弁護士就職状況

 これまで弁護士は、2回試験に合格し司法修習を終了すると、事前に申請していた日弁連と各弁護士会へ一括登録され、弁護士となるのが普通だった。

 逆に、一括登録時点で登録していないと、ひょっとして2回試験に合格しなかったのかなどと邪推される可能性があったりしたものだ。つまり、これまでは、弁護士になるには一括登録するのが常識的な扱いだったと考えても良いと思う。

 ところが、今年新63期司法修習生の一括登録時点において、弁護士登録した人数は1,571名のようだ。ちなみに2回試験受験者数2,039名、合格者数1,949名となっている。

 もちろん、2回試験合格者から裁判官・検察官になる人もいるが、新62期の実績では、裁判官99名、検察官67名の採用に止まっているから、昨年並みに裁判官・検察官が任命されると仮定して、1949-99(裁判官)-67(検察官)-1571(弁護士)=212名が、一括登録時点で弁護士にも裁判官にも検察官にもなれていない可能性がある。

 ただ、12月の中旬以降に登録してもすぐに年末年始になるから、事務所の方針で1月登録をするよう指示されている人も相当数いるかもしれない。そうであったとしても、この数は異常だと私には思える。

 なお、共同通信が報道したところによれば、次の通りである。

(記事引用開始)

企業内弁護士に9割が消極的 日弁連調査
 会社の中で弁護士としての専門知識や経験を生かす「企業内弁護士」の採用について、企業の9割以上が消極的なことが17日までに、日弁連の調査で分かった。

 企業コンプライアンス(法令順守)を支えるなどとして採用拡大をもくろむ日弁連に対し、企業側が高額な報酬や使い勝手の悪さを理由に背中を向けた形。

 調査は昨年11月、上場企業を中心に5215社に実施。1196社から回答があり、このほど発行した弁護士白書で紹介している。

 うち、企業内弁護士を採用しているのは47社で、「募集中か採用予定」の25社を合わせても1割以下にとどまった。

(引用ここまで)

 弁護士過剰の現状では、雇用しようと思えば雇用できる状況が整いつつあるはずだ。確か、司法制度改革の頃、弁護士の数を増やせと言っていたマスコミ・経済界の一部の方は、経済界でも弁護士が不足しており欲しくてたまらないと仰っていたように思うのだが、 その方々は、一体どこへお隠れになられたのであろうか??

 隠れてばかりいないで、お言葉通り、弁護士を山ほど雇用してあげて欲しいものだ。もちろん、マスコミに対しても同意見だ。報道関係者が言行不一致だと信頼なくしちゃいますよ。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

大阪弁護士会~法曹人口問題・意見交換会

  先日、大阪弁護士会の法曹人口問題意見交換会が、行われました。

 前日弁連会長の宮﨑先生、次期大阪弁護士会会長と目されているN先生など、約40名程度の先生方が集まり、日弁連法曹人口政策会議の議論の状況報告当がなされたあと、フリートーキング形式で、意見交換が行われました。

 いわゆる弁護士人口激増路線の方もいらっしゃいましたが、私が最も問題だと思ったのは、若手弁護士の参加が少なかったことです。もはや、弁護士会や日弁連の施策は勝手にやってください、どうせ私達に良いことなんてないのでしょうし、という若手が多くなってきているのではないかと感じられます。

 しかし、弁護士会のエライさん達にはその事実は余り見えていないように思えました。

 なお、私も発言させて頂いたのですが、私のところには、仙台で行われた市民シンポジウム「弁護士は多いの?少ないの?市民の井戸端会議~市民の求める弁護士像と弁護士人口~」の情報が入っていたので、そこでの仙台青年会議所副理事長(仙台の中小企業の意見を代表される方と考えて良いかと思います)の方のご発言を、概ね以下のとおり紹介させて頂きました。

・中小企業にとって弁護士増員は魅力のある政策ではない。中小企業の社長にとって弁護士など知り合う機会はいくらでもある。何かあったときに頼めれば十分である。それよりも弁護士が増えたことで訴えられる危険が増える方が心配だ。

・TVCMなどでマーケットを探している弁護士を見ると違和感を感じる。過剰な権利主張がまかり通る世の中にして、社会が良くなるのだろうか。バランスが大事である。

・お金がなくて相談できないとか、弁護士費用が高いというイメージだけで縁遠くなっているという問題は、人数の問題ではなく制度の問題として切り開くべきことではないか。

・市民はバッジをつけていれば一人前の弁護士だと思う。わらをもつかむ思いで相談するのに全然ノウハウがないということでは困る。数を増やすのであれば制度をきちんとしてからにして欲しい。

・市民に弁護士の質は分からない。「格付け」のような見える指標を出してもらって選べるようにするか、実務に出す前にきちんと教育するか、どちらかにしてもらいたい。

・困っている人が相談しやすい社会は良いと思うが、弁護士がマーケットを探してアピールしてまわるのではなく、受け身の姿勢でいて欲しい。

 わたしから見れば、この方の御意見は、現実を踏まえた、率直な意見だと思います。

 一方、日本では中小企業が数では圧倒的大多数を占めていますが、大新聞の論説委員は、上記と異なり、とにかく弁護士を増員することが国民の意見であると言い張ります。果たして本当にそうなのでしょうか。

 意見交換会で、藤井先生がご指摘されていましたが、弁護士増員に関して大新聞が世論調査して、その結果を公表したことは、おそらく一度もないそうです(世論調査くらいしているかもしれませんが、少なくともその結果を公表したものはないというお話でした)。

 唯一、ヤフーのネット調査の結果が出たことがあったそうですが、弁護士増員に賛成約1万人に対して、弁護士増員反対の意見は約2万人いたとのご記憶だそうです。

 大新聞の社説による世論の誤導、弁護士増員がなければ立ちゆかない法科大学院、その法科大学院から広告料をもらって潤う大新聞、その影で制度に振り回され減少していく法曹志願者、司法の人材枯渇、なんだか壮大な詐欺的な何かが行われているような気がしてなりませんね。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

再告知~大阪弁護士会法曹人口問題意見交換会

日弁連で、法曹人口問題政策会議が開催されていることは既にお話ししたとおりです。その会議の実態をお伝えし、大阪弁護士会の皆様の御意見を伺おうとする意見交換会が下記の通り開催されます。

 案内のチラシをご覧になった方もおられるでしょうが、棚置きチラシのため、ご覧になっておられない方も多くいらっしゃるのではないかと思います。

 日 時  平成22年12月13日(月)  18:00~20:00頃まで

 場 所  大阪弁護士会館12階1203号室

 ちなみに、大阪弁護士会では、新63期修習生の一括登録の受付期限を何度も伸ばしたにもかかわらず、就職先が見つかった修習生の数は、昨年比20%減のようです。このような状況がさらに悪化する危険性もある現状で、一体日弁連の政策会議は何をしているのか、どういう方向を取ろうとしているのか、情報を得るだけでも貴重な会合だと思われます。

 忘年会シーズンであり、ご多忙の折とは存じますが、日弁連での議論がどうなっているのか知りたい方、この問題に関して、日弁連に是非意見を伝えて欲しいとお思いの方など、沢山の方のご参加をお願い致します。

緊急告知~法曹人口問題意見交換会(大阪弁護士会)

 先だって、ブログでお話ししているとおり、宇都宮会長の会長選挙での公約実現に向け、日弁連では「法曹人口政策会議」が開催されている。

 大阪弁護士会からは、金子武嗣会長、石田法子先生、山口孝司先生、正木みどり先生、中本和洋先生、三木秀夫先生、谷英樹先生、そして私が、会議の委員として参加している。

 ただし、そこでの検討状況(かなりの激論が交わされている)は、会員の皆様には、わずかしか伝わっていないのが現状だと思われる。

 そこで、法曹人口政策会議での検討状況を会議に参加している委員から直接お伝えし、大阪弁護士会会員の皆様の御意見を頂き、法曹人口政策会議に反映すべく、意見交換会が企画されている。

 まだチラシは配られていないが、日時場所はもう決定済みだ。

 日時  2010年12月13日(月) 午後6時より午後8時頃まで

 場所  大阪弁護士会館12階1203会議室

 年末のご多忙な時期ではあるが、是非多くの方に参加して頂き、できれば多数の御意見を頂ければ、と願っている。

 ちなみに、私の見るところ、法曹人口政策会議では、この問題は全会員の将来に関わる事項でもあるので、当該問題についてのアンケート調査を行うべきだという意見も強いが、それに反対する意見も相当根強く、意見が割れており、全会員に対するアンケート調査は行われない可能性が高い。私自身、会員の意見を聞くためのアンケートも採らないのであれば、せめて会内パブリックコメントを実施して欲しいと要望しているが、これも実現するかどうか、正副会長会議・理事会会議次第という感じだ。

 また、法曹人口政策会議の構成員は、140名いるが、50期以降の委員の数はわずか12名しかいない。人数的にも多数であるはずの若い期の委員が少なすぎる構成なのだ。これでは、若い方達の意見を反映しにくい会議となってしまう可能性も高い。

 私自身も、修習期がかなり上の大先生方に、意見することは当初ずいぶんと気恥ずかしく、失礼に当たらないか、悩みながら行っていたものだ。しかし、修習期が上だろうが、同じ弁護士であり同じ弁護士会を支える会員である。正しいと信ずるところにしたがって意見を述べるのに、臆することは全くないように思う。しかも、この問題は、エライ先生に比べて今後の弁護士人生がより長い若手の方にとってこそ、大きな問題なのだ。

 また、意見してみて分かったが、例えエライ先生に反対する意見であっても、いきなり踏みつぶしたりせず、一応聞いてくれるだけの度量は、まだまだ弁護士会には残っている(但し、意見を反映してくれるかは別問題)。

 私自身、都合がつくか微妙なところもあるが、出来るだけ参加して、会員の皆様の御意見を法曹人口政策会議に反映していきたいと思っている。

 是非、多数の会員の皆様の御意見を頂けますよう、お願い申しあげます。

日弁連の会員の意見を聞くべきじゃないのかなぁ

 日弁連法曹人口政策会議のメンバーに入れて頂いてから、全体会議・運営会議に何度か出席させて頂いている。会員の声を直接聞くべきだという意見と、それではまとまらないしむしろ弊害があるという意見が対立している。

 私の見る限り、現状でも合格者激増によるひずみが看過できない状況になっているので、さらに新司法試験合格者を3000人に向けて増やすべきとする見解は、ほとんど出ていないように見える。しかし、この問題については、日弁連会長選挙においても大きな争点になったし、日弁連会員の関心も高いと思われる。

 現状では、宇都宮会長の任期中に、舵を切らないと、次期日弁連会長のポストを司法改革推進派でもある主流派が会派の力で押さえてしまう可能性が高い。その場合、これまでの司法改革は誤っていなかったということで、再度合格者増員に歯止めが利かなくなる可能性が高いのだ。つまり、主流派としては、とにかく法曹人口問題に関して日弁連に舵を切らせなければ勝ちになるのだから楽だ。

 法曹人口政策会議で意見がまとまらないので両論併記となっても結局日弁連の方向性は変わらなかったということで主流派の勝ち、時間切れで意見がまとまらない場合でも同じく日弁連の方向性は変えられなかったということで主流派の勝ち、になってしまう。

 つまり、今は雌伏のときを過ごしている主流派としては、なんとか宇都宮会長の任期をやり過ごし、再度日弁連会長職を押さえてしまえば、司法改革路線は正しかったと強弁できるし、したがって自分たちのこれまで行ってきた施策が間違っていると批判されることもなくなる可能性が高い。自分が批判されるのが嫌なら当然この方針を採るだろう。

 そりゃぁ、「痛みに耐えて司法改革!」と声高に主張するのは格好いい。そう主張する主流派の中枢にいる人達も、司法改革のなかで、若手と一緒に痛みを負っているのなら話は分かる。収入も若手並みに抑えて、就職難の司法修習生をどんどん採用しているのなら納得もしよう。

 しかし、主流派中枢にいる人達は、私の見る限り、法曹人口の増加を抑制している間に基盤を築き、功成り名を遂げ、家も建て、子供も大学を出て、老後の資金も十分貯え、後は日弁連内の政権争いでも楽しんじゃおうかな、というくらいの人が多いように思える。

 もちろん、自腹を痛めてまで、司法修習生を採用しているようにも見えない。

 むしろ、(ワシは行かんが)若者は司法過疎解消のために地方に行け、(ワシはやらんが)潜在的需要はあるはずだ、(ワシはもう安泰だが)我々だって若いときは苦しかったんだ、と言っている人ばかりに見える。

 潜在的需要が本当にあるのなら、これだけ修習生が就職に苦しんでいるんだから、自分で修習生をどんどん採用して、国民の潜在的需要を満たしてあげれば良いだろう。弁護士が社会生活上の医師として必要とされているのなら、それこそ司法改革の理念に沿うはずだ。司法改革万歳を唱えるなら、それが言行一致というモノだ。責任ある態度というモノだ。

 しかし、潜在的需要があると主張する人は、それもしない(している人を見たことがない)。

 これは、潜在的需要すらないことの裏返しだろう。司法改革は支持するが、それに伴う痛みや責任を負わないなんて、ええカッコするだけで、狡いにも程がある。

 また、法曹人口政策会議で、合格者激増論者や潜在的需要論者の連絡先を、就職難の司法修習生に教えてやるべきだと申しあげたところ、どなたか忘れたが、「そんなことをいわれたら議論が出来なくなる」という趣旨の発言をされた方がいたらしい。

 それって、自分の発言に責任を持てないことの裏返しじゃないのか。若しくは、自分は痛みを負わないが、自分じゃない誰かが痛み負うから司法改革を進めようという、あまりに無責任な態度をとってきたからこそ、出てきた発言なんじゃないだろうか。

 司法試験合格者を年間1500人以上に大激増させることについては、かつて、法務省も最高裁も懸念を表明していたのだ。

 現場に最も近い、多くの日弁連会員の意見を聞くべき問題だと思うけれど。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

日弁連法曹人口政策会議

8月から、日弁連の法曹人口問題政策会議に参加している。今は、日弁連の会場が一杯で使えないということで、この会議は東京、四谷の主婦会館を会場にしている。

 四谷は新幹線を降りて中央線快速に乗り換えてすぐなので、地下鉄乗り換えが必要な東京地裁のある霞ヶ関より少し便利は便利だが、日弁連の会場もそんなに混んでいるのかと不思議に思う。

 実は、JRの四谷駅は、大学受験で何度か来たことがある。まあ、当時高校生だった私は、少々恥ずかしい理由で上智大学を受験したということだ。しかも、親に無理をお願いして法学部法律学科と国際関係法学科と二つも受験させてもらった。

結果的に、私は京都大学法学部に進学したのだが、四谷駅の前にくると、当時の不安に満ちた心境を、未だに懐かしく思い出す。

法曹人口政策会議は、主婦会館の地下二階のホールで行われる。事前に理事会が開かれており、これには委員は参加できない。参加できるのは、14時からの運営会議になる。

 出席簿に名前を記入し、ネームプレートを探して、会議場に入る。席は基本的に自由席だ。

残念ながら、会議の内容について、「ブログなどで公開するな」と釘を刺されているが、日弁連会員用HPなどで、会議の概要は把握可能である。

ただ、会議の本当の雰囲気・内容は、傍聴してみないと分からない。私も、今年1月の法曹人口に関する日弁連の法曹人口検討会議を初めて傍聴したのだが、そのときは、法曹人口5万人をめざすとして、その後、どうするかという点について、日弁連内において何らの合意・方向性が形成できていないことに驚愕したものだ。有り体に言えば、仮に法曹人口5万人を目指すとしても、法曹人口が5万人になった後のことは、日弁連は何~にも考えていなかったのだ。

現在、日弁連には司法試験合格者を増減する権限は全くない。だが、法曹当事者であるからこそ分かる制度の歪みなどの真実もある。そのような真実は、やはり、提言していくべきだろうと、私は思う。もちろん、未だにこれまでの路線にこだわる人もいる。しかし、「過ちは改むるに憚る事なかれ。」であって、過ちを過ちと認めない方がもっと罪が重いように思うのだ。

先に述べたように、本当の会議の雰囲気や内容は、直接傍聴してみないと分からない。法曹人口問題政策会議では、是非多くの弁護士の方に、傍聴して頂いて、どのような議論がなされているか現実に理解していただきたいと強く思う。

 今は、帰りの新幹線の中である。19:50発、のぞみ123号広島行き。東京発広島行き直通の「のぞみ」はこれが最終のようだ。私はこの列車に揺られ、時速270キロで東京から遠ざかる。

東京と広島で遠距離恋愛しているカップルにとっては、多分、この列車がシンデレラ・エキスプレスということになるんだろうな、などとぼんやり考えながら。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

新司法試験合格者数1000名の主張は、減員論なのか?

 よく、新司法試験の合格者数を1000人にするべきだ、という主張に対して、マスコミや司法改革推進論者から、法曹人口減員論とのレッテルが貼られ、司法改革に逆行すると批判されることが良くあります。

 では次の問題はどうでしょうか。

 ある大型船に、昨日は2000人乗り込んで300人降りました。今日は、1000人乗り込んで、300人降りました。昨日と比べて船に残った人の数は増えたでしょうか、減ったでしょうか。

 あまりにも簡単すぎて、ばからしいとお思いでしょう。

 答えは、昨日船に残った人の数は2000-300=1700人、今日船に残った人の数は、1700+1000-300=2400人、したがって、2400-1700=700人増加しています。

 このように、新司法試験合格者を直ちに1000人にしたとしても、法曹をやめる人の数が年間300名程度の現状(弁護士を基準・概算)では、毎年700名程度の法曹が増加するのです。毎年1000名程度の人が法曹界から去っていく状況になるまでは、新司法試験合格者を1000人にしても、法曹人口はどんどん増えていきます。

 司法試験の合格者が1000人程度になったのは平成11年ころであり、それまでは年間500名程度(平成3年から平成10年までは600~800名程度)です。仮に、法曹になってから35年働いて引退すると仮定した場合、司法試験合格者数を1000人にしても、今後20年ほどは、法曹人口は増え続けるのです。

 よく、司法試験の合格者数を1000名(1500名)まで減員すべきとの主張=法曹人口減員論と、みなされるのですが、現実は全く違います。司法試験合格者数を1000人にしても法曹人口は増え続けるのですから、「司法試験合格者数1000名論は法曹人口増員論か法曹人口減員論か?」と問われれば、間違いなく法曹人口増員論の範疇に入ります。

 前述したとおり、たった今、司法試験合格者を1000人にしても法曹人口は20年以上も増え続けますし、合格者を1500名にしても30年近く法曹人口は増え続けます。

 あれだけ弁護士が必要と言っていた経済界がほとんど弁護士を採用しないことから明らかなように、司法改革が唱えられた当初の目論見と違い、社会での弁護士の需要は増えませんでした。

 司法試験合格者数を減員すべきという主張は、その誤った見込みで立てた増員計画を修正し、法曹人口増加のペースを適切なペースにしようという主張にすぎません。決して法曹人口を減らせと主張しているのではないのです。

 マスコミや司法改革万歳論者の誤導に引っかからず、冷静に事実を見て頂きたいと思っています。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

ひまわり求人求職ナビ

 今日、大阪弁護士会の金子会長名で、「司法修習生を就職させてやって欲しい」、「ひまわり求人求職ナビの登録に協力して欲しい」との依頼文書が配布されています。丁寧にひまわり求人求職ナビへの登録方法も図解入りで解説されています。

 現状では、法律事務所への就職希望者は、新64期司法修習生(614名~今後更に増える可能性有り)を含めて、1292名。

 求人登録している法律事務所の件数は、 153件。

 司法試験合格者増員(若しくは現状合格者2000人維持)を叫んでいる弁護士さん、潜在的ニーズはあると主張する弁護士さん、そして両方を主張するマスコミさん、どうして修習生を採用してあげないのですか。

 「増員の痛みに耐えて司法改革」って、ええカッコだけして、痛みは自分が負わずに全て若手に負わせる気ですか。あまりにも無責任な発言ではないですか?

 潜在的ニーズがあるといいながら、修習生を採用しないのは、本当は、ニーズがないからじゃないんですか。潜在的でもニーズが本当にあるのなら採用すればいいじゃないですか。

 「企業も地方自治体も国民の皆様も、みんな弁護士を増やして欲しいと思っている」、と報道しているマスコミさん、あなたも企業でしょ。あなたの報道が正しいのなら、あなたも弁護士さん欲しいはずでしょ。たくさん採用すればいいじゃないですか。なんで採用しないの。

 大阪弁護士会常議員会でも、日弁連の法曹人口会議でも何度も申しあげていますが、少なくとも司法試験合格者増員(若しくは2000人維持)を主張する弁護士・潜在的ニーズがあると言い張る弁護士の連絡先を、執行部は司法修習生に教えてあげるべきです。

 自分の発言に責任を持てる弁護士・マスコミなら、きっと、自分の所得をイソ弁並みに下げて(自分が痛みを負って)でも採用してくれるはずです。それが自分の言葉に責任を持つということでしょう。

 そうでないとすれば、口先だけで、なんの責任も取らない人達がむちゃくちゃなことを主張し、推進させていることになる。

 ひどすぎるんじゃないのか。 

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

司法改革と裁判官・検察官の増加?

 どんなに鉄道が整備されたとしても、駅がなければ沿線住民の方は、その鉄道を利用できないだろう。また、駅があっても、1週間に数日しか列車が止まらない駅であれば、不便この上ないので、沿線住民の方もあまり利用しなくなるだろう。当たり前のことだが、このような状況が続けば、いくら鉄道を整備しても、沿線の住民の方は大して便利にならない。

 マスコミは、「弁護士を増やせ、それが司法改革だ」と、何とかの一つ覚えのように繰り返し、ちっとも取り上げてくれないが、司法改革に関して、これに似た状況が現れている。

 全国には地方裁判所・家庭裁判所の本庁50カ所と、支部203カ所が設置されている。地方検察庁もこれに対応して、本庁50カ所と、支部203カ所が設置されている。

 2010年8月の日弁連の調査によると、裁判官が常駐していない支部は全国で46カ所、法曹資格を持つ検察官が常駐していない支部が全国で128カ所存在している。例えていえば、医者のいない病院や、消防士のいない消防署ようなものだ。

 このような支部には、裁判官や検察官が他の裁判所・検察庁から出張してきて裁判が行われるが、当然その裁判官・検察官も本来勤務している場所での仕事があるから、毎日出張ではないことが多い。したがって、裁判官・検察官が常駐しない支部では、開廷日数が少なく開廷期日が入らない、開廷期日に事件が集中し十分な審理が出来るか不安がある、等の問題が出てくる。民事裁判において証人尋問等の実施率が減少の一途をたどっていることも、このような裁判官非常駐支部の存在と無関係ではないかもしれない。

この点弁護士は、弁護士ゼロの地域はなく、弁護士1名の地域(支部)もわずか5カ所になっている。ここ10年で弁護士は9700人増加しており、都会だけでなく、地方での弁護士へのアクセスもずいぶん改善されている。

 これに対し、裁判官はここ10年で600人、検察官はここ10年で200人しか増加していない。このあたりの事情は、日弁連が2010年10月に発行した「全国各地に裁判官、検察官の常駐を!~裁判官、検察官ゼロ支部の早期解消を目指して」と題したパンフレットに詳しい。

 そもそも司法改革は、市民が利用しやすい司法を目指し、弁護士だけではなく、裁判官・検察官も増員し、司法の容量を増やすことも目的としていたはずだった。

 マスコミはことあるごとに、「司法改革=弁護士の増加」を叫ぶが、三輪車のタイヤの一つだけが大きくなっても早く走れるものではない。司法改革の原点に立ち返るのであれば、当然裁判官・検察官の増員も必要になる。

 当たり前だが、現状が続けばさらに法曹三者のいびつな構造は、助長されていく。これで良いはずがないだろう。

 従前取り決めた路線で司法改革を実行すべきだと、本気でマスコミが思うのなら、どうしてこのことを大きく取り上げないのだろうか。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

閣議決定について~その2

 新司法試験合格者の増加に関する努力目標が、法科大学院など法曹養成制度の整備の状況を見定めるという前提条件を付して、閣議決定されていることは、先日のブログに書きました。

 しかし、閣議決定にどのような効力があるのか、明確ではありません。

 そもそも、閣議は内閣法に定められています。

第四条 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。
② 閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣
 の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。
③ 各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができ
 る。
第六条 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。
第七条 主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて、
 これを裁定する。

 このような規定が内閣法にあるのですが、閣議決定にどこまでの効力があるのか内閣法の規定だけでは分かりません。あくまで、内閣が職権を行使する場合に閣議に基づく必要があるということ、くらいです。内閣総理大臣が交代するなどした場合に、前の内閣での閣議決定が後の内閣を拘束するか全く分かりません。

 この点について、平成15年に国会で質問がなされており、当時の回答が一応参考になります。

平成十五年一月十日受領
答弁第四四号

  内閣衆質一五五第四四号
  平成十五年一月十日

内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 福田康夫

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員長妻昭君提出閣議決定(レセプト審査・支払の民間委託)の軽視に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
 衆議院議員長妻昭君提出閣議決定(レセプト審査・支払の民間委託)の軽視に関する質問に対する答弁書
一から三までについて
 閣議決定は、法令には当たらず、一般に、これに反したとしても法令違反となるわけではないが、内閣の意思決定として、その構成員たる国務大臣はもとより、内閣の統括下にあるすべての行政機関を拘束するものであり、各行政機関の関係職員はこれに従って職務を執行する責務を有している。
 閣議決定と異なる措置が採られている場合は、各行政機関は当該閣議決定に従って必要な措置を採ることとなる。
(以下略)

 この回答によっても余り明確にはなりませんが、閣議決定が少なくとも法令ではないことが明確になっています。したがって、ある内閣で一度閣議決定された事項につき、その内閣が総辞職するなどして、新しい内閣が成立した場合、その閣議決定が後の内閣にも拘束力を及ぼすという効果は、少なくともないように思われます。

 そうすると、新司法試験合格者につき、増加させる努力目標を定めた平成14年の閣議決定は、今も効力を維持していると言っていいのか疑問があるということになります。特に民主党が政権を奪取するなど政権交代が行われた現状で、なお従前の閣議決定が効力を維持していると言い張る根拠はないように思われます。そうだとすれば、司法試験合格者の増加に関する閣議決定を金科玉条のごとく維持しようとする、増員論者の方の主張は根拠がないことになりそうです。

 ※閣議決定の問題について、憲法の基本書等を参照しましたが、明確な記述が得られず、私の考えが必ずしも正しいとは限りません。しかし、閣議決定は少なくとも法令ではないのですから、その閣議決定に後の内閣が拘束される理由はないように思います。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。