弁護士大激変!~週刊ダイヤモンドの記事 その2

 さて、週刊ダイヤモンドの記事によると、過払い漁りに走るモラルの低い弁護士がいると書かれている。私の知人の弁護士では見たことはないが、日弁連も「債務整理事件に関する指針」を出していることからすると、苦情もあるのだろう。

  ただ、債務整理に関する苦情について私が耳にするのは、弁護士に対する苦情ではなく司法書士に対するものが多いのだが、週刊ダイヤモンドはその点には触れていない。ひどい例になれば、相談者が5件の消費者金融から借りていても、そのうち過払い状態になっている2件だけを受任して他の3件は受任しない場合も聞いたことがある。私が法律相談で話を聞いた人の中にも司法書士にそのような目に遭わされた方がいたし、同じような例を友人の弁護士からも聞かされたことがある。

 債務整理は多重債務者の経済的再生が目的である。そのためには5件の消費者金融からの借入で困っている方に対しては、5件全てを対象に多重債務者の人の経済的再生方法を考えなければならない。儲けやすい2件だけ受任してあとは放りっぱなしというのであれば、多重債務者の経済的再生は困難である。
 この記事に関して宇都宮健児弁護士がインタビューに答えているが、宇都宮弁護士も言うように、信頼できる弁護士が見つからない場合は、弁護士会に相談すべきだ。認定司法書士でも良いのではないかという意見もあるが、認定司法書士でも簡裁代理権(140万円未満)の範囲でしか、代理できない。法律でそう決まっているのだ。

 負債ないし過払い金額で140万円以上の債務整理事件を扱おうとする司法書士は、法律違反を覚悟で取り組もうとしている危険性があり、十分注意する必要がある。
 

 弁護士に依頼すると極めて高額の弁護士費用を請求されるのではないかという心配をされる方もいるが、弁護士会経由の場合は弁護士会基準が定められているし、実際には司法書士の方がはるかに高額の費用を請求している場合もあるときいている。イメージに騙されないことだ。

 確かに大々的に宣伝をしている過払い事務所では、莫大な宣伝費の元を取るためにも、できるだけ手間がかからず儲かる仕事をする必要があるだろう。また資本主義を徹底し、規制緩和を進めたため、弁護士も激増しており、徐々に競争原理が働きつつある。
 

 競争原理の元で生き残るかどうかの基準は、よい弁護士か否かではなく、儲けられる弁護士であるか否かである。

 そして、儲けるための最も良い手段は、手間をかけずに儲かる(またはかけた手間以上に儲かる)事件だけをすくい取ることである。
 派手な広告で依頼者を集め、その相談者をスクリーニング(選別)して、過払い状態になっていると見込まれる事件だけを受任し、面倒な分割払いの和解が見込まれる場合は受任しないという方針をとれば、楽で儲かる仕事だけを得ることが出来る。競争原理のもとでも、当面は生き残れる。しかも、この行為は全く適法である。

 また、先ほどの司法書士の例のように儲けやすい2件だけを受任し、他は受任しないという扱いをすれば、5件の借金を抱える多重債務者の経済的再建は困難になるかもしれない。しかし、極論すればそのような扱いも、儲けた者勝ちの資本主義の競争原理の中では、何一つ恥じることのない正当な競争だといわれてもしょうがない。

 私自身は、これまでブログで述べてきたように過度の規制緩和(今以上の弁護士人口の激増)は、儲けた者勝ちの競争原理をさらに進めるだけで決して好ましいものとは思っていない。

 しかし、若手弁護士の多くがビジネスロイヤーを希望するなど現実的に競争原理は確実に弁護士の変質をもたらし始めている。

 国民の多くは、儲けた者勝ち主義の弁護士が増えて欲しいと、本当に思っているのだろうか。

 おそらくそうではあるまい。

 しかし、このことについて、声を上げている人は少ないように思う。

(続く)

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