大阪弁護士会パネルディスカッション~その2

(前回の続きです)

★あるべき法曹像について

井出氏

・司法審の法曹像である。

・日弁連の描く法曹像が見えにくい。司法改革前の法曹像と変わっていないのではないか。

・小説のように20年受けても受からないような人がいる試験が異常だったはず。知識に偏らない法曹のあり方があるのではないか。

・日弁連が司法試験合格者減に舵を切ると、日弁連は理解を得られないと思っているので心配だ。

正木弁護士

・必要最低限の法律知識を持った上で新たな分野に進出するならそれも良いが、そこまで至っていないのでは。

・井出氏の見方こそステレオタイプの弁護士像の描き方ではないか。

・逆に、法的知識が少なくても実践知でよいという法曹像のイメージが湧かない。

河野氏

・司法審の描き方が間違っていたのではないか。

・日弁連も司法審路線に乗って旗を振ってしまったので、どうして今さら、司法試験合格者減少を言い出すのかという形になっているのではないか。外に向かってそう言うなら、同時に今までの日弁連のとらえ方が間違っていたことを認めるべきだ。

・当時は市民のための司法改革であり、そのために日弁連が主導するべきと考えていたのではないか。

・社会の隅々まで法の支配を及ぼす、弁護士は社会生活上の医師、という描き方が間違っていたのではないかという検討をする必要がある。

・国民の理解が得られないと黙り込むのか、司法審の態度とそれに乗った日弁連の態度が間違っていたことを認めるのかが問われているのではないか。

(続く)

大阪弁護士会パネルディスカッション~その1

 大阪弁護士会では、去る3月19日、法曹人口問題に関するパネルディスカッションが行われた。

 パネラーとして、朝日新聞の井出さん、司法ウオッチ主催で元法律新聞編集長の河野さん、が参加されていた。増員推進派の井出さんと、懐疑派の河野さんというパネラーの構成としては、なかなか面白い構成だった。

 私の手控えのメモによると、井出さん、河野さんは、自己紹介と日弁連の提言について、次のように、お話しされていたようだ。

井出氏

・記者の見方からしても、司法は遠い存在に見える。

・司法とは言い方は悪いが、社会の終末処理場ではないか、最後に登場すべきものであって、社会内で解決できる方が良いと考えている。

・例えばスモンの和解で、最高裁の可部判事が行政で解決できなかったのが問題と述べていたが同感である。

・弁護士の苦境には胸を痛めている。

・しかし司法制度改革は、事前解決型社会を目指したのではないかと思っており、そのような社会を実現するためのものと考えている。弁護士増員はそのためのインフラではないかと思っている。

河野氏

・司法審の描いたものについて疑問を持っている。

・日弁連の司法改革路線を見直すべきではないかと考えている。

・宇都宮会長が司法試験合格者1500人と更なる減員方向を打ち出したことには注目している。

・関心は更なる減員提言に移りつつあるのではないか。

・需給ギャップという市民の目線を残した提言案は評価できると思っている。

このあと、大阪弁護士会の正木みどり弁護士も交えて、 

  あるべき法曹像、 

 企業内弁護士、

 司法ニーズ、

 質の低下論、

 法科大学院の問題、

 予備試験、

 給費制

等について、パネルディスカッションが行われた。

詳細については、私の手控えを元に、今後お伝えしていきたいと思う。

法曹養成に関するフォーラム第7回議事録から

 法曹養成に関するフォーラムの第7回議事録が公開されている。

 私は、新司法試験の受験制限(法科大学院卒業後5年以内に3回に受験機会を制限~いわゆる三振制度)は、全く不合理だと思っているが、フォーラムの委員である法科大学院擁護の井上委員は次のように、三振制を擁護している。

(引用開始)

 (前略)というのも,それ以前は一発勝負の司法試験だけで法曹資格者を選抜する制度である上,その試験の受験回数に制限は全くなく,長年にわたり何度も受験するという人が少なくなく,多くの滞留者が出て,競争倍率が3%という他に比類のないような異様な受験競争状態になっており,いろいろな弊害をもたらしていた。そのことの反省に立って,司法試験の前に法科大学院における教育の課程を経させることとし,司法試験はその教育を踏まえたものとするという法曹養成のシステムとするとともに,その教育の効果がどれぐらいもつのかという観点から,多くの人が一致して,3年ないし3度の受験ぐらいであろうということで,受験回数制限を設けた。ですから,受験回数制限は新たな法曹養成制度の趣旨から導かれるものであり,3度というところに重点があったわけで,ただ,3年で3度としてしまいますと,いろいろな事情で受験できない人もいるかもしれないということで幅を5年としたというのが経緯です。

(引用ここまで)

  まず、いろいろな弊害と言ってもその弊害が本当にあったのか疑問である。旧司法試験では合格者の平均年齢の上昇が問題だと言われていたが、新司法試験受験のためには法科大学院を卒業しなければならないため、合格者の平均年齢は旧司法試験、新司法試験でほとんど変わらない。

 旧司法試験では、暗記・受験テクニック優先だった、金太郎飴答案が続出したという批判もあるが、当時の合格者に聞いてもらえば分かるが、暗記とテクニックだけで最終合格できるような試験では、絶対になかった。もし仮に暗記とテクニックだけで合格できるような旧司法試験であったと井上委員(鎌田委員も?)が言うのなら、当時の旧司法試験考査委員の出題がおかしかったか、少なくとも工夫不足ということになるのが筋だ。井上委員も鎌田委員も旧司法試験で考査委員を務めていたように記憶しているが、そのときの自分たちの工夫不足についてはどう釈明されるのだろうか。

もちろん法律家として最低限の法的知識の暗記は必要であり、その最低限の法的知識すらない方が大問題である。仮に上記のような弊害があるとしても、司法修習期間中にそのようは弊害は十分是正できると、司法研修所教官が述べている。

 むしろ逆に、新司法試験の採点に関する意見を見ると、年々型にはまった論述(パターン化した答案)が増えていると批判する採点委員の声が強まっている。まず日本語を勉強しろと言わんばかりの意見も多くなってきている。仮に、百歩譲って新制度により旧司法試験の弊害が除去されたとしても、より深刻な弊害が新司法試験で出てきているのであれば、どのみち法科大学院制度は失敗ということだ。

 不合格者の滞留による社会的損失という意見もあるだろうが、どの資格を目指してどこまで努力するかは人それぞれの自由であるし、大器晩成方の人もいるだろう。三振制度は、法科大学院卒業生の見かけ上の新司法試験合格率を高く維持することができるため法科大学院の生き残りには役立つが、じっくり努力を積み重ねるタイプの方、大器晩成型の方を冷酷に切り捨てる制度でもあるのだ。なにより、旧司法試験では合格するまでは受験生は自腹で勉強しており特に社会に大きな迷惑をかけてはいなかった。しかし、新司法試験では、税金を投入した法科大学院で勉強せざるを得ないため、法科大学院が機能せずその結果不合格者が多く出ることになると、国民の皆様の血税を無駄にすることに直結していくのだ。

 そもそも、法科大学院とは(何度も述べて恐縮だが)閣議決定にもあるように

①豊かな人間性と感受性
②幅広い教養と専門的な法的知識
③柔軟な思考力
④説得・交渉の能力
⑤社会や人間に対する洞察力
⑥人権感覚
⑦先端的法分野や外国法の知見
⑧国際的視野と語学力
⑨職業倫理

 が、これからの法曹に求められ、そのような法曹を育成するのが法科大学院であると位置づけられている。 悪い言い方になるが、①⑤⑥⑨を象牙の塔にいる大学教授が教えられるとは、少なくとも私は、思わない。どこかの法科大学院で試験問題漏泄の疑惑が出たことからも明らかだろう。②のうち、幅広い教養は個人が研鑽して身につけるべきものだろう。

 井上委員のお話が事実だとすると、この夢のような想定通りに法科大学院が上記の①~⑨の資質を法科大学院生に、仮に身につけさせることが出来たとしても、その効果はわずか3年で消滅するということなのだろうか。もちろん、大学側にとっては、この少子化の現状から、長い期間学生を大学に通わせて学費を取れる制度の方が有り難いに決まっている。

しかし、仮に井上委員のいうとおり、わずか3年でその効果が消滅するかもしれないような教育しかできないのが法科大学院であるならば、多額の税金を投入する必要が、一体どこにあるのだろうか。

またも朝日新聞の弁護士バッシング

 まず、朝日新聞2月26日付け社説をお読み下さい。

http://www.asahi.com/paper/editorial20120226.html#Edit2

 またも朝日新聞の弁護士バッシングが全開です。事実を知る立場からすると完全な嘘も交えた社説であり、こんな新聞、購読するのを止めて本当に良かったと実感しています(とくに、「私たちも無理な増員を進める必要はないと唱えてきた」のくだりは、読んでいて、嘘つけ!と社説氏を罵倒したくなるくらいです。)。

 ここまでの社説を読んできて改めて感じることは、朝陽新聞がどんどん弁護士バッシングに傾いているということだ。弁護士は仕事がなくても増やせばいい。競争が激しくなって貧乏弁護士が増えればいい。弁護士が憧れの職業などもってのほか。朝陽社説氏のそのような歪んだ内心を反映し、朝陽新聞の社説は弁護士バッシングを訴え続けている。

 果たして、真剣に人権救済活動を行っている弁護士や震災にボランティアで参加し、今なお救済活動を行っている多くの弁護士は、これをどう聞くのだろうか。

 朝陽新聞は、無理な弁護士増員を進めるべきだと一貫して唱えてきた。だが、本当に朝陽新聞の主張は正しいのか。朝陽新聞のいうとおり人々の法的ニーズはあるのだろうか。

 例えば、朝陽新聞も認めるように原発事故の賠償が進まない原因は様々あるところ、その全ての原因について弁護士を増やせば解決すると朝陽新聞が言っていると聞く。自ら役員に法律家を入れなかったオリンパスの不祥事の責任も、弁護士を増員しなかったから生じたのだそうだ。国境を越えたトラブルも弁護士さえ増えればたちどころに解決するし、本来行政が責任をとるべき問題が生じていても、それは弁護士不足が原因なのだそうだ。この朝陽新聞の主張は正しいのか。

 ほかにも、朝陽新聞の弁護士バッシングを示す社説はたくさんある。

 朝陽新聞は、弁護士に対しては無料で困っている人を助けるべきだとの主張をするようだが、一部10円であれば朝陽新聞を読んでやってもいい人、ただで朝陽新聞を毎朝配達してもらって読みたい人は膨大な数に上ると聞く。その声なき声に、朝陽新聞はどう立ち向かうのだろう。

 現場の記者に汗をかかせて取材させる一方、自分は安くない報酬をぶんどり、記者の取材を尊重もせずに思い込みだけで社説に掲載する文書を作るのが主な仕事で、いつも国民の味方のふりをする。そんな昔ながらの朝陽新聞社説氏のやり方は、もはや通用しない。

 広告を出してくれる法科大学院の惨状についてほとんど無視しておもねる態度、公認会計士試験合格者減少について全く批判せず、弁護士バッシングに終始する態度を改めるべきなのはもちろんだが、同時に朝陽新聞社説氏が、意識を改め、思い込みではなく、取材した事実に基づいて社説を書くという基本姿勢を取り戻さなければならない。

 残念ながら、朝陽新聞社説氏は、司法改革の当初から、そうした問題意識を持たず、誰から見ても偏執狂的な弁護士バッシングを行うことに異常なまでに執念を燃やしてきた。

 朝陽新聞、特に朝陽新聞社説は、民間の存在ながら、世論形成に大きく影響する。世論形成への強い影響力を有することから、少なくとも世論を誤導することがないよう期待されているはずだ。朝陽社説氏には、目を大きく開き、事実をしっかり見据えて欲しい。

※ここで記載した「朝陽新聞」は、全く架空の新聞です。

法曹人口政策会議終了~その5

 これまで4回にわたり、法曹人口政策会議についてご報告してきた。

 私の報告が、一方的な私の立場に基づいた私見にすぎないとの御批判もあるかと思うが、私としてはかなり公平に、お伝えしてきたつもりだ。

 私の報告が、決して独断と偏見に満ちた一方的なものでないことを、お分かり頂くために、法曹人口政策会議に出席されていた31期の先生から頂いたご感想を、以下に添付させて頂く。

 ちなみに、この感想を書かれた先生は、非常に温厚で、優しく、いつも上品な態度を崩さない先生であり、かなり感情的且つ戦闘的な態度をとっていた私とは、全く毛色が違う先生である。

(以下、頂いた感想)

法曹人口問題をめぐって              

約1年半、日弁連法曹人口政策会議の委員として取り組んできて、痛感したこと

1. 2年前、法曹人口問題は、選挙公約に「合格者1500人」を掲げて会長に当選したからといって、直ちに日弁連として「1500人」と表明して動ける問題ではなかったこと。 

 法曹人口問題は、日弁連の内部で激しい意見の対立があった。日弁連としての1500人の合意形成ができないまま会長だけが走っても、内部からも外部からも攻撃され、力にならなかっただろう。日弁連の中では、2000年臨時総会決議以後、これを変更する決議や合意は存在しなかったのだから。 

 旧執行部時代は、2000年臨時総会決議(いわゆる3000人決議や法曹養成に関する決議)の内容を見直そうとしなかった。見直すことを可能にする組織(全部の単位会の意見や、合格者数減員の意見をも包摂する組織)は、作られなかった。 宇都宮さんが、会長就任1年目の夏に立ち上げた「法曹人口政策会議」は、委員構成を、日弁連理事全員(全部の単位会の意向を反映できる仕組み)、各弁連から選出の委員、会長指名枠の委員とした。従来の執行部であれば委員に選出されなかったであろう意見の持主も選任された。

 つまり、日弁連の中で意見が大きく分かれている問題を、正面から議論を尽くさせることで、日弁連としての合意形成を追及する、というのが宇都宮さんの姿勢だった。日弁連としての意見をとりまとめることが、外部に打って出る時の武器になる、という発想と思う。大事なことだ。

2. 合意形成の大変さ、その中でも合意をかちとってきたこと 

 日弁連の副会長も日弁連の理事も、各単位会や弁連からの選出なので、そちらの力関係が大きく作用する。その中で、会内民主主義の姿勢を宇都宮さんは貫いてきた。まどろっこしいという批判を言うのは簡単だが。 

 法曹人口政策会議の1年目(夏からなので実質的には半年位)は、本当に大変だった。審議会意見書と2000年決議を楯に、「需要はまだまだある」「法の支配を社会の隅々に」等、「減員」の取りまとめを否定する姿勢の委員が何人もいた。激論につぐ激論を経て、昨年3月の中間とりまとめ(緊急提言)で「合格者数を相当数減員」と明記し、日弁連として初めて「合格者減」に舵を切ることができた。何としても方向を転換させるという、宇都宮さんの決意があったから、たどりつけたこと。

 人数を明記できなかったのは、この時点ではまだ人数の合意が形成できなかったからだ。中間とりまとめの激論の過程で「1500人」への減員にすら反対していた人たちが、今、宇都宮さんの続投を否定している。

3.東日本大震災・福島原発事故とタイムスケジュールの遅れ 

 宇都宮さんの予定では、昨年3月の理事会でこの緊急提言を採択した後、任期2年目の前半で、全国各地で市民シンポやマスコミとの意見交換、議員との懇談などで世論に働きかけつつ、並行して人数を明記するとりまとめをして、それを武器にさらに外に打って出る、というタイムスケジュールだったと思う。 ところが、3月11日の東日本大震災と福島原発事故が起きて、救済のための活動に忙殺されたのも勿論だが、一見多額の国家予算を使うように見える給費制の維持の運動に大変な逆風が吹き、法曹人口問題もシンポ等がやりにくい社会情勢となってしまった。そのため、最終とりまとめ案(各単位会や関連委員会に照会する案)が昨年12月になってしまった。

4.司法試験合格者の減員について「まず1500人」の合意が形成できたこと 

 昨年12月の法曹人口政策会議では、議論の末、主文に「まず1500人に減員し、更なる減員については…検証しつつ対処していく」、理由の中で「相当数の各弁護士会及び連合会が1000人にすべきだと決議している。これらをふまえ…」と入った。法曹人口政策会議の1年目当初では「減員」明記に反対意見があったが、「相当数減員明記」(昨年3月)→「まず1500人明記。更なる減員への言及」(昨年12月)にまで、増員論者も受け入れざるをえない状況を作ったのは、宇都宮さんの姿勢があったからだ。また、宇都宮さんは、適時に、急増による深刻な影響を自ら記者会見をして情報公開するなど積極的に行動し、マスコミの論調の変化(急増に対する問題意識)等を引き出したし、議員の中でも理解が広まっている。

  そして、「1500人明記」の方向性が見えた途端に(これは宇都宮さんの実績なのだが)、会長選挙で3人が「1500人」表明と、一見すると争点が無いかのような形になった。しかし、その内実が重要だ。

5. これからが法曹人口問題にとって勝負どころ 

 「まず1500人」のとりまとめは出発点。日弁連として初めて合意できたことを武器に、いかに本気で実行していくかがカギだ。そうしてこそ「更なる減員」への展望も開ける。宇都宮さんは、法曹人口・法曹養成問題について実現本部を新たに作り、自らその運動の先頭に立ち、全ての単位会とともに実現に取り組む、と決意を表明している。風通しのよい手法だ。本当の意味で運動の意義をつかんで離さない宇都宮さんでこそ、減員が実現できると思う。また、給費制の運動や東日本大震災・原発事故への取り組みなどの中でつちかわれた、市民団体との結びつきや広範な人たちの日弁連への信頼も、今後の日弁連にとって大切な財産だ。 

 法曹人口政策会議の1年半を通じて痛感するのは、「司法改革」全般を是とし推進してきた人たちの意見は基本的に変わっていないということ。それで「協議路線」で行くのでは、「協議したけどダメでした」ということになってしまい、法曹養成フォーラムの動きに対しても「協議路線」では逆に相手の意見を呑まされてしまうことを、危惧する。

(感想ここまで)

日弁連法曹人口政策会議終了~その4

(続き)

 これは、私のうがった見方でかもしれないが、その攻防は、会長選挙の再投票に大きく影響するからかもしれなかった。

 つまり、ここで、提言案に1000人という数字が入ると、宇都宮会長はまず1500名+さらなる削減という公約を、ギリギリ果たしたことになりそうだし、その実績を再投票時に明示できる。山岸候補とすれば、1500名公約を振りかざした意味が無くなるばかりか、1500名より、さらに削減に向けた働きを先に、宇都宮会長にやられてしまったことになる。

 なにより、山岸候補としては自分を推薦してくれる東弁の主流派の意向が1500人以下では困るというものだから、日弁連会長選挙に勝つためだけに1000人という独断的な発言をすることも困難だ。つまり、山岸派からすれば、なんとしても1000人という数字をこの提言案に入れられては困る状況にあったはずだ。

 とにかく、約2年にわたる、法曹人口政策会議は、最後の最後まで、議論がなされ、まだまだ発言を求める人達も多くいた。

私の記憶では、会議が紛糾したため、休憩の後に、提言の趣旨に、1000人決議をしている単位会が相当数あるという事実だけでも入れるべきではないかという折衷的提案も理事者から出され、1000人説の人達も不満を抱えながらも納得しかけたが、今度は1500人に固執する人達が猛烈に反対をはじめ、議長代行が議論を打ち切り、採決に持ち込まれた。

 採決の場では、今後のためにも賛否を投じた人が誰だか明確にするべきとの意見もあったが、理事者側は(私の記憶では)会議の規程か何かを説明して採用しなかった。また、これだけ多くの単位会が1000人を支持しているのだから、せめて提言の趣旨に、1000人決議をしている単位会が相当数あるという事実だけでも入れるべきではないかという修正動議も出された。

 しかし、修正動議は賛成39,反対59、棄権16で否決。

そして、会議は、次の通り、最終とりまとめに関する採決を行い、最終とりまとめ案をまとめた。

 賛成76、反対28、棄権5

 結果的に、1000人という数字を趣旨に入れ込むことはできなかった。私は、日弁連の内部の政治的情勢に疎いので、どなたが山岸候補派なのか明確には知らないが、ある先生のお話によると、会議後、(1000名の数字が入らなかったことについて)山岸候補派の先生方は笑みを浮かべていたとのことであり、もしそれが事実であるのなら、してやったりの気分だったのかもしれない。

 私から見れば、いっちゃぁ悪いが日弁連会長の椅子を巡る争いで、弁護士全体に関わるかもしれない事項を左右してほしくはないのだが、どうも横から見ている限りではそんな感じがして仕方がなかった。

 提言案の評価は、弁護士全ての皆さんに委ねるしかないが、日弁連の舵を動かすのがどれだけ重く、また日弁連の方向を変えることがどれだけ難しいかを痛感した2年間だった。

 この2年間、私なりに出来ることはした、という気持ちもあるが、結果的には焼け石に水のような提言案しか出せなかったことについては、残念な思いでいっぱいだ。

 2年間という短い時間では、なかなか日弁連の方向を変えることは難しい。

日弁連法曹人口政策会議終了~その3

ちょっと横道にそれるが、ツイッターで、京都の谷口直大先生が述べておられるように、そもそも、本来であれば、1000人・1500人という数字で、司法試験という、資格試験の合格者を決めることはおかしいという主張には一理ある。資格試験であるならば、法曹として必要な学識及びその応用能力があれば合格させても良いではないかということだ。

ただし、法曹=裁判官・検察官・弁護士なのであり、そのうち弁護士だけ質が低くても良いという話はないのだから、合格させて1年間司法修習を施せば、(OJTを行いながらということに普通はなるのだろうが、)「判事補としてすぐに採用できる能力=検察官としてすぐに採用できるだけの能力=弁護士として即独できるだけの能力」という能力が、司法試験合格者に求められる能力のはずだ。また、司法修習の後、2回試験(司法研修所の卒業試験)に合格させるのであれば、合格した全員が「判事補としてすぐに採用できる能力=検察官としてすぐに採用できるだけの能力=弁護士として即独できるだけの能力」を身につけていると、最高裁判所(司法研修所)がお墨付きを与えたことになる。したがって、この実力を持っている受験者であれば、司法試験も2回試験も、本来全員合格させるべきなのだし、極論を言えば誰一人その実力がなければ全員不合格でもおかしくない。

すなわち、司法試験・2回試験に合格させる以上、どの順位で合格しようが、裁判官、検察官に任命されてもおかしくないはずだ。ところが、聞くところによると、成績がかなり上位の者でないと裁判官、検察官に任命されるのは困難なのだそうだ。これは、最高裁判所、法務省(検察庁)が、本音の部分でいえば、今の司法試験合格者の相当上位のレベルの者しか、法曹として使い物にならないと評価していることの裏返しといえないか。

私自身、旧司法試験論文式で1000番以内のA評価で何度か落とされた経験があるが、やはりその時点での実力は実務家としては、まだまだ不足だったように思う(今でも十分とは言えないと思っている)。2000番の成績を取っている頃など、今から、思えば恐ろしくて実務家なんかになっては困るレベルであったのは間違いない。

一度、司法試験合格者のうち、どれくらいの成績の者が、裁判官、検察官に任命されているのか明確に示して検証する必要があるようにも思う。

 さて、1000人という数字を巡る本格的な議論は午後に行われた。20近くの単位会が合格者1000人にという考えを示しているのに、それを無視して良いのか、むしろ日弁連が一体として活動するには、1000~1500人に削減すると明記するか、1500人は触らないとしても、少なくとも、今後の検証を行う前の段階に、合格者を1000人にすべきという単位会が相当数あるという事実を明記すべきではないか、との折衷的意見も出された。

 これまで、黙っていることの多かった激増賛成派の人たちもこぞって、1000人という数字を入れることに反対意見を表明しだした。いつもはしゃべらない人でも、今回は発言する人がいたように思う。某先生などは、宇都宮会長の意向はどうなんだ、と答えようもない質問を繰り返し行っていた(この質問に対し、1000名といえば、1500名で回答した単位会を無視することになるし、1500名といえば1000名以下と回答した単位会を無視することになりかねない。どっちに転んでも、単位会の意見を無視するのかという追撃が可能な質問である。そもそも、法曹人口政策会議でとりまとめた最終意見を宇都宮執行部に提案し、その提案を宇都宮執行部が尊重するということが前提なのだから、宇都宮執行部への提案の前段階で宇都宮会長の意向を述べろという方が無理なのだ。)

(続く)

日弁連法曹人口政策会議終了~その2

(続き)

 これだけの数の単位会が、1000人に言及している以上、その趣旨を汲むべきだという主張と、意見照会には1000人と明記していないのだから、1000人という数字を入れるというならもう一度意見照会してもらわないと賛成できないという主張が、会議の中で、かなり激しくぶつかった。

実は、意見照会に1000人と明記していないから賛成できないという意見は、1000人という数字を入れるべき、という主張に対する反論にはなっていない。なぜなら、各単位会に意見照会した上で、その意見を元に、どのような内容で執行部に提言するかを決めるのが、法曹人口政策会議だからだ。つまり、1000人で意見照会していないので、私は単位会を代表する立場では賛成できない、私の単位会では反対だという意見に過ぎないのであって、この会議の提言案として1000人という数字を入れるべきではないという根拠にはならない。

 私の左隣は茨城県弁護士会の会長、右隣は京都弁護士会の会長が座っておられた。大阪の会長である中本先生、次期大阪の会長である藪野先生、次期愛知県弁護士会会長の纐纈先生など、各地の代表と言うべき先生方も多く出席されている。

 私としては、今すぐ1500人の合格者にしても、将来的に弁護士の数は今の倍になり、コンビニエンス・ストアの数よりもかなり増えてしまう(今のペースだと、弁護士数は、あと4~5年でコンビニエンス・ストアの数に追いつく可能性がある)ので、なんとしても1000人という数字を入れてもらいたかった。

 また、正直言って、日弁連会長選挙が再選挙になってしまったので、ここで1000人という数字を入れておかないと、山岸候補が会長になった際に、1500人を主張するだけで事足れり、とされてしまっても困るということもある。

 ちなみに、今回の意見照会に関する東弁の態度は、1500名はしょうがないが、1500名よりも減員する、という方向付けをしてもらっては困るというものだ。

 東弁執行部に、今までの主流派が雁首揃えて失脚するようなクーデターが起きたという話も聞いていないから、東弁は未だ、これまで言われてきた主流派の支配の元にあるし、意見照会からも分かるように、東弁主流派は、いまだ司法試験合格者減少に向けてはちっとも乗り気ではなく、嫌々ながら1500人の提案は否定はしないという程度の問題意識しか持ってないと見える。

山岸候補は、もちろん東弁主流派からの立候補だろうし(第1回投票では東弁では圧勝している)、そうだとすれば、東弁主流派の意向に逆らえるはずがない。仮に山岸候補が当選されたとしても、法曹人口問題では、一応1500名の主張はするが、仮にできてもそれが限界で、放置される危険性が極めて高くなるように、私には思われる。

(続く)

日弁連法曹人口政策会議終了~その1

宇都宮日弁連会長が設置した、法曹人口政策会議が今回で終了した。この会議で最終とりまとめ案が採決され、3月に予定されていた運営会議はなくなった。

最終とりまとめ案は、各単位会に意見照会した上で、正副理事会で修文された内容が提示された。司法試験合格者をまず1500人まで減少させ、その後の減少については、検証しつつという骨子には変わりがないと考えて頂いて良いと思う。

ところが、各単位会に意見照会したところ、合格者は1000人にすべきだから1500人では減員数として不十分なので反対という意見が11~12単位会、1500人以下にすべきではないという意見は1単位会、そのほかは概ね原案賛成。ただし、1000人にすべきという意見を載せるなど、1000人に親和性のある単位会の数は合計20近くあった。

ちなみに、今直ちに司法試験合格者を1000人に減らしても、毎年やめていく弁護士の数が300~400人位なので、合格者のうち裁判官・検察官にそれぞれ100名が採用されたとしても、

1000―100-100-300~400=400~500人は

弁護士が増えていく。そして司法審が目標としていた法曹人口5万人にまで増えるのだ。だから、司法試験合格者を減らしても,今後も弁護士が増え続けることには変わりがない。

さて、会議では、これだけの単位会が1000人に言及している以上、何らかの形で提言の趣旨に1000人という数字を入れるべきではないか、という点が、最大の問題となった。

会議の前日に行われた、正副理事会でも同様の意見があったが、どうしても1000人を入れるべきではないという理事もいて、1000人という数字を提言の趣旨にいれることはできなかったそうだ。

(続く)

日弁連法曹人口政策会議の提言案

 法曹人口政策会議の「『法曹人口に関する日本弁護士連合会の基本政策』についての提言案」について、日弁連の関係委員会に対する意見照会の回答が、法曹人口政策会議のMLに流れている。

 日弁連の、どこの委員会が、上記提言案に対し、どのようにいっているのかについて、本来公表すべきだと思っているので、ML上で、公表の可否を問い合わせているが、未だにお返事が頂けないようだ。

 大体、地方弁護士会の一会員にとっては、日弁連の委員会など完全にブラックボックスだ。その委員会がどんなことを意見として日弁連執行部に出そうとしているのか、公表しても良いのではないか。本当はその構成員の名簿も一緒につけてもらいたいくらいだ。

 だって、委員会でとりまとめて執行部に提出する以上、その委員会構成員による責任ある意見、とみていいだろう。責任ある意見なら、なにも、後ろに隠れる必要もなく、恥ずかしがることもないではないか。

 何を恐れる必要があるのだろう?

 かつて、法曹人口政策会議で千葉の及川先生が、法曹養成検討会議への傍聴を希望し、宇都宮会長自身がOKしたのに、後にあっさり反故にされたのも、執行部の意向だったようだ。私もそのやりとりをそばで聞いていたのだが、宇都宮会長は傍聴を実現させようとされていた。

 それが後にひっくり返されたのだから、宇都宮会長の意向を妨害する何らかの力が働いたからとしか思えない。

 このように、日弁連の委員会や運営は、分からないところだらけだ。

 そこの風通しを良くすることが、宇都宮会長就任の前まで営々と続き、会長が替わってもなお、今まで築き上げてきた強固な人脈が固着して抵抗し、改善しきれずに続いている主流派(旧主流派)による、日弁連の派閥談合政治体制を、少しずつ改めていくことにつながるのではないか。

 そういう点では、宇都宮会長の設置した法曹人口政策会議は、各地の意見も取り入れ、委員も多彩な委員を選任し、会員に本当に議論させてくれる場所を初めて設定したとも言える画期的な行為だったように思う。

 もう、かつてのお偉い方々やマスコミの、潜在的ニーズ論は聞き飽きているのですよ。

 本当に潜在的ニーズがあるなら、就職に困っている新人の方々を雇用して、その仰るところのニーズを開拓して見せて下さいよ。

 できるはずでしょ。

 本当にニーズがあるのなら。