裁判所の予算

 裁判所データブック2009(財団法人判例調査会発行)を、司法制度改革推進本部の先生に紹介され読んでみた。

 裁判官や検察官の給与体系も載っている。

 1位の最高俸給は、やはり最高裁長官だ。

 2位には、最高裁判事と検事総長が同額で並ぶ。

 3位が東京高裁長官。どういうわけだか、東京高裁長官と他の高裁長官とでは差が設けられている。

 4位は東京以外の高裁長官と東京高検検事長。東京高検検事長と他の高検検事長とで差があるのは裁判所と同じだ。

 5位に次長検事・その他の検事長。検察では(東京以外の)高検検事長も他の検事長も同額のようだ。

 俸給の他に各種手当てが付くだろうから、裁判所データの記載よりも実際の俸給額面は高くなるだろう。

 しかし、裁判官や検察官の担っている重い責任と仕事量の多さを、同期の裁判官、検察官などから聞かされて、少しだけ知っている立場から言うならば、もう少し予算を付けるべきではないかとも思う。

 平成21年度国家予算総額は88,548,001,321,000円

 平成21年度裁判所予算額は   324,732,707,000円

 裁判所予算額に裁判官の俸給が含まれているかどうかは知らないが、少なくとも裁判所予算額として明記されている金額は、国家予算に対して占める割合にして、僅か0.367%である。

 自由競争を進め、事後的に司法による是正を行う社会を目指したにしては、あまりにもお粗末だと言わざるを得ない。

 高速道路の整備もせず、事故に対する対応設備も完備しない状態で、高速道路での制限速度を撤廃して制限なき高速度で走行することを奨励するようなものではないだろうか。

 弁護士人口のみの急増に象徴されるように、いびつな司法制度改革は現在も進行中である。早急に改める必要があると思うのだが。

司法占領進行中?

 さる確かな筋からの情報によると、ドイツでは、弁護士資格を大量に与えて弁護士を増やし、ドイツ以外の外国弁護士にも門戸を開放した結果、ドイツの大手法律事務所のほとんどが英米系の巨大事務所の傘下に組み入れられてしまったという状況になっているらしい。

 英米系の巨大法律事務所は、その巨大な事務所を維持するために高額のフィーを顧客に要求する傾向にあると聞いたことがある。また、アメリカの法律事務所は、いかに正義を実現するかということよりも、いかに事務所の稼ぎにつなげるかを優先しているともいわれている。

 英米系の事務所の、法律を手段とする稼ぎの方法は徹底しているそうだ。

 たとえば、うちの事務所(イデア綜合法律事務所)では、弁護士同士が各自が担当している事件について様々な疑問があれば、お互い意見を交換してよい解決を目指そうと努力している。
 ところが、アメリカでそのようなことをやると、今の相談のフィーはどの依頼者に請求すればいいのだ、となるそうだ。

 「専門家が、正義を失いかつて弁護士と医者、会計士は自らを公的責任を伴う民間プロフェッショナルとみなしていた。自分の事務所のためだけでなく、社会全体にとって善か否かを考えながら責任感を持って行動していた。弁護士は、時間を浪費する訴訟ややみくもな買収を考え直すよう依頼人に助言することさえあった。今や弁護士だけではなく、あらゆる専門家が変わってしまった。」とニューズウイーク紙(日本版)で嘆かれているように、現在のアメリカの弁護士は、時間を浪費する訴訟や、闇雲な買収であっても依頼者に勧める(その結果法律事務所は儲けにつながる)現状すらあると思われる。

 また、今の日本の法律事務所では、裁判所に提出する書面や証拠のコピー紙料金・コピー代金を依頼者に請求するところは、私の見たところあまりないように思う。仮にあったとしても、法律事務所も実際にコピー代金が1枚いくらでかかっているのだから、実費を請求することは決しておかしくはない。
 しかし、アメリカでは、裁判所に提出する書面のコピー代金につき、コピー実費に当然のようにコピー手数料を上乗せして顧客に請求している。しかも、大事務所ともなれば、莫大なコピーをするから、そのコピーに関する収益が相当巨額になっている場合もあるそうだ。

 また、国際的に活動する日本企業のリーガルコストの大半はアメリカの弁護士に支払われているとの話を聞いたこともある。裏を返せば、日本の弁護士費用はアメリカに比較してべらぼうに安いといっても過言ではないだろう。

 話を戻すが、英米系の巨大ローファームに組み込まれたドイツの弁護士は、巨大ローファームの方針に逆らえないから、やむなく、巨大ローファーム流の儲け主義に走らなければならなくなるだろう。つまりドイツは司法占領を受けてしまったということだ。

 司法占領を受けてしまえば、良くも悪くも占領してきた国に有利な制度・流儀が幅をきかせ始める。今後ドイツ企業がアメリカ企業と交渉するにしても、アメリカ企業の代理人もドイツ企業の代理人もアメリカ巨大ローファーム系列の弁護士であった場合、交渉の流儀はアメリカ流になろう。ドイツのやり方は、もはや通用しなくなると思われる。そうなると、アメリカ企業は楽だ。自分のやり方を相手に押しつけることができる。熾烈な競争をしている企業の間で、自分の土俵で相撲を取ることほど有利なことはないだろう。司法占領を受けることは、長い目で見れば、ドイツ企業・国民にとって決してプラスにならないようにも思われる。

 そればかりではない。ドイツのリーガルコストは、おそらく高騰するだろう。巨大ローファームが進出してくるのは、慈善事業を行うためではない。法律を手段に儲けるために進出してくるのだ。高額のフィーを取る巨大ローファームが、進出先のドイツ国民に対してだけ格安のサービスを行うはずがない。仮にそうしていても顧客を既存の法律事務所から奪い去るまでの間だけだろう。

 今、日本にもその流れが押し寄せつつある。日弁連でも外国弁護士制度研究会で研究がなされている。

 だが、司法占領はいきなり行うことはできない。ターゲットとなる国の司法が健全かつ強固であれば、そこに進出することは難しい。巨大ローファームがいきなり進出して高額なリーガルサービスを売ろうとしても、ターゲット国の司法が金儲け主義でない場合、儲け主義が通用しない可能性もあるからだ。つまり、司法占領を行って巨大ローファームが進出するためには、ターゲット国の司法(特に弁護士)が金儲け主義に染まっている方が都合がいいはずだ。

 しかも、司法を民間の立場から支えている弁護士を金儲け主義に染めることについては、万国共通の簡単な方法がある。規制緩和や自由競争名目で大量に増員させて、弁護士が正義よりもお金儲けに主眼を置いて頑張らないと食えないようにすればいいだけだ。

 よく、弁護士も自由競争をすれば価格が下がるのではないかという人もいるが、必ずしもそうではない。もしそうなら、アメリカでは弁護士費用はきわめて安くなっていなければおかしい。しかし、実際はアメリカにおけるリーガルコストはきわめて高額になっていると聞いている。

 こう考えてくると、在日米国商工会議所(ACCJ)が、なぜ内政干渉に等しい弁護士増員を日本政府に求めているのかが見えてくるような気がする。

 司法占領の地ならしが進んでいるような気がするのは、おそらく私だけではないはずだ。

よくぞ言ってくれました!!

 私が今年の7月23日から8月8日にかけて、7回シリーズで書いた「余計なお世話??」と題する、在日米国商工会議所の「法曹人口増加の提言」についての、私なりの反論があります(以下のリンクをご参照下さい~米国商工会議所の意見については7/23付け私のブログにリンクを貼っております)。

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2009/07/23.html

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2009/07/24.html

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2009/07/28.html

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2009/07/29.html

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2009/07/31.html

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2009/08/05.html

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2009/08/08.html

 私が批判した、在日米国商工会議所の意見については、千葉県弁護士会でも問題になっていたらしく、千葉県弁護士会が反論を書いて提出されたそうです。(千葉県弁護士会の反論の全文は、下記のリンク参照。このPDFファイルは兵庫県弁護士会の弁護士武本夕香子先生から頂きました。)

ファイルをダウンロード

 さすが千葉県弁護士会の方々が真剣に作られただけあって、私の稚拙な反論よりも極めて論理的且つ説得的に反論されているように思います。特に、最後の「3 おわりに」の部分は、まさに言いたいことをズバリ指摘しておられるものであり、胸がすく思いが致しました。

 若干引用させて頂くと、

 「(前略)、(粗製濫造された弁護士による)被害は弁護士を選択することの困難な一般国民に及び、他方、大量増員によって利益を受けうるのは、弁護士を選択する知識と能力のある大企業等に限られるのである。一般国民にとって粗製濫造の防止こそ、「決定的に重要」なのである。」

 「(今回の意見書がアメリカの日本国内での自由な経済活動を要求する年次改革要望書の一環であることを指摘して)自国のためだけの身勝手な政策の押しつけは、米国の尊重する公平と独立という精神に大きく反するのではないか。」

 そして最後が、最も痛快です。

 「貴会議所が日本国内で活動する米国系企業により組織されるものであるにしても、日本の司法制度のあり方は日本国民により議論されるべきものであり、内政干渉に等しい言動は厳に慎むべきである。仮に、貴会議所が日本政府に「勧告」(recommendation)するのであれば、米国における大量弁護士の問題点、具体的には競争原理の徹底(競争至上主義)のもたらした弊害などを明らかにし、わが国が、弁護士がジョーク(joke)の対象になる米国のような状況に陥らないような提言をすることである。」

  相手が誰であれ、正しいと信ずることを、臆せずに、きちんと述べる。それは、当たり前でありながら、実際にはなかなか困難を伴う行動です。少なくともこの点に関して、そのような行動が、きちんとできている千葉県弁護士会は、素晴らしいと思います。

 よくぞ言ってくれました!!

関西学院大学 2009年秋学期開講

 関西学院大学法学部2009年春学期は、私と加藤・吉村・久保の合計4名で一つの講座を共同で担当しましたが、秋期は、私1人で一つの講座を持たせて頂いています。

 科目は私法特別演習Bで、個人的にペット問題に興味があるのでペットの法律問題を中心に据えた演習内容をおこなっており、今年で3年目になります。

 これまで、5~6名の受講生しかおらず、相当アットホームな雰囲気でやれたのですが、本日初回の演習日に出向いてみたところ、今年は仮登録者が13名いて、一気にこれまでの2倍の学生数になってしまいました。

 個人的にはもう少し、学生さんの数が少ない方がやりやすいのですが、せっかく参加しようという気持ちで仮登録してもらったので、めげずに頑張ろうと思っています。

新規法曹内定率?

 弁護士になるには、司法試験(現行)・新司法試験に合格し、司法修習を受けた後、司法修習生考試(いわゆる2回試験)に合格しなければならない。

 2回試験に合格した者のうち、裁判官になる任官者、検察官になる任検者、そして弁護士になる者、の3者に通常は進路が別れる。最近は弁護士の就職難が叫ばれているが、2回試験に合格していながら裁判官にも検察官にもならず、弁護士登録もしない者の割合が、増加しつつあるそうだ。

 現行60期 

 2回試験受験者1468名 同合格者1397名(合格率95.2%) 

 任官者52名、任検者71名、弁護士登録者1204名(弁護士未登録者70名~合格者中5.0%)

 現行61期

 2回試験受験者642名 同合格者609名 (合格率94.9%)

 任官者24名、任検者20名、弁護士登録者532名(弁護士未登録者33名~合格者中5.4%)

 現行62期(2009.9.3 一括登録時点で計算)

 2回試験受験者数377名、同合格者354名(合格率93.9%)

 任官者7名、任検者11名、弁護士登録者285名(弁護士未登録者51名~合格者中14.4%)

 つまり、2回試験に合格していながら、裁判官にも検察官にも弁護士にもならなかった者が、2回試験合格者7名に1人以上いるということだ。もちろん、学者になったり企業に就職した者もいるはずだから、未登録者全員が職がないというわけではないだろう。

 しかし、法曹(裁判官・検察官・弁護士)を目指して司法試験(現行・新)に取り組み頑張って合格したはずの、司法試験合格者が2回試験に合格した後であっても、なお7名に1人(14.4%)以上、目指したはずの法律家になれていないという数値は、極めて異常ではないか。

 仮に、2回試験合格者中、法曹になれた者の割合を、新規法曹内定率と呼ぶとすれば、最も新しい現行62期の法曹内定率は約85.6%となる。

 一方、報道によると今春卒業した大学生の就職内定率は約95.6%となっていた。

 新規法曹内定率 85.6%

 大卒就職内定率 95.6%

 本当に弁護士を含めた法曹が不足しているの??

私の予想は外れましたが・・・・。

 今年度の新司法試験合格者は2043名だったそうです。

 閣議決定で念を押されているので、司法試験委員会は一度決めた合格者数の目安(2500~2900名)に反しないのではないかという私の予想は外れました。

 この合格者数にいかなる意味があるのか、本当のところは、司法試験委員会に聞いてみないと分かりません。

 しかし、合格者数の目安があるにもかかわらず、それに大幅に満たない合格者数にとどめたということですから、いかに合格者数の目安があろうとも、合格レベルを下げて数あわせするにも限界がある、これ以上の合格レベルの引き下げは極めて危険である、と司法試験委員会は考えたのかも知れません。

 もしそうだとしたら、司法試験委員会の判断を高く評価すべきであると同時に、これは法科大学院教育に強く反省を迫る、非常に大きな警鐘と捉えるべきでしょう。

 法科大学院はさんざん問題を指摘されながらも、法科大学院教育は優れた教育であり、厳格な卒業認定をしていると主張し続けてきました。その法科大学院が、優れた教育を施し、厳格な卒業認定をし、自信を持って卒業させたはずの卒業生が、今回の合格率を基にすれば、少なくとも27%しか新司法試験合格水準に到達できていないということになるからです。

 先日も、法科大学院で教鞭を執っておられる先生とお話しましたが、本音を言えば法科大学院側も、もう辞めたいところばかりではないか、だがどこの法科大学院も自分のところが先頭を切ってやめるわけにいかないと思っている状態ではないのか、と述べておられました。

 また、せっかく、(司法試験の科目ではない法律に関して)最先端の授業を法科大学院で行っても、学生が受験科目の内職ばかりしていて、ろくに授業を聞かず、幅広い法的知識を与える理念がもう失われている、なにより幅広い経験を持つ人材が法科大学院に来てくれない、とのことでした。

 面子を大事にして、現状をこのまま放置すれば、国民の司法への信頼が大きく揺らぐかも知れません。そうなってしまえば信頼を取り戻すことは非常に難しいはずです。

 (遅すぎるかも知れませんが)もう、過ちは過ちと認めていくべき時期に来ているのではないでしょうか。  

新司法試験合格者数の予想

 今年の新司法試験の合格発表は、9月10日である。

 司法試験委員会が、平成21年度の合格者数の目安として発表しているのは2500~2900名である。

 最高裁が、法科大学院出身者の司法修習生考試(いわゆる2回試験)の不合格答案のレベルの低さを指摘して警鐘を鳴らし、日弁連も合格者数を昨年並みに維持すべきであると主張し、修習生の就職難も極めて深刻だ。

 だが、おそらく、それにも関わらず、司法試験委員会は、合格者の目安の範囲内若しくはその近くで合格者数を決定してくるだろうと私は考えている。

 理由は今年3月31日の閣議決定だ。

 http://www.moj.go.jp/SHINGI/SHIHOU/090422-6.pdf

 「司法試験の合格者数の拡大について、法科大学院を含む法曹養成制度の整備状況を見定めながら、現在の目標(平成22年度合格者3000人程度)を確実に達成することを検討するとともに、その後のあるべき法曹人口について、法曹としての質の確保にも配慮しつつ、社会的ニーズへの着実な対応等を十分に勘案して検討を行う。」

 と法曹人口に関する閣議決定の冒頭には書かれている。この資料が司法試験委員会第55回会議で配布されているからだ。

 しかしこの閣議決定は、冒頭から突っ込みどころ満載である。

 政府はいつ法曹養成制度の整備状況を見定めてくれたのだろうか。

 相当昔に定めた目標を、社会の変化も勘案することなく、なんの批判的検討もせずに正しいものとしているのはいかなる根拠に基づくのか。

 合格者3000人の達成した後、社会的ニーズなどを検討するとしているが、何故今すぐ社会的ニーズを検討しないのか。新人弁護士の就職先がないことは、既に社会的ニーズがないことの表れではないのか。

 司法試験合格者増加と、法曹サービスの質の向上がリンクすると考えているようだが、そうだとすれば何故アメリカやドイツのように弁護士があふれかえる国で、法律を徹底的にビジネスの道具にする弁護士が揶揄されているのか。そのような弁護士が増加することが政府の考える法曹サービスの向上なのか。

 だんだん腹が立ってくるのでこの辺にしておくが、わざわざ、今年3月31日の閣議決定で念を押し、その資料を司法試験委員会で配布している以上、司法試験委員会がその閣議決定に面と向かって反することはしないだろう。

 合格レベルを下げてでも、閣議決定にほぼ沿った合格者数に揃えてくると考えられる。

 ただ、その中で、目安の最下限(2500名)に近い合格者しか合格させなかった場合は、司法試験委員会の精一杯の抵抗なのだと考えるべきなのだろう。

 単純に2500名の合格者数だけで考えれば、私は最初の論文試験で(一番最後の方だろうが)合格していたはずだ。その頃の私の法的知識や理解は、当時は自分なりに分かったつもりであったが、今思えば理解は非常に表面的・皮相的で、当時の合格者に比べれば、それこそなんにも解っちゃいないレベルだった。

 これで本当に良いのだろうか?

弁護士大激変!~週刊ダイヤモンド(8月29日号)の記事 その4

 「弁護士非情格差」は、弁護士過剰の一側面を端的に示している記事だ。

 記事の中には円グラフがあり、①週60時間以上もの激務もザラ、②半分以上が取扱事件30件未満、③5人に一人は年収500万円未満とされている。
 ①・②は概ね私の感覚とも一致するが、③はちがう。③では無回答の15.4%を除いているが、所得が少ない弁護士ほど回答しないだろうから、おそらく、3人に一人は年収500万円未満であってもおかしくはない。

 ごく一部に超高額の収入を持つ弁護士がいるため、世間的には弁護士が全体として高額所得者であると勘違いされている面があると思う。例えば、週刊ダイヤモンドの記事の中では大手法律事務所のパートナークラスは10億円超の弁護士がいるように書かれているが、仮に所得10億円の弁護士が一人いたとすると、所得0円の弁護士が99人いても、その平均年収は1000万円となる。所得10億円の弁護士が仮に10人いれば、990人の弁護士が無収入でも、平均年収は1000万円になってしまう。弁護士の平均年収が1000万円であれば、弁護士は一般に金持ちだという発想は誤りであることは明白だ。
 特に最近のノキ弁などの人は大変だろう。

 さらに今後は、司法修習生の給費が貸与制に変更される見込みだ。法科大学院に通うため借金をし、(司法修習生はバイト禁止であるため)司法修習を受けるために借金をする、借金まみれで弁護士になっても、就職すら覚束ない、こんな仕事を優秀な人材が目指すだろうか。

 法曹に優秀な人材が必要なのは、一般の国民の方がいざというときに頼る、最後の手段が司法だからだ。経済力や権力や多数決に左右されず、公平に扱ってもらえ、自らの主張を戦わせることが出来る、権利救済のための最後の場面だからだ。試験の成績優秀者=優秀な弁護士とは必ずしも言えないが、試験の成績が水準に達しない者と優秀な弁護士はもっと結びつかないだろう。

 私自身、優秀な弁護士をめざして努力の過程にあるが、 それでも、修習生に極めて簡単な質問をして答えが返ってこないときには、もっと勉強してないと怖いぞ、と思ってしまう。

 いざという場面で、優秀でない弁護士が多数混じっていたら、一般の国民が司法に救済を求める際にどれだけ困るであろうか。そうなってから、こんな司法に誰がした!と叫んでも遅いのである。

 「法科大学院の蹉跌」は、法科大学院を正面切って批判する記事を殆ど書かないマスコミとしては、よく踏み込んだ方だと思われる記事である。法科大学院はマスコミを利用した広告をよく行うので、おそらくマスコミにとってはいいお客さんであるはずだ。そのお客さんを怒らせるような記事を書くことは商売上得策ではないから、これまでのマスコミの法科大学院に対する、及び腰の報道も理解は出来る。

 しかし、めちゃくちゃな制度設計、現実を見ない見切り発車、状況が変化しても一向に制度変更をしない政府の無軌道ぶり、最高裁も敢えて言及した質の低下など等、問題は山積みである。

 私個人としては、法科大学院卒の方でも、上位の方は決して従来の弁護士に劣ることはないと思う。しかし、合格者の数あわせのため、合格ラインを下げてまで合格させている現状から、全体として勉強不足の方でも合格できる試験になっていることは事実であろう。

 特に、週刊ダイヤモンドの記事を注意深く読まれた方にはお分かりだろうが、現状は恐ろしい。

 【「法科大学院生第1期生、特に社会人出身者には極めて優秀な人間が多かった。」と法科大学院関係者は口を揃える。】と記事には書かれているが、その前のページで、最高裁が「新60期司法修習生考試における不可答案の概要」を公表して「基礎的な事項についての論理的・体系的な理解が不足している(者がいる)」と質の低下に警鐘を鳴らしている事実が書かれている。

 法科大学院第1期生の大半が受験したのが、新60期の司法修習生考試である。

 つまり、法科大学院が最も優秀だと自負する第1期生(未修コース除く)が殆どを占める考試について、最高裁判所が質の低下を示唆する指摘をしているのだ。

 法科大学院の認識=新60期は極めて優秀
 最高裁判所の認識=新60期に基礎的事項の理解不足の者がいる

 このギャップを、法科大学院はどう説明するのだろう。

 さらにいえば、法科大学院によれば第1期生が最も優秀だったのだから、その後は(上位の方はともかく、全体としての)質が低下しつつあるということになる。それにも関わらず、合格者は増加されつつある。

 本当にこれで良いのだろうか。

 司法改革は、弁護士の数あわせではなく、頼れる司法を目指したのではなかったのだろうか。

適正な弁護士人口政策を求める発議~但し中部弁護士連合会

 名古屋の弁護士でいらっしゃる、寺本ますみ先生のブログで知ったのですが、中部弁護士連合会所属の有志の弁護士の先生方が、中部弁護士連合会総会に適正な弁護士人口政策を求める発議を提出される活動を開始されたようです。

 寺本先生のブログ

 http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/

 適正な弁護士人口政策を求める発議(案)

 http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/blog/files/jinkou-hatugisyo.pdf

 中部弁護士会連合会会員対象「司法試験合格者数に関するアンケート」

 http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/blog/files/jinkou-ankeito.pdf

 中部弁護士連合会は、法曹人口問題においてもかなり早期に問題点を指摘するなど、極めて活発な活動をされていたと記憶しています。

 中部弁護士連合会(愛知・岐阜・三重・福井・金沢・富山の各弁護士会)の方々は、是非発議者になっていただき、さらに委任状行使ができない中弁連総会で当該議案に出席・賛成して頂いて、日弁連の執行部が(暴走して)決めた「当面の法曹人口の在り方に関する提言」が、如何に弁護士の多くの意見を無視した独断であったかを明らかにしていただきたいと願っております(当職の2009.3.19付ブログ参照)。

 発議者になっていただける方は、寺本ますみ先生のブログのページから、発議案がダウンロードが出来ます。提出先は、寺本ますみ先生のブログのページをご参照下さい。

 真実から目を背けない勇気と果敢な行動力をお持ちの、中弁連の有志の先生方、応援しております。

 頑張って下さい!!

弁護士大激変!~週刊ダイヤモンド(8月29日号)の記事 その3

 最新の週刊ダイヤモンドが出てしまったようなので、続きを書くのもどうかと思うのだが、「続く」と書いてしまった以上、その責任を取って続きを書く必要があると思う。

 弁護士の使い方入門に関しては、まあまあそんなものかなぁという感じである。分かりやすく法律用語や手続のメリット、デメリットを説明してくれる弁護士の方が良い、「裁判になれば必ず勝つ」「私にまかせなさい」と豪語する弁護士は危険な場合があるというのは全く同感である。

 訴訟などの場合、弁護士一人では戦えない。依頼者と一緒に戦う必要がある。事件を実際に経験したのは依頼者なのだから、依頼者の協力がないと、そもそも事実の確認も出来ないし、主張・反論の組み立てが困難になることも多い。いわば、弁護士と依頼者は二人三脚でゴールを目指すことになる。したがって、この弁護士と二人三脚を組んで大丈夫かという観点で弁護士を捜された方が良いと思う。

 この記事のインタビュー欄に、法律事務所ホームロイヤーズの西田弁護士のインタビュー記事が載っている。西田弁護士は弁護士法72条撤廃を叫んでいる。一読してなるほどと思われる方も多いだろうが、西田弁護士の主張は、私は危険だと思っている。弁護士法72条があるため、国民の権利義務に直結する法律業務から、いい加減な業者などが排除できているのだ。

 極論すれば、弁護士法72条が撤廃されれば、いい加減な処理をして法外な値段をとる示談屋ですら合法ということになり、参入を考える不法勢力も出てくる可能性があるだろう。

 それでは、なぜ西田弁護士が弁護士法72条の撤廃を叫ぶのか。これはあくまで推測であって、私の邪推であれば本当に申し訳のないことなのだが、現在の西田弁護士のビジネスモデルからすると、弁護士法72条が存在しない方が西田弁護士にとって安心だからということではないだろうか。

 インタビュー記事にもあるが、西田弁護士のビジネスモデルは大量のパラリーガル(弁護士のアシスタント)を雇用して膨大な案件を処理していくというものと思われる。弁護士がアシスタントを十分監督できているうちは良いが、大量にパラリーガルを雇用すると弁護士の監督は行き届かなくなる危険が出てくる。その場合、弁護士業務をパラリーガルに丸投げして処理させていると認定されたとしたら、弁護士が弁護士以外の者に法律業務を行わせていることになりかねない。これでは、西田弁護士の懲戒事由にあたる危険がでてくる。もし懲戒で業務停止など受けたら大変だ。

 しかし、72条を撤廃しておけば、どれだけ大量にパラリーガルを雇用して業務を丸投げに近い状況にしていても、西田弁護士のビジネスモデルには少なくとも弁護士法72条違反という法律上の問題は生じない。

 弁護士法72条問題を考える際には、安易に活性化という言葉に踊らされずに、一般の国民にとって、示談屋など訳の分からない法律屋が暗躍する世の中が良いか、少なくともいい加減な処理をする可能性が極めて低い弁護士にまかせる方が良いか、十分に考える必要があると思う。

(続く・・・かも)