新司法試験合格者数の予想

 今年の新司法試験の合格発表は、9月10日である。

 司法試験委員会が、平成21年度の合格者数の目安として発表しているのは2500~2900名である。

 最高裁が、法科大学院出身者の司法修習生考試(いわゆる2回試験)の不合格答案のレベルの低さを指摘して警鐘を鳴らし、日弁連も合格者数を昨年並みに維持すべきであると主張し、修習生の就職難も極めて深刻だ。

 だが、おそらく、それにも関わらず、司法試験委員会は、合格者の目安の範囲内若しくはその近くで合格者数を決定してくるだろうと私は考えている。

 理由は今年3月31日の閣議決定だ。

 http://www.moj.go.jp/SHINGI/SHIHOU/090422-6.pdf

 「司法試験の合格者数の拡大について、法科大学院を含む法曹養成制度の整備状況を見定めながら、現在の目標(平成22年度合格者3000人程度)を確実に達成することを検討するとともに、その後のあるべき法曹人口について、法曹としての質の確保にも配慮しつつ、社会的ニーズへの着実な対応等を十分に勘案して検討を行う。」

 と法曹人口に関する閣議決定の冒頭には書かれている。この資料が司法試験委員会第55回会議で配布されているからだ。

 しかしこの閣議決定は、冒頭から突っ込みどころ満載である。

 政府はいつ法曹養成制度の整備状況を見定めてくれたのだろうか。

 相当昔に定めた目標を、社会の変化も勘案することなく、なんの批判的検討もせずに正しいものとしているのはいかなる根拠に基づくのか。

 合格者3000人の達成した後、社会的ニーズなどを検討するとしているが、何故今すぐ社会的ニーズを検討しないのか。新人弁護士の就職先がないことは、既に社会的ニーズがないことの表れではないのか。

 司法試験合格者増加と、法曹サービスの質の向上がリンクすると考えているようだが、そうだとすれば何故アメリカやドイツのように弁護士があふれかえる国で、法律を徹底的にビジネスの道具にする弁護士が揶揄されているのか。そのような弁護士が増加することが政府の考える法曹サービスの向上なのか。

 だんだん腹が立ってくるのでこの辺にしておくが、わざわざ、今年3月31日の閣議決定で念を押し、その資料を司法試験委員会で配布している以上、司法試験委員会がその閣議決定に面と向かって反することはしないだろう。

 合格レベルを下げてでも、閣議決定にほぼ沿った合格者数に揃えてくると考えられる。

 ただ、その中で、目安の最下限(2500名)に近い合格者しか合格させなかった場合は、司法試験委員会の精一杯の抵抗なのだと考えるべきなのだろう。

 単純に2500名の合格者数だけで考えれば、私は最初の論文試験で(一番最後の方だろうが)合格していたはずだ。その頃の私の法的知識や理解は、当時は自分なりに分かったつもりであったが、今思えば理解は非常に表面的・皮相的で、当時の合格者に比べれば、それこそなんにも解っちゃいないレベルだった。

 これで本当に良いのだろうか?

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