弁護士大激変!~週刊ダイヤモンドの記事 その2

 さて、週刊ダイヤモンドの記事によると、過払い漁りに走るモラルの低い弁護士がいると書かれている。私の知人の弁護士では見たことはないが、日弁連も「債務整理事件に関する指針」を出していることからすると、苦情もあるのだろう。

  ただ、債務整理に関する苦情について私が耳にするのは、弁護士に対する苦情ではなく司法書士に対するものが多いのだが、週刊ダイヤモンドはその点には触れていない。ひどい例になれば、相談者が5件の消費者金融から借りていても、そのうち過払い状態になっている2件だけを受任して他の3件は受任しない場合も聞いたことがある。私が法律相談で話を聞いた人の中にも司法書士にそのような目に遭わされた方がいたし、同じような例を友人の弁護士からも聞かされたことがある。

 債務整理は多重債務者の経済的再生が目的である。そのためには5件の消費者金融からの借入で困っている方に対しては、5件全てを対象に多重債務者の人の経済的再生方法を考えなければならない。儲けやすい2件だけ受任してあとは放りっぱなしというのであれば、多重債務者の経済的再生は困難である。
 この記事に関して宇都宮健児弁護士がインタビューに答えているが、宇都宮弁護士も言うように、信頼できる弁護士が見つからない場合は、弁護士会に相談すべきだ。認定司法書士でも良いのではないかという意見もあるが、認定司法書士でも簡裁代理権(140万円未満)の範囲でしか、代理できない。法律でそう決まっているのだ。

 負債ないし過払い金額で140万円以上の債務整理事件を扱おうとする司法書士は、法律違反を覚悟で取り組もうとしている危険性があり、十分注意する必要がある。
 

 弁護士に依頼すると極めて高額の弁護士費用を請求されるのではないかという心配をされる方もいるが、弁護士会経由の場合は弁護士会基準が定められているし、実際には司法書士の方がはるかに高額の費用を請求している場合もあるときいている。イメージに騙されないことだ。

 確かに大々的に宣伝をしている過払い事務所では、莫大な宣伝費の元を取るためにも、できるだけ手間がかからず儲かる仕事をする必要があるだろう。また資本主義を徹底し、規制緩和を進めたため、弁護士も激増しており、徐々に競争原理が働きつつある。
 

 競争原理の元で生き残るかどうかの基準は、よい弁護士か否かではなく、儲けられる弁護士であるか否かである。

 そして、儲けるための最も良い手段は、手間をかけずに儲かる(またはかけた手間以上に儲かる)事件だけをすくい取ることである。
 派手な広告で依頼者を集め、その相談者をスクリーニング(選別)して、過払い状態になっていると見込まれる事件だけを受任し、面倒な分割払いの和解が見込まれる場合は受任しないという方針をとれば、楽で儲かる仕事だけを得ることが出来る。競争原理のもとでも、当面は生き残れる。しかも、この行為は全く適法である。

 また、先ほどの司法書士の例のように儲けやすい2件だけを受任し、他は受任しないという扱いをすれば、5件の借金を抱える多重債務者の経済的再建は困難になるかもしれない。しかし、極論すればそのような扱いも、儲けた者勝ちの資本主義の競争原理の中では、何一つ恥じることのない正当な競争だといわれてもしょうがない。

 私自身は、これまでブログで述べてきたように過度の規制緩和(今以上の弁護士人口の激増)は、儲けた者勝ちの競争原理をさらに進めるだけで決して好ましいものとは思っていない。

 しかし、若手弁護士の多くがビジネスロイヤーを希望するなど現実的に競争原理は確実に弁護士の変質をもたらし始めている。

 国民の多くは、儲けた者勝ち主義の弁護士が増えて欲しいと、本当に思っているのだろうか。

 おそらくそうではあるまい。

 しかし、このことについて、声を上げている人は少ないように思う。

(続く)

弁護士大激変!~週刊ダイヤモンドの記事 その1

週刊ダイヤモンド8/29号に、弁護士大激変!と書かれた特集がなされている。

内容は、①過払い請求の宴、②弁護士の使い方入門、③弁護士非情格差、④タレント弁護士の本音、⑤法科大学院の蹉跌、⑥やめ検人脈の系譜というもので、最初に過払い請求について書かれているのが昨今の状況を反映していて興味深い。

過払い請求は、比較的定型的な業務であり、大手消費者金融会社相手だと取りっぱぐれもなく、報酬も頂きやすいため、扱う弁護士・司法書士が一気に増加した。

 もともと過払い請求は債務整理の一つである、任意整理の一環である。

 任意整理は、これまで消費者金融が取得していたグレーゾーン金利を、利息制限法の法定利率で引き直し計算を行い、払いすぎの金利部分を充当して減額させ、法律上支払うべき金額を確定し、多重債務者が支払える限度で、債権者(消費者金融)と個別に分割の支払約束を取り付ける、という多重債務者の経済的再建を目指す手続である。

例えば、消費者金融から50万円を借り入れ、利息が25%を支払っていたとすると、元本50万円の場合利息制限法上は18%が上限金利なので、25-18=7%分が、払いすぎ利息(いわゆるグレーゾーン金利)となる。この7%分を返済したとして扱って計算を行い、借金の額を減らしていくのである。長期間借入をしている人ほどこの7%分が積み上がっていくので、取引期間が長期にわたる場合は、すでに完済状態になっている場合もある。それでも支払っていた場合は逆に、消費者金融にお金を返してと請求できる。これがいわゆる過払い金だ。

 もちろん、引き直し計算の結果、過払い金が発生している場合は取り戻す請求を行うが、過払い金請求自体はそう手間はかからないことが多い。むしろ、借金が残った場合に、どうやって債務者が支払える範囲で分割払いの約束を消費者金融と締結するかの方が、やっかいなことが多い。債務者は支払が困難だから弁護士に相談に来ているのだし、消費者金融は早く回収したいから長期の分割に難色を示すことが多い。また、遅延損害金をカットするかでもめることも多いからだ。しかも、このような場合、弁護士報酬もそう高くはないし、分割でないと支払いできない場合も多い。

 一方、引き直し計算の結果、過払い状態になっている消費者金融ばかりだと、弁護士としては楽である。まずやっかいな分割払いの交渉をしなくて済む。現在では、大手の場合、取引履歴はすぐ出てくるので証拠もあるから訴訟しても敗訴の危険はまず無いし、勝訴の場合は少なくとも相手が大手であれば取りはぐれることがない。なにより依頼者からものすごく感謝される。もちろん報酬も分割払いの話し合いをつけたときよりも高く取れるし、実際上も過払い金からもらえるので取りはぐれる危険もない。

 私は、独立してこの事務所を開設する前から過払い金請求事件を取り扱ってはいたが、当時は大変だった。

 まず、今では受任通知を送ればすぐに出してもらえる取引履歴が、何度請求しても出してもらえない。仕方なく、推定計算で訴訟を提起し(訴状受理の段階で、推定計算の根拠をしつこく聞く裁判所書記官もおられたように記憶する。)、その手続の中で、文書提出命令を申立て、履歴を出すよう裁判所から命令してもらうよう努力する。

 文書提出命令の争いに勝って、裁判所から消費者金融会社に対して取引履歴を提出するよう命令が出ても、抗告され、再度争う必要がある。抗告審で勝っても、許可抗告の申立までされる。
 取引履歴を出してもらうだけでも、これだけの遠い道のりが必要だった。

 さらに、本訴においても、みなし弁済の主張をはじめ、ありとあらゆる抵抗を受けたのが、当時の過払い訴訟だった。最高裁判決が出てずいぶん楽になり、多くの過払い金問題は和解でケリがつくようになった。

(続く)

余計なお世話??~その7

 ACCJは、法曹数と国民数の比率において、日本は著しく低いのだから、法律家は不足していると主張するようです。
日本のマスコミも、この法曹の数と国民の数の比率を持ち出して、日本は法律家が少なすぎると主張することが良くあります。

 確かに、国民の数を法曹の数で割って、法曹一人あたりの国民の数で比較することは、一見分かりやすく、なんの問題もなさそうです。

 しかし、この主張は、意図的にねじ曲げられた主張であることに注意すべきです。

 既に私の2008年10月8日のブログ
http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2008/10/08.html
でも書きましたが、法曹一人あたりの国民数の比較は、隣接士業(税理士・弁理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士など多くの隣接士業)や企業法務部におられる方など、法律業務に実際に携わっている方々を意図的に排除して計算されているのです。

 「司法の崩壊」を書かれた河井克行元法務副大臣の計算によれば、アメリカで弁護士が従事し、解決を行っている問題や仕事に関して、日本で同様の問題に従事している法律関連職種の人数を計算すると、弁護士・隣接士業・企業法務部員なども含め、およそ、27万人になり、人口比で計算すれば、日本は世界でもアメリカに次いで法律家の多い国と言えるそうです。

 分かりやすく例えていえば、アメリカ・フランスではスポーツカー(弁護士)でなんでも用を足してしまう(法律関連問題を解決しようとする)文化があり、日本では用途(法的問題・分野)に合わせた自動車(弁護士・隣接士業・企業法務部員など)を用いるという文化があるのです。

 その文化や制度の違いを無視して、「日本では6748人に1台の割合でスポーツカーが所有されているが、アメリカでは248人に1台の割合、フランスでは1476人に1台の割合でスポーツカーが所有されているから、比較すると日本では自動車が全く普及していない。だからもっとスポーツカーを普及させろ。」と主張したとしたら、その主張は、わざとある結論へと誘導したいための主張か、お馬鹿さんの主張かのいずれかでしょう。
 自動車の普及は人口と自動車の台数全てを考慮に入れて初めて分かる問題であって、人口とスポーツカーの台数だけの問題ではありません。普通の自動車、軽自動車、トラックなども含めて全てで判断されるべき問題です。そして、用途に応じてどのような自動車を利用するかはその国の文化の問題でもあります。

 さらに、ACCJは韓国の弁護士増員を高く評価しているようですが、既に、韓国では弁護士が大量に余ってきており、お金さえもらえれば受刑者の執事のようなことをやる弁護士や、月額4000円程度の弁護士会費用すら払えない弁護士が増加して、問題になりつつあるそうです。しかし、このような韓国の実情について、ACCJは全く触れていません。
 ACCJ加盟企業が韓国で訴訟を行う場合に、そのような弁護士に、自分の大事な事件をまかせることができるのでしょうか。

 以上のように、一見してもっともなACCJの主張ですが、子細に見ていくと論拠が不明確であったり、意図的なデータの利用法など、明らかに一つの方向へと結論を意図的に誘導するものです。

 そして、外交問題の報道を見れば明らかですが、国同士の熾烈な駆け引きは、本質的には、それぞれの自国の利益を守らんがためです。ACCJが米国企業の意思を色濃く反映する団体なのであれば、米国企業に有利になる提言しかするはずがありません。企業は国家と異なって営利団体であり、利益を上げることが本来の目的ですから、なおさらその傾向は強いでしょう。米国企業の利益になるということは、どういう面で現れるか明確ではありませんが、トータルでみれば、結局、日本の不利益になる危険は、相当程度あると考えるのが自然です。

 確かに敗戦直後から、アメリカは本当に日本を親身になって見てくれた部分があったと思います。だから、私を含め日本人の多くはアメリカを好きになったのです。しかし、規制緩和の行き過ぎ等によるアメリカの中流層の崩壊と格差社会の進展、マネー資本主義に見られるような節度無き強欲の蔓延など、アメリカも大きく変わってしまった部分があります。

 現実をよく見て、本当に法曹(特に弁護士)の爆発的増加が日本に必要なのか、何となく増加が必要な気にはなってはいるが、それは誰かの意向に乗せられているだけではないのか、冷静に判断する必要があるように思います。

(この項、終わり)

余計なお世話??~その6

⑤最後に、ACCJは東京以外における法曹の不足と諸外国との比較から、法曹の数を継続的に増加させなければならない。と主張するようです。

 ACCJは、「実際の事例を見ると、東京・大阪以外の都市及び道府県では弁護士の数は依然として不足している」と主張します。

 まず最初に、ACCJとしては「実際の事例」を把握して主張しているはずなのですから、「弁護士不足が根本原因で、東京・大阪以外の都市及び道府県において、○○に~~の不都合が生じており、その解消にどうしても必要であるから、弁護士は不足している。」と、具体的、論理的に論じて頂きたいと思います。どんな「実際の事例」を見たのかも明らかにせず、いきなり弁護士の数は不足していると断定するのは、単なる結論の押しつけではないでしょうか。

 ACCJは「実際の事例」を見たといいますが、本当に見たのでしょうか。見たのであれば、東京以外の都市及び道府県における実際の事例を示していただきたく思います。仮にACCJが東京・大阪以外で弁護士に依頼しようとしたときに困ったという事実があったとしても、根拠がそれだけの場合は、特殊な一部の事実だけで、どうして、一般的に弁護士が不足していると断言できるのか不思議です。仮にACCJが自らの体験だけで、東京・大阪以外は弁護士不足であると主張しているのであれば、沢山のアリが歩いているのを見つけ、一匹~二匹を捕まえてみたら偶然足が一本取れて5本だったので、ここを歩いているアリは新種で足が5本しかないアリである、と断定するようなものでしょう。

 また、何を根拠に弁護士数が不足だと断定したのでしょうか。

 弁護士が不足しているかどうかは、基本的には弁護士を利用する側から(場合により採用する側も考慮して)判断されるべき事柄でしょう。具体的には日本人・日本企業・日本在住の方の判断すべきことです。しかし、日本企業は(あれだけマスコミを通じて弁護士を増やせと言っていたのに)弁護士の採用を大幅に増やすことはしていません。司法統計を見ればわかりますが、一過性の過払い訴訟を除く民事事件の訴訟事件は明らかに減少傾向にあります。

 より分かりやすく言えば、2007年から2008年までの1年で弁護士数は約2000人増加しました。これは県単位で最も人数が少ない部類に属する島根・鳥取などの弁護士会の会員数が約50名ですから、その40倍です。1年で2000人増加するということは、今の大きさの島根県弁護士会が、毎年毎年、新しく40個ずつできていくのと同じです。

 新司法試験合格者が現状のままだとしても、毎年2000名近い弁護士が世に出てくることになります。当然この2000名の新人弁護士も弁護士として食っていかなければなりませんから、単純に計算すれば、島根県の弁護士全員が、1年間で処理している事件の40倍(つまり島根県全体の事件の40年分に相当するだけ)の事件の増加が毎年毎年必要になってきます。

 これから人口減少に向かう日本において、どう考えても、弁護士が必要になる事件が、それだけのペースで増加するとは思えません。

 そうなると、今までは事件にしていなかった案件について弁護士が、訴訟にした方が良いと勧めることがおきても不思議ではありません。これは、訴訟社会への第一歩です。

 また、仮に、東京・大阪以外の都市及び道府県において、数多くの地方の法律事務所が、あふれかえる事件を処理するために新人弁護士を競って採用しようとしているが、新人弁護士の数が圧倒的に不足して採用できずに困っている、などという事情があるのであれば、ACCJの言い分も理解できます。

 しかし、各地方弁護士会からこれ以上弁護士人口を増やしてどうするのだという意見が相次いでいるのです。実際に法律事務所に就職できない新人弁護士も相当数出てきています。この事実と、ACCJが根拠も実例も示さずに述べる「実際の事例」と、いずれがより真実に近いのかは明白だと思います。

 このような現状があるのに、どうしてACCJが「実際の事例を見ると、弁護士は不足している」と言い張るのか私には理解ができません。

(続く)

余計なお世話??~その5

 ACCJは、③さらに法律専門職の経歴における流動的な性格があることを指摘し、新規法曹の数は増加させなければならないとしています。

 訳文のせいか、明確な主張は分かりにくいのですが、要するに企業の法務部門に移る弁護士や、裁判官・検察官に任官する弁護士数がますます増加しているし、政府機関の弁護士出向要請も一般化しつつあるから、法律専門職の空白を補うために新規法曹は増加させるべしというのがその主張のようです。更に簡単に言えば、企業・裁判所・検察庁・政府機関などに弁護士のニーズが増加しているのに、それを補うだけの弁護士数がいないではないかということのようです。

 では、ACCJのいうとおりのニーズが本当にあるのでしょうか。

 まず、企業の法務部門に移る弁護士が増加しているという指摘ですが、大阪弁護士会2007年11月月報に掲載された、平成18年の日弁連調査では、上場企業を中心とする国内企業3795社に対して、社内に弁護士を採用することを考えている企業は、回答1129社の内、53社しかありませんでした。
 しかもそのうち、14社は、1人採用して様子を見たいというお試し組ですから、弁護士採用に本当に前向きな企業は、1129社の内39社、わずか3.5%もありません。 そして、回答した企業1129社の内、今後5年間で弁護士をどれだけ採用する予定があるかという質問に対しては、全て併せても47人~127人しか採用予定がありませんでした。1年あたり、全国の主な企業でわずか10人から25人しか、企業側は弁護士を必要としていないことが明らかになっています。

 次に、裁判官への任官者は、ちょっと古いのですが、これしか見つからなかったので最高裁の平成15年度の資料を示しますが、全部で(1年あたりではありません)約60名の任官者しかいません。1年あたり10名未満です。
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/kakyusaibansyo/iinkai_01_sankouisiryou_10.html

 更に検察官への弁護士任検者は、平成8年以降一人もいないと聞いています。任検者が相当数必要となっているのであればその資料を出して頂きたく思います。

 政府機関の弁護士出向要請が一般化しつつあるかといえば、資料が見つからなかったので分かりませんが、私の周囲の弁護士で出向要請された弁護士は見たことがありません。おそらくごく僅かの出向要請に過ぎないのではないでしょうか。どれくらいの人数の弁護士出向要請がなされているのか、ACCJに示して頂きたいと思います。

 以上の事実から見ても、少なくとも、現段階でACCJが、弁護士不足の根拠として指摘している点が、間違いだらけであることは、ご理解頂けると思います。

 さらにACCJは、事件記録を扱う能力に限界があるため日本における訴訟処理の速度が遅いので、裁判官の数の増加を求め国民の要求に応えるべきだと述べます。

 訳文のせいもあるかもしれませんが、まず個人的には、「事件が多すぎて処理しきれない状態にある」と言われるのであればともかく、アメリカ商工会議所の方に「事件記録を扱う能力的に限界がある」となんの根拠も示さずに見下したような言い方をされたくありません。

 確かに裁判官の仕事の多忙さは私も同期の裁判官などから聞いており、その加重な負担を考えれば裁判官・裁判所職員の増員は必要ではないかと思います。しかし裁判官は、公務員ですから国民の納得の上で、予算措置を講じる必要があります。本当に国民の方が、裁判官を増やすように要求されているのであれば、当然政府はその措置をとっているはずです。

 また「国民の要求」と安易にいってくれますが、アメリカ商工会議所の方が、日本政府よりも日本国民のニーズを理解しているというのでしょうか。少なくともアメリカ商工会議所の方々が日本の世論調査をしたなどという話は聞いたこともなく、そのような方々が日本国民のニーズを本当に把握したというのであれば、それはもはや超能力でも使ったとしかいいようがないのではないでしょうか。
 日本の国民の要求を、ACCJで勝手に作り上げてもらっても困ると思います。

 それに、本当に日本の裁判の速度が遅いのでしょうか。最高裁判所の資料によれば、分かりますが、アメリカと比較しても日本の裁判は、決して遅くはありません(下記URL参照)。

http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/asu_kondan/asu_siryo5/pdf/siryo5.pdf

 この資料から分かるように、ACCJにとって、日本の裁判が遅いのであれば、同じように、ACCJにとってアメリカの裁判だって遅いことになるはずです。そうだとすれば、ACCJとしては、他国の裁判を批判するより自国の裁判を批判するのが先ではないでしょうか。あれだけ沢山の法律家が世に溢れているにもかかわらず、日本と同程度のスピードの裁判しか行えないのであれば、それこそ、(事件数の多さもありますが)アメリカの法曹が事件記録を扱う能力に限界があるから裁判が遅いのだ、と言われても仕方がないように思うのです。

 また、ACCJは、民間部門における経験を有する中堅クラスの裁判官及び検察官を採用して、裁判官・検察官の数を増やすべきだと主張します。
 「民間部門における経験を有する中堅クラスの裁判官及び検察官」という意味がまず理解できません。民間部門で経験を有する方が裁判官・検察官になって、中堅クラスになるべきだというのであれば分かります。しかし、民間部門で経験を積んで裁判官に採用されても、採用当初は裁判官としては新人なので、採用して即、中堅裁判官にはなり得ません。

民間で中堅クラスにおられる方を裁判官・検察官として採用すべきだというのであれば、その方々の法的知識・リーガルマインドはどのように判定するのでしょうか。就職以来ずっと営業畑で中堅クラスになられたサラリーマンの方を裁判官に採用して、すぐに裁判ができるはずがありません。このあたりのACCJの主張は(訳文のせいもあるかもしれませんが)私の理解を超えています。

 この項の最後に、ACCJは多くの行政機関に弁護士を幹部候補生として常勤で採用することは望ましい旨を述べています。この点に関しては私も賛成です。ただし、それだけのために、訴訟社会になりかねないほど弁護士を大量生産する必要があるかと言われれば、その必要はないように思うのです。

(続く) 

余計なお世話??~その4

 ACCJは、新規法曹の研修の機会は、a法律事務所がこれまで行ってきた研修、b国選弁護を利用した研修が可能であって、新規法曹の研修の機会の歪みは解消できるはずだと主張するようです。さらに、弁護士会は研修機会を提供する道徳的義務があると述べています。

 ACCJが知っているか知らないか不明ですが、aの研修は昔から各法律事務所で仕事を一緒にやらせるなどの方法で行われてきました。そのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が、新規法曹のあまりにも急激な増加により困難になってきているのが問題となっているのです。ACCJは、日本の4大事務所は100名を採用する予定であるなどと述べていますが、すでに大事務所でもリストラが開始されている事実(ある信頼すべき弁護士の方から伺った情報である)を把握しているのでしょうか。法律事務所に雇用されることもかなわず、全く実際の経験もなく独立を余儀なくされる新人弁護士がこれから続々誕生することを把握しているのでしょうか。

 それにも関わらず、ACCJが新人弁護士のOJTは可能だと主張することは、そもそも議論にすらなっていないように思います。例えて言えば歯医者さんに行って治療を受けたときに、あまりに痛いので「痛いです」と言ったら、歯医者さんに「痛くない!」と断言されるようなものでしょう。

 また、確かに理系出身者などが法曹を目指すきっかけとして法科大学院は当初は意味があったかもしれません。しかし、社会人入学者の割合がH16年度では48.4%であったところ、H20年度では29.8%、とほぼ半減に近い状況になりました。法学部以外の出身者の入学者数もH16年度では34.5%あったところ、H20年度では26.1%に減少しています。つまり法科大学院制度を続ければ続けるだけ、社会人・他学部出身者の割合が減少しつつあるのです。なにより、法科大学院を志願する志願者が、H16年度には72800人いたのが、H20年度では39555人であり、これまたほぼ半減に近い大幅な減少ぶりです。沢山の志願者が法科大学院に集まらなければ優秀な人材は確保できないし、優秀な人材が確保できなければどんなに教育を頑張っても、優秀な法曹を育てるには限界があることは当然でしょう。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/08100219/007/001.htm

 法科大学院制度(そして法曹の爆発的増加による魅力低下)により、他学部出身者が法曹を目指す意欲はどんどん削がれていると評価すべきではないでしょうか。現実に数字として上がっている事実(上記リンク参照)とACCJの主張は齟齬があるように思います。

 ACCJのbの主張は、私が日本語訳に頼っているせいか、申し訳ないがよく分かりません(誰か教えて下さい)。国選弁護を希望者だけではなく全ての弁護士(若しくは新規法曹?)に割り当てて、その過程で研修すればいいという意味なのかもしれません。もし新規法曹に割り当てて研修させろという趣旨だとすれば、少なくとも大阪弁護士会では既にその研修は行われています。

 大阪では新人弁護士が国選弁護を行う際には必ず、刑事弁護の経験を積んだ弁護士と一緒に事件を行わせるという研修を課し、その研修が終了しないと原則として国選弁護を行うことができない制度となっています。ACCJが言っていることくらいは、既に大分前からやっているのです。

 結局ACCJが、「新規法曹の研修についてはa・bの確かな方法がある」と大層に御主張されることくらいは、既に日本では行われていることばかりです。その中で、爆発的な弁護士人口の増加により、特に法曹として必要と思われる、aのOJTが極めて困難になりつつあるのが最大の問題なのだと思います。

(続く)

余計なお世話??~その3

 ACCJは、日弁連の緊急提言に対して、「司法試験の合格ラインを下げることが新規法曹の質を低下させたという点についてデータがない。」と批判し、さらに「ACCJは現在の法曹候補者の質は大学院レベルの教育を追加したため向上したと考えている。」ということのようです。

 司法試験の合格者を増やすために、合格ラインを下げると、当然レベルダウンした合格者が増加することは証明するまでもないでしょう。100mを11秒以内で走れる人間をランダムに集めたリレーのチームを作るのと、100mを16秒以内で走れる人間をランダムに集めたリレーチームとではどちらが速いかは、明白でしょう。
 さらに司法試験委員会で公表されている新司法試験の採点雑感を見ると、基本ができていない答案が多いことが毎度のごとく指摘されています。以前から指摘してきた司法研修所教官の意見も合格者の質の低下を示唆しています。法曹としての最低限の資質を図る2回試験の不合格者の増大や、これまで沈黙を守ってきた最高裁が2回試験における不合格者のとんでもない内容の答案を開示したこと、近時の裁判官が弁護士の質が低下した旨を非公式に寄稿したなどの情報に鑑みると、レベルダウンした法律実務家が世に出始めており、法務省・最高裁が懸念を感じるレベルまで至ってきていることは明らかです。

 私自身の経験からいえば、受験者の上位1500番くらいまでは、結構早く到達できたものの、そこから合格に至るまでが大変でした。受験者のうち上位の方は、合格者とやむを得ず受験をあきらめた少数の方しか減少せずに再受験されますし、優秀な若手もどんどん成績を伸ばしてくるので、1500番くらいから合格レベルまでが本当に大変な競争でした。しかし逆に、その大変な競争にさらされたからこそ、基礎的知識も、論理構成力も、かなりしっかり身につけなければ合格できなかったと思います。私の感覚から言えば、仮に1500番くらいを取れる実力しかないときに運良く合格していても、(自分がいちばんよく分かりますが)基礎的知識もしっかりしていない状態だったので、それで実務家を名乗るなんて、今考えると相当恐ろしい状況だったように思います。
 今は、法科大学院を卒業しても3回受験して失敗すれば、失格になるので、受験者集団に成績優秀な方が残りにくい制度になっています。つまり新司法試験は過度な競争が起こりにくい状況にしてあるのです。さらに合格者が2000人を超えるのですから、基礎的知識に不安があっても合格者の数を合わせるために相当数の方が合格されている可能性があります。昨年法曹人口問題PTで、新司法試験を受験された方にお話を聞く機会がありましたが、「新司法試験において試験問題を完全に理解して解答しているのは、おそらく成績上位1~2割くらいの受験生だけで、極論すれば、私を含めて、他の受験生は問題の意味を完全に理解できないまま、それらしいことを書いているのではないかと思う」という感想を述べていた方がおられました。

 確かにACCJが言うように、質の低下を示す直接的・客観的なデータがあるのか、出してみろ、といわれると困難があるとは思います。質の低下を100m走のように客観的に数値化することはおそらく不可能だからです。
 しかし、2回試験不合格者の増大や最高裁のあまりにもひどい不合格答案の開示、司法研修所教官や新司法試験採点者から基本的理解が欠けているという指摘がひんぱんになされるなど、質の低下を意味する数多くの指摘がある中で、逆にACCJが言うように法曹候補者の質が向上したという客観的データはあるのでしょうか。それをACCJは示すことができるのでしょうか。

 ACCJは「受験予備校よりも法科大学院が有益であるということは証明可能だ」と主張するようですが、それは論点のすり替えです。問題は新人法曹の質がどうかという問題であって、新人法曹教育制度の問題ではないからです。つまり、同じ自動車を手作業で組み立てるA社と、組み立てを自動化しているB社があるとします。この場合、どちらの自動車が優れているかは、出来上がってきた自動車同士を比較する他ありません。製造過程が自動化されているからB社製の自動車が優れていると主張しても何も意味がないということなのです。
 すなわちACCJがここで証明すべきは、法科大学院制度を経て法曹になった者が、(個々人ではなく)全体として、旧制度の下で法曹になった者よりも優秀か同程度であるということであるはずです。その証明は、私は無理だと思います。できるものならやって頂きたいし、客観的に証明してみせるのが、日弁連の主張を批判して証拠を出してみろと凄んでいる、ACCJの義務というべきでしょう。

 また、ACCJが法科大学院によって法曹候補者の質が向上していると主張するのであれば、ACCJに加盟する米国企業は、優秀なんだから、新人弁護士や法科大学院卒業者を、さぞかし沢山就職させているはずでしょう。しかし、その点については、ACCJはなんら触れておりません。この点も明らかにして主張して頂きたいように思います。
 仮に、ACCJが新人弁護士や法科大学院卒業者を多数就職させておらず、その言い訳として、ACCJ加盟企業としては日本人法律家を必要としていないという理由が、もしACCJ側から出されるとするならば、なぜ、ACCJは加盟企業となんら関係のない法曹人口に関して、「法曹の増加は司法改革において決定的に重要である」などと主張するのか、という根本問題が生じます。

(続く)
 

余計なお世話??~その2

 そもそも、ACCJが在日米国商工会議所であることから、さぞかし、日本の弁護士が少なくて採用できないなどの不利益が、在日アメリカ企業にあるのだろうと思って意見書を読んでみました。

 お読みになった方はお分かりかと思いますが、実際に法曹不足でACCJ加盟企業が不利益を被ったなどという理由は一切書かれていません。

 ACCJの主張の根拠を、もう少し詳しくあげてみると、①司法制度改革審議会が国民の需要に応えるために2010年までに新規法曹を3000人とするといい、閣議決定をしたではないか。そのために、法科大学院が設立されたではないか。②日弁連の2008年7月18日の緊急提言は根拠がない。③新規法曹に質の高い研修機会は可能である具体的には、法律事務所による研修、刑事裁判制度による研修が可能である。④弁護士以外の企業法務部・裁判官・検察官などになる弁護士の数が増大しているから法律専門職の空白を補うため(坂野注:弁護士が不足しているという趣旨か?)新規法曹の数は増加させなければならない。④日本における訴訟処理の速度が遅いため裁判官・検察官の増員も必要で、それに備えて新規法曹の増員は必要である。⑤実際には、東京・大阪以外では弁護士数は不足している。司法過疎は改善されていない。⑥諸外国と比較して弁護士数が少ない。というくらいになるでしょうか。

 順次反論していきます。

 まず、①についてですが、法曹人口増大論者がよく閣議決定を持ち出して、新規法曹を2010年までに3000人にするという決定がなされていると主張します。ではその閣議決定を見てみましょう。

http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/keikaku/020319keikaku.html

これが、3000人を決定したとして引用される閣議決定です。

問題の箇所は、

Ⅲ 司法制度を支える体制の充実強化
第1 法曹人口の拡大
の部分に出てきます。

 確かに、「平成22年頃には司法試験の合格者数を年間3000人程度とすることを目指す。」と書かれていますので、一見すると3000人は決定事項かと思われます。

 しかしこの閣議決定を良く読まれれば分かりますが、きちんと決定した事項については(実行できたかどうかはともかく)「所要の措置を講ずる」「必要な対応を行う」と明確に実行を断言しています。例えば、法曹人口の大幅な増加という項目で「平成14年に1200人程度に、平成16年に1500人程度に増加させることとし、所要の措置を講ずる」と記載されていますので、この部分については閣議決定で決まっていると言われても仕方がないでしょう。

 ところが新規法曹人口3000人の部分についての表現は、実行を断言する表現とは明らかに異なり、「目指す」となっています。
 あくまで「目指す」という努力目標でしかありません。決定した事項ではないのです。

 更に詳しく見てみると、司法試験合格者3000人を目指すという文章の前に、「今後の法的需要の増大をも考え併せると、法曹人口の増加が急務となっているということを踏まえ」と書かれた部分があります。このように、法曹人口の増加は、法的需要が増大することがまず前提だったのです。しかし、司法統計をご覧になれば明らかですが訴訟案件は微増ないし減少レベルに止まり、法的需要が増大するという前提は大きく崩れています。しかも、大阪弁護士会某会派の方のお話によれば、現在地裁訴訟案件の55%が過払い金訴訟だということです。つまり、通常の民事事件は大幅な減少傾向にあるのであって、一般国民の間で、法的需要が増大しているとは到底言えない状況にあるというべきでしょう。

 また、「法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年頃には司法試験の合格者数を年間3000人程度とすることを目指す」とも書かれています。新司法試験委員会の採点に関する報告などを読むと、もっと基本的な知識を習得させるべきであるという意見が多く上がっているなど、決して法科大学院制度が成功している制度ではないことは明らかです。

 以上述べたように、2010年3000人というのは、あくまで「目指す」という努力目標です。また、目指すとしても法的需要が増大する前提が満たされ、法曹養成制度の整備の状況を見定めた上での話です。法的需要が増大せず、法曹養成制度の整備も不十分である現状では、増員努力目標の前提が完全に崩壊した状況にあると言えましょう。前提が崩壊している以上、努力目標であった2010年3000人の目標も修正されるのが当然です。

 繰り返しになりますが、閣議で決定されているのはあくまで、「平成14年に1200人程度に、平成16年に1500人程度に増加させることとし、所要の措置を講ずる」点までであり、それ以降ないしそれ以上の増員については、なんら決定されていないのです。

 「閣議決定で、平成22年の司法試験合格者3000人が決まっている」という主張は、誤解か、自分に都合良く閣議決定を読み替えた曲解なのではないかと私は考えています。

(続く)

余計なお世話??~その1

 仮に、在米日本国商工会議所という架空の団体が存在したとします。

 そして、その団体が、アメリカにおける弁護士人口が過剰であり、その結果、弁護士がかつて担っていた公的責任を放棄し、自分の事務所の経営だけを考えるように変質したこと、弁護士が自らの利益のために時間を浪費する訴訟や無闇な買収までを勧めるよう変質してしまったこと、諸外国に比べて異常に高額なリーガルコストを企業・国民が負担せざるを得なくなっていること、仕事を失った弁護士などによる反社会的行為を行われ弱者が被害に遭う事例が毎年多数見られることなどに鑑み、アメリカの弁護士人口を1/10にまで減少させることは、決定的に重要である。
 なんて主張したら、アメリカの弁護士達は黙っているでしょうか。

 余計なお世話だ。
 これは内政干渉ではないか。
 自由競争で弱者が負けることはやむを得ない。それが資本主義だ。
 弁護士といえども職業だ。それを利用して稼いで何が悪い。
 公的責任を負えというなら生活を保障しろ。
 商工会議所に何が分かる。
 アメリカにはアメリカのやり方がある。

その他様々な反論が、噴出することは確実だと思います。

 ところが、在日米国商工会議所(実在の団体です)は、次のような意見書を出しています。

 「法曹の増加は司法制度改革において決定的に重要である」

 その理由として、①日弁連は主張を裏付ける客観的データを提供していない。②新規法曹に対する研修については確かな方法が存在する。③法律専門職の経歴における流動的な性格はより多くの若手法曹の供給を求めている。④弁護士は東京以外、特に過疎地域では不足している。という4点が上げられています。

以下のリンクをご参照下さい。

http://www.accj.or.jp/doclib/vp/VP_BengNKNI.pdf

(続く)

最新司法修習生就職(難)状況

 新62期修習生は、全国各地での分野別修習を7月29日に終了して、集合修習のため埼玉県和光市の司法研修所に戻ることになっているようです。

 私達が司法修習生の頃は、各地での修習を終了し、和光の司法研修所に戻る際には、すでに就職が決定している方がほとんどでした。

 最新の、情報によると、大阪で司法修習中の260名中、アンケートに回答してくれた方が約160~170名、そのうち約45%の方が、まだ就職先が見つかっていないようです。全国平均でも、アンケート回答者の約30%が就職未定のようです。

 しかもこれはアンケート調査ですから、就職が決まった修習生は回答しやすいけれども、就職が決まっていない修習生としては、自分は決まっていませんと回答しにくい 調査です。したがって、本当に就職先が見つかっていない方は、おそらく全国的に見ても40%以上いてもおかしくありません。

 そういえば、前日弁連会長の平山正剛氏は、司法修習生の就職は2010年まで大丈夫とおっしゃっていたはずですが(2007年11月9日の当職のブログをご覧下さい)、この状況でも大丈夫とおっしゃるおつもりなのでしょうか。

 仮に2010年まで大丈夫であっても、大丈夫なのが2010年までということは裏を返せば、その後は大丈夫じゃないということです。平山氏の見解が日弁連執行部の見解だったとすれば、まず現状をどうするのか、次に2010年の後はどうするのか、日弁連執行部に明確に説明して頂きたいところです。

 また、昨今、法科大学院への志願者が減少の一途であることが、報道されていますが、無理もありません。時間もお金もかけて法科大学院へ進学し、新司法試験・2回試験に合格して、ようやく資格を得ても、就職すら困難なのですから。

 そして、就職困難な状況は、需要がないのに供給が増え続けるのですから、更に悪化することはあっても改善する兆しは今のところありません。

 法科大学院の関係者の方には、新司法試験の合格率が低いから志願者が減少しているのだ、と主張されることがあるようですが、世の中の人々は、そんな馬鹿ではありません。

 法科大学院卒業というだけでは、なんら就職に有利でもない現状を十分知っているのです。そのうえで、新司法試験が、法科大学院に対してたくさんのお金と貴重な時間を費やしたうえで、なお、挑戦するに値する試験なのか否かを冷静に判断しているはずです。

 その冷静な判断の結果、挑戦するに値しない制度であり、資格であると判断するからこそ、志願者が激減しているのではないでしょうか。

 おそらく法科大学院としては、「法曹はいつの時代でも食いっぱぐれないし、法曹の魅力はいつの時代でも変わらない」と思っていたのかも知れません。しかし、いくら社会的に有意義であっても、仕事がなく食えない職業であれば、多くの人はその職業を目指しません。職業は、自分を実現していく手段ですが、同時に生活の糧を得る手段でもあり、いずれかを欠く職業は魅力がないからです。しかも、その職業に就くために、たくさんのお金と時間がかかるならなおさらでしょう。

 ちょっと脱線してしまいましたが、法科大学院も、いつまでも新司法試験のせいにせず、自らへの志願者の減少の本当の原因を、冷静に探る必要がある時期に来ていると思います。

※ このブログの記事掲載の日時が誤って7月17日と表示されていました。正しくは7月21日ですので、訂正いたします。