日弁連・村越会長の声明について~1

 昨日の、大阪弁護士会常議員会で、平成27年5月21日に村越日弁連会長が出した、「法曹養成制度改革推進室作成の法曹人口のあり方について(検討結果取りまとめ案)に関する、会長声明」(以下「村越声明」という。)の説明があった。

 その村越声明の中に、「法曹志望者の減少をもたらした要因を解消する実効的な措置を講ずることなく、ことさらに司法試験合格者の数を追い求めるならば、新規法曹の一部に質の低下をもたらす・・・」とのくだりがあった。

 このような声明を出す以上、日弁連としては法曹志望者減少の要因を知っているはずだろうから、大阪弁護士会の松葉会長にお尋ねしてみた。あわせて、村越声明は冒頭から、未だに司法審改革意見書を振りかざしているので、司法審意見書は今後の需要増が見込まれる前提での話であり、その空想が案の定大ハズレに終わり、弁護士会も需要開拓さんざんに努めてきたがほとんどがむなしく空振りに終わっている現状でも、なお需要があることを前提にする司法審意見書に乗るのは、おかしいのではないかと聞いてみた。

 誤解なきよう、先に申しあげておくが、私は、松葉会長を尊敬している。私のような若輩が無茶な意見を申しあげても、逃げたり誤魔化したりせずに、きちんと向き合ってお話ししてくれる。弁護士としても一流だとお聞きしているし、お人柄も私なんかより数段上でいらっしゃる。ただ、大阪弁護士会会長、日弁連副会長としてのお立場もあるだろうから、大人の事情で、公的な場で本音のお話しをして下さるとも限らないことは、ご理解頂きたい。

 私の記憶に依るものなので、不正確な部分も当然あるため、きちんとしたやり取りは、常議員会議事録をお読み頂くことになるが、松葉会長のお答えは、概ね以下のとおりだった。

 法曹志願者減少の要因については、就職難、経済的困窮、法曹になるためのコスト等が理由だと日弁連は考えているそうだ。

 そして、司法審意見書に関しては、まだ掬いきれていない需要はあるとの考えのようだった。

 しかし、法曹資格取得にどれだけコストがかかろうと、それに見合うリターンが見込まれれば、志願者は減少しないと思われる。現在よりも遥かに競争率が高かった旧司法試験時代は合格率が1~2%台の時(平均合格のための時間的コストは相当高かった)でも、受験者は増加の一途だった(丙案導入時の受け控え除く)。このことからも、法曹になるコスト(時間的・経済的コスト)だけが原因でないことは明らかだ。

 だから私は、端的に職業としての法曹の魅力が低下したからではないか、と意見した。
 わずか8年間で所得の平均値も中間値も半分に減少し、家事を除いて一向に裁判案件は増加の傾向を見せない。将来有望かどうかの資格としてみた場合、月刊プレジデントではブラック資格とまで書かれている。潜在的需要論は、いわれているだけで一向に顕在化しない。

 むしろ、法曹界に良い人材を呼び込もうとするなら何らかのリターンを用意しなければならないのではないか。一般社会でも、ヘッドハンティングのように、良い人材を得ようとするなら、報酬や地位などそれなりの見返りを準備することは当然だ。どうしてそれが弁護士というだけで批判・否定されるのか考える必要もあるのではないか。

ということにも触れたように記憶している。

(続く)

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