医学部がどんどん難化しているにもかかわらず、人気がより高まりつつあるのだ。

 大学生は自分の進路についてシビアに考える。本当に魅力があって、生活ができる仕事なら、どれだけ難関であっても、志願者は集まる。かつて法曹資格がプラチナ資格と言われていた旧司法試験時代は、合格率数%であっても、志願者は増え続けていたのである。

 かつては合格率数%であった司法試験の昨年の合格率は40%を超えた
 しかも、受験生平均点よりも約40点も低い点数で合格できる試験になっているのだ。

 これだけ合格しやすくなっても志願者が増加しないのは、端的に言えば、資格に魅力がないからである。そして、弁護士業が仕事として大きく変貌したわけでもないのに、その魅力が減少した根源の問題は、及川候補が主張し、小林候補も少しだけ触れているが経済的基盤が崩壊している点にあると分析するのが、最も合理的だ。

 

 そろそろ、建前ではなく、本音で弁護士のことを考えてくれる日弁連会長が生まれてくれると嬉しいのだが。

今年も職業講話に呼んで頂きました。

 先週の土曜日、今年も大阪市立高倉中学校の職業講話の講師として呼んで頂いたので、講師を務めてきた。

 職業講話は、様々な職業を知ることで、職業観・勤労観を育むとともに、主体的に自らの進路を切り開く能力を身に付けさせることを狙いとしているそうだ。

 私が高倉中学校に初めて呼んで頂いたのはだいぶ前で、私のパソコンに2007年のレジュメが保存されているので、少なくとも15年前から呼んで頂いていることになる。
 途中どうしても避けられない用事で数回欠席したことはあるが、それ以外は、毎年講師を依頼され、努めさせて頂いているように思う。


 ほぼ毎年、伺うことになっているが、他の講師の方々は大体変わられるので、おそらく一番の古株は私であるのは間違いないだろう。

 生徒さんは、中学1年生であり、まだ生意気になっておらず、小学校7年生という感じで、かわいいものである。

 そこで弁護士の仕事内容や、勉強の仕方等を話させてもらうのだ。

 私は、小学校のローマ字のテストで0点しか取れなかった経験があるので、「ローマ字0点でも私くらいにはなれます。0点でなかった人はもっと上に行ける可能性がありますよ。」と話すと、子供の顔が明るくなることもある。

 そして私なりの勉強の仕方などを、普通の子向け、勉強が苦手な子向け、優秀層向けの3つに分けて紹介する。

 しかし、毎年、一番強調していることは、目標を立てることは大事だが、目標から近づいてきてくれることはない、ということである。

 学校の先生は、目標を立てるように言ってはくれるが、目標を立てただけではダメで、自分から目標に近づいていかないと永遠に目標に届かないという最も大事な点は、強調してくれないことが多いのだ。

 目標を立てること、立てた目標に向かって勇気を持って歩き始めること、そして歩き始めたら歩き続けること、これを頭の隅にいつも置いておくように生徒さんにはお願いしている。

 もちろん講師料は、僅かである。
 しかし、生徒さんの様々な感想文が送られてくるのが楽しみで、毎年続けている。

 さて、今年の感想文はどんな内容のものが届くのだろうか・・・。

一枚の写真から~55

NZ南島 テカポ周辺で

どこか遠くまで電力を届けているのだろう。

極めて簡素な電線なので、電線の向こう側に大きな施設があるとは思えない。

遙か彼方まで続いている電線の向こうに、きっとつつしまやかな人の生活があるに違いない。

晩秋の風に吹かれて、音を立てる電線が、子守歌でも歌っているようだった。

大学受験生の皆さんへ

 明日から、大学入試共通テストがはじまる。

 私も30年以上前、共通一次試験に臨んだことがあるので、直前の緊迫感はいまだに覚えている。

 特に私の高校(新宮高校)は、三重県との県境に位置しており、和歌山市にある和歌山大学に設置されていた試験会場には、JRの特急でも3時間以上かかったので、自宅から直接通う形での受験はできない状況にあった。
 そこで、高校では共通一次試験を受ける受験生のために、何人かの先生が引率して、前日から和歌山市内のホテル宿泊するというツアーを企画してくれ、それに参加する方法を採らざるを得なかった。
 当時の共通一次は国公立大学受験のための試験で、私の記憶では、三年生の約一割程度が共通一次を受けたように思う。

 試験時の印象は余り残っていない。おそらく、とにかく無我夢中であったということなのだろう。

 ずいぶん前になる私の経験が参考になるかどうか分からないが、受験では、諦めずに最後まで粘り倒すことが何より大事であると私は思っている。

 どんなに失敗したと思っても、大多数がもっと出来が悪い場合だってある

 私は京都大学法学部を現役・一浪と受験した。
 現役受験の時に確か5問中3問前後くらい解答できていた数学で、一浪受験時には一問も完答できなかった。
 京大の文系数学は確か一問30点の配点だったので、数学だけで現役時点より50点以上は低い結果になっていたはずだ。
 数学が終わった後は、頭が真っ白で、失敗した!もうダメだ!!と思い、しばし呆然としていた。仮にどんなに問題が難しくても、京大受験生は最低2問は解くだろうから、数学だけで50点以上も差がついてしまえば、他の科目で取り返すことなど到底無理だからだ。

 しかし、奇跡は起きうるのである。

 どういうわけか、その年の数学は異常に難しく、多くの受験生が数学で点を伸ばすことができなかった。そのため、数学が普通に得意な受験生も大した点数が取れていなかったようで、数学を抜群に得意としている一部の受験生を除き、数学では致命的な差がつかなかったのだ。
 私は、なんとか(おそらく滑り込みで)、合格ができたのである。

 京大で同じゼミだった、大阪の国立進学校出身の超優秀な女性も、入試の数学は全くできなかった、もうダメだと思った、数学が終わったときに泣きたかったと、私と全く同じ感想を述べていた。

 このように試験の結果というものは、受けた時点では分かりゃしないのである。仮に私が数学の失敗で合格を諦め、残りの科目を投げやりに受験していたら、絶対に合格はできていない。

 だから、ある科目で失敗したと思っても、引きずらず、次で自分の力を発揮することだけを考えるのだ。全ての科目が終わるまで、粘って粘って粘り倒すのだ。

 既に頑張っている皆さんに、敢えてガンバレとは言わない。
 受験生の皆さんには、絶対にあきらめずに、これまで貯えた力を十分に発揮してもらいたいと思っている。

美しい対局姿勢

 昨日、夕食後に動画サイトを覗いたところ、将棋の谷川浩司九段と深浦康市九段のライブ対局(順位戦B2)があったのでつい見てしまった。

 現在、将棋界は藤井聡太四冠という超天才が現れ、大いに盛り上がっており、私もかなり注目して藤井四冠の対局はかなり見ているが、どの棋士のファンかと問われれば、未だに谷川浩司九段のファンであると答えるだろう。

 谷川九段の対局姿勢は、とにかく美しい。

 姿勢はもちろんだが、所作にも澱みがないし、駒の動かし方も駒と将棋盤の絆を一手、一手深めていくように動かしていく。
 相手の駒を取る場合も、自分の駒台をきちんと整理し、取る予定の駒を置くスペースをきちんと作ってから相手の駒を取るので、駒台に手をやるとおそらく次に相手の駒を取るのだろうと予想がついたりもする。

 純粋な将棋の強さであれば、現時点の将棋界では藤井四冠が最強だろうが、対局の美しさという点においては、谷川九段の将棋は藤井四冠の将棋に勝っていると私は感じている。

 将棋の内容は、深浦九段がかなり押していたようだったが、1九の飛車を角で取った深浦九段の手が疑問手だったようで、谷川九段の逆転勝ちになったようだった。

 残念ながら全盛期の強さを発揮する機会が減り、映像で見られることが少なくなってきた谷川九段ではあるが、昨日の勝利で四連勝と調子を上げつつあるようにも見える。

 谷川九段のさらなるご活躍を願いつつ、美しい将棋の対局所作を御覧になりたいのであれば、谷川九段の将棋を是非見て頂きたいと、切に思うのである。

男女共同参画からの提案に弱い常議員会?

 男女共同参画推進本部(以下「共同参画」という。)から、常議員会に会費免除に関する提案がなされ常議員会で議論、採決がなされた。

 現在、大阪弁護士会では育児期間中の会費免除の制度はあるが、育児期間中に弁護士業務を休業していないと免除が適用されていない。共同参画は、この休業要件を撤廃し、育児期間中に弁護士業務を行って売上を上げていても、会費免除を認める内容にすべきだというのである。休業要件撤廃を要求する理由は、「育児期間中における会員の負担軽減を図り、育児参加を促進する(その結果、男性の育児参加を促進することになる)ための積極的施策」として行いたいとのことであった。

 大阪弁護士会の会費免除規定には、疾病の場合の規定もあるが、この場合は常議員会で調査小委員会を編成し、調査小委員会が本人・主治医等に意見を直接聞くなどして、本当に業務ができない状態かを厳格に判断し、弁護士業務遂行が不可能で真にやむを得ないと判断された場合でないと会費の免除は受けられない。近親者の疾病や老親の介護の必要性があって、弁護士業務の大半を休む必要がある弁護士がいても、その会費は免除対象にすらなっていない。

 弁護士会費は弁護士会維持存続のための不可欠な財源であり会費収入は極めて重要である。会社と同じで弁護士会もお金が無ければ何もできない。

 その会費収入の重要性からすれば、会費免除は真にやむを得ない事由がある場合に限るべきであり、疾病の場合の厳格な調査は会費収入の重要性に鑑みれば相当なものであると考えられる。なぜならこのように厳格な判断を行わないのであれば、どの程度の事由があれば免除されるのかという限界が不明確となり、ずるずると会費免除される場面が拡大していき、弁護士会の経済的基盤が崩壊する危険性があるからである。

 また、上記の通り会費収入の重要性に鑑みるならば、今回の共同参画からの提案にように、何らかの政策目的を実現するための積極目的での会費免除は、可能な限り認めるべきではない。
 なぜなら、積極目的での会費免除を認めれば、どのような積極目的であれば免除が相当なのかという点が全く不明確となるからである。


 例えば、今回の提案を受け入れ、育児の男性協力は素晴らしいからそれに繋がる育児期間中の会費免除に休業要件をなくしてよい、という判断をした場合、その後、家族の看病・介護を行うことは素晴らしいことだから看病・介護の負担を負う会員は、弁護士業ができていても会費免除しようという主張が出てきた場合、どうするのか。男性の育児参加促進のための会費免除はOKだが、家族の看病・介護のための会費免除はNOであるという判断ができるのか。
 さらに、積極目的での会費免除を認めるのであれば、今回の共同参画のように声の大きな委員会の意見ばかり通る危険性も否定できない。

 私の個人的意見にはなるが、育児期間中とはいえ、弁護士業務を実際にやっているのであれば、大阪弁護士会の会員として弁護士業務を行って売上を上げていることになる以上、大阪の弁護士をまとめている大阪弁護士会に何らかの負担を負わせていることになるから、その経費である弁護士会費を支払うのは当然だと思う。また、売上を上げている以上、会費負担能力も認められるであろう。

 誤解して欲しくないのだが、私自身、男性の育児参加促進を否定しているわけではない。仮にある積極目的(例えば今回のように、男性の育児参加促進)を達成するために、該当会員に対して会費免除相当額の援助が必要なら、そのような制度を作り特別会費を徴収して援助を実行すれば良いのであって、会費免除という目立たない手段で、結果的に弁護士会の存続の基盤である経済的基礎を揺るがす危険のある方策を取るべきではないという意見なのである。

 将来の弁護士業界の悪化に伴う会費減少の事態に陥るなどして、会費免除を廃止する必要性が出た場合には、疾病で働けない弁護士の会費免除は維持しつつ、積極目的での会費免除から停止・廃止すべきであることは当然であろうと思われる。この場合、特別会費を徴収する手段で行っておけば、その積極目的の会費免除について廃止する可能性についてもその制度の中に予め定めておきやすく、廃止しやすいとも考えられる。


 ところが、共同参画側の提案者もしたたかであり、新たな会費を徴収する制度を提案すれば、多くの会員から反対にあう可能性が高いことは分かりきっているから、できるだけ目立たない会費免除という手段をとっているのである。また、総会では大量の委任状等で決議できるから、常議員会さえ通過できれば、なんとかなるという目算もあるのだろう。

 共同参画からの提案理由の中には、財政的になんとかなるという検討結果や、他の弁護士会が休業要件を撤廃していることなども理由に上げられていたが、私はそれらの理由は何ら根拠になっていないと考えている。

 仮に今回の会費免除を追加して行っても問題ないほど弁護士会費が潤沢に残っているというのであれば、それは本来会費の取り過ぎであり、全会員に還元すべきものであるはずだ。


 休業要件の撤廃について他の弁護士会と平仄を合わせる必要あるという理由なら、国選・管財事件の負担金制度を取っていない弁護士会もあるのだから、そちらと合わせるべきだろうし、ラックの持込案件まで会費負担を負わせているのは日本中で大阪弁護士会だけのはずだから、その負担金制度も廃止すべきという議論にならないとおかしいではないか。

 以上のような主張を常議員会で行ったが、この議案を総会に提案するかどうかの採決で反対したのは、インターネット参加の常議員では私1人だけだった(会場参加の方の賛否は不明)。インターネット参加の常議員の方で保留された方が4名いらっしゃったことが救いだったが、多くの常議員の先生方は、あっさり賛成されていた。

 私は10年以上継続して常議員を務めさせて頂いているが、総じて男女共同参画推進本部からの提案について、異論を述べる先生や反対される先生は極めて少ない。


 私の目から見れば、常議員会は、男女共同参画からの提案に、すこぶる弱いのである。